「固定資産税がかからない土地」は存在する
「そもそも固定資産税がかからない土地なんて本当に存在するの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。
結論からいうと、固定資産税がかからない土地は存在します。
具体的には、土地の所有者が国であったり、土地が公共の道路に面している場合などは、固定資産税が非課税となります。
次の項目から、固定資産税がかからない土地の条件について、詳しく見ていきましょう。
固定資産税がかからない土地の条件
固定資産税がかからない土地の条件には、以下のようなものがあります。
- 国が所有している土地の場合。
- 土地の課税標準額が30万円未満の場合。
- 公共の保有林や墓地など公的性質の強い土地の場合。
- 土地が公共の道路に面している場合。
次の項目から、それぞれの条件について詳しくお伝えします。
国が所有している土地の場合
国が所有している土地は、固定資産税がかかりません。
また、国だけでなく都道府県や市区町村などの地方自治体が所有している土地も、固定資産税は非課税となります。
上記のような用途で利用されている土地は、所有者が国や地方自治体となるため、固定資産税の課税対象外となります。
土地の課税標準額が30万円未満の場合
固定資産税には免税点というものがあり、不動産の課税標準額がこの基準を下回ると固定資産税はかかりません。
固定資産税の免税点は不動産の種別によって以下のように定められています。
土地の課税標準額 |
30万円未満 |
建物の課税標準額 |
20万円未満 |
土地と建物の両方を所有していたとしても、それぞれの課税標準額が免税点の範囲内なら固定資産税はかかりません。
なお、同一市町村の区域内で複数の不動産を所有している場合は、課税標準額の合計によって固定資産税の課税対象となるかが決まります。
同一市町村内の区域内で課税標準額20万円の土地A、課税標準額15万円の土地Bを所有している場合、課税標準額の合計が免税点の30万円未満を上回るため、固定資産税がかかります。
また、同じ課税標準額の土地を所有している場合でも、土地AとBがそれぞれ別の市にある場合は、両方とも免税点の範囲内であるため、固定資産税は非課税となるのです。
公共の保有林や墓地など公的性質の強い土地の場合
国が所有している土地以外でも、公的性質の強い土地は固定資産税がかからないことがあります。
公的性質の強い土地とは、例えば以下のような用途で利用されている土地です。
土地が公共の道路に面している場合
公共の道路に面していて不特定多数の人が通行などで利用している土地は、固定資産税がかからないことがあります。
なぜなら、不特定多数の人が通行などで利用している土地は「公共の土地」とみなされるからです。
なお、これは私道の場合も同じです。
固定資産税がかからない土地の相続方法は?
相続する予定の土地が固定資産税のかからない土地だった場合「一般的な土地を相続する場合と手続きの手順に違いはあるのだろうか?」と疑問を抱く人もいるでしょう。
もしくは「固定資産税がかからないのだから、一般的な土地を相続する場合のような手続きは必要ないのでは?」と考える人もいるかもしれません。
結論からいうと、固定資産税がかからない土地を相続する場合も、手続きの手順は一般的な土地を相続する場合と同じです。
一般的な土地の相続方法は、以下のとおりです。
- 相続人全員で土地の分け方を話し合う
- 必要な書類・費用を準備する
- 法務局へ相続登記を申請する
具体的には、相続人全員で土地の分け方を決めた後、必要書類・費用を用意して「相続登記」という手続きを法務局でおこなう形になります。
それぞれの手順を、順番に解説していきます。
【手順1】相続人全員で土地の分け方を話し合う
まずは、相続する土地の分け方を相続人全員で話し合いましょう。
「遺産分割協議」という話し合いをおこなうことで「誰が土地をどの程度相続するか?」といった土地の分け方を相続人全員で決めます。
遺産分割協議とは?
相続発生時に相続人全員で遺産の分け方について、協議・合意することです。
ただし、遺産の分け方は必ず相続人全員で決定する必要があり、1人でも反対している場合は決定内容が無効にされてしまいます。
ですので、遺産分割協議によって土地の分け方を決めた後は、必ず「遺産分割協議書」を作成して、相続人全員が納得している事実を残しておきましょう。
【手順2】必要な書類・費用を準備する
続いて、相続登記で必要となる書類・費用を準備しましょう。
ここで解説する必要書類・費用を準備してから、実際に相続登記を手続きします。
相続登記における必要書類は以下のとおりです。
- 相続登記の申請書
- 被相続人の戸籍謄本
(出生から死亡まで)
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 不動産の固定資産評価証明書
- 不動産の全部事項証明書
これらの必要書類は法務局や市区町村役場で取得できます。
加えて、相続登記で必要となる費用は以下のとおりです。
種類 |
金額 |
登録免許税 |
固定資産税評価額×0.4% |
登記事項証明書の発行手数料 |
約600円
(不動産1個あたり) |
戸籍謄本などの発行手数料 |
合計3000円程度 |
司法書士への手数料 |
約6万円
(司法書士に依頼する場合) |
司法書士へ相続登記を依頼することもできますが、6万円程度の手数料がかかるため、なるべく自分で手続きすることをおすすめします。
もし必要書類・費用がわからない場合、最寄りの法務局に問い合わせれば教えてもらえるので、気軽に相談してみるとよいでしょう。
【手順3】法務局へ相続登記を申請する
最後に、法務局に「相続登記」を申請しましょう。
相続登記とは?
被相続人の死亡後、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きです。
わかりやすくいうと、被相続人の遺産を相続人が引き継いだ事実を法的に証明する手続きが「相続登記」になります。
法務局へ相続登記を申請するには、以下3種類の方法があります。
- 法務局の窓口に持参する
- 法務局へ郵送する
- オンラインで申請する
はじめて相続登記をおこなう場合、さまざまな質問をしながら手続きができるため、窓口での申請がおすすめです。
法務局への申請が済むと、平均1週間程度で相続登記が完了して、正式に土地の所有権が被相続人から相続人に移転します。
「固定資産税がかからない土地」でも相続税の申告は必要?
相続する予定の土地が固定資産税のかからない土地だった場合「固定資産税がかからないのだから、相続税の申告も必要ないのでは?」と考える人もいるかもしれません。
しかし、固定資産税がかからない土地であっても、相続税の課税対象には含まれます。
そのため、固定資産税がかからない土地を含めた遺産総額が、所定の要件を満たしている場合は、相続税の申告が必要です。
では、具体的にどのようなケースで相続税の申告が必要なのでしょうか。
次の項目から、詳しくお伝えします。
遺産総額が基礎控除額を超えるなら相続税の申告は必要
相続税の申告が必要なケースとは、固定資産税がかからない土地を含めた遺産総額が、相続税の基礎控除額を超える場合です。
なお、相続税の基礎控除額は以下の式で算出できます。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例えば、法定相続人が3人いる場合、基礎控除額の金額は以下のとおりです。
■法定相続人が3人いる場合
3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
土地の相続時にかかる税金を安く抑える方法
土地の相続時にかかる税金を安く抑えるには、2種類の方法があります。
- 相続税の控除・特例を受ける
- 相続放棄で土地を手放す
各種控除・特例を利用すれば、相続税を抑えつつ土地を相続できますし、相続放棄をおこなえば、相続税・登録免許税を一切負担せずに済みます。
それぞれの方法を順番に解説していきます。
1.相続税の控除・特例を受ける
1つ目は、相続税の控除や特例を受ける方法です。
相続税には、各種控除や特例が用意されているので、これを用いることで節税できます。
相続税を安く抑えるには、以下のような控除・特例があります。
種類 |
減額される金額 |
基礎控除 |
3,000万円+600万円×法定相続人の数 |
贈与税額控除 |
相続から3年以内の生前贈与で支払った贈与税額 |
配偶者控除 |
最大1億6,000万円または法定相続分の金額 |
未成年控除 |
満20歳になるまでの年数×10万円 |
障害者控除 |
満85歳になるまでの年数×10万円
(一般障害者) |
満85歳になるまでの年数×20万円
(特別障害者) |
小規模宅地等の特例 |
相続する宅地の330㎡までの部分の評価額を80%減額 |
2.相続放棄で土地を手放す
2つ目は、相続放棄で土地そのものを手放す方法です。
相続放棄とは?
被相続人の遺産を一切相続せず、財産・負債をすべて手放すことです。
相続放棄をおこなえば、土地を含めた被相続人の遺産を一切相続しないので、相続税も負担せずに済みます。
ただし、相続放棄をおこなうと、土地以外の財産も相続できない点に注意しましょう。
例えば、被相続人の遺産が2,000万円の土地と3,000万円の負債だったとします。
この場合「2,000万円の土地だけ相続して、3,000万円の負債は放棄する」といった相続はできません。
被相続人の抱える負債が土地を含めた遺産を上回る場合でない限り、相続放棄をおこなうことで損をしてしまう結果となります。
被相続人が負債を抱えている場合でも、土地を売却すれば返済資金に充てられるので、基本的には土地ごと遺産を相続することをおすすめします。
固定資産税がかからない土地を知らずに相続するリスク
固定資産税がかからない土地は納税通知書が届かないため、相続人が知らない間に相続しているケースも多いです。
固定資産税がかからない土地を知らずに相続すると、以下のようなリスクがあるので注意してください。
- 相続税の申告期限を過ぎて罰金を科せられる。
- 急に固定資産税が課税される。
次の項目から、それぞれのリスクについて詳しくお伝えします。
相続税の申告期限を過ぎて罰金を科せられる
相続税には申告期限があり「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に相続税の申告と納付を済ませなければなりません。
自分が土地を相続したことに気づかず、相続税の申告期限を過ぎてしまうと、無申告加算税という罰金を科せられるので注意してください。
科せられる罰金の金額は、以下のとおりです。
期限が過ぎた後に自主的に申告した場合 |
税金総額の5% |
税務調査で指摘を受けて申告した場合 |
税金総額の10% |
なお、新たに相続財産が見つかるなどして申告した税額が少なかった場合も、過少申告加算税という罰金が科せられる恐れがあります。
急に固定資産税が課税される
今ままで固定資産税がかからなかった土地も、急に固定資産税の課税対象となることがあります。
固定資産税の課税対象となるケースには、主に以下の2つが挙げられます。
- 同一市町村の区域内で別の土地や建物を取得した。
- 土地の評価額が上がった。
同一市町村内で別の土地や建物を取得し、課税標準額の合計が免税点以上になった場合は、固定資産税の課税対象となります。
また、土地の評価額は常に固定されているわけではなく、数年ごとに見直しがおこなわれています。
評価額が見直され課税標準額が免税点を超えてしまうと、今まで非課税だった土地が固定資産税の課税対象になってしまう恐れがあることを覚えておきましょう。
まとめ
固定資産税がかからない土地であっても、相続方法は一般的な土地と同じです。
また、固定資産税がかからない土地であっても相続税の課税対象には含まれるため、固定資産税がかからない土地を含めた遺産総額が基礎控除額を超える場合は相続税の申告は必要です。
ただし、相続税に関する控除や特例が多数用意されているので、うまく利用すれば相続税を抑えられます。
自分の状況に合ったものを選んで、節税対策に利用するとよいでしょう。
固定資産税がかからない土地のよくある質問
そもそも固定資産税がかからない土地は存在するの?
はい、固定資産税がかからない(=非課税となる)土地は存在します。
どのような条件の土地なら固定資産税がかからないの?
固定資産税がかからない土地の条件には、以下のようなものがあります。
・国が所有している土地の場合
・土地の課税標準額が30万円未満の場合
・公共の保有林や墓地など公的性質の強い土地の場合
・土地が公共の道路に面している場合
固定資産税がかからない土地の相続方法は?
固定資産税がかからない土地も一般的な土地と同じように相続できます。
一般的な土地の相続方法は、以下のとおりです。
・遺言書を確認し遺言書の内容に沿って遺産を分ける
・遺言書がない場合は遺産分割協議で遺産を分ける
・遺言書もしくは遺産分割協議の結果、土地を相続する権利を得たら相続登記をする
・相続登記の手続きを済ませれば土地の相続が完了する
固定資産税がかからない土地でも相続税の申告は必要なの?
固定資産税がかからない土地でも、遺産総額が基礎控除額を超えるなら相続税の申告は必要です。
固定資産税がかからない土地に関する注意点は?
固定資産税がかからない土地は納税通知書が届かないため、相続人が気づかないうちに相続しているケースがあります。
固定資産税がかからない土地を知らずに相続すると、以下のようなリスクがあるので注意してください。
・相続税の申告期限を過ぎて罰金を科せられる
・急に固定資産税が課税される
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