共有名義のデメリット
さきほども軽く解説しましたが、夫婦のペアローンで借入額を増やせたり、住宅ローン控除をそれぞれで受けられたりと、購入時のメリットに目を奪われて共有名義を選択する方は大勢いらっしゃいます。
しかし実際は、共有名義にしたことを後悔し、トラブルを抱えてご相談に来られるケースは後を絶ちません。不動産の活用や処分に制限がかかるうえに、将来的な人間関係の変化がそのまま不動産リスクに直結するからです。
以下では、共有名義のデメリットを1つずつ詳しく解説します。
不動産全体の活用・処分が自由に行えない
共有名義における最大のデメリットは、自分の持ち物でありながら、自分の意思だけで不動産全体を動かすことができなくなる点です。
そもそも民法では、共有物に対する行為を「変更行為」「管理行為」「保存行為(修繕など単独で可能)」に分類し、それぞれに必要な同意の範囲を厳格に定めています。
このあと詳しく解説します。
変更行為(全体売却など)には「共有者全員」の同意が必要
不動産全体の売却や、建物の取り壊し、大規模なリノベーションなど、不動産の性質や形状を大きく変える「変更行為」には、共有者全員の同意が不可欠です(民法第251条)。
極端な話、たとえあなたが90%の持分を持っていたとしても、残り10%を持つ共有者が「絶対に売らない」と反対すれば、不動産全体を市場で売却することは不可能です。この「たった一人の反対」によって、空き家が何年も塩漬けになるケースを弊社は数え切れないほど見てきました。
なお、2023年4月の民法改正により、建物の外壁塗装や簡単な内装工事など、形状や効用に大きな変更を伴わない「軽微な変更」については、持分価格の過半数の同意で進められるよう緩和されています。
管理行為(賃貸など)には「持分価格の過半数」の同意が必要
不動産を賃貸に出す(建物の場合は3年以内の短期)、共有物の使用ルールを決めるといった「管理行為」を行うには、人数ではなく、共有者の「持分価格の過半数」の同意が必要です(民法第252条)。
たとえば、夫婦で2分の1ずつ持分を所有している場合、過半数(50%超)に達しないため、どちらか一方の意思だけで賃貸に出すことはできません。意見が対立すると、不動産を収益化することもできず、ただ維持費だけを垂れ流す負動産になってしまいます。
維持費や固定資産税の負担で共有者と揉める
共有名義の不動産を維持するには、固定資産税や都市計画税、火災保険料、マンションなら管理費・修繕積立金などのコストが継続的にかかります。
制度上は、固定資産税は共有者全員が「連帯納付義務」を負います(地方税法第10条の2)。しかし実務上、役所は共有者ごとに税金を分割して請求することはほぼなく、代表者1名に全額の納付書を送付します。
そのため、代表者が一旦全額を立て替え、後から他の共有者にそれぞれの持分に応じた金額を請求しなければなりません。ここで「自分は住んでいないから払いたくない」「今は手持ちがない」と支払いを拒否され、親族間や元夫婦間で深刻な金銭トラブルに発展するケースが非常に多いのが現実です。
購入時の諸費用(ローン手数料・登記費用等)が二重にかかる
夫婦でそれぞれ住宅ローンを組む「ペアローン」で共有名義にする場合、見落としがちなのが初期費用の増加です。
金融機関との金銭消費貸借契約が2本になるため、融資事務手数料、契約書の印紙代、さらには司法書士に支払う抵当権設定登記の報酬などが、単独名義の場合と比べてほぼ2倍かかります。
不動産の購入時は数百~数千万円という金額を見ているため金銭感覚が麻痺しがちですが、諸費用が数十万円単位で上乗せされることは、冷静に考慮すべきデメリットでしょう。
離婚時の財産分与で身動きが取れなくなる
また、泥沼化しやすいのが「離婚時の共有名義不動産の取り扱い」です。離婚する場合、不動産は物理的に半分に割れないため、売却して現金を分けるか、どちらかが住み続けて代償金を払うかの選択を迫られます。
しかし、共有名義のまま離婚を成立させてしまうと、離婚後に相手と連絡が取れなくなり、将来の売却や修繕が完全にストップしてしまう危険性があります。
住宅ローン残債があると単独名義への変更は極めて困難
「離婚するから、夫(または妻)の単独名義に変えたい」と希望される方は多いですが、住宅ローンが残っている場合、金融機関が名義変更(免責的債務引受)を認めることはほとんどありません。
金融機関は「2人の収入を合算するから」という前提で融資を行っています。名義を1人にするには、残る側が単独の収入のみでローンの借り換え審査に通るか、自己資金で一括繰り上げ返済をするしかありません。
それができず、やむを得ず「名義は共有・ローンもそのまま」で元配偶者が住み続けるケースがありますが、家を出た側がローンの支払いを滞納すれば、家に住んでいる側が連帯保証人として一括請求を受けるリスクを常に抱え続けることになります。
相続が繰り返され、権利関係がネズミ算式に複雑化する
共有者の一人が亡くなった場合、その持分は他の共有者に自動的に移るわけではありません。亡くなった方の持分は相続財産となり、その方の法定相続人(配偶者や子など)へ引き継がれます。
たとえば、兄弟で2分の1ずつ共有していた実家で、兄が亡くなったとします。兄の持分は、兄の妻と子どもたちが相続します。こうして「弟」と「兄の妻子」という、微妙な関係性の共有状態が生まれます。
さらに世代が下り、二次相続・三次相続が発生すると、共有者は数人から十数人へとネズミ算式に膨れ上がります。いざ売却しようとした時には、面識すらない遠縁の親族を探し出し、全員から実印と印鑑証明書をもらわなければならないという絶望的な状況に陥るのです。これを防ぐには、生前の遺言書作成などの対策が必須です。
共有者の認知症・行方不明で活用が困難になるリスク
共有名義の場合は「人」のリスクが直結します。共有者のうちたった一人でも認知症で判断能力を失ったり、行方不明になったりすると、不動産全体の売却や変更行為は事実上ストップします。
詳しく説明しますと、認知症等で意思能力がないとみなされた人は、法的に売買契約を結ぶことができません。この場合、家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」を選任してもらう必要があります。
しかし、成年後見人の最大の使命は「本人の財産保護」です。「他の親族が売りたいから」といった理由や、単なる現金化目的では、居住用不動産の売却許可が裁判所から下りないケースが多々あります。
行方不明の場合も「不在者財産管理人」の選任や、令和5年改正民法で新設された「所在等不明共有者の持分取得・譲渡制度」を利用することになりますが、いずれも数十万円の予納金(費用)と半年〜1年以上の期間を要し、残された共有者に重い負担がのしかかります。
占有している共有者を強制的に追い出すことはできない
共有者には、持分の大小にかかわらず「共有物の全部をその持分に応じて使用する権利」があります(民法第249条第1項)。
そのため、もし共有者の一人が不動産に勝手に住み着き、独占して使っていたとしても、他の共有者は「自分の持分があるのだから今すぐ出ていけ」と法的に明渡しを求めることは原則としてできません。
ただし、独占している共有者は、他の共有者の持分を侵害して利益を得ている状態になるため、持分割合に応じた家賃相当額の支払い(不当利得返還請求等)を求めることは可能です(民法第249条第2項)。とはいえ、親族間で毎月家賃を請求し合うのは現実的ではなく、話し合いが平行線をたどるうちに建物の老朽化だけが進んでいくのが実情です。
共有名義となるケースに応じたデメリットとトラブル事例
共有名義のトラブルは、どのようにして共有状態になったか(相続、親子での購入、夫婦での購入)によって、直面する壁や解決策が大きく異なります。
ここでは、共有名義にしたことで実際に直面したトラブル事例とともに、それぞれのケースに特有のデメリットと注意点を解説します。
相続|「とりあえず共有」が最悪の事態を招くデメリット
親が亡くなった際、遺産分割協議で誰が単独で相続するかを決めきれず、「とりあえず法定相続分で共有名義にしておこう」と先送りにしてしまうケースは非常に多く見られます。
しかし、この「とりあえず共有」が最も危険です。というのも共有者のライフスタイルや経済状況はバラバラなため、いざ売却や賃貸に出そうとしてもスムーズに意見がまとまることはそうそうありません。さらに二次相続が発生すると、疎遠な親族や面識すらない甥・姪などが共有者に加わり、連絡すら取れなくなる「塩漬け不動産」と化してしまいます。
【実際のトラブル相談】
夫と共有名義で購入した自宅に長年暮らしてきましたが、夫が亡くなり相続が発生しました。夫には前妻との間に2人の連れ子がおり、その子たちにも夫の持分に対する相続権(法定相続分)があります。遺産分割の話し合いがまとまらず、やむを得ず法定相続分で共有登記をしました。その後、自身の体調が悪化し介護施設への入居費用を捻出するために自宅を売却しようとしたところ、連れ子たちが「父の思い出の家だから」と売却に強硬に反対。自分の持分が大半を占めているにもかかわらず、共有者全員の同意がないため不動産全体を売却できず、住み替えの資金繰りが行き詰まってしまいました。
※実際のトラブル相談内容を一部調整して掲載しております。
このような「後妻(または夫)と前妻の子」による共有トラブルは、実際に頻発しています。共有状態を解消するには、持分の買い取り交渉や共有物分割請求訴訟など、精神的にも金銭的にも多大な負担を強いる法的手続きが必要になります。相続が発生した際は、安易に共有名義に逃げず、誰かの単独名義にするか、売却して現金を分ける(換価分割)のが良いでしょう。
親子共有名義で購入|親の「認知症」で実家が凍結されるデメリット
二世帯住宅の建築や、親からの資金援助を兼ねて、親子で不動産を共有名義にするケースも一般的です。しかしこの場合、親が高齢になり認知症を発症すると、不動産の売却や活用が完全にストップしてしまうリスクが潜んでいます。
先述の通り、不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要ですが、認知症で判断能力を失った方は、法律上、売買契約の当事者になることができません。
【実際のトラブル相談】
父と費用を出し合い、共有名義で実家を建て替えて同居していました。数年後、父が重度の認知症と診断され、特別養護老人ホームへの入居が決まりました。高額な入居一時金と月額費用を工面するため実家の売却を急ぎましたが、不動産会社から「お父様の意思確認ができないと売買契約は結べない」と断られました。やむを得ず家庭裁判所に「成年後見人」の選任を申し立てましたが、裁判所の調査や手続きに半年以上かかりました。その間、施設の支払いは私の貯金を切り崩して立て替えるしかなく、家族全員が疲弊してしまいました。
※実際のトラブル相談内容を一部調整して掲載しております。
親族が成年後見人になれば自由に売却できると思われがちですが、実際はそう簡単ではありません。成年後見制度の最大の目的は「本人の財産保護」です。たとえ施設費用の捻出という正当な理由があっても、本人の手持ちの預貯金で賄えると判断されれば、居住用不動産の売却許可が裁判所から下りないこともあります。親子で共有名義にする場合は、「家族信託」を活用して親が元気なうちに売却権限を子に移しておくなどの生前対策が不可欠です。
夫婦共有名義で購入|連帯債務から一生抜け出せないデメリット
夫婦の収入を合算して借入額を増やす「ペアローン」や「連帯債務」で住宅を購入した場合、離婚時に最も厄介な問題となるのが、「不動産の名義」と「住宅ローンの債務」が複雑に絡み合っている点です。
離婚の話し合いは精神的なストレスが大きく、「とにかく早く別れたい」と、財産分与やローンの名義変更を後回しにしたまま離婚届を出してしまう方が後を絶ちません。しかし、離婚したからといって金融機関に対する連帯債務や連帯保証の義務が消えるわけではありません。
【実際のトラブル相談】
15年前に離婚した際、財産分与の取り決めを曖昧にしたまま、元夫が共有名義の自宅に住み続け、私が家を出る形で離婚を成立させました。住宅ローンの連帯債務は今も私の名義が残ったままです。現在、私は再婚して新たに家を購入しようとしていますが、事前審査で「前の住宅ローンの連帯債務が残っているため、新たな融資はできない」と否決されてしまいました。元夫にローンの借り換えや名義変更を頼もうにも、音信不通で連絡すら取れず、自分の人生の再スタートを阻まれる事態に陥っています。さらに、もし元夫がローンを滞納すれば、突然私に一括返済の請求が来るという爆弾を抱えたまま生きています。
※実際のトラブル相談内容を一部調整して掲載しております。
実務上、離婚を理由に連帯債務から外してほしいと金融機関に交渉しても、拒否されるケースがほとんどです。解決するには、家に住み続ける側が単独でローンの借り換え(単独名義化)を行うか、それができなければ不動産を売却してローンを完済するしかありません。離婚時は感情的な対立を乗り越えてでも、不動産とローンの問題だけは離婚成立「前」に完全に清算しておくとよいでしょう。
共有名義によるメリット
共有名義には、住宅ローンの借入額が増える・税制上の優遇を複数受けられるといったメリットがあると言われています。しかし、これらのメリットは「将来もずっと共働きが続く」「共有者と意見が一致し続ける」といった条件が揃っていないと、思ったほど恩恵を受けられないことも少なくありません。
本章では、よく挙げられる共有名義のメリットをひとつずつ解説したうえで、それぞれの注意点も合わせてお伝えします。メリットとデメリットを冷静に比べたうえで、共有名義にするかどうかを判断してみてください。
住宅ローンの借入額が増える
住宅ローンの審査では、申込者の年収をもとに「いくらまで貸せるか」が決まります。単独名義の場合は1人分の収入しか審査に使えませんが、共有名義で2人が連帯債務者やペアローンを組むことで、2人分の収入を合算して審査を受けられるため、借入可能額を大きく増やせます。
これにより、1人の収入では手が届きにくかった物件でも購入できる可能性が広がります。都市部など物件価格の高いエリアを検討している場合に、特にメリットを感じやすい部分といえるでしょう。
ただし、借入額を増やすことはそのまま返済総額の増加を意味します。2人の収入を前提にした返済計画では、どちらかが育休・転職・病気などで収入が減った際に返済が苦しくなるリスクも高まります。借入可能額の上限いっぱいまで借りることには慎重な姿勢が必要です。
住宅ローン控除を共有者それぞれが受けられる
住宅ローン控除とは、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を最長13年間(中古住宅は10年間)にわたって所得税・住民税から差し引ける制度です。ペアローンや連帯債務型で共有名義を組んだ場合、共有者それぞれが自分の借入残高に応じて住宅ローン控除を受けられるため、単独名義よりも控除額の合計が大きくなる可能性があります。
たとえば夫単独で借りた場合と、夫婦それぞれが借りた場合とでは、控除できる所得税・住民税の総額が変わってきます。共働きで2人ともに安定した収入がある世帯にとっては、節税面での恩恵が期待できます。
一方で、産休・育休や転職などで一方の収入がゼロになると、その期間は控除の対象となる所得税自体がなくなるため、控除のメリットを受けられなくなります。また、連帯保証型(収入合算)の場合は連帯保証人には控除が適用されません。メリットを受けられる条件が限られている点には注意が必要です。
売却時の「3,000万円特別控除」が人数分適用できる
自宅(居住用財産)を売却して利益が出た場合、原則として譲渡所得税がかかります。ただし、一定の要件を満たすマイホームを売却したときは、売却益から最大3,000万円を差し引ける「3,000万円特別控除」という特例があります。
国税庁の定めによれば、共有名義の場合はこの特別控除が「共有者全員で3,000万円」ではなく、「共有者1人につき最大3,000万円」として適用されます(国税庁No.3308)。たとえば夫婦2人の共有名義であれば、最大6,000万円分の控除が受けられる計算になります。売却益が大きい場合に、税負担を大幅に抑えられる可能性があります。
ただし、この控除を受けるには各共有者が確定申告を行う必要があります。また、売却自体には共有者全員の同意が必要なため、誰か1人でも反対すれば売却できず、控除のメリットを活かせないケースも起こりえます。
相続税が共有持分に課税されるため相続税対策になる場合がある
単独名義の場合、所有者が亡くなると不動産の評価額全体が相続税の課税対象となります。一方、共有名義の場合は、相続が発生した際に課税されるのはあくまで「亡くなった人の持分に相当する部分」だけです。
たとえば親子で不動産を共有しており、親の持分が2分の1であれば、相続時の課税対象は不動産評価額の半分にとどまります。その結果、単独名義と比べて相続税の課税対象額を抑えられる場合があります。
ただし、相続税対策として共有名義を選ぶ場合でも、前述したとおり共有者が増えるほど権利関係が複雑化し、将来の活用や処分が難しくなるリスクがあります。節税効果はケースによって異なるため、税理士などの専門家に相談したうえで判断することをおすすめします。
親子で住宅ローンを組む場合に借入期間を長く設定できる
住宅ローンには完済時の年齢制限があり、多くの金融機関では「80歳までに完済すること」が求められます。そのため、申込み時の年齢が高いほど借入期間が短くなり、毎月の返済額が大きくなりやすいという問題があります。
こうした場合に活用されるのが「親子リレー返済」です。フラット35を例にとると、通常は申込者本人の年齢から完済時年齢(80歳)を基準に借入期間が決まりますが、親子リレー返済を利用すると後継者(子)の年齢をもとに期間を算出できるため、最長35年まで借入期間を設定しやすくなります。
たとえば、申込者が60歳・後継者が30歳の場合、通常であれば借入期間の上限は約19年ですが、親子リレー返済を使うと最長35年に設定できます(フラット35の場合)。月々の返済額を抑えながら住宅を取得できる点はメリットです。
ただし、後継者となる子は当初から連帯債務者となるため、将来的に返済義務を引き継ぐことになります。親に万が一のことがあった場合、残りのローンをすべて子が返済しなければならないリスクも念頭に置いておく必要があります。
共有名義にするべきかの判断基準
共有名義にはメリットもある一方で、これまで見てきたように多くのデメリットやリスクも存在します。「共有名義にすべきか、それとも単独名義にすべきか」を判断するには、いくつかの重要なポイントを事前に確認しておく必要があります。
以下の項目に一つでも当てはまる場合、共有名義を慎重に検討するか、単独名義で取得できる方法を探したほうがよいでしょう。
共有者全員に支払い能力があるか
共有名義の不動産では、固定資産税や住宅ローン、修繕費などの費用を共有者全員で分担するのが原則です。しかし、共有者の一人に安定した収入がない・借入を抱えているなど、支払い能力に不安がある場合、その分の費用が自分に回ってくるリスクがあります。
たとえば、相続で兄弟と共有名義になったケースで、片方が無職だったり、経済的に不安定な状況だったりすると、固定資産税を代わりに全額負担し続けるといった事態が起こりえます。また、住宅ローンの連帯債務であれば、一方が返済できなくなった場合、もう一方に全額の返済義務が生じます。
共有名義を検討する際は、相手の現在の収入・資産状況だけでなく、「将来にわたって安定して支払いを続けられるか」という視点で慎重に判断することが大切です。少しでも不安があるようであれば、最初から単独名義にすることを検討しましょう。
共有者の人数が3人以上など多いか
共有者の人数が多ければ多いほど、不動産の管理・活用・売却に必要な合意形成が難しくなります。売却や建替えには共有者全員の同意が必要であり、3人・4人と人数が増えるほど、1人でも反対すれば話が進まないリスクが高まります。
また、相続が重なるたびに共有者は増えていきます。たとえば兄弟2人で相続した不動産でも、どちらかが亡くなってその持分がさらに複数の相続人に引き継がれると、あっという間に共有者が5人・6人に膨らむことがあります。世代を超えるほど面識のない人同士が共有者になるケースもあり、意思決定はより困難になります。
相続などで共有名義が避けられない場合でも、なるべく早い段階で誰かが買い取って単独名義に整理するか、不動産全体を売却して現金で分け合うことを検討したほうが、将来的なトラブルを防ぎやすくなります。
共有者との関係は良好か
共有名義の不動産を円滑に管理・活用するためには、共有者同士の協力関係が欠かせません。修繕の実施や賃貸への活用、売却のタイミングなど、さまざまな場面で共有者との話し合いが必要になるからです。
現時点での関係が良好であっても、将来にわたって良好であり続けるとは限りません。夫婦であれば離婚、兄弟であれば各家庭の経済的な事情の変化など、長い年月の中でさまざまなことが起こりえます。関係が悪化した後に共有名義のままでいると、話し合いすら困難になり、弁護士を介した交渉や訴訟に発展するケースもあります。
共有者との関係性に少しでも不安があるならば、最初から共有名義を避けることが望ましいです。やむを得ず共有名義になる場合は、将来的に共有状態を解消できるよう、費用負担や売却方針などの取り決めを書面で残しておくことが重要です。
不動産の管理・活用ルールが定められているか
共有名義の不動産を所有する場合、「誰が管理を担当するか」「費用の負担割合をどうするか」「将来売却する際はどのように決めるか」といったルールをあらかじめ決めておくことが重要です。
遠方に住んでいて日常的な管理が難しいケースや、共有者それぞれが別の生活拠点を持っているケースでは、管理の負担が特定の人に偏りやすく、不公平感からトラブルに発展しがちです。
こうした問題を防ぐためには、共有名義にする前の段階で、費用負担のルール・管理の役割分担・売却方針などを話し合い、合意内容を書面に残しておくことが有効です。特に相続などで共有名義になることが決まっている場合は、不動産の専門家や弁護士に相談しながら、管理・活用のルールを事前に整備しておくと安心です。
共有名義で贈与とみなされるケースがある
共有名義の不動産では、「税金を意識せずに行った金銭のやり取り」が、税務上の贈与と判断されてしまうケースがあります。家族間のことだからと気にせずにいると、後から思わぬ課税を受けることになりかねません。
贈与税は、年間110万円(基礎控除額)を超える財産を無償で受け取った場合に課税されます。夫婦・親子間であっても例外ではなく、共有名義にまつわる以下のような場面では特に注意が必要です。
持分割合と費用負担割合が異なる場合
共有名義の不動産を登記する際、持分割合は実際に購入費用を負担した割合と一致させるのが原則です。持分割合と実際の費用負担割合がズレていると、その差額分が「一方から他方への贈与」とみなされ、贈与税が課税される可能性があります。
たとえば、夫が3,000万円・妻が1,000万円を負担して4,000万円の物件を購入したにもかかわらず、持分割合を夫婦それぞれ2分の1ずつで登記した場合を考えてみましょう。この場合、妻が実際に負担した額は1,000万円なのに、2,000万円分の不動産を取得したことになります。差額の1,000万円は夫から妻への贈与とみなされ、基礎控除110万円を差し引いた890万円に贈与税が課税される可能性があります。
このような事態を避けるためには、購入時の資金負担額をもとに持分割合を決め、それを正確に登記申請することが大切です。購入後にリフォーム費用の負担割合が持分と食い違う場合も同様のリスクがあるため、費用を出す際は持分割合に応じて分担するよう心がけましょう。
共有者のローンを肩代わりする場合
親子や夫婦で住宅ローンを組んでいるとき、一方が相手の返済分を代わりに払い続けていると、税務上の「贈与」と判断されるリスクがあります。
たとえば、育休や退職で妻の収入がなくなり、連帯債務型ローンの妻の返済分を夫が肩代わりするようになったケースです。本来それぞれが負担すべきローンを無償で代わりに払うことは、「相手方の債務を免除してあげた」のと実質的に同じと税務上では扱われます。その年間の肩代わり額が110万円を超えると、超えた分に贈与税が課税される可能性があります。
同様に、親子共有名義の物件で子が親の分のローンを払い続けているケースでも注意が必要です。「家族間のことだから問題ない」と思っていても、税務署は実態に基づいて判断するため、申告漏れとなると後から追徴課税されるリスクがあります。
肩代わりが必要な状況になった場合は、支払った金額に合わせて持分割合を変更する、または贈与税の基礎控除枠内(年間110万円以下)に収まるよう計画的に対応するといった方法が考えられます。いずれの場合も、税理士などの専門家に相談したうえで対処することをおすすめします。
未成年者と共有名義になった場合は特別代理人が必要なケースがある
未成年者(18歳未満)は、法律上、単独で契約などの法律行為を行うことができません。そのため、未成年者が共有名義に含まれる不動産を売却したり、遺産分割協議を行ったりする際には、通常、親権者が代理人として手続きを進めます。
しかし、親権者と未成年者の間で「利益相反」が生じるケースでは、親権者は代理人になれず、家庭裁判所に申し立てて「特別代理人」を選任してもらう必要があります。
利益相反とは、片方にとって有利な行為が、もう片方にとって不利になる状況のことです。具体的に特別代理人が必要になる主なケースは以下の通りです。
- 親権者が未成年者の共有持分を自分自身で買い取るケース(親が買主・未成年者が売主となり、利益が対立する)
- 親権者が自分の借入のために、未成年者の共有持分を含む不動産に抵当権を設定するケース(親には借入のメリットがある一方、未成年者には担保リスクが生じる)
- 親権者も相続人に含まれる遺産分割協議を行うケース(親が有利になるよう協議を進める可能性があるため)
一方で、親権者と未成年者が共有する不動産を第三者に売却する場合は、利益相反には当たらないため、特別代理人の選任は不要です。また、法定相続分どおりに相続登記を行うだけであれば、遺産分割協議を経る必要がないため、特別代理人なしで手続きできます。
特別代理人は、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることで選任してもらえます。親族などから候補者を立てることも可能ですが、法的な知識が必要な場面も多いため、司法書士などの専門家に依頼するケースも少なくありません。
未成年者との共有名義をめぐる手続きは複雑になりやすいため、不安な場合は早めに専門家へ相談することをおすすめします。
共有名義を避けるためにできること
これまで解説してきた通り、共有名義にはさまざまなデメリットやリスクが伴います。最善の対策は、そもそも共有名義という状態を発生させないことです。状況に応じて、以下のような方法を検討してみましょう。
【親子で不動産を購入する場合】親が子の住宅購入資金を援助する
親子で不動産を購入する場合、共有名義にする代わりに、親が子の住宅取得資金を援助する方法があります。この場合、子どもが単独名義で購入するため、将来的な共有トラブルを回避できます。
親から子への住宅取得資金の贈与には、「住宅取得等資金の非課税の特例」が使える場合があります。国税庁(No.4508)によると、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間の贈与であれば、省エネ等住宅に該当する場合は1,000万円、それ以外の住宅は500万円まで贈与税が非課税となります(受贈者が18歳以上、合計所得2,000万円以下などの要件あり)。
共有名義にせずに住宅を取得させる方法としては、次のような選択肢があります。
- 親が子どもに住宅取得等資金を贈与し、子が単独で購入する
- 親が住宅ローンの頭金を援助し、ローンは子どもが単独で組む
- 親が土地を単独で所有し、建物は子どもが単独で建てる(土地と建物の名義を分ける)
なお、援助の額や方法によっては贈与税が発生することがあるため、親から金銭的な支援を受ける際は、あらかじめ税理士などの専門家に相談したうえで進めることをおすすめします。
【相続前】遺言書で単独名義になるように相続人を指定してもらう
相続によって不動産が共有名義になるケースの多くは、遺言書が存在しないまま複数の相続人が法定相続分に従って相続するときに起きます。これを防ぐために有効なのが、被相続人(財産を残す人)が生前に遺言書を作成しておく方法です。
遺言書に「この不動産を長男に相続させる」などと明記しておけば、原則としてその内容が優先されるため、相続開始と同時に共有名義になる事態を防ぐことができます。また、遺言書があれば遺産分割協議(相続人全員での話し合い)も不要になるため、手続きをスムーズに進められます。
遺言書を残す際は、自筆で作成する「自筆証書遺言」よりも、公証役場で公証人が関与して作成する「公正証書遺言」が確実です。公正証書遺言は形式上の不備で無効になるリスクが低く、法務局や公証役場で保管されるため改ざんや紛失の心配もありません。
ただし、遺言書を作成する際は「遺留分」(法律で最低限保証されている相続割合)に配慮が必要です。遺留分を無視した内容では相続人間でトラブルに発展する可能性があるため、司法書士や弁護士などの専門家に相談しながら作成することをおすすめします。
【相続時】代償分割・換価分割などによって遺産を分割する
すでに相続が始まっている場合でも、遺産分割協議の中で共有名義を避ける方法があります。代表的なのが「代償分割」と「換価分割」です。
代償分割とは、相続人の一人が不動産を単独で相続する代わりに、他の相続人に対して現金(代償金)を支払う方法です。たとえば、長男が自宅を引き継ぐ代わりに、次男・長女に相当額の金銭を支払うことで、不動産を共有にせずに公平な遺産分割を実現できます。不動産を売らずに済む一方で、引き継ぐ側に支払い能力が必要となる点に注意が必要です。
換価分割とは、不動産を売却して現金に換え、その売却代金を相続人間で分配する方法です。物件の評価額でもめることなく、現金で公平に分けられるため合意を得やすいという利点があります。ただし、思い入れのある実家などを手放すことになるため、相続人全員で十分に話し合ってから決断することが大切です。
いずれの方法を選択するにしても、合意した内容は必ず「遺産分割協議書」として書面に残し、相続人全員が実印で押印しておきましょう。
共有名義の状態から抜け出す方法
すでに共有名義になっている場合でも、状況に応じてさまざまな解消方法があります。自分と共有者の関係性・資力・不動産の状態などを踏まえて、もっとも現実的な方法を選ぶことが大切です。
| 方法 |
内容 |
| 共有持分を第三者に売却する |
自分の共有持分のみを不動産会社などの第三者に売却する方法。他の共有者の同意なく単独で実行できるため、共有者と話し合いがまとまらない場合でも共有関係から抜け出せる。ただし、持分のみの売却は市場価格より低くなりやすい点に注意。 |
| 共有者間で共有持分を売却する |
自分の持分を他の共有者に買い取ってもらう(または他の共有者の持分を自分が買い取る)方法。共有者のうち誰かが不動産を引き続き使いたい場合に向いており、合意さえ取れれば比較的スムーズに手続きできる。買い取る側に相応の資金が必要。 |
| 共有者全員で共有不動産を売却する |
共有者全員が合意したうえで不動産全体を第三者に売却し、売却代金を持分割合に応じて分配する方法(換価分割)。市場価格での売却が可能で公平性が高いが、1人でも反対すると実行できない。 |
| 共有不動産を分筆して所有権移転登記をする(土地) |
共有している土地を物理的に切り分けて(分筆)、それぞれが単独で所有する方法(現物分割)。分割後は各自が自由に活用・売却できる。建物には適用できず、土地の形状や価値を等分に分けるのが難しいケースもある。境界確定測量などの費用も発生する。 |
| 共有持分を放棄する |
自分の持分を放棄することで共有関係から離脱する方法。他の共有者の同意なく単独で行えるため手続きはシンプルだが、売却益など金銭的な対価は一切得られない。不動産に価値がほとんどないケースや、早期に関係を解消したい場合に検討する選択肢。なお、放棄された持分は他の共有者に移転するため、受け取った側に贈与税が課される可能性がある。 |
| 共有物分割請求訴訟を起こす |
共有者間での話し合いが決裂した場合に、裁判所に共有状態の解消を求める手続き。裁判所が強制的に分割方法を決定するため、相手の同意がなくても共有を解消できる。ただし、解決まで半年〜1年以上かかることが多く、弁護士費用も数十万円以上かかるケースが多い。最終手段として位置づけるべき方法。 |
いずれの方法にも一定のメリットとデメリットがあり、状況によって最適な選択肢は異なります。共有名義の解消を検討している場合は、まず弁護士や不動産の専門家に相談し、自分のケースに合った方法を選ぶことをおすすめします。
共有名義の解消方法についてより詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
まとめ
本記事では、共有名義のデメリット・メリット・判断基準から、共有名義を避ける方法、すでに共有状態になっている場合の解消方法まで解説しました。
共有名義には住宅ローン控除の拡充や借入額の増加といったメリットがある一方で、売却・活用の自由が制限される、離婚・相続でトラブルになりやすい、相続が繰り返されるたびに権利関係が複雑化するといったデメリットも多く存在します。
共有名義にするかどうかを判断する際は、共有者全員の支払い能力・人数・将来的な関係性の変化などを慎重に見極めることが大切です。また、持分割合と費用負担の割合がずれると贈与税が課される可能性もあるため、注意が必要です。
すでに共有名義になっている場合は、放置せず早めに解消策を検討することをおすすめします。共有者との話し合いで解決が難しい場合は、共有物分割請求訴訟という法的手段もあります。状況によって最適な方法は異なるため、まずは弁護士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。