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生産緑地を指定解除する要件と手順!解除の注意点なども詳しく解説

生産緑地 解除

用途を農地に限定される代わりに、税金の優遇制度を受けられる生産緑地。しかし、生産緑地の指定から長い年月が経ち、指定を解除したいという人も増えています。

生産緑地は、一度指定されると解除は簡単ではありません。いくつかの要件を満たし、自治体へ申請する必要があります。

また、指定を解除された土地は自治体で買い上げるのが原則ですが、場合によっては買取を拒否される可能性もあります。

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生産緑地の指定が解除される要件

要件

一度、生産緑地に指定されると気軽に解除できませんが、以下の要件のうちいずれかを満たせば認められるケースがあります。

  • 生産緑地に指定された日から30年経過
  • 主たる従事者が農業をできないほどの障害や病気にかかる
  • 主たる従事者の死亡

生産緑地の指定を解除すると自治体がその農地を買い取るのが原則です。

まずは自治体へ買取の申出をしたあと、買取を拒否され、他の農業したい人への斡旋もできなかったときに、行為制限が解除されて宅地に転用できるようになります。

次の項目から、解除のために必要な3つの要件をそれぞれ解説します。

生産緑地に指定された日から30年経過

生産緑地の指定期間は30年であるため、指定告示日から30年経過すると生産緑地の指定が解除され買取の申出が可能です。

ただし、30年経過したからといって自動的に生産緑地としての指定が解除されるわけではありません。また、必ず買取の申出をおこなわなければいけません。

特定生産緑地の指定も受けず、買取の申出をしなかった場合、その土地は生産緑地のままです。したがって、営農の義務や新たな建築物の建設や宅地転用の行為制限は受けたままであることに注意しましょう。

特定生産緑地・・・大量の生産緑地が買取の申出が可能な状態になることに対して、国が平成29年創設した制度です。

主たる従事者が農業をできないほどの障害や疾病

主たる従事者とは、その生産緑地で中心となって農業をしている人のことです。また、主たる従事者には以下の条件を満たす人も含まれます。

  • 65歳未満の場合は、主たる従事者の1年間の従事日数の8割以上従事している人
  • 65歳以上の場合は、主たる従事者の1年間の従事日数の7割以上従事している人
  • 都市農地貸借円滑化法に基づく認定都市農地または特定都市農地貸付けのために利用される都市農地、特定農地貸付法等の特例に関する法律に基づく特定農地貸付のために利用されている生産緑地の場合は、主たる従事者の1年間の従事日数の1割以上従事している人

なお、生産緑地の買取の申出にあたり、障害や疾病にかかった人が主たる従事者であることを証明するためには、農業委員会から証明書の交付を受ける必要があります。

このとき農業委員会は証明書の申請を受けて、買取申出の理由となった人が本当に主たる従事者なのか現地調査をおこないます。

そして「農業をできないほどの障害や疾病」というのは「両目の失明」「腕または足の喪失」「精神の著しい障害」「1年以上の入院を要する病気」などを指します。

このことを証明するためには、医師の診断書に「農業を継続できない」という旨の記載が必要なので準備を忘れないようにしましょう。

参照:国土交通省「生産緑地法施行規則の一部を改正する省令」

主たる従事者の死亡

主たる従事者が死亡してしまった場合、生産緑地の指定期間が30年未満であっても買取の申出が可能です。主たる従事者が2人以上の場合、残された人だけでは農業を続けられないときに買取の申出が認められています。

このとき、申出の理由となった人が本当に主たる従事者であるかを確認するための「主たる従事者についての証明書」と亡くなっていることを確認するために戸籍謄本または除籍謄本も添付しましょう。

また、要件は「主たる従事者」なので、土地の所有者である必要はありません。仮に亡くなった人が土地の所有者であっても、主たる従事者でなかった場合、相続発生を理由に買取を申し出ることは不可能です。

生産緑地の指定を解除する手順

手順

次に生産緑地の指定を解除する手順についてです。解除要件を満たしていることを確認して、自治体へ買取の申出をします。

生産緑地は原則、自治体が買い取りますが、予算の都合で買取を拒否されることもあります。このような場合、農業従事希望者へ斡旋(あっせん)がおこなわれます。

斡旋もおこなわれなければ、該当の生産緑地の行為制限は解除され宅地への転用も可能になります。

それぞれの手順を具体的に説明します。

1.指定解除の要件を満たしていることを確認する

生産緑地の指定解除となる買取の申出をするときには最初に、自分の生産農地が指定解除の要件を満たしているかを確認します。

生産緑地の指定は申請日ではなく、指定告示日のことです。指定日が分からなければ市区町村の役所に問い合わせることで、自分の農地がいつ生産緑地に指定されたのかを教えてもらえます。

また、各自治体のホームページに「生産緑地地区指定一覧表」が掲載されていることもあるので、確認してみてください。

主たる従事者が故障または死亡したことを理由に指定解除を申出るには、主たる従事者に関する証明書を準備しておきましょう。

2.自治体に買取の申出をする

自治体に買取の申出をするときに必要な書類は主に以下の通りです。

  • 生産緑地買取申出書(実印を押印)
  • 同意書(所有権者と申出地に所有権以外の権利を持つ人全員の同意)
  • 印鑑証明書(発行後3カ月以内)
  • 土地登記簿謄本・公図
  • 生産緑地買取申出地の位置図および区域図
  • 農業従事者証明
  • 医師による診断書(故障の場合)

上記の書類を用意して所有する生産緑地を管轄している自治体に買取の申出をおこないましょう。

3.買取する旨の通知が届く

自治体が買取する場合、申出から1カ月以内に買取る旨の通知が申出者に送られます。そのあと、買取価格の協議をおこないます。

買取価格は時価を基準に協議の上、決定されます。ここで協議が成立すれば、公共用地となり、生産緑地の指定は解除されます。

買取されない場合もある

市が買取しない場合も、買取するときと同様に申出から1カ月以内に買取しない旨の通知が届きます。

そのあとは、農林漁業希望者への斡旋がおこなわれます。農林漁業希望者への斡旋は2カ月間です。その間に土地の購入希望者が見つかり、価格の協議が成立すれば売却されます。

ただし、価格は生産緑地としての制限が付いた土地としての価格ではなく、宅地並みの価格となることが一般的です。

その結果、行為制限があるのに高額になるので、希望者が見つからない、または、協議不成立となるケースが多いといわれています。

行為の制限解除

農林漁業希望者への斡旋も不調となった場合、生産緑地の行為制限は解除されます。

所有者は変わらず生産緑地としての管理が解かれて、宅地への転用や建築物の新築も可能になります。行為制限が解除されるのは、買取申出から3カ月後です。

生産緑地の指定を解除するときの注意点

税金

生産緑地の指定を解除すれば、買取によって現金を得られたり、行為制限が解除されて自由な土地活用ができるなどのメリットがあります。

ただし、以下の2つの注意点があることを覚えておきましょう。

  • 高額な納税猶予額を納めなければならない可能性がある
  • 固定資産税が宅地並み課税になる

高額な納税猶予額を納めなければならない可能性がある

相続税の納税猶予の特例が適用されていた場合、生産緑地の指定を解除すると猶予されていた相続税額に利子税を加算した額を納めなければなりません。

利子税は、相続税の申告期限の翌日から年3.6%の割合です。猶予納税額が3,000万円、特例が適用されていた期間が10年だった場合、利子税だけで約840万円になります。

生産緑地の買取は時価が基本であるため、自治体による買取または農業従事希望者への斡旋が成立すれば、納税できない状況は避けられるでしょう。

しかし、斡旋も不成立となると行為制限は解除されますが、現金は手に入りません。したがって、納税に必要な資金の準備や行為制限された土地の売却などによって現金を用意する必要があります。

納税猶予の特例を受けていた場合、行為制限解除となっても負担が大きいです。買取の申出をする前に、納税合計額がいくらになるかを見積もることが大切です。

固定資産税が宅地並みに高くなる

生産緑地の行為制限が解除されると、宅地への転用もできます。また、行為制限が解除された状態でそのまま農業を続けることも可能です。

しかし、生産緑地の指定を解除された状態で農業を続けるのであれば、固定資産税の増額に注意してください。なぜなら、固定資産税が宅地並み評価・宅地並み課税となるからです。

その差は生産緑地と比較して約10倍あります。急激な税負担を防ぐ「激変緩和措置」が適用されますが、それでも5年後には約10倍以上の固定資産税を納めなければなりません。

自治体が買い取らない場合は不動産会社に相談

自治体へ申出すると、自治体または農林漁業希望者が生産緑地を買取してくれます。

しかし、確実に買取してもらえるわけではなく、買主が見つからずに生産緑地が売れ残ってしまうケースも少なくありません。

申出から3カ月経っても買取してもらえなければ、宅地への転用や建築物の新築も認められますが、その場合は税金の負担が大きくなってしまいます。

ですので、生産緑地の指定解除を申し出ずにそのまま売却したほうが良いケースもあります。

まずは不動産会社に相談し、指定解除をおこなうか、そのまま売却するか、どちらがよいかアドバイスをもらうとよいでしょう。

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生産緑地の売買は一般的な取引ではないため、不動産会社でも知識や経験をもっていない可能性があります。

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生産緑地の一斉指定解除で危惧される「2022年問題」とは

問題

現在指定されている生産緑地のうち、約8割が1992年に指定されたものです。生産緑地の指定期間は30年であるため、2022年に多くの生産緑地で買取の申出が可能となります。

生産緑地は固定資産税の優遇措置や相続税の納税猶予などのメリットもある一方で、営農義務や建築物の建築禁止などの厳しい行為制限を受けます。

そのため、買取可能となるタイミングで、自治体に対して大量の買取申出が届く可能性があります。

しかし、自治体は生産緑地の買取に潤沢な財産を用意しているわけではないため、買い取らない緑地もあるだろうと考えられています。

その結果、生産緑地は行為制限解除となりますが、土地所有者の税負担が重くなります。生産緑地に指定されていた土地は原則500㎡以上の広さです。

その規模の土地を所有していると、相続税も非常に高額になります。相続税対策のためにマンション・アパートの新築や、土地の売却が増えるかもしれません。

そうなれば、さまざまな物件が不動産市場へ大量に供給され、供給が需要を大きく上回ることで地価や家賃が大幅に下落するかもしれません。このような事態が危惧されることが2022年問題です。土地の価格が暴落してしまうと、土地を現金化したとしても猶予納税額を賄えない恐れがあるというわけです。

また、不動産経営を始めようと思っても、利回りが非常に低くなってしまうリスクも考えられます。

2022年問題への国の対策

2022年問題に対しては国も対策を取っています。その1つが「特定生産緑地制度」であり、平成29年の生産緑地法改正時に創設されました。

特定生産緑地・・・生産緑地の指定期間である30年を経過する前に選択することで、生産緑地のときと同様のメリットを引き続き受けることができます。

生産緑地は30年でしたが、特定生産緑地は10年ごとの更新制なので利用しやすいです。

特定生産緑地の指定を受けなければ、生産緑地に指定されてから30年後、買取の申出をしなかったとしても各優遇措置は受けられなくなります。

そのため、引き続き農業を続けるつもりであれば、生産緑地の指定期間を過ぎる前に特定生産緑地を選択することが大切です。

また、ご自身で農業を続ける意思がなければ、相続税の納税猶予を受けているかどうか、猶予納税額分の現金を準備できるかによって

「生産緑地の買取申出が可能となったタイミングで申出する」
「認定都市農地貸付けまたは農園用地貸付けを行って納税猶予を継続させる」

といった判断をするとよいでしょう。

まとめ

生産緑地の指定解除は、指定後30年を経過するか、主たる従事者の死亡または営農できないほどの故障が条件です。

したがって、一度生産緑地に指定されると簡単に解除できるものではありません。また、生産緑地の指定解除は、原則、自治体が農地を買い取ることを意味します。

行為制限が解除されて自由に土地利用できるようになるには、自治体が買取らず、農業従事希望者への斡旋も成立しなかったときです。

生産緑地の指定を解除することにより、固定資産税の優遇措置・相続税の納税猶予が適用されなくなるため、納税するための現金を用意しなければいけません。

そのため、指定解除できる要件を満たしたとしても、本当に解除するかは慎重に判断することが大切です。

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更新日 : 2024年05月23日
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