親から子へ土地の名義変更を行う3つのケース
親から子に土地の名義変更を行うケースは、生前贈与と相続、売買の3つです。
親から子に土地の名義変更を行うケース
名義変更の原因 |
対価 |
税金 |
生前贈与 |
無償 |
子に贈与税と不動産取得税 |
相続 |
無償 |
子に相続税 |
売買 |
有償 |
親に所得税・住民税
子に不動産取得税 |
親子間で生じる贈与や相続、売買があったことは、親子が知っていて当然です。しかし、第三者にとっては親子間で贈与や売買などがあった事実はわかりません。
贈与や売買があったのに登記がないなど、誰が土地の所有者か不明な状況ではトラブルが起こってしまいます。そこで、土地の所有者が誰であるかなどを一般に公開する仕組みが登記制度です。
登記は、国が管理する登記簿に権利関係等を登録することにより、皆さまの大切な権利や財産を守るとともに、登記簿の内容を公開することなどを通じて取引の安全や円滑に資することを目的とする制度です。
引用元 登記の申請を御検討されている皆様へ(法務局)
したがって、生前贈与や相続、売買で土地の所有者が親から子に変わったら、登記上の所有者を変更する名義変更の手続きをします。
本章では、生前贈与や相続、売買といった3つのケースについて、名義変更の概要や生じることのある税金を解説します。
1. 親が生きているうちに名義変更する場合は「生前贈与」にあたる
親の存命中に、子に無償で土地をわたすことを生前贈与といいます。
相続を見据えて、特定の子に土地をわたしたいと考えているときに有効な方法が生前贈与です。相続ではなく生前贈与をすることで、法定相続分や遺産分割協議など他の相続人の影響を受けることなく、親の意思で土地を特定の子にわたせます。
もっとも、親について相続が発生したとき、土地の贈与が遺留分を侵害するものであれば遺留分侵害額請求権の問題は生じます。
遺留分とは、兄弟姉妹を除く相続人に保障された最低限の相続割合です。親の生前贈与や遺言で子の遺留分が侵害されると、子は他の相続人などに遺留分侵害額請求ができます。
しかし、他の相続人が遺留分侵害額請求権を行使したとしても、土地の贈与自体が覆されるわけではありません。遺留分侵害額請求権は、生前贈与や遺言で他の相続人のものとなった財産を取り戻す権利ではなく、侵害された金額を請求できる権利だからです。侵害額相当の金銭は請求できますが、土地を返せという請求はできません。
生前贈与を受けた子は、登記上の所有者を変更する名義変更手続きとして、法務局に所有権移転登記の申請をします。贈与登記とも呼ばれる手続きです。
また、生前贈与を受けた子は贈与で土地という財産を取得するため、贈与税と不動産取得税を納付しなければならないケースもあります。
贈与税については、後述の「贈与税(生前贈与の場合に受贈者に課される)」で詳しく解説しています。
生前贈与は、贈与を受けた子に贈与税の納付義務が生じる場合があるものの、ほぼ確実に土地の名義を特定の子に移転できる方法です。
2. 親が亡くなってから名義変更する場合は「相続」にあたる
相続とは、死亡等(失踪宣告・認定死亡なども含む)により、権利義務が相続人に承継することです。土地を所有していた親が亡くなり、子にその所有権が移転することも相続にあたります。
法律上、相続人が2人以上いると、土地は相続人間の共有(遺産共有)状態です。遺産共有のままにすることもできますが、相続人全員で、土地をどのように分けるかを話し合って決めることもできます(遺産分割協議)。
また、遺言で特定の子1人に土地の所有権を移転させるといったことも可能です(特定財産承継遺言)。具体的には、遺言書に「別紙1(土地の登記事項証明書)の土地を、子A(◯年◯月◯日生)に相続させる(遺贈する)」のように記載します。
特定財産承継遺言があると、法定相続分や遺産分割協議とは関係なく、特定の子に土地の所有権を移転できます。
相続人が2人以上いる場合の土地(遺産)の分け方について、以下の表にまとめました。
相続後の土地の分け方
方法 |
土地など遺産の所有権 |
法定相続 |
法律で決めた割合で共有する |
遺言(遺贈) |
遺言の内容のとおりに分ける |
遺産分割
(協議・調停・審判) |
決まった内容のとおりに分ける |
子が親の相続や遺贈で土地の所有権を取得したら、登記上の所有者を変更する名義変更の手続きとして、所有権移転登記の申請をしなければなりません。一般に相続登記と呼ばれる手続きです。
売買や贈与を原因とする登記と異なり、相続登記は法律上義務とされているため特に注意してください。
(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
引用元 不動産登記法第76条の2第1項
相続登記の期限や過料、しない場合のデメリットを簡単にまとめると以下のとおりです。
相続登記の概要
期限 |
相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内 |
過料 |
10万円以下 |
しない場合のデメリット |
・相続した不動産の売却が極めて困難
・所有権を第三者に主張できない |
また、相続した土地などの価額の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると、相続税の納税義務が生じる可能性があります。
土地などの不動産を相続する流れや注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。相続に不安がある方は、ぜひあわせてご覧ください。
3. 親子間で土地を「売買」した場合
親子間で売買契約を締結して、土地の売買をする場合もあります。贈与が無償であるのに対し、売買は有償です。
売買でも、法律上の義務はないものの、贈与と同様に通常は所有権移転登記の申請をします。
一般的な不動産取引の注意点と共通しますが、親が住宅ローンを完済しておらず、抵当権が残っている土地には注意しなければなりません。売却後も親が住宅ローンを完済しなければ抵当権が残り、その後も親が住宅ローンを支払わなければ子が土地を失う可能性があります。
名義変更後に子が困らないためには、売買の前に住宅ローンを完済するか、売買代金で完済するといった親の対応が必要です。
また、親子間での売買では住宅ローンの審査が通常より通りにくいため注意してください。
しかし、住宅ローンの審査が厳しいからといって相場よりも著しく低い売買代金にすると、時価との差額について贈与を受けたとみなされ、子に贈与税の納税義務が生じる可能性があります。(相続税法第7条)
売主である親には譲渡所得が発生し、所得税や住民税の負担が生じる場合があります。子にかかるのは不動産取得税です。
以上のとおり、親子間の土地売買は抵当権や住宅ローン、売買代金の額、親に生じることがある譲渡所得税など多くの注意点があります。
親族間で不動産売却する際の注意点は以下の記事で詳しく解説しているので、検討している方はぜひご覧ください。
土地の名義変更をする際の「生前贈与」「相続」「売買」それぞれの手順
親から子に土地の所有権が移転した際の名義変更について、贈与・相続・売買といった3つの原因ごとに手順を解説します。
- 生前贈与による名義変更の手順
- 相続による名義変更の手順
- 売買による名義変更の手順
なお、本記事で紹介する手順は書面申請の場合です。オンラインでの登記申請(電子申請)も可能な場合があります。
生前贈与による名義変更の手順
生前贈与による名義変更の手順は、大まかに以下のとおりです。
- 贈与登記に必要な書類を集める
- 登記申請書を作成し、管轄の法務局へ登記申請書を提出する
具体的に解説します。
手順① 贈与登記に必要な書類を集める
贈与登記の必要書類は、以下のとおりです。
贈与登記の必要書類
必要書類 |
取得方法 |
親の登記識別情報通知書
(親の登記済証) |
親名義となった際に親が受け取っている |
贈与契約書
(贈与、日付、当事者、対象物件がわかるもの)
|
法務局の記載例などを参考に親子間で作成する |
作成後3月以内の親の印鑑証明書 |
市区町村長に交付を請求する
(コンビニ交付が可能な市区町村もある) |
個人番号の記載のない子の住民票の写し |
市区町村長に交付を請求する
(コンビニ交付が可能な市区町村もある) |
(登記申請の委任状) |
登記を委任する場合に委任者が作成する |
贈与登記は原則として親子2人が共同して申請しますが、委任すれば、どちらか一方や司法書士に任せることができます。登記申請を委任した際は、法務局に委任状の提出も必要です。
登記識別情報通知書または登記済証は、土地の登記上の名義を親にした際に、法務局の登記官から親に通知されています。もし紛失した場合、親が本人限定受取郵便を受け取り、2週間以内に間違いない旨の申出をするなどの対応をとらなければなりません。
印鑑証明書と住民票の写しは、市区町村の役所で最短即日に交付を受けられます。したがって、準備に時間がかかる可能性がある書類は贈与契約書といえるでしょう。
贈与契約書には、以下の情報が必要です。法務局のWebサイトでは贈与契約書の記載例も掲載されているので、記載例を参考にしながら作成しましょう。
- 贈与契約が成立したこと(存在すること)
- その契約の成立日
- 贈与者(親)と受贈者(子)の記名押印または署名
- 贈与者(親)と受贈者(子)の住所
- 贈与契約をした土地の所在、地番、地目、地積
なお、書類ではありませんが、登記申請にあたり、親の実印(印鑑登録したもの)と子の印鑑(認印でよい)も必要です。また、後述する登録免許税を計算するために、土地の固定資産課税明細書(納税通知書)も準備しておきます。
手順② 登記申請書を作成し、管轄の法務局へ登記申請書を提出する
必要書類を準備できたら、登記申請書を作成し、管轄の法務局(登記所)に必要書類とあわせて登記申請書を提出します。
登記申請書の様式(ひな型)は法務局がWeb上に掲載しているため、印刷などをして作成を進めると便利です。パソコンのワープロソフト(ドキュメントソフト)で申請書を作成することもできます。
法務局の記載例には、登記申請書に限らず、贈与契約書や委任状の記載例もあるので参考にしてください。
参照:不動産登記の申請書様式について(法務局)
登記申請書の提出先は不動産の所在地を管轄する法務局で、以下のWebページで確認可能です。
参照:管轄のご案内(法務局)
登記申請から登記の完了までは、内容によるものの、数日から数週間の時間がかかります。
相続による名義変更の手順
続いて、相続による名義変更の手順を紹介します。
- 遺言書または遺産分割協議で相続人を決定する
- 相続登記に必要な書類を集める
- 登記申請書を作成し、管轄の法務局へ登記申請書を提出
大まかな手順は贈与登記と同様ですが、相続登記は申請が義務化されているなど特有の注意点もあるので注意してください。
手順① 遺言書または遺産分割協議で相続人を決定する
親について相続が開始すると(親が亡くなると)、法律上、親が有していた土地の所有権は相続人に承継します。具体的には、遺言や遺産分割協議があればそのとおりに、なければ法定相続分のとおりに土地などの遺産の所有権を相続人で分け合う形です。
遺言がなく、遺産分割協議がまとまらなくても、法定相続は生じているため相続登記をしなければなりません。
なお、遺産分割協議で土地をどのように分けるか決める際は、共有ではなく単独名義にすることをおすすめします。共有不動産の売却や賃貸といった利活用には、共有者の同意が必要だからです。
他の相続人(共有者)と意見が合わなければ、売却や賃貸などの活用は困難になります。
手順② 相続登記に必要な書類を集める
土地の所有権の分け方を決めつつ、相続登記に必要な書類を集めます。相続登記に必要な書類は、所有権の移転原因(法定相続、遺言、遺産分割)に応じて以下のとおりです。
相続登記の必要書類
書類 |
法定相続 |
遺言
(相続人に対する遺贈) |
遺産分割 |
親の出生から死亡までの戸籍の証明書 |
◯ |
△
※親の死亡日の記載のある証明書のみで足りる |
◯ |
親の死亡日以後の証明日のある相続人全員の戸籍の証明書 |
◯ |
△
※受遺者である子のみの証明書で足りる |
◯ |
親の本籍と登記上の住所と同一の住所が記載されている住民票の除票の写しまたは戸籍の附票の写し |
△ |
△ |
△ |
遺言書 |
- |
◯ |
- |
相続人全員が実印で押印した遺産分割協議書 |
- |
- |
◯ |
遺産分割協議書に押印した印鑑についての相続人全員の印鑑証明書 |
- |
- |
◯ |
相続人全員の個人番号の記載のない住民票の写し |
◯ |
△
※受遺者である子のものだけで足りる |
◯ |
親の出生から死亡までの戸籍の証明書は、親に相続が発生したことと、親の親族関係を確認して相続人を確定するために必要です。遺言の場合、相続人と関わりなく遺言と死亡により土地の所有権が移転するため、死亡日の記載のある証明書のみで足ります。
場合によっては複数の市区町村で戸籍の証明書を取得しなければならず、費用と時間がかかる可能性があります。相続人が多い場合も、戸籍の証明書や印鑑証明書について同様です。
そのため、相続登記の必要書類は、売買や贈与と比べて特に早めの収集開始が大切だといえます。
なお、住民票の除票または戸籍の附票の写しは、同姓同名の他人ではなく、本当に登記簿上の所有者(親)に相続が発生したのかを確認するための書類です。戸籍の証明書で相続が発生した人(親)の本籍地と、登記上の住所とが一致していれば必要ありません。
手順③ 登記申請書を作成し、管轄の法務局へ登記申請書を提出
必要書類を準備できたら、登記申請書を作成し、管轄の法務局(登記所)に必要書類とあわせて登記申請書を提出します。
参照:管轄のご案内(法務局)
相続登記の申請書の様式(ひな型)も法務局がウェブ上に掲載しているため、印刷して作成を進めると便利です。
参照:不動産登記の申請書様式について(法務局)
参照:不動産の所有者が亡くなった(法務局)
売買による名義変更の手順
続いて、売買による名義変更の手順を紹介します。
- 売買契約を締結(売買契約書を作成)する
- 登記申請に必要な書類を集める
- 管轄の法務局へ登記申請書を提出する
基本的には贈与による名義変更の手順と同じです。
手順① 売買契約を締結(売買契約書を作成)する
まずは、所有権が移転する原因である売買契約を締結します。
売買契約は口約束でも成立しますが、トラブルを避けるために親子間でも売買契約書を作成しましょう。売買契約書に記載すべき事項は、以下のとおりです。
- 契約成立日
- 親と子の氏名、住所
- 対象となる土地の所在、地番、地目、地積
- 土地の売買代金
- 引渡しの時期
- 所有権の移転の時期(売買代金の受領時など)
- 税金の精算の内容
- 契約解除について
仮に、親や子が「売買した事実はない」や「売買代金が違う」、「固定資産税の精算は必要がない」などと主張しても、売買契約書があれば当初約束した内容を確認して解決を図れます。
なお、もし所有権の移転の時期が売買代金の受領時であれば、登記申請時に売買代金の領収書などを添付しなければなりません。
手順② 登記申請に必要な書類を集める
売買による所有権移転登記の必要書類は、以下のとおりです。
売買登記の必要書類
必要書類 |
取得方法 |
親の登記識別情報通知書
(親の登記済証) |
(登記官) |
売買契約書
(売買、日付、当事者、対象物件がわかるもの) |
親子間で作成する |
作成後3月以内の親の印鑑証明書 |
市区町村長に交付を請求する
(コンビニ交付が可能な市区町村もある) |
個人番号の記載のない子の住民票の写し |
市区町村長に交付を請求する
(コンビニ交付が可能な市区町村もある) |
(登記申請の委任状) |
登記を委任する場合に委任者が作成する |
贈与による所有権移転登記の場合とほとんど同じで、準備に時間がかかる可能性があるものは売買契約書のみといえます。
登記申請を委任した際は委任状が必要となり、登録免許税の計算のためには土地の固定資産課税明細書(納税通知書)も必要です。また、書類ではありませんが、親の実印(印鑑登録したもの)と子の印鑑(認印でよい)も準備しましょう。
手順③ 管轄の法務局へ登記申請書を提出する
必要書類が揃ったら、管轄の法務局に登記申請書とともに提出します。
贈与登記や後述する抵当権抹消登記でも同様ですが、もし登記する時点で親の登記上の住所や氏名に変更がある場合は、変更登記の申請が必要です。親が登記した後から現在に至るまでに、引っ越しや結婚、離婚などがあった場合に必要となります。
また、親が住宅ローンを完済していなければ土地に抵当権(担保)が設定されているため、親は抵当権抹消登記の申請をしなければなりません。通常、親が売買代金を受け取るとすぐに住宅ローンを完済し、金融機関から抵当権抹消に必要な書類を受け取って登記申請をします。
登記申請の種類と概要
登記申請 |
概要 |
住所変更の登記
氏名変更の登記
|
登記上の所有者の氏名や住所を現在のものに変更する登記 |
抵当権抹消登記 |
抵当権(担保)を抹消する登記 |
所有権移転登記 |
登記上の所有者を変更する登記 |
親の氏名や住所が登記した時から変わらず、土地に抵当権が設定されていないときは、所有権移転登記の申請だけで足ります。
「生前贈与」「相続」「売買」で土地の名義変更をする際に発生する税金
生前贈与や相続、売買で親から子に土地の名義変更をすると、以下の税金が発生することがあります。
土地の名義変更でかかる税金
税金 |
概要 |
負担者
(納税義務者)
|
贈与税 |
財産をもらうとかかる税金 |
財産をもらった人
(子) |
不動産取得税 |
不動産を取得するとかかる税金 |
不動産を取得した人
(子) |
相続税 |
相続や遺贈で財産を取得するとかかる税金 |
財産を取得した人
(子) |
登録免許税 |
登記にかかる税金 |
住所変更登記は親
抵当権抹消登記は親と金融機関
所有権移転登記は連帯 |
所得税・住民税
(譲渡所得税) |
資産を売るとかかる税金 |
資産を売った人
(親)
|
負担者については税法上の扱いである納税義務者を示しています。実際の負担者は、契約内容によるものの住所変更登記と抵当権抹消登記は親、所有権移転登記は子が負担するのが一般的です。
税法上、抵当権抹消登記、所有権移転登記については登記を受ける者が連帯して納付義務を負います。したがって、親子間で所有権移転登記の登録免許税を親が負担すると契約しても、国との関係では子だけが納付義務を免れることはできません。
各税金について、解説します。
贈与税(生前贈与の場合に受贈者に課される)
贈与税は、土地などの財産をもらった場合に課される税金です。
贈与税には、110万円の基礎控除があります。そのため、1年間でもらった財産の合計額が110万円以下の場合、基礎控除後の課税価格は0円となり贈与税はかかりません。税務署に申告書を提出する必要もありません。
贈与税の計算において土地の価格がいくらかは、土地の形状や利用状況などにもよりますが、国税庁のWebサイトで確認できる路線価に土地の面積(地積)を乗じて求める方法が一般的です(路線価方式)。
贈与された土地の価格が110万円を超える場合でも、110万円を控除した残額に対して、税率を適用して贈与税を計算します。なお、贈与を受けた年の1月1日時点で子が18歳以上の場合、以下の表のうち特例贈与財産として贈与税を計算します。
贈与税の計算式
基礎控除後の課税価格 |
一般贈与財産 |
特例贈与財産 |
200万円以下 |
×10% |
×10% |
200万円超え300万円以下 |
×15%-10万円 |
×15%-10万円 |
300万円超え400万円以下 |
×20%-25万円 |
×15%-10万円 |
400万円超え600万円以下 |
×30%-65万円 |
×20%-30万円 |
600万円超え1,000万円以下 |
×40%-125万円 |
×30%-90万円 |
1,000万円超え1,500万円以下 |
×45%-175万円 |
×40%-190万円 |
1,500万円超え3,000万円以下 |
×50%-250万円 |
×45%-265万円 |
3,000万円超え4,500万円以下 |
×55%-400万円 |
×50%-415万円 |
4,500万円超え |
×55%-400万円 |
×55%-640万円 |
仮に土地の価格が1,000万円の場合、基礎控除額110万円を控除した課税価格は890万円です。18歳以上の子が親から土地(特例贈与財産)の贈与を受けたとき、贈与税の額は177万円です。
18歳未満の子が親から土地(一般贈与財産)の贈与を受けたとすると、贈与税の額は231万円となります。
不動産取得税(生前贈与/売買の場合に不動産取得者に課される)
不動産取得税とは、不動産を取得するとかかる税金です。
土地の売買や贈与で土地を取得したときは、子は不動産取得税の納税義務を負う可能性があります。相続や遺言(遺贈)による取得は、非課税です。
第七十三条の七 道府県は、次に掲げる不動産の取得に対しては、不動産取得税を課することができない。
一 相続(包括遺贈及び被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む。)による不動産の取得
引用元 地方税法第73条の7第1項第1号
取得原因ごとの贈与税の課税/非課税
取得原因 |
課税/非課税 |
売買 |
課税される |
贈与 |
課税される |
相続 |
非課税 |
相続人に対する遺贈(遺言) |
非課税 |
土地の取得に対する不動産取得税の計算式は、以下のとおりです。
土地の価格(固定資産税評価額)×特例50%×特例税率3%
※2027年3月31日までの特例を適用した計算式。特例は延長の可能性あり。
土地の価格(固定資産税評価額)は、納税通知書と同時に送られる課税明細書の価格欄に記載されています。課税標準額の欄に記載された金額ではないため注意してください。
土地の固定資産税評価額が1,000万円の場合、不動産取得税の金額は15万円です。
土地の価格(固定資産税評価額)1,000万円×特例50%×特例税率3%=15万円
※2027年3月31日までの特例を適用した計算式。特例は延長の可能性あり。
なお、親から売買や贈与で取得した土地の上に、3年以内に一定の住宅を新築する場合、不動産取得税の減額措置が適用される可能性があります。
親から取得した土地にマイホームを建てる予定がある方は、お住まいの市町村(東京23区は東京都)に詳細をご確認ください。
相続税(相続の場合に相続人に課される)
相続税とは、相続や遺贈(遺言)で財産を取得するとかかる税金です。親の土地を相続や遺言で取得したとき、子に相続税がかかる場合があります。
相続税の計算は、おおむね以下の流れです。
- 課税価格の合計額=(相続又は遺贈によって取得した財産の価額+相続時精算課税適用財産の価額-債務・葬式費用の金額)+相続開始前3年以内の贈与財産の価額
- 課税遺産総額=各人の課税価格の合計額-遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
- 相続税の総額=各人の算出税額(課税遺産総額×各人の法定相続分×税率10%~55%)の合計額
- 各人の相続税額=相続税の総額×(各人の課税価格÷課税価格の合計額)
- 各人の納付税額=各人の相続税額-各種税額控除額
相続税の総額を求めるにあたり、算出税額は、課税遺産総額×各人の法定相続分ごとに以下の表で計算します。
相続税の速算表
各法定相続人の法定相続分に応ずる取得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000万円以下 |
10% |
- |
3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
1億円以下 |
30% |
700万円 |
2億円以下 |
40% |
1,700万円 |
3億円以下 |
45% |
2,700万円 |
6億円以下 |
50% |
4,200万円 |
6億円超 |
55% |
7,200万円 |
例えば、相続財産が評価額6,000万円の土地のみで生前贈与や債務・葬式費用を考慮しない場合、課税価格の合計額は6,000万円です。法定相続人が子1人のみとすると、課税遺産総額は以下のとおり2,400万円となります。
課税遺産総額2,400万円=課税価格の合計額6,000万円-遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×1人)
子の算出税額は、上記の速算表を適用した結果、310万円です。
子の算出税額310万円=課税遺産総額2,400万円×税率15%-控除額50万円
今回のシミュレーションでは他に相続人がいないため、子の算出税額310万円がそのまま相続税の総額、各人の相続税額となります。
相続税の計算は非常に複雑ですが、必ずしもすべての場合に申告や納税をする必要はありません。
- 相続財産が債務超過(オーバーローン)であれば、相続税の申告・納税は不要
- 相続財産(純資産額)が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」以下であれば、相続税の申告・納税は不要
相続税の申告・納税が必要な場合、親が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納付が必要です。無申告の場合や遅れた場合には加算税や延滞税が発生するため、申告が必要な場合は早めに税理士に相談するなどの対応を進めましょう。
登録免許税(生前贈与/相続/売買の場合に、不動産の登記を受ける人に課される)
登録免許税とは、登記などにかかる税金です。親から子に土地の名義を変更する際に考えられる登記について、登録免許税の額(税率)と一般的な負担者をまとめました。
登録免許税の額(税率)と負担者
登記申請 |
計算式 |
一般的な負担者 |
住所変更の登記
氏名変更の登記 |
不動産の個数×1,000円 |
親 |
抵当権抹消登記 |
不動産の個数×1,000円 |
親 |
所有権移転登記
(売買) |
不動産の価額×1.5%
※税率1.5%は2026年3月31日まで。延長の可能性あり。 |
子 |
所有権移転登記
(贈与) |
不動産の価額×2% |
子 |
所有権移転登記
(相続) |
不動産の価額×0.4% |
子 |
表中の負担者は一般的に親と子のどちらが負担するかをわかりやすく示したものであり、登録免許税法上の納税義務者とは必ずしも一致しません。また、親子での折半や、一般的には親が負担するものを子が負担するといった対応も問題ありません。
土地だけでなく建物も対象となる場合、不動産の個数は合計2個(土地1個、建物1個)です。
不動産の価額は、市町村(東京23区は東京都)から送られる固定資産課税明細書(納税通知書)の価格欄で確認できます。
登録免許税は原則として、税務署や銀行、郵便局で登録免許税相当額を支払って納付します。受け取った領収証書は申請書に直接貼り付けず、申請書とともに綴った白紙(貼付台紙)に貼付け、契印をしてください。
税額が3万円以下の場合、郵便局などで支払って受け取った収入印紙を貼付ける方法でも問題ありません。
譲渡所得税と住民税(売買によって利益を得た売主に課される)
譲渡所得税とは、一般に、不動産を売って得た所得(税法上の利益)に対して課される所得税と住民税を指します。
土地を売ったときの譲渡所得の計算式は、以下のとおりです。
譲渡所得の金額=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
具体的には、子から受け取った売却代金から土地購入時の代金や手数料、登記費用、不動産取得税、印紙税、測量費などの取得費を控除し、さらに売ったときの仲介手数料や負担した印紙税、建物を取壊した場合の費用などの譲渡費用を控除した金額が譲渡所得となります。
課税譲渡所得に対して所得税や住民税の税率が適用されますが、売った年の1月1日時点で土地の所有期間が5年を超えるかどうかで税率が約2倍異なります。
譲渡所得税の税率
所得 |
所有期間 |
税率 |
長期譲渡所得 |
5年超え |
20.315%
・所得税15%
・復興特別所得税0.315%
・住民税5% |
短期譲渡所得 |
5年以内 |
39.63%
・所得税30%
・復興特別所得税0.63%
・住民税9% |
土地の所有期間が5年以内だと税率が高くなるため、事情が許す限り、子に譲渡する時期を1年遅らせるといった対応も有効です。
節税対策として活用できる制度
土地という財産が親から子に移転することで、贈与税や相続税、不動産取得税、登録免許税、所得税、住民税といった多くの税金の課税対象になることを紹介しました。
そこで、節税対策として活用できる以下の制度を解説します。
- 相続時精算課税制度(贈与税の節税につながる)
- 暦年贈与制度(贈与税の節税につながる)
- 小規模宅地等の特例(相続税の節税につながる)
ぜひご自身のケースに当てはめて、活用できるものはないか検討してください。
相続時精算課税制度(贈与税の節税につながる)
相続時精算課税制度とは、毎年110万円の控除があるうえ、2,500万円の特別控除も適用できる特例制度です。これらの控除枠を超えた部分については、一律20%の税率で贈与税を計算します。
ただし、贈与される側(受贈者)は18歳以上で、贈与する側(贈与者)は60歳以上の直系尊属(父母・祖父母など)である必要があります。
また、適用した贈与者(直系尊属)について相続が発生した場合は、相続時精算課税制度の適用を受けた財産について、毎年110万円を控除した残額が相続税の課税対象となる点に注意が必要です。
2,500万円の控除枠を使った部分は、将来的に相続税で課税対象になります。
暦年贈与制度(贈与税の節税につながる)
暦年贈与とは、年間110万円の基礎控除の範囲内で贈与することで、贈与税の課税を避ける方法です。
ただし、土地を暦年贈与するためには、通常、持分を1年ごとに分けて贈与する方法をとる必要があります。例えば、1,000万円の土地なら1年ごとに10分の1の持分(100万円相当)を贈与することで、贈与税の課税を避けられます。
ただし、前述のとおり不動産取得税や持分移転登記に伴う登録免許税や司法書士報酬が発生する点には注意が必要です。また、相続開始前7年以内の贈与(2024年1月1日以後の贈与が対象)は相続税の課税対象となります。
相続発生時期の特定は困難ですが、できるかぎり早い時期に暦年贈与を利用することは、年間110万円の非課税枠を十分に活用でき、相続税の課税対象となることを避ける点で有用です。
小規模宅地等の特例(相続税の節税につながる)
小規模宅地等の特例とは、親や親と生計を一にしていた親族の事業用・居住用の宅地などについて、一定の面積まで、課税価格を減額する特例です。
小規模宅地等の特例
利用区分 |
限度面積 |
減額割合 |
特定居住用宅地等 |
330㎡ |
80% |
特定事業用宅地等 |
400㎡ |
80% |
特定同族会社事業用宅地等 |
400㎡ |
80% |
貸付事業用宅地等 |
200㎡ |
50% |
相続開始の直前に親子が住んでいた家の敷地の場合、相続税の申告期限までその家に住み続け、かつその敷地を所有し続けていると、本来の金額から80%減額できます。
ただし、特定事業用宅地等は申告期限までに承継した事業を営んでいることなど、適用には多くの条件があります。詳しくは税理士にご相談ください。
名義変更しない場合は、不動産の所有権を主張できなくなる
売買や贈与などで土地の所有者が親から子に変わっても、不動産登記における名義変更をしなければ、子は不動産の所有権を第三者に主張できません。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
引用元 民法第177条
法律では、不動産に関する物権(所有権)の変動は、登記をしなければ第三者に対抗できないとしています。つまり、売買や贈与などで子が土地の所有権を取得しても、登記をしなければ親以外の第三者に土地が自分のものであると主張できません。
例えば、親が子だけでなく配偶者とも二重に土地の贈与契約を締結していたとします。子が先に贈与契約を締結していたとしても、配偶者が先に登記をすると、子は「その土地はあなたよりも先に私がもらった」と親の配偶者に主張できません。
結局、登記が遅れると子は土地の所有権を取得することができないという不利益を被ります。
上記のような二重贈与や二重売買がなくとも、土地を担保にお金を借りる際は金融機関に対して不動産の所有権を主張できず、お金を借りることはできません。土地を売る際も、登記がない状態では現実的に売却は困難です。
上記のとおり、名義変更の登記(所有権移転登記)はご自身の土地の所有権を守るために重要な手続きといえます。
なお、相続登記は法律上義務付けられており、正当な理由がなく登記しなかった場合、10万円以下の過料の対象です。
(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
引用元 不動産登記法第76条の2第1項
(過料)
第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
引用元 不動産登記法第164条
親から子へ土地の名義変更をする際のポイント
親から子に土地の名義変更をする際のポイントをまとめました。
- 土地は単独名義にする方が、後々トラブルが発生するリスクを避けられる
- 疑問や不安がある場合は、速やかに専門家(司法書士・弁護士・税理士など)に相談する
難しい問題も多いですが、将来困ることがないようにぜひ確認しておいてください。
土地は単独名義にする方が、後々トラブルが発生するリスクを避けられる
土地は、共有名義より単独名義にするほうが、将来のトラブル発生リスクを抑えられます。贈与や売買で共有名義が問題になることは稀で、特に相続時に注意が必要な問題です。
例えば、親の相続で配偶者と子がいるとき(親子相続)、配偶者はいなくても子が複数人いるとき(兄弟姉妹相続)は、土地は複数の相続人が所有する遺産共有名義となります。
共有名義では、他の相続人(共有者)の所有権を侵害するため、1人の判断では以下のような土地の処分ができません。
- 土地の全部を売る
- 土地の全部に抵当権を設定する(担保にする)
上記のような土地の処分をするには、共有者(相続人)全員の同意が必要です。そのため、自分が土地を売りたいときに他の共有者(相続人)が同意してくれない、売りたくないのに売却への同意を求められたなどのトラブルが発生する可能性があります。
上記のようなトラブルを避けるためには、相続後に遺産分割協議で土地の所有者を1人にするように動くことが大切です。しかし、遺産分割協議は相続人全員の合意がなければまとまらないため、次のような対策も検討しましょう。
ただし、生前贈与や遺言(遺贈)が法律上の特別受益に該当すると、特別受益者である子の相続時の取り分が減る可能性があるため注意してください。遺言で、特別受益とはしない旨の意思表示はできます。
疑問や不安がある場合は、速やかに専門家(司法書士・弁護士・税理士など)に相談する
疑問や不安がある場合は、速やかに司法書士や弁護士、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
親から子への土地の名義変更は、登記手続きそのもののほかに、状況によっては相続や遺産分割、遺言、共有名義、各種税金など多くの専門的な知識が必要となるためです。
内容別の専門家
疑問や不安の内容 |
専門家 |
登記手続き |
司法書士、弁護士 |
登録免許税 |
司法書士、税理士、弁護士 |
相続税 |
税理士、弁護士 |
贈与税 |
税理士、弁護士 |
不動産取得税 |
税理士、弁護士
(市町村の税務課など) |
譲渡所得税(所得税、住民税) |
税理士、弁護士
(税務署)
|
相続 |
弁護士、司法書士 |
遺産分割 |
弁護士、司法書士 |
遺言 |
弁護士、司法書士 |
共有名義 |
弁護士、司法書士 |
弁護士はほとんどの問題に対応できますが、登記は司法書士、税金は税理士がより専門的に取り扱っているケースが多いといえます。
専門家に相談することで疑問や不安が解消できるほか、登記手続きは司法書士や弁護士が代行することも可能です。遺産分割や共有名義などの法律問題でトラブルが生じた場合は、弁護士によるサポートで適正な解決を見込めます。
親から子への土地の名義変更は多様な問題が生じる原因になるため、疑問や不安は早めに専門家に相談して解消しましょう。
まとめ
生前贈与や相続、売買によって親から子に土地の所有権が移転したら、その土地の登記上の所有者を変更する名義変更を行います。
所有権の移転原因
所有権の移転原因 |
特徴 |
生前贈与 |
・法定相続分や遺産分割協議にかかわらず、特定の子に土地をわたせる
・遺留分の問題が生じる可能性がある
・子に贈与税と不動産取得税がかかる場合がある
|
相続 |
・法定相続、遺言(遺贈)、遺産分割協議などで土地の所有者(分け方)が決まる
・相続登記を怠ると過料の対象になる
・子に相続税がかかる場合がある |
売買 |
・法定相続分や遺産分割協議にかかわらず、特定の子に土地をわたせる
・遺留分の問題が生じる可能性は低い
・売買時には住宅ローンや抵当権に注意が必要
・親に譲渡所得税、子に不動産取得税がかかる場合がある |
名義変更をしなければ土地の所有権について第三者対抗要件を具備できず、土地を担保にお金を借りたり、将来的に売却したりすることは困難です。最悪の場合、土地の所有権を取得できない可能性もあるので、贈与や相続、売買の後はすぐに名義変更の手続きを進めましょう。
名義変更の手続き(所有権移転登記の申請)は、いずれも必要書類を集めて登記申請書を作成し、管轄の法務局に提出するといった流れです。生前贈与や相続、売買のどれかによって必要書類は異なります。
特に相続登記は法律上の義務であり、場合によっては戸籍の証明書を集めるのに時間がかかるため、早めに名義変更の手続きを進めてください。
また、土地の名義を親から子に変更する際は、贈与税や相続税、譲渡所得税、不動産取得税、登録免許税などの税金がかかる場合があります。
税金の計算方法や節税のために活用できる制度には複雑なものがあり、名義変更の手続きにも知識が必要な場合があるため、状況に応じて税理士や司法書士などの専門家に相談することが大切です。
土地の名義変更に関するよくある質問
名義変更手続きは、自分でもできますか?
名義変更手続き(登記申請)は、自分でもできます。しかし、司法書士に依頼せずにすべてご自身で申請する方は、それほど多くありません。
名義変更手続き(登記申請)は、必要書類を集めて管轄の法務局に申請書を提出する流れで、特に問題がなければそれほど難しい手続きではありません。法務局のWebサイトに掲載されている記載例や案内を参考に、手続きを進められます。
また、法務局は1回20分以内で完全予約制の登記手続案内も提供しているため、直接法務局から手続きの案内を受けることも可能です。Webで予約の手続きができます。
参照:登記手続案内(法務局)
参照:ウェブ登記手続案内を開始しています(法務局)
相続登記では戸籍の証明書を集めるのに時間や手間がかかりますが、市区町村の役所で必要な証明書はどのようなものか、取得するにはどうすればよいかといった案内を受けられるケースがほとんどです。
ただし、以下のような方は、司法書士などの専門家への相談をおすすめします。
- 手続きに時間をかけたくない
- 売買契約書や贈与契約書、遺産分割協議書、遺言書などの書き方に不安がある
- 法務局の案内では登記申請の手続きを進められそうにない
一般的な売買契約書などの記載例は法務局が掲載していますが、個別具体的な内容の相談は法務局では対応してもらえません。
専門家に相談したいときは、誰に相談すればいいですか?
土地の名義を親から子に変更するにあたって専門家に相談したいときは、内容に応じて以下の専門家に相談できます。
内容別の専門家
疑問や不安の内容 |
専門家 |
登記手続き |
司法書士、弁護士 |
登録免許税 |
司法書士、税理士、弁護士 |
相続税 |
税理士、弁護士 |
贈与税 |
税理士、弁護士 |
不動産取得税 |
税理士、弁護士
(市町村の税務課など) |
譲渡所得税(所得税、住民税) |
税理士、弁護士
(税務署)
|
相続 |
弁護士、司法書士 |
遺産分割 |
弁護士、司法書士 |
遺言 |
弁護士、司法書士 |
共有名義 |
弁護士、司法書士 |
名義変更による介護保険や医療費などへの影響はありますか?
名義変更そのものによって、介護保険や医療費などに影響が生じることはありません。
しかし、親が子に土地を売ったことで譲渡所得が生じると、所得の増加により、以下の項目について負担が増加する可能性があります。
- 介護保険の保険料
- 国民健康保険・後期高齢者医療制度の保険料
- 健康保険・後期高齢者医療制度の利用者負担割合
- 介護保険の利用者負担割合
- 高額医療合算介護サービス費
なお、親に譲渡所得が発生しても、勤務先の健康保険に加入している場合は健康保険料や介護保険料に影響はありません。これらの保険料は、給与の額のみが影響するからです。
土地を譲渡された後の活用方法
子が親から土地を譲渡された後の活用方法には、以下のようなものがあります。
- 自宅として使う(使用・居住)
- 新たな収入源として活用する(賃貸)
- 使用用途がなければ売却する(売却)
土地に建物を建築して居住したり、賃貸したりすることで活用が可能です。活用予定がない場合は、固定資産税を負担し続けるよりも、売却したほうがよいでしょう。
土地の活用については、ぜひ以下の記事もあわせてご覧ください。
相続登記をしないで土地を売却できますか?
相続登記(名義変更)をしないで土地を売却することは、極めて困難です。
相続登記をしない土地を売り出しても、通常、買受希望者は現れません。相続登記が終わらなければ買主の名義に変更する手続きできず、買主は土地の所有権を第三者に主張できないためです。
また、住宅ローンの利用が難しいといった問題もあります。相続登記をしていない土地は、買主にとって、一括で購入しなければならない名義変更ができない土地です。
万が一、買受希望者が現れても、通常の契約内容では相続登記と売買による所有権移転登記をしないと売買契約は白紙となり、売主が買主に違約金を支払うだけの結果となります。
通常の契約内容では、買主への名義変更(登記申請)が売主の義務です。相続登記と売買による所有権移転登記ができなければ契約解除され、売買代金を返還したうえで違約金を支払わなければなりません。
いざ土地を売るときに相続登記をしようとしても、遺産分割の場合には他の相続人と連絡が取れない、連絡が取れても遺産分割協議書への押印や印鑑証明書の提出を拒絶されるなどのトラブルで相続登記が困難となる可能性もゼロではありません。
相続登記は義務であるため、仮に売却の予定がなくても、早めに手続きを進めてください。
訳あり不動産の売却でお悩みなら
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