未登記建物は売買できるの?リスクや登記の方法、費用などを徹底解説

未登記建物 売買

相続した物件が未登記建物だと知って、困惑する人は少なくありません。未登記建物は所有権を公的に証明できないため、取引や紛争(訴訟など)のときに不利になります。

しかし、未登記建物でも売買自体は可能です。むしろ、未登記の状態で放置するほうがトラブルにつながります。

そこでこの記事では、未登記のまま売買するにあたってどのような方法があるかや、必要な費用などを紹介します。正しい手続きを把握し、未登記建物を管理する不安を解消しましょう。

なお、「難しいことはしたくない」「とにかくすぐに未登記建物を手放したい」と考えている場合は、訳あり物件専門の買取業者に相談するのもおすすめです。

訳あり物件専門の買取業者であれば、未登記の状態でもスムーズに現金化できます。まずは複数の不動産会社を比較し、未登記物件を取り扱える業者を探してみましょう。

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未登記建物とは?

「未登記建物」とは、文字通り登記されていない建物を指します。「登記」とは、権利や義務を登記簿に登録し、法務局で管理する国の制度のことです。

不動産の場合、所有権や抵当権、その他さまざまな権利が登記されます。登記簿を見れば、過去から現在まで、誰がどのような権利を持っていたかわかります。

しかし、申請忘れなどで必要な登記がされていないケースも少なくありません。登記にはいくつか種類がありますが、未登記の例としては次のようなパターンがあります。

表題登記がない 登記簿上に建物の存在自体がない
建物保存登記がない 建てられてから最初の所有者が登記されていない
表題変更登記がされていない 増改築で変更された建物の状態が反映されていない
所有権移転登記・相続登記がされていない 売買や相続※による所有権の変更が反映されていない

※なお、相続登記は2024年4月1日から義務化される(現在未登記の物件も含む)。
参照:東京都法務局「相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始)  ~なくそう 所有者不明土地 !~」

未登記建物は所有権の所在を国が管理できていないため、さまざまな不都合が生じます。

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未登記建物は売買できるがリスクが伴う

未登記でも売買は可能ですが、いくつかのリスクに注意が必要です。

所有権を証明できないほか、そこから生じる他のリスクにも重要です。具体的には、以下のリスクに気をつけましょう。

  • 所有権を主張できない
  • 他人に所有権を奪われる可能性がある
  • 金融機関のローンを組めない

それぞれ詳しく解説します。

所有権を主張できない

登記とは公的に所有権を証明する唯一の手段であり、未登記だと先述の通り所有権を主張できません。

売買や相続、その不動産に関する訴訟などで、自分が所有者であることを明示できなくなります。

所有者であることを証明するためには、未登記を解消する必要があります。

ただし、主張できないのはあくまで「第三者に対して」です。所有権の変動にかかる当事者間においては、登記の有無に関わらず所有権の移転は成立します。
例えば、不動産の売買契約が正しく行われていれば、当事者間(売主と買主)は登記がなくても所有権の移転を主張できます。「登記がないから売買契約は無効」とはなりません。

他人に所有権を奪われる可能性がある

未登記のまま放置していると、他人が先に登記してしまい、所有権を取られてしまう可能性があります。具体的には、次のようなケースが考えられます。

  • 二重売買で後から購入した買主が登記申請
  • 書類偽造やなりすましなど虚偽の登記申請
  • 法定相続人が遺産分割協議を無視して登記申請

先に登記した相手方が不法行為者や背信的悪意者(自分より先に所有権の移転があったと知っていた人)であれば、訴訟などで所有権を取り返すことも可能です。

ただし、相手方が「自分に所有権があると信じるに足る状況」だった場合、所有権は取り戻せなくなります。

例えば、売主Aと買主Bが売買契約を結んだあと、Bへの所有権移転登記をする前に売主Aと買主Cの間でも売買契約が締結され、登記も先に済ませたとします。
買主CがAB間の売買契約を知らなかった場合、先に所有権移転登記を済ませたCの所有権のほうが優先されるため、BはCに対して自分の所有権を主張できません。

金融機関のローンを組めない

未登記の状態だと建物に抵当権を登記できないため、ローンを組めなくなります。抵当権とは、金融機関が不動産を担保に取り、債務者が返済できなくなった際に差し押さえるための権利です。

抵当権を設定するためには、登記簿上に所有権の登記が必要です。表題登記や建物保存登記(新築時の最初の登記)がされていない建物は所有権自体が不明なため、抵当権を設定できません。

また、表題登記はあっても、登記簿上の所有者と実際の所有者(売主)が異なる場合だと融資を拒否される可能性があります。

ローンが組めない物件だと、買主は「現金で購入できるほど資金が潤沢な人」に限られるので、売りにくくなってしまいます。

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未登記建物を売買する方法

前述のように、未登記状態での売買には多くのリスクが伴います。しかし、まったく売買できないわけではありません。

ここでは、具体的な売買方法として、3つの方法を紹介します。

それぞれの方法の特徴やメリット・デメリットについて、詳しく見ていきましょう。

未登記のまま建物を解体して土地を売却する

未登記建物でも、解体は可能です。解体すれば建物自体が消失するため、「誰が所有者なのか」という問題もなくなります。

建物のみ未登記で、土地の登記が正しいケースなら、建物を解体するだけで「普通の更地」として売却できます。

ただし、未登記建物を解体するためには、自分以外に所有権を主張する人がいないことが条件です。所有権の主張者がいる場合、先に誰が所有者か明確にしておかなければ、トラブルに発展します。

また、解体後は「建物滅失登記」か「家屋滅失届」の申請が必要です。

申請の種類 申請先 申請するケース
建物滅失登記 法務局 表題登記がされている(登記簿上に建物がある)場合
家屋滅失届 役所 表題登記がされていない(登記簿上に建物がない)場合

表題登記のある場合、建物滅失登記をすれば法務局から役所へ通達されます。一方、表題登記がないと建物滅失登記自体が申請できないため、役所に解体を知らせるための家屋滅失届が必要となります。

不動産買取業者に未登記のまま売却する

ここまで解説した売却方法は、いずれもリスクや手間があります。所有権を巡ってトラブルになったり、そもそも買い手が見つからなかったりするかもしれません。

こうしたリスクや手間を避ける方法としては、不動産買取業者に直接買い取ってもらう方法がおすすめです。「訳あり物件専門の買取業者」なら、未登記物件でも買い取ってもらえます。

訳あり物件専門の買取業者とは?
未登記物件や事故物件、再建築不可物件など、なんらかの問題を抱えた不動産を専門に買い取る業者。訳あり物件の買取・再販ノウハウを熟知しているため、スムーズな売買が可能。

まずは複数の不動産会社を比較してみて、未登記物件に対応している業者を探してみましょう。下記リンクから利用できる一括査定なら、手軽に複数の不動産会社へ査定を依頼できます。

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登記してから売買する

ここまでは「登記をしないまま売る」という方法を紹介しましたが、登記を済ませてから売ることも勿論可能です。

未登記の状態を解決すれば、通常の物件と同じように売買できます。手続きに手間はかかりますが、高値で売却できる可能性もあるので、時間的に余裕があれば検討してみましょう。

次の項目からは、未登記建物を登記する方法や費用について説明していきます。

未登記建物を登記する方法と注意点

先にも紹介しましたが、未登記建物にはいくつかのパターンがあります。どのパターンに該当するかで、必要な登記の方法も変わります。

  • 表題登記・表題変更登記
  • 所有権保存登記
  • 所有権移転登記・相続登記

それぞれどのような手続きなのか、各登記の方法と注意点を解説します。

表題登記・表題変更登記

「表題登記」とは、不動産が新しく生じたときに行う登記です。建物の場合は新築時に行われ、所在や地番、家屋番号や構造など、物理的な状況が登録されます。

表題登記不動産登記は不動産登記法で申請義務が定められており、怠ると10万円以下の過料もあります。ただし、古い建物だと登記されずに放置されているケースも少なくありません。

参照:e-Govポータル「不動産登記法第47条、第164条」

また、増改築で建物の現況が変わったときも、同じように「表題変更登記」の申請が必要です。

表題登記や表題変更登記を専門家に依頼したい場合は、土地家屋調査士に相談しましょう。申請時に必要な書類と費用相場は以下の通りです。

表題登記・表題変更登記の必要書類
・所有者の住民票
・所有権を証明する書類(建築確認申請書や工事完了引渡証明書など)
・登記委任状(土地家屋調査士に委託する場合)
・建物図面、各階平面図
表題登記・表題変更登記の費用相場
・土地家屋調査士への委託報酬:約10万円~(物件種別や委託先などで異なる)
※登録免許税(登記申請の手数料)は不要

表題登記は「建物があること」を記録する登記であり、これがないとその他の登記もできません。登記してから売買する場合は、最初に確認・申請しましょう。

所有権保存登記

「所有権保存登記」とは、不動産の最初の所有者を記録する登記です。通常は表題登記の受理直後に申請します。

表題登記は法的に申請義務がありますが、所有権保存登記に義務はありません。それでも登記するのが一般的ですが、任意なことも相まって申請しない人が一部存在します。

特に、現金一括で建物を建築・購入した人は、ローンを組むのに必要な「金融機関への所有権の証明」が不要になるため、所有権保存登記を忘れている場合があります。

所有権保存登記を専門家に委託するときは、司法書士へ相談します。必要書類や費用相場は次の通りです。

所有権保存登記の必要書類
・所有者の住民票
・住宅用家屋証明書※1
・表題部所有者(表題登記をした人)の戸籍全部事項証明書※2
・相続人全員の戸籍全部事項証明書※2
・遺産分割協議書※2
・登記委任状(司法書士に委託する場合)
※1…登録免許税の軽減税率を利用する場合に必要。要件を満たしている場合のみ、役所で取得可能。軽減税率については国税局のWebサイトを参照。
※2…相続で物件を取得した場合
所有権保存登記の費用相場
・登録免許税:不動産価額の0.4%
・司法書士への委託報酬:約3万円~(物件種別や委託先などで異なる)

参照:国税庁「登録免許税の税額表」

所有権保存で最初の所有者を記録しないと、その後の「所有者の変遷」を記録できません。登記してから売買するのであれば、表題登記と合わせて真っ先に確認・申請しましょう。

所有権移転登記・相続登記

「所有権移転登記」とは、文字通り所有権の移転があったときに行う登記です。売買や贈与など移転理由はさまざまですが、その中でも相続による移転を「相続登記」といいます。

所有権移転登記は基本的に義務ではありませんが、相続登記については2024年4月1日から義務化されます。相続人が所有権の取得を知ったときから、3年以内に申請しなければいけません。

令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されます。
(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。
(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。
出典:東京法務局「相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始)  ~なくそう 所有者不明土地 !~」

義務化される前に相続した不動産も義務化の対象となるので、売買するかしないかに限らず、相続登記をしていない物件があれば早めに申請しておきましょう。

所有権移転登記や相続登記が何代にもわたって登記されていない場合、正しい登記がされていない時点から修正しなければいけません。前の所有者、その前の所有者と遡っていくことになり、多大な時間がかかります。

他の登記申請も同じですが、個人で対応するのは難しいため、専門家に依頼することをおすすめします。所有権移転登記・相続登記については司法書士の管轄です。

なお、必要書類や費用相場は次の通りです。

所有権移転登記・相続登記の必要書類
・本人確認書類
・実印、印鑑証明書
・登記識別情報(権利証)
・固定資産評価証明書
・所有者の住民票
・登記原因情報(売買契約書や遺産分割協議書など)
・被相続人と相続人の戸籍全部事項証明書※相続登記の場合
・登記委任状(司法書士に委託する場合)
所有権移転登記・相続登記の費用相場
・登録免許税:相続登記は不動産価額の0.4%、それ以外の所有権移転登記は不動産価額2%
・司法書士への委託報酬:約3万円~(物件種別や委託先などで異なる)

参照:国税庁「登録免許税の税額表」

未登記建物の登記にかかる費用

ここまで解説した「登記にかかる費用相場」をまとめると、下記のようになります。ただし、あくまで最低限の目安であり、状況によってはより高額になる場合もあります。

登記の種類 専門家の委託報酬 登録免許税
表題登記・表題変更登記 約10万円~ なし
所有権保存登記 約3万円~ 不動産価額の0.4%
所有権移転登記・相続登記 約3万円~ 不動産価額の2%(相続登記は0.4%)

司法書士や土地家屋調査士といった専門家への報酬と、登記を申請する際の手数料である登録免許税がかかります。申請自体は自分自身でも可能ですが、労力や正確性を考えた場合、委託したほうが安心かつ確実です。

費用にしろ労力にしろ、登記には一定のコストが発生するので、これらを避けたい場合は未登記のまま売却することも検討しましょう。

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まとめ

未登記建物でも売買自体は可能ですが、買い手が見つかりにくい場合が多く、価格を下げても安く買われてしまう可能性があります。かといって、そのまま放置しておくのもリスクがあるのでおすすめしません。

なるべく高値でスピーディーに売却したい場合は、訳あり物件専門の買取業者に相談しましょう。未登記のままでも買い取ってもらえるので、所有権についてあれこれ考える手間を省けます。

登記してから売却するのであれば、土地家屋調査士や司法書士などの適切な専門家へ相談することが大切です。トラブルにならないよう、専門家のもとで正確に登記申請を行いましょう。

未登記建物に関するよくある質問

未登記の建物を所有するのは法律違反ですか

未登記の種類によりますが、「表題登記」がされていない場合、10万円の過料が科されます。また、「相続登記」も2024年4月1日より義務化されます。しかし、実際に未登記の建物に対して実際に過料が科された事例は、いまのところないようです。
ただし、これまでに科されたことがなくても今後科される可能性はあります。また、登記の種類に限らず、未登記の状態はさまざまなリスクがあるため、必要であれば速やかに登記をすべきです。

未登記建物でも固定資産税を課税されますか

はい、未登記でも固定資産税は課税されます。登記は法務局の管轄ですが、固定資産税は市町村の管轄であり、役所が独自に建物を調査して課税します。

未登記建物を放置するリスクはなんですか

所有権を第三者に主張できないことで、取引や紛争で不都合が生じます。例えば、売却しようと思っても買い手が付きにくくなりますし、買主側はローンを使えません。その建物に関連する訴訟が起こったときも、裁判で自分が所有者であることを証明できなくなります。
また、第三者が先に登記することで、所有権を奪われる恐れもあります。

未登記建物の売却は可能ですか

はい、未登記建物でも売却は可能です。未登記のまま売却する方法と、登記を済ませてから売却する方法があります。
未登記のまま売却する場合、ローンが組めなくないので、買い手は「現金で購入できる人」に限られてしまいます。それでも、未登記であることは隠さず告知しなければいけません。
登記を済ませてから売る場合、手続きは煩雑になるので、専門家(土地家屋調査士や司法書士)に相談することをおすすめします。

未登記建物をスムーズに売却するにはどうすれば良いですか

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