
建ぺい率・容積率がオーバーしてしまっている、既存不適格物件。
実際に、既存不適格物件を所有している人は
「既存不適格物件ってそもそも何?」
「既存不適格物件をできるだけ高く売却したい!」
といった疑問や悩みがあることでしょう。
この記事では「既存不適格物件を手放したい人」のために、不動産専門家の観点から、あなたの疑問や悩みを解決します。
具体的には
・既存不適格物件の5つの売却方法
・既存不適格物件が「適合」となる可能性があること
など、重要なポイントに絞って解説しています。
この記事を読めば、既存不適格物件でも高く売却できるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
建ぺい率・容積率オーバーの物件は「既存不適格物件」と「違反建築物」
同じ建ぺい率・容積率がオーバーしている物件であっても、そうなった経緯によって2種類に分けられます。それが「既存不適格物件」と「違反建築物」です。
違反建築物・・・法改正など周囲の環境は変更されておらず、違法建築で法令に不適合となっている建築物
そして、現在売却を考えている物件がどちらに該当するかで、とるべき対応が異なります。
分類する基準を解説しますので、あなたの物件がどちらになるのかをご確認ください。
既存不適格物件は「法改正によって現在の法律で定められている基準を満たさなくなった」物件
既存不適格物件は、建築した当時は法律で定められた基準を満たしていたが、法改正などによって現在の法律で定められている基準を満たさなくなった建築物を指します。
具体的には、次のような場合に既存不適格物件となる可能性があります。
・建築後に用途地域の見直しで建ぺい率・容積率の制限が厳しくなった
・建築後に都市計画事業の施行により敷地の一部を収容したことで敷地面積が減少した
このような事情によって建ぺい率・容積率がオーバーした物件を既存不適格物件といいます。既存不適格物件の場合、現状のまま使い続けることには問題ありません。
たとえ、建ぺい率・容積率がオーバーしていたとしても、それを現行の法律に合うように是正する必要はないです。
もちろん、行政からの是正指導の対象にもならないので安心してください。
ただし、建築確認申請が必要なリフォームや増改築をする場合は「家全体を現在の法律に合うように工事する必要」があるため注意が必要です。

違反建築物は「建築した時点で現行の法律で定められた基準を満たしていない」物件
次は違反建築物についてです。違反建築物は、建築した時点で現行の法律で定められた基準を満たしていない物件を指します。
対象となる法律は建築基準法や都市計画法、そのほか各自治体で定められた条例などです。
通常、家を新築・増改築するときは着工前に建築確認申請で違反部分がないかを確認し、工事完了後にも完了検査で同じように検査を受けます。
そのため、本来の手続きを踏んでいれば違反建築物となることはありません。それでも違反建築物が存在しているのは次のようなケースがあるからです。
・確認申請を提出したあとで計画を大きく変更して建築された
・建築確認申請が必要な規模の増改築で申請を行わなかった
実際、平成28年度に新しく見つかった違反事項の件数は1万38件でした。そして、違反建築物は既存不適格物件のようにそのまま使い続けることは認められません。
違反建築物であることがわかれば、行政から違反是正指導が行われます。同じく平成28年度には7,048件の建築物に対して行政指導、命令が行われました。
建ぺい率・容積率オーバーであれば、建築面積・延床面積の縮小工事になります。
また、これらの行政指導で違反部分を現在の法律に適合させるために必要な費用は所有者の負担です。
現在の物件が既存不適格物件か違反建築物かを判別するには、新築時の検査済証や増改築・リフォームを行った場合は検査済証を確認しましょう。
なお、検査済証を紛失していた場合、再発行できません。代わりに役所で台帳記載事項証明書を取得する必要があります。
もしも、検査済証を紛失していたり見当たらない場合は、弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。

既存不適格物件が売れない2つの理由
それでは、既存不適格物件の売却がむずかしい理由を説明します。
既存不適格物件が売却しにくいのは、単に「現在の法令に適合していないから」だけではありません。
法令に適合していない結果が、次の2つのような事態になるからです。
(2)将来の建て替え時に同規模の物件にできない
(1)住宅ローンを組みにくい
不動産を購入するとき、買主は融資を受けることがほとんどです。
しかし、既存不適格物件は住宅ローンの審査が通りにくいという問題があります。
違反建築物のように、絶対に通らないわけではないですが、通常の物件に比べて通りにくいです。
なぜなら、既存不適格物件の担保評価額が低いからです。
銀行などの金融機関は住宅ローンなど融資を実行するとき、対象の不動産を担保に取り抵当権を設定します。
万が一、借主が住宅ローンを返済できなくなったときに抵当権を実行して競売にかけ、できる限りの資金を回収するためです。
既存不適格物件は建築確認申請が必要な規模の工事で、現行の法令に適合させるようにしなければならないといった負担がかかります。
したがって、競売にかけたとしても競落人が現れにくく、金額も低くなりやすいです。売りにくさ、売れたとしても価格の安さがあることから、既存不適格物件の担保評価額は低くなっています。
つまり、既存不適格物件に対して融資を実行することは、金融機関にとってもリスクが大きい取引です。
そのため、金融機関によっては、そもそも既存不適格物件は住宅ローンの対象外としているところもあります。
また、既存不適格物件を住宅ローンの対象としているところでも、建ぺい率・容積率の超過率が20%を超えていると審査が通らない場合があるので注意してください。
超過率が10%~20%程度であれば比較的住宅ローンの審査は通りやすいです。売却活動を始める前に、どれくらい建ぺい率・容積率をオーバーしているかも把握しておきましょう。

(2)将来の建て替え時に同規模の物件にできない
既存不適格物件をそのまま使い続けるのであれば、建ぺい率・容積率はオーバーしたままでも構いません。
しかし、建物が老朽化して将来建て替えるときには、建築確認申請が必要になります。このとき基準となる法令は、新築当時のものではなく現行のものです。
つまり、既存不適格物件であれば、現行の法令に適合するような建ぺい率・容積率で建て替える必要があります。
そのため、現在の物件と同じ規模の物件は建てられず、必ず狭くなるということです。
通常の物件に比べて制限が厳しいため、売れにくくなっています。
既存不適格物件の5つの売却方法
売却が難しい既存不適格物件ですが、次の5つの方法で売却できるようになるかもしれません。
(2)隣地を買い取ったあとで売却する
(3)減築リフォームをして売却する
(4)古屋付き土地として売却する
(5)買取業者へ売却する
(1)通常より広い点をアピールする
建ぺい率・容積率がオーバーしていることを逆手に取ったアピールです。既存不適格物件は違反建築物ではないので、行政による是正命令の対象ではありません。
増改築したり、建築確認申請が必要な大規模な修繕・模様替えをしたりしない限り、そのまま住み続けられます。
そして、建ぺい率や容積率が規定より超えているということは、本来建築可能な物件よりも広いということです。
そのため、物件の広さを重視している方であれば、目に留まって購入を前向きに検討してくれる可能性があります。
(2)隣地を買い取ったあとで売却する
繰り返しになりますが、建ぺい率、容積率の定義は以下のようになっています。
・容積率:敷地面積に対する延床面積の割合
建築面積というのは、建物を真上からみた場合の水平投影面積のことを指します。
しかし、建ぺい率が10%オーバーしていて66平方メートルだとします。このとき、隣地から10平方メートル買い取ることができれば、敷地面積は110平方メートルです。
つまり、建築面積が66平方メートルのまま現行法に適合することとなります。
建ぺい率・容積率はどちらも敷地面積に対する割合なので、このように隣地を買い取って敷地面積を広げられれば、既存不適格物件ではありません。
通常の不動産と同じ扱いとなるので売却しやすくなります。隣地に余裕がありそうならば、隣地買い取りの相談をしてみてもいいでしょう。
直接の相談が難しいときには、仲介業者に相談して交渉を任せることもおすすめです。隣地を買い取ることができれば、売却価格も上がり、購入希望者も探しやすくなります。
(3)減築リフォームする
リフォームといえば、増築が一般的ですが減築はその逆です。現在の建物を狭くするリフォームのことをいい、主に床面積を減らします。
たとえば、2階建ての床の一部を撤去して、吹き抜けにするなどといった工事です。延床面積が減少するので、容積率がオーバーしている場合に有効なリフォームです。
まれに建物の一部を丸ごと撤去して、建築面積を減少させることもあるので、建ぺい率がオーバーしているときにも減築リフォームできます。
減築によって現行の建ぺい率・容積率の制限内になれば、売却しやすくなります。
(4)古家付き土地として売る
対象の既存不適格物件が木造で、築年数が20年以上といった古くかなり老朽化している場合には、「古屋付き土地」として売却する方法もあります。
古屋付き土地というのは、経済的な価値がほとんどない住宅(古屋)が建っている土地のことです。
そのため、「中古物件」ではなく「土地」を購入する意向が強い方を探せます。
また、なかには古屋でも建築確認申請が不要な範囲でリフォームをおこなって住もうとされる方もいます。
買主がどちらの意向にせよ、通常の中古物件として売却活動するよりも需要が明確になるので売却しやすいです。
古屋付き土地として売却するときには、建物の解体費用は買主負担がほとんどで、売主に負担がない点もメリットです。
ただし、古い土地は境界確定があいまいになっていることが多いので、あらかじめ土地家屋調査士という専門家に境界確定測量を依頼して、隣地との境界を確定しておく必要があります。
(5)買取業者を利用する
仲介業者による売却活動で買い手がなかなか見つからなかったり、できるだけ早く売却して現金化したかったりする場合には、買取業者へ売却するという方法もあります。
買取業者は現金一括で物件を買い取るので、既存不適格物件が売れにくい理由の1つである「融資を受けにくい」は関係ありません。
ただし、買取業者の買取金額は実勢価格よりも低いです。買取業者に売却した場合には、売主の瑕疵担保責任は免責となる点はメリットといえます。
買取業者への売却は、急ぎで売却したいときや売却後の買主とのトラブルを避けたいときにはおすすめの方法です。
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建ぺい率・容積率オーバー物件でも再調査で「適合」となる可能性がある
「昔、建ぺい率がオーバーしていると言われたことがある」「相続時、親戚から建ぺい率オーバーの家と言われた」このようなことから、対象の不動産を既存不適格物件だと考えている場合は、再調査をおすすめします。
なぜなら、再調査の結果、現行の法令に「適合」している可能性があるからです。その理由は次の4つです。
(2)建ぺい率に算入しなくていい部分を登記していた
(3)法定床面積と混同していた
(4)用途地域等の見直しがあった
(1)土地測量時にズレがあった
登記した時期が昔の場合、測量に誤差があって実際よりも狭くなっていることもあります。その原因は「測量技術の差」です。
現在の方が格段に測量の精密さは上がっています。
そのため、再調査することによって土地面積が広くなる可能性があります。
ただし、大幅に広くなることは期待できません。目安としては建ぺい率の超過率が3%程度です。
それくらいの範囲であれば、測量時の誤差の可能性もあり、今の技術で正確に測量した結果、「適合」となることは十分にありえます。
そこで、土地を測量した時期が昔だった場合は、再度、土地家屋調査士や測量士に依頼するようにしてください。売却を前提に測量するのであれば、不動産会社に紹介してもらうこともおすすめです。
(2)建ぺい率に算入しなくていい部分を登記していた
物件を調査していると稀にですが、建築面積に含める必要がない箇所を登記していることがあります。
それぞれ条件はありますが、出窓や軒、庇、バルコニーなどです。
たとえば、出窓は以下をすべて満たしている場合に、建築面積から除外できます。
・壁から出ている部分が50cm以下であること
・部屋の天井より低いこと

(3)法定床面積と混同していた
容積率を算出するときに使われる床面積は「容積対象床面積」と呼ばれます。これは建築確認申請書に記載された床面積とは異なるものです。
なぜなら、法定床面積に算入されても、容積率を算出するときに用いられる延床面積から除外される部分があるからです。
たとえば、自動車車庫です。自動車車庫の面積が延床面積の5分の1以内であれば、容積対象床面積には算入されません。
そのほかにも不算入となるものはあります。
再度、物件調査することで、本来は不算入だったところまで容積対象床面積に含めていたことが判明するかもしれません。そうなれば、容積率は下がり、「適合」となる可能性があります。
(4)用途地域等の見直しがあった
建ぺい率、容積率は用途地域ごとに上限が定められています。
しかし、これらの上限は度々見直しが行われており、緩和されることもあります。
たとえば、2019年6月25日から施行された改正建築基準法です。
今まで防火地域でのみ、延焼防止機能の高い建築物については建蔽率が10%緩和されていましたが、その対象に準防火地域も含まれるようになりました。
これによって建ぺい率が上限内となり、適合となる可能性があります。
まとめ
以上、建ぺい率・容積率オーバーの物件が売れにくい理由、売却方法と再調査の可能性ついて解説してきました。
・建ぺい率・容積率オーバー物件は、既存不適格物件と違反建築物の2種類
・既存不適格物件は、住宅ローンの審査が厳しいため売れにくい
・建ぺい率・容積率オーバー物件を売るために、隣地買取りや減築リフォームなどをする
・測量技術の向上や用途地域の見直しなどにより、再調査で「適合」となる可能性がある
建ぺい率・容積率オーバーの物件は、買主を探すことが難しいです。
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