結論からお伝えしますと、区画整理地を売却するタイミングは「仮換地(かりかんち)指定のあと」または「換地処分(かんちしょぶん)のあと」です。
簡単にご説明すると、仮換地指定は将来の土地を仮に割り当てられた状態で、換地処分は区画整理後の土地として正式に権利関係や所在地が確定した状態を指します。
双方の違いは、区画整理の主な手順を見るとわかりやすいです。
- 都市計画決定・事業開始
- 仮換地指定
- 工事・整備(道路、公園、インフラ整備など)
- 換地処分
- 登記の書き換え・清算金確定
つまり、仮換地指定は区画整理事業の途中段階にあたり、換地処分は工事完了後に正式な権利関係を確定させる手続きになります。
区画整理地を売却するタイミング
| 項目 |
内容 |
注意点 |
| 仮換地指定後に売却する |
将来的に換地されることを前提に売却できるため、買主を集めやすいタイミング |
登記は従前地のままである点や、面積減少の可能性、清算金の有無などを説明する必要がある |
| 換地処分後に売却する |
権利関係や所在地が正式に確定しているため、比較的高値かつスムーズに売却しやすいタイミング |
・換地処分まで数年〜数十年かかる場合がある
・清算金の負担者も決めておく必要がある |
特に最適なタイミングは、換地処分が行われたあとです。換地処分がおこなわれることで、区画整理後の土地として権利関係や所在地などが正式に確定した状態になります。
権利関係や所在地、土地の状態などが確定した状態だと、買主にとっても安心感があり、比較的スムーズに売却できる傾向があります。
なお、区画整理地を高値で売る方法として現実的なのは、複数の不動産会社を比較し、区画整理地の取り扱いに慣れている会社に依頼することです。
区画整理地は、仮換地や清算金、換地処分など通常の土地とは異なる知識が必要になるため、不動産会社によって査定額や販売戦略に差が出やすい特徴があります。区画整理事業の内容や権利関係を正しく理解している会社へ依頼することで、土地の将来性も踏まえた適正価格で売却しやすくなります。
本記事では、区画整理地を指定する土地区画整理事業の特徴や売却するタイミング、高値で売る方法について詳しく解説します。
土地区画整理事業のしくみ
土地区画整理事業とは、複雑な形になっている土地や道路の区画を整備し、きれいな区画にすることで市街地としての利便性や安全性を高める事業のことです。
この事業は、土地区画整理によって街の機能面を改善し安全性や快適さを高め、地域を活性化させるためにおこなわれます。実際には、駅前再開発や住宅地の整備、老朽化した市街地の再編などで活用されるケースが多く見られます。
土地区画整理事業は国や地方自治体が主導でおこなわれますが、区画整理地に該当する土地所有者(地主)や借地人といった「地権者」の協力が必要不可欠です。
実務上も、土地区画整理に該当する地主や地権者に向けて計画内容などを説明する「地権者説明会」や、同意形成に時間を要するケースは少なくありません。特に相続で共有状態になっている土地では、共有者間で意見がまとまらず、手続きが長期化することもあります。
区画整理地とは「土地区画整理事業」において指定された土地のこと
区画整理地とは、国や地方自治体が土地の区画を整理するためにおこなう「土地区画整理事業」において指定された土地のことをいいます。
なお、土地区画整理事業によって整備されることが決まった土地を「区画整理予定地」といいます。
区画整理では道路や公園などの公共用地を確保するため、従前地より土地面積が小さくなる「減歩(げんぶ)」がおこなわれるのが一般的です。
ただし、面積は減っても道路付けや周辺環境が改善されることで、土地の利用価値が高まり、結果として資産価値が維持・上昇するケースもあります。
区画整理がおこなわれると住みやすい街になる
土地面積は区画整理前よりも狭くなりますが、メリットもあります。
土地の区画整理が施行されると、周辺道路や公園などの公共施設が整備・改善されることで、生活利便性や防災性が向上して住みやすい街へ変わっていきます。
土地が狭くなったとしても、道路整備や利便性向上によって土地評価が維持、または上昇するケースもあります。
実際に不動産売買の現場でも、区画整理後は「道路付けが改善された」「駅までのアクセスがよくなった」といった理由から、買主の需要が高まるケースをよく見かけます。
区画整理されると「保留地・従前地・換地」にわけられる
地権者は原則として土地区画整理事業に必要な資金そのものを提供することはありませんが、区画整理のために所有する土地の一部を提供することになります。
提供した土地は、事業資金に充てられる「保留地(ほりゅうち)」と公園や道路などを作るための公共用地に分けられます。
土地区画整理事業は、国や市区町村などの行政が都市計画を決定し、地方公共団体や土地区画整理組合などの施行者が事業を実施します。
土地区画整理事業において、換地処分前の元の土地は「従前地(じゅうぜんち)」と呼ばれ、工事施工後に新しく区画された土地は「換地(かんち)」になります。
換地処分(かんちしょぶん)とは、もともとの土地(従前地)を新しく整理後の土地(換地)として正式に割り当て直す法的手続きのことです。
以下の国土交通省が公開している図をみるとイメージが付きやすいです。
参照:国土交通省「土地区画整理事業」
仮換地とは「従前地でも換地でもない」土地のこと
仮換地とは、土地区画整理事業の途中で「従前地(もともとの土地)」の代わりとして、一時的に使用・収益するために指定される土地のことです。
区画整理地は一度で全域の工事が完了し、換地になるわけではありません。工事は区画ごとに少しずつおこなわれるため、長期化することもあります。
正式な換地として定められるのは原則として「区画整理地全域の工事が完了した後」です。
そのため、先に区画整理の工事が終わった土地(土地Aとします)は工事期間中、従前地でも換地でもない扱いになります。
土地Aは工事が完了し換地としての利用ができる状態であるため、仮の換地として定めることがあります。このような土地のことを「仮換地(かりかんち)」といいます。
区画整理予定地の売却タイミング
区画整理予定地を売却するタイミングは「仮換地指定がされてから」もしくは「換地処分がおこなわれてから」が一般的に売却しやすいタイミングです。
区画整理の対象となっている区域内では、土地区画整理法第76条により建築制限がかけられます。建物を新築・改築するには自治体(都道府県知事等)の許可が必要となり、将来的な区画整理の妨げになるような建築物は許可が下りないため、自由な土地利用ができないのが実情です。
そのため、仮換地指定前の土地を売却しようとしても、一般的な土地より購入希望者がつきにくいケースが多いです。
仮換地指定されたあとに売却する
仮換地指定されたあとの土地は、将来的に換地として整備される見込みや、街並み改善による資産価値向上の期待をアピールしやすくなります。
そのため、購入希望者も集まりやすく売却しやすいタイミングといえます。
ただし、不動産の登記自体は従前地であることや、土地面積が減少していることを、買主に説明する必要があります。
また、換地完了がいつの時期になるのか、換地完了後に清算金が発生するのかなども、売主側で明確にしておくことも大切です。
換地処分がおこなわれてから売却する
換地処分によって、正式に「区画整理がされた新しい土地」となったタイミングだと、比較的高値で売却しやすくなる傾向があります。
区画整理予定地の購入を考えている人は、将来的に換地になることを見込んだ上で物件を探しています。
土地区画整理事業における、最終的な権利変換となる換地処分がおこなわれてから、売却したほうが権利関係でも混乱せずスムーズな取引ができるでしょう。
ただし、換地処分後の売却が理想的だからといって、必ずしもそこまで待つのはべきとは限りません。
なぜなら、土地区画整理事業の期間は事業規模や地域によって差はあるものの、完了まで長期間を要することが多いからです。中でも、大規模な事業では20年〜30年かかるケースも珍しくありません。
そのため、実務上は換地処分を待たず、仮換地の段階で売買されるケースが数多く見られます。むしろ、実際の不動産市場に出回る区画整理地の多くは「仮換地」の状態で取引されており、仮換地をいかに適正な価格で売却できるかが、実務における重要なポイントになります。
また、区画整理による清算金の負担をどちらがするかを決めておくことも大事です。
区画整理予定地の売却手続きと高値で売る方法
区画整理予定地を売却する際の手続きは、売却のタイミングによって異なります。
基本的には一般的な土地売却の手続きと変わりはないですが、区画整理予定地は権利関係が複雑なので売却するときにはいくつか注意点があります。
仮換地を売却する場合
不動産には「所有権」と「使用収益権」といった権利があります。厳密に言えば所有権の中に使用収益の自由があるといえます。
仮換地は区画整理工事の途中で、従前地(区画整理工事前の土地)の代わりに一時的に使用・収益できるよう指定された土地のことです。
仮換地指定がおこなわれると、従前地の使用収益権が停止され、仮換地について使用収益できる権利が与えられます。
つまり「登記上の所有権は従前地に残ったまま、実際には仮換地を利用している状態」になります。
例えば、所有している不動産が区画整理予定地に指定されたとします。
仮換地の指定がおこなわれると従前地から仮換地へ移動しなくてはなりません。
移動後、元々住んでいた従前地には所有権が残り、移転先の仮換地に対しては使用収益権を有することになります。
区画整理の流れをわかりやすく表すと、下図のようになります。
従前地の所有権が将来的に仮換地へ移動し換地になることを踏まえると、仮換地を売却する場合、従前地に残る所有権を相手に売却しなければいけません。
そのため、売却の手続き上は「従前地の住所・面積を使って売買契約の締結および登記をおこなう」ことになります。
換地を売却する場合
最も売却手続きの手間が少ないのは「換地処分がおこなわれてからの売却」です。
区画整理予定地における仮換地や従前地は、物件の権利関係が複雑になっている状態といえます。一方、区画整理が完了したあとは権利関係が整理されており、一般的な土地とほぼ同じ形で売却できます。
また、権利関係の手続きも一般的な土地売却と大きな変わりはありません。そのため、買主側も安心して購入しやすく、結果として売却価格も高くなりやすい傾向があります。
なるべく高く売りたいなら複数の不動産会社の査定額を比較するのがおすすめ
区画整理地であっても、土地を売るならなるべく高値で売りたいと考える方がほとんどでしょう。実際、弊社へ買取に関するご相談をいただく際も「区画整理中の土地でも売れるのか」「どこに相談すれば適正価格がわかるのか」といった経緯でお問い合わせいただくことは少なくありません。
なるべく高値で売るには、区画整理地の取り扱いに慣れた不動産会社に相談するのが最適な方法だといえます。
区画整理地の売却は一般的な不動産取引ではないので、知識がない不動産会社も少なくありません。区画整理地の価値を正確に把握していない不動産会社の場合、本来の価値より低く査定されたり、買主への説明不足によって売却がスムーズに進まなかったりする可能性があります。
一方で、区画整理地の取り扱いに慣れている不動産会社であれば、行政資料や事業計画を踏まえて適切に査定し、将来的な利便性や資産価値まで考慮した提案が可能です。
不動産会社が区画整理地の取り扱いに慣れているかどうかを判断するには、実際に査定を依頼する必要があります。
そこで、オンラインで完結する机上査定を利用しましょう。オンライン査定なら簡単な入力で査定価格の目安を把握できるため、区画整理地を適正に評価できる会社を見極めやすくなります。
なお、査定額だけでなく「区画整理地の売却実績があるか」「仮換地の売買に慣れているか」といった点もあわせて確認するとよいでしょう。
区画整理時には従前地と換地の差額を「清算金」で解消する必要がある
区画整理がおこなわれると土地の価値も変動するので、「従前地だったときの価値」と「換地になったときの価値」の差額を清算金によって解消する必要があります。
以前と比べて区画整理後に土地の価値が下がったのであれば清算金を受け取り、土地の価値が上がったのであれば清算金を支払います。
清算金の徴収・交付は、区画整理による各地権者の損益を平等にするためにおこなわれるものです。
実務上は、区画整理後に土地の利用価値が高まることが多く、評価差を調整するために清算金が発生するケースをよく目にします。
清算金の帰属先は売買契約で明確に決めておこう
土地区画整理法上、清算金は原則として換地処分時の権利者に帰属します。ただし、売買契約において取り決めをしない場合は、基本的に売主に帰属することが一般的です。
もっとも、清算金の制度自体になじみがない方も多く、売主・買主のどちらに帰属するのかを十分理解しないまま契約が進んでしまうケースも実際にあります。売買契約の段階で清算金を誰が受け取るのか、あるいは誰が負担するのかを明確に定めておかないと、後日トラブルになる可能性があるので注意しましょう。
売買契約の特約などで帰属先の取り決めをおこなっていた場合は、その取り決めに従うことになります。
【事例】清算金帰属先を設定したらどうなる?
先ほども説明したように、清算金は原則として換地処分時点の権利者に帰属します。
また、帰属先の取り決めをおこなっていた場合は、その取り決めに従うことになります。
例えば、換地を売却するときに「清算金は売主に帰属する」と特約していたとします。
換地処分後に清算金の交付が実施される場合、その交付金は新しい所有者の買主ではなく売主に受け取る権利があります。
区画整理において清算金のトラブルは多く見られます。
トラブルを防ぐためにも、「清算金の帰属先を決める際には今後発生するかもしれないリスクを考慮する」ことが大切です。
所有地が区画整理事業地内なのか確認する方法
自分の住んでいる地域が土地区画整理事業地に指定されているのか知りたい場合、その地域を管轄する自治体に問い合わせるのが確実な方法です。
具体的には「都市整備部・都市計画課」に問い合わせることで、土地区画整理事業に関する今後の新規事業や、これまでの事業実績などを確認できます。
また、土地区画整理事業が決定されると、事業計画の内容を地権者などに知らせるために、各市町村の広報がお知らせを発行することもあります。
他には、各自治体ホームページから閲覧できる「区画整理事業、施工位置図」という資料を参考に、自分の地域が土地区画整理事業区域なのか確認する方法もあります。
なお、実務上は「まだ正式決定ではないが、将来的に区画整理候補地として検討されている」といったケースもあります。購入や売却を検討している場合は、都市計画道路や周辺開発計画も含めて確認しておくと安心です。
まとめ
土地区画整理事業は人々が住みやすい街にするためにおこなう事業です。
区画整理をおこなうと以前よりも土地の価値が上昇し、街自体も住みやすくなるというメリットがあるため、仮換地や換地を欲しいと思う人も少なくありません。
自分が所有する土地が存在する地域や、引越しなどで気になっている地域があれば、自治体のホームページなどで区画整理予定地を調べてみるのもよいでしょう。
もしも、所有している土地が区画整理予定地だった場合、工事が完了するまでその地域で暮らすのか、他の人に売却するのかをよく考え、将来を見据えた行動を心がけることも大切です。
区画整理地を売却する場合、仮換地指定時と換地処分決定時のタイミングによって手続きや売買契約の手間が異なります。
また、清算金の帰属や将来的な負担についても、契約内容を曖昧にしたまま進めると後々トラブルになる可能性があります。区画整理地を売却する際は、複数社へ査定を依頼したうえで、区画整理実務に詳しい会社かどうかを見極めながら進めるのが確実性の高い方法です。
区画整理地を売るときのよくある質問
区画整理予定地は、換地処分の前でも売却できますか?
区画整理予定地は換地処分の前でも売却できますが、権利関係が複雑になります。そのため、換地処分後の方が高値で売れる傾向にあります。
区画整理における清算金は誰に帰属しますか?
区画整理における利害関係は売主側にあると判断されるため、売買契約で取り決めをしない場合は売主に帰属されることが多いです。