相続した賃貸物件の家賃は誰のもの?遺産独り占めの対処法も解説

相続物件

親が亡くなり相続財産にアパートやマンションなどの賃貸物件がある場合、受け取った家賃は誰のものになるのか疑問を抱く人も少なくありません。

結論から言うと「生前の家賃は被相続人のもの」です。ただし、相続発生後は遺言書の有無や内容などによって家賃を受け取れる人が異なります。

そのため「長男だから家賃収入を独り占め」「貸家の近くに住んでいるから私のもの」となるわけではありません。

少しでも家族のためになればと願い生前にアパート経営をしていたのに、そのアパートが原因となり兄弟間などでトラブルが発生すると故人は浮かばれません。

この記事では、「相続した賃貸物件は誰のもの」になるか、また「遺産を独り占めされた時の対処法」などを詳しく解説します。

相続した賃貸物件の家賃を受け取れる人

遺言書

相続した賃貸物件の家賃を受け取れる人は、さまざまなタイミングで異なります。具体的には「生前の家賃は被相続人のもの」「亡くなった後の家賃は相続人のもの」です。

また、遺言書の有無によって家賃を受け取れる人が決定します。まずは以下を確認しましょう。

タイミング 生前 相続発生後
受け取れる人 被相続人 遺言書ありの場合
遺言書で指定された人
遺言書なしの場合
遺産分割協議中 遺産分割決定後
各相続人 賃貸物件を相続した人

生前の家賃は被相続人のもの

生前の賃料は被相続人(亡くなられた人)の収入です。受け取った家賃は亡くなった時に現金や預貯金で残っていれば、遺産として相続されます。

家賃は通常1カ月単位で受け取りますが、月の途中で亡くなった場合の家賃の金額はどうなるのでしょうか。原則、亡くなった日までに支払期日が到来している家賃収入は被相続人の収入です。

しかし、継続的な記帳に基づいて不動産所得の金額を計算しているなど一定の要件を満たせば、日割り計算できます。

たとえば、8月13日に亡くなったとすると、8月1日から8月13日までの日割り家賃分が被相続人の所得です。8月14日以降の家賃収入は相続人の所得となります。

8月13日の時点で家賃を受け取っていない場合は、未収入金として相続財産になります。生前に受け取った家賃は被相続人の収入なので、亡くなられてから4カ月以内に「準確定申告」が必要です。

【遺言書あり】遺言書で指定された人の家賃

亡くなられた日以降の家賃については遺言書の有無によって、誰の家賃になるかが異なります。「遺言書あり」の場合、遺言書で指定された人の家賃になります。

遺言書は遺産の分配方法などを記載しておくものです。受取人として指定された相続人等は、他の相続人に同意を求めることなく相続手続きが可能です。

亡くなられた日以降の家賃収入は、遺言書で指定された人の所得になるので翌年確定申告が必要になります。

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【遺言書なし】遺産分割が確定するまでは各相続人の家賃

「遺言書なし」の場合、遺産分割が確定するまでは各相続人の家賃になります。遺言書がない場合は、相続財産を共有している状態です。

誰がその賃貸物件を相続するか決まっていないので、遺産分割が確定するまでの家賃収入は相続人全員で分割することになります。分割は法定相続分に従っておこないます。

法定相続分は家族構成によって変わるので、以下を参考にして下さい。

法定相続人 法定相続分
配偶者 父母 兄弟姉妹
配偶者のみ 1
配偶者+子 1/2 1/2
配偶者+子2人 1/2 1/4
配偶者+父母 2/3 1/3
配偶者+兄弟姉妹 3/4 1/4

遺産分割協議が確定するまでの間は、各相続人それぞれ確定申告が必要です。サラリーマンの場合でも確定申告が必要になるので、申告を忘れないようにしましょう。

家賃を勝手に自分の口座に入金させる行為はトラブルになる可能性があります。善意で家賃の振り込み先を自分の口座にしても、他の相続人からは家賃を独り占めしたと思われるかもしれません。

遺産分割協議が終わるまで家賃を管理会社に預かってもらう方法もあります。また、別の専用口座を作って管理すると、家賃収入が明確になるので管理がスムーズにおこなえます。

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遺産分割協議終了後は賃貸物件を相続した人の家賃

遺産分割が決定した後の家賃は、賃貸物件を相続した人の家賃になります。ここで注意したいのが「遺産分割が決定した後の家賃」です。

遺産分割が決定する前に相続人全員で分割していた家賃は、賃貸物件を相続した人に戻す必要はありません。

生前の家賃は被相続人、遺産分割中の家賃は各相続人、遺産分割決定後は賃貸物件を相続した人の家賃です。

相続財産に賃貸物件がある場合の注意点

確定申告

近年、相続対策として賃貸物件への不動産投資が増えています。土地や建物を相続すると土地は路線価方式や倍率方式、建物は固定資産税評価額で評価されるため現金を相続するよりも評価額が下がります。

相続財産に賃貸物件があるが故に発生する注意点があります。ここでは相続財産に賃貸物件がある場合の注意点を解説します。

確定申告が必要

相続財産に土地や建物などの賃貸物件がある場合は、確定申告が必要です。被相続人は準確定申告、相続人は確定申告になります。

準確定申告は、被相続人の所得税について申告するもので、相続人が代わって申告をします。

通常の確定申告は翌年の3月15日までが提出期限ですが、準確定申告は相続があったことを知った日(亡くなった日)から4カ月以内なので忘れないように手続きすることが大切です。

賃貸物件の収入は不動産所得として申告します。不動産所得の計算方法は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。「総収入金額」は賃料だけではありません。

地代・家賃・借地権の権利金・返還不要の敷金・共益費として受取る水道代や電気代なども含まれます。必要経費は修繕費・減価償却費・管理会社に支払う管理料、損害保険料などの費用があります。

銀行から借金をしているアパートローンの元金や、自宅の水道光熱費などは経費にはなりません。事業と個人分を混同しないことが大切です。

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預かっている敷金を返す義務がある

賃貸継続中の貸主に相続が発生した場合、大家の地位や所有権は相続人に移ります。賃貸借契約を結ぶ時に、賃借人から敷金を預かることがあります。

賃貸物件を相続する人は、敷金や保証金の返済義務も相続します。入居者が退去する時などには、預かっている敷金を返済することがあります。

相続財産が賃貸物件のみの場合、敷金は自分の財産から支出することになるので賃貸契約書などで敷金の金額を確認しましょう。

相続人が新たな賃貸人となっても、法律的には賃貸借契約を再締結する必要はありません。契約内容や条件は、以前のまま引き継がれます。

しかし、相続後は契約書の賃貸人と新たな賃貸人とが異なるので、念のため賃貸借契約書を結び直した方が安心できます。借主と面識がないかもしれないので、物件を管理している不動産会社に相談し対応してもらいましょう。

ローンの残債も相続する

被相続人が相続対策でアパート経営をしていた場合、ローンが残っていることがあります。このローン残債も相続対象です。

アパートが常に満室の場合は気にならないかもしれませんが、賃貸物件は空室のリスクがあります。空室が増え入居率が下がると、収支バランスが悪くなります。

さらに時代の流れによって老朽化した部屋は修繕が必要になってきます。

ローンの残債がある場合、空室対策や収益性を高めキャッシュフローを安定させることが大切です。アパート経営にはリスクがあります。

賃貸物件を相続したが上手くいかない場合は、不動産売却や更地にして土地活用などを検討しましょう。

不動産を売却する時には、一括査定をしてもらうと建物や土地の資産の価格が具体的にわかり目安になります。

青色申告承認申請書の提出期限に注意

賃貸物件を相続したら、確定申告をする必要があります。確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類あり税金面では「青色申告」が有利です。

青色申告をする場合は「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。

通常、青色申告承認申請書は青色申告の承認を受けようとする年の3月15日までが提出期限です。ただし、相続によって不動産を取得した場合は提出期限が異なるので注意しましょう。

被相続人 相続人 ケース 提出期限
白色申告 青色申告 その年の1月16日以後に業務を承継 業務を承継した日から2カ月以内
青色申告 青色申告 死亡の日がその年の1月1日から8月31日 死亡の日から4カ月以内
青色申告 青色申告 死亡の日がその年の9月1日から10月31日 その年の12月31日
青色申告 青色申告 死亡の日がその年の11月1日から12月31日 翌年2月15日

青色申告で確定申告をすると以下のようなメリットがあります。

メリット 内容
青色申告特別控除 ・正規の簿記(複式簿記)で記帳し事業的規模の場合は65万円控除

*令和2年分以後は55万円の場合あり

・事業的規模でない場合は10万円の控除

青色専従者給与 ・家族従業員への給与を経費にできる
少額減価償却資産の特例 ・30万円未満の減価償却資産を購入した年に一括で全額経費にできる
純損失の繰り越し ・不動産所得の損失額を他の所得と合算してもマイナスになる場合、翌年以後3年間繰り越せる

相続人の遺産独り占めを防ぐ方法

弁護士

賃貸物件の家賃を自分専用の口座に振り込まれるように手続きしたり、遺産を勝手に使い込んだりと財産を独り占めされたらどう対処したらいいのでしょうか。

話し合いで解決ができれば良いですが、解決できないこともあります。ここでは相続人による遺産独り占めを防ぐ方法について解説します。

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遺言書の有無を確認する

遺言書がなくても相続手続きを進めることはできますが、遺言書に書かれた内容は優先事項になります。

遺言書は「〇〇に全財産の3/5を相続させる」や「〇〇にアパートを相続させる」のように遺産分割の指定ができます。遺産分割の協議を始める前に、まず遺言書の有無を確認しましょう。

遺言書があれば、その内容が優先されるので勝手な独り占めを防ぐことができます。

遺言書は5種類ありますが、よく使われる「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」について説明します。

自筆証書遺言

「自筆証書遺言」は全て本人が自筆で作成する遺言書のことで、特別な手続きは不要で費用もかからないので最も利用しやすい方法です。

ただし、封筒に入った自筆証書遺言を発見しても開封してはいけません。加筆や改ざんを疑われてトラブルの原因になるので、家庭裁判所で検認手続きをしましょう。

公正証書遺言

「公正証書遺言」は2人以上の証人の立ち合いの下、公証人が口述筆記する遺言です。原本が公証人役場に保管され、改ざんなどの可能性がないので発見したら開封をしても大丈夫です。

遺言書を作成するのに費用がかかりますが、安心して遺言を残せます。

秘密証書遺言

「秘密証書遺言」は自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的な性質を持っています。自分で用意した遺言書を2人の証人と公証役場に持参し、遺言書の内容を保証してもらいます。

自筆証書遺言とは違い、署名と押印を自分でおこなえば代筆やワープロでの作成も可能です。遺言書は故人が自宅などに保管していることがほとんどなので、まずは自宅を探してみましょう。

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遺言書があっても遺留分を請求できる

遺留分とは一定の範囲の法定相続人に認められる、最低限の権利のことです。遺言書の内容は、原則として法定相続分や相続人の協議の内容よりも優先されます。

しかし、一定の相続人は遺留分を請求できます。仮に遺言書で「愛人の〇〇に全財産を相続する」と書かれていても、一定の相続人は愛人に対して遺留分を請求することが可能です。

遺留分は配偶者、子や孫がいる場合は被相続人の遺産の1/2、親だけの場合は1/3を請求できます。兄弟姉妹や相続放棄をした人は遺留分を請求できません。

これまで不動産等が遺留分滅殺請求の対象になると、その不動産の一部を請求者が取得するのが原則でした。

法改正によって2019年7月1日以後は、遺留分に相当する金銭で支払いが可能になりました。この結果、遺留分滅殺請求による不動産の共有が解消されるでしょう。

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遺産分割調停を起こす

遺産分割調停とは遺産の分割方法について話し合いをしたが、合意されなかった時などに利用できる制度です。遺産分割調停は第三者である調停委員が仲介して話し合いをするので、冷静に話し合うことができます。

個別のケースによってばらつきはありますが、遺産分割調停の平均的な期間は1年弱ほどです。遺産分割調停による合意が難しい時は、遺産分割審判に移行します。

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相続トラブルは弁護士に相談する

「うちは仲が良いから大丈夫」と相続が始まるまではトラブルになるなんて考えていなくても、日頃の不満が爆発してもめることも少なくありません。

相続の結果に満足できれば良いですが、相続人が多くなるとうまくいきません。「遺言書がない」「法定相続人同士が疎遠」「現金が少なく不動産が大半」などの状況になると、相続争いが起きてしまうかもしれません。

遺産相続はさまざまな法律が関わり手続きも必要です。相続問題では「遺産分割が決まらない」「遺留分滅殺請求をしたい」「相続放棄したい」など悩みが発生します。

遺産相続の税金や相続手続きで悩んだ場合は、遺産相続に詳しい弁護士に相談しましょう。

まとめ

相続した賃貸物件の家賃は「生前」「遺産分割協議中」「遺産分割決定後」とタイミングによって受取人が異なります。誰が受取人になるかによって、所得や税金が変わってくるので把握しておくことが大切です。

相続財産の独り占めやトラブルを防ぐには遺言書の作成、相続人同士で満足のいく話し合いができることが理想だといえます。

しかし、遺言書が作成されておらず、話し合いがうまくいかないでトラブルになることも少なくありません。

相続トラブルを回避するためにも、生前からしっかりと話しをすることが大切です。賃貸物件の相続にはさまざまな法律や手続きが必要になるので、悩んだ場合は遺産相続に詳しい弁護士に相談しましょう。

最終更新日:
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