
借地契約を結ぶときには様々な費用がかかります。権利金もその一つです。
しかし、その金額はバラバラで、なかには、「権利金を支払っていない」方もいます。
この記事をご覧のあなたは、「権利金は必ず支払わなければいけないのだろうか」、「どれくらいが相場なのだろうか」などと疑問に感じているのではないでしょうか。
この記事では、借地契約における様々な費用だけでなく、権利金の相場について詳しく解説します。これを読めば、権利金の相場を正しく理解でき、必要以上に支払うようなことは避けられるでしょう。
目次
借地契約における費用
借地契約における費用は主に8種類あって必要なタイミングが異なります。
契約時に必要な費用は、以下のものになります。
(2)保証金(敷金)
(3)権利金
契約期間中に必要な費用は、以下のものです。
(5)更新料
契約期間中に建替えの必要があれば、以下のものを支払う場合があります。
(7)借地条件変更承諾料
第三者への売却や子どもへの譲渡・贈与時には、以下のものを支払います。この支払いは、売主(元々の借地権所有者)が行うことが一般的です。

(1)手付金
契約が成立したことを証明するために支払うお金のことです。
手付金の相場は契約金額の5~10%程度です。
手付金を支払った以上、すでに契約が成立していることを意味します。
このような手付金を支払う理由は、正式な土地の引渡しと代金の支払いに時間差があるからです。
不動産取引は高額で、現金一括で支払う方はほとんどいません。住宅ローンの融資を受けることが多く、この審査は、契約締結後に行われます。
審査には日数がかかりますが、その間に地主が他の方と借地契約を結んでしまう、売却してしまうなどされると大変です。
そのような事態を避けるためにも、手付金を支払うことで契約の意思を明確に示します。
解約手付
手付金には解除権の留保という役割があることも認識されています。
認識の差によるトラブルを避けるために、契約書にはどの種類の手付金か記載しますが、もし「手付金」とのみ記載されている場合は、一般的に「解約手付」です。
これにより、契約の相手方が契約の履行を着手するまでは、買主は手付金を放棄することで、売主(地主)は手付金の2倍の金額を買主に支払うことで、無条件に契約を解除できます。
不動産業界では「手付流しの倍返し」と言われています。ただし、「契約の履行の着手」の判断は複雑で、契約内容やそれまでの経緯などから総合的に判断されます。
そのため、実際には手付金相当額の負担で契約解除できる期日(手付解除期日)を設定することが一般的です。その期日を超えて契約解除する場合には、別途、違約金も請求されることになります。
(2)保証金(敷金)
借地権者に地代の滞納やその他の債務不履行があったときに、保証金を充当するという担保としての意味があります。
そのため、地代の不払いや原状回復の不履行がなければ、契約終了時に、そのまま返還されます。
ただし、保証金の清算は契約終了時が原則のため、契約期間中に地代の滞納があっても、保証金が充当されるわけではありません。
つまり、地主から地代の督促があり、それでも支払わなければ、滞納した地代分をまかなうには十分の保証金を支払っていたとしても、借地契約を解除されてしまいます。
契約解除時に、滞納した地代や賠償金、原状回復に必要な費用を差し引いて保証金が返還されるので注意してください。
(3)権利金
権利金は「借地権」という権利を設定してもらった対価として支払うお金です。
借地権を地主に設定してもらうのではなく、すでに借地権が設定されている土地を購入するときには、その代金が権利金にあたるといえます。
そして、権利金は保証金のような預り金ではないので、一度授受されれば、契約終了時にも返還されません。
ただし、「地代の前払い」としての性質もあるため、地主都合による借地契約の解除であれば一部返還される場合があります。
これについては、後ほど詳しく解説します。ここまでが借地契約を結ぶときに必要な費用です。
(4)地代(賃料)
地代は、地主の土地を使用する対価として支払うお金です。
借地権のうち、賃借権の場合は賃料、地上権の場合は地代と呼ばれますが、どちらの場合でも「地代」と呼ぶことが多いです。
民法では、地代は「当月分を当月末に支払う」と後払いになっています。
しかし、実際には契約で「翌月分を前月末に支払う」という前払いになっていることが多いです。
なかには、半年に1度や1年に1度となっていることもあります。
地代の支払い時期は地主・借地権者どちらも混乱することがあるので、最新の契約書をしっかりと確認することが大切です。
また、地代を支払うときに「これは何月分」と確認しておけば、トラブルを避けられます。
(5)更新料
更新料は、借地契約を更新するときの、更新の対価として支払うお金です。
支払いは法律で定められているわけではなく、契約書に更新料の特約がある場合のみ、支払い義務があります。
そのため、特約がなければ更新料の支払いを地主から請求されても、拒否することができます。
それを理由に契約解除されることもありません。ただし、将来の建替えや第三者への譲渡時にスムーズな承諾を得るためにも、更新料を支払って、地主との関係性を良好にしておく方がいいでしょう。
更新料は更地価格の5%前後が一般的です。

(6)建替え承諾料
建替え承諾料は、借地上の建物の増改築を認めてもらう対価として支払うお金です。
基本的に、借地上の建物は借地人の所有物なので、建築基準法の規定を満たす限り、どのように増改築しても自由です。
ただし、土地の賃貸借契約書に増改築禁止特約があったり、新法借地権で借地契約の更新をしていたりすれば、増改築には地主の承諾が必要になります。
このとき、承諾料が契約書に定められていれば、その金額を支払い、承諾料の定めがなければ、支払い義務はありません。
しかし、地主から建替えの承諾を得られないときには、裁判所に申し立てて、地主の承諾に代わる許可を求めることになります。
この場合の承諾料は更地価格の3~5%になることが一般的です。

(7)借地条件変更承諾料
借地条件変更承諾料は、借地上の建物の構造や用途の変更を認めてもらう対価として支払うお金です。
借地権のように、借地上に建物を建て、所有することを目的として結ぶ土地賃貸借契約の場合、建築可能な建物の種類や構造、規模、用途などに制限をつけています。
そのなかには、木造から鉄筋コンクリート造に構造を変更するような建替えも含まれます。
この場合の承諾料の相場は更地価格の10%程度です。

(8)名義書換料(譲渡承諾料)
名義書換料は、売却や贈与などで借主の名義の変更を認めてもらう対価として支払うお金です。名義変更承諾料・譲渡承諾料とも呼ばれます。
この名義書換料は売主が負担することが多いですが、契約内容によっては買主が負担することもあるので、契約前に注意して確認することが大切です。
名義書換料の相場は借地権価格の5~15%程度です。
第三者への売却だけでなく、子どもへ贈与する場合でも地主の承諾と名義書換料は必要なので注意してください。
地主の承諾なく譲渡した場合は、借地契約の解除事由にあたります。また、相続によって借地権の名義が変わる場合には名義書換料は不要です。
地主も勘違いして名義書換料を請求してくることがあります。そのときには、「相続による取得なので、承諾と名義書換料は不要」ということを伝えれば大丈夫です。

権利金の相場は、更地価格の6~9割
権利金の金額に明確な規定はありません。
貸主である地主と借主である借地権者の合意で決まります。
相場は更地価格にその地域の借地権割合を掛けたもので、更地価格の6~9割です。
借地権割合は国税庁が設定したもので、相続税路線価図に記号で記載されています。対応は下表のとおりです。
記号 | 借地権割合 |
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
たとえば、下図のような表記の場合、数字の横に書かれた「C」が借地権割合です。
参照:国税庁 路線価図
権利金の支払いは法律で定められている訳ではない
権利金の相場についてお伝えしましたが、権利金の支払いは法律で定められているわけではありません。
しかし、一般的には、権利金を支払う慣行がある地域であれば、権利金の支払いは必要です。
もし、そのような地域で権利金を支払うことなく借地権を取得した場合、権利金にあたる金額が借地人に贈与されたとみなされ、贈与税がかかる場合があります。これを権利金の認定課税といいます。
贈与税がかかるかどうかの判断は、地代の支払いがあるかどうかです。
地代の支払いがないか、あっても固定資産税相当額以下の低額であれば、使用貸借契約に近いとして贈与税の課税対象外となります。
そのため、親子間であっても、権利金を支払う慣行がある地域で権利金を支払わず、相場並みの地代の授受を行っている場合には、贈与税がかかってしまうので注意してください。
ただし、権利金の支払いがなかったとしても、「相当の地代」と呼ばれる「年額が更地価格の6%程度の地代」を払っている場合には、贈与とみなされません。
相当の地代は通常の地代よりも高く、本来支払うべき権利金が相当の地代に含まれているとみなされるからです。
親子間での贈与税の課税を避けるためにも以下のことをしましょう。
・通常の地代を受け取るなら権利金も受け取る
・権利金を受け取らず、地代を受け取るなら「相当の地代」を受け取る
そのほか、親が法人として所有している土地を子ども個人に貸す場合も、権利金の授受がなく、地代の支払いがあると権利金の認定課税が行われます。
不動産・借地権に関する税務の取扱いは非常に複雑です。
親子間・親族間で土地の賃貸契約を結ぶ場合、どのような手続きをすることがお互いの利益となるのか、専門の税理士へ相談することをおすすめします。

権利金を支払う慣行があるかどうかは路線図・倍率表で判断
権利金を支払う慣行があるかどうかは、明確な基準があります。財産評価の27「借地権の評価」がその根拠です。
参照: 国税庁
つまり、土地評価で使う路線図に借地権割合を示す記号がない場合や倍率表の借地権割合の欄が「-(ハイフン)」になっている場合は、「権利金を支払う慣行がない」ということになります。
ただし、権利金の支払い慣行がない地域であっても、地主が「権利金」に相当する費用を請求することができないわけではありません。
地主が権利金の支払いを求めてきた場合、支払い義務がないからといって拒否してしまうと、借地契約を結べないということにもなるでしょう。
したがって、借地権を取得するときには、最終的に地主の決定に従うことが原則です。
支払い過ぎた権利金は取り戻すことが難しい
繰り返しになりますが、権利金の支払いも金額も法律では一切定められていません。
どのような金額であっても、地主と借地人との合意で決まります。
つまり、当時は相場以上の権利金であることを知らずに支払ったとしても、その金額で合意したのであれば、取り戻すことはまずできません。
権利金には金額の基準もなく、返還義務もないからです。
権利金が戻ってくる可能性があるのは、地主都合による借地契約の途中解約のときだけです。
地主都合による借地契約の途中解約の場合、一部返還されることもある
権利金には、借地権設定の対価としてだけでなく、地代の前払いという考え方もあります。
そのため、地主側の事情で借地契約が途中解約となった場合、一般的には、その残存期間に対応した金額を返還請求できるとされています。
借地契約を結ぶときでも「権利金」のみの記載では、その意味合いの解釈にずれが生まれて、契約終了時にトラブルになる可能性が高いです。
トラブルを避けるためにも、「権利金」ではなく「設定の対価」や「前払い地代」と明確に権利金の意味合いがわかる形で表し、契約終了時の返還義務の有無や返還する金額の計算方法について明記することが大切です。また、トラブル回避のために、契約書のチェックを弁護士などにお願いしましょう。

まとめ
以上、借地契約における全般的な費用と権利金の相場や支払い・返還義務について詳しく解説してきました。
・借地契約における費用は、契約時・契約期間中・譲渡時で主に8つある
・権利金の相場は、更地価格の6~9割
・権利金の支払いの有無は、その地域の慣行に大きく依存する
・地主都合による途中解約の場合のみ、権利金の一部返還がある
権利金には明確な基準があるわけではありません。
しかし、相場以上の権利金を地主から請求された場合には、そのまま支払うのではなく、一度交渉してみるとよいでしょう。
ただし、借地権の設定時には地主の立場が強いだけでなく、地主は権利金が高い方が嬉しく、借主は低い方が嬉しいというように、お互いの利益は反対です。
そのため、交渉のときには弁護士などと連携している不動産会社へ仲介を依頼することをおすすめします。
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