
今住んでいる場所以外に土地を持っているが、売るか貸すかして現金化したいと考えている人は少なくないでしょう。売る場合と貸す場合、どれぐらいの利益とコストがあるのか、比べてみましょう。
使わない土地は「売却」か「賃貸」でリスク減
親族から相続した土地を所有しているものの、遠方にあるために放置しているという話がよくあります。使っていない土地は売却して現金に換えるか、賃貸に出して収入を得るほうがよいとされています。
所有している土地に何の策も取らずにそのままにしておくと、以下のようなリスクがあります。
土地を所有していると税金がかかる
当然のことですが、土地を所有していると毎年固定資産税が課せられます。何も使っていないのに維持費だけが発生する状況では、その土地は負の財産になってしまいます。
管理を怠ると近隣トラブルになることも
遠方にあるからといって土地を放置していると、ゴミが不法投棄されたり、雑草が生えたりしてしまいます。周辺に住む住民から苦情が寄せられる事態にも発展します。
また、ゴミなどは出火の原因にもつながります。万が一、火事が起きると、所有者が管理責任を問われる可能性もあります。

土地売却のメリットとコスト
土地を売るか貸すか、どちらがよいのか判断するためには、それぞれのメリット・リスク・コストを押さえておく必要があります。まずは、売却のメリットとコストについて見てみましょう。
売却の流れ
土地の売却の流れを簡単に説明すると、以下のようになります。
売却する土地の不動産登記簿(または登記事項証明書)をもとに、土地の住所(地番)や面積、用途などを確認しておきます。
また、土地の境界線が確定していない場合は測量会社に依頼して、境界線を確定させておきます。土地の売却価格を決めるには、不動産会社の査定を受けて、価格の目安を出します。
査定サイトなどを利用すると、複数の業者に査定を依頼できます。インターネットを利用した査定で業者を絞り込み、最終的には業者に実際にその土地まで足を運んでもらい、正確な査定を受けるのが一般的な流れです。
査定を受ける過程で、信頼できると思える業者と媒介契約を結び、売り出しを開始します。
不動産会社は広告を作って宣伝したり、土地の購入希望者への見学対応をしたりと、売主に代わってさまざまな販売活動をします。
購入希望者が現れると、売主との間で交渉を行います。交渉も不動産会社が間に入って行われます。合意が得られれば、売買契約を結んで取引が成立します。
後日、決済をし、売却した土地を買主に引き渡して取引は終了です。

土地売却のメリット
土地の売却には以下のようなメリットがあります。
一度にまとまったお金が手に入る
土地を売却するいちばんのメリットは、一度にまとまったお金を確保できることでしょう。所有する土地の場所や面積によりますが、売却代金が数百万、数千万になることもすくなくありません。
特に、現在使っていない土地を所有しているなら、売却して得たお金を使い、今の住まいの改築や子どもの教育資金などに充てることができます。
固定資産税の支払いがなくなる
使っていなくても所有している土地には税金が課せられます。土地を売却すれば、固定資産税や都市計画税を支払わなくてもよくなります。

管理の手間がなくなる
先ほど述べたように、使っていない土地を放置しておくと、その土地の近隣住民とトラブルになるリスクがあるため、定期的に足を運んで清掃するなど、管理をする必要があります。
売却すれば、そうしたわずらわしい手間から解放されます。
土地売却のコストとリスク
土地を売却すると一度にまとまったお金が手に入りますが、売却の際にはリスクも伴います。また、売却することによってお金が出ていくことも注意しなければなりません。
売るタイミングを間違えると損をすることがある
価格査定をしてもらうことで、おおよその相場はわかりますが、相場はあくまでも相場。その価格で確実に売れるわけではありません。
査定して出してもらった価格で売り出しても、買い手がつかなければ売れ残ってしまいます。土地の需要は一定しておらず、売る時期によって価格に大きな開きがあることも珍しくありません。
また、価格交渉の過程で、買い手から値引きを要求されることもあります。持ち続けていると固定資産税や都市計画税を払い続けなければならず、売値を下げなければならなくなります。
後述するように、売却するときには手数料などの費用が発生します。売り時を間違えると損をするケースも出てきます。
土地を売ると手数料・税金が発生する
土地を売却するときには、不動産会社にさまざまなことを依頼します。無事に売買契約が結ばれると、仲介手数料を支払う必要があります。
そのほかにも、土地に抵当権が設定されている場合には抵当権抹消の手続きが発生します。この手続きは司法書士に依頼することが多いでしょう。
売買契約書には印紙を貼りますが、この費用(印紙税)も必要になりますし、土地の所有権を移す登記を行う際には登録免許税がかかります。
さらに、土地を売却して利益が出た場合、譲渡所得税と住民税を支払わなければなりません。

土地を貸すメリットとコスト
では、賃貸にはどのようなメリットとコストがあるのか、見てみましょう。
賃貸の方法
ひとくちに「賃貸」と言っても、2つのパターンに大きく分かれます。
土地だけを貸す
土地の状態で第三者に貸すパターンです。借り手はそこに一戸建て住宅やマンション、テナントなどを建てて活用します。この場合、土地の上に建っている建造物は借り手の持ち物になります。
また、土地の状態に少し手を加え、駐車場として車の所有者に貸すケースもあります。駐車場経営は土地の面積が大きくなくても始められ、しかもコストも低いことから、後述する賃貸経営よりもハードルが低く注目を集めています。
土地の上に建物を建てて貸す
土地の所有者自身がマンションやビルなどを建てて貸すパターンです。この場合、土地・建物ともに土地の所有者の持ち物になります。
土地を貸すメリット
土地を貸すメリットとして、以下のような点が挙げられます。
定期的な安定収入
賃貸のメリットは、定期的に借地料を得られることです。特に、土地だけを貸すパターンでは、土地の所有者側に建物を立てたり設備を整えたりするコストがあまりかかりません。
また、土地の上にマンションやアパート、ビルを建てて貸す賃貸経営は、イメージしやすいポピュラーな土地の活用方法でしょう。
建物を建てる際に初期投資が必要になりますが、空室をできるだけ少なくできれば数年で費用を回収でき、高い収益性を持つ物件に育てることも可能です。
税金が安くなることがある
所有する土地を貸し出すと、節税につながることがあります。
まず、住宅用として貸した土地(土地の上に自身で住宅を建てて貸す場合も含む)は「小規模住宅用地の特例」によって固定資産税・都市計画税が減額されます。
住宅用の土地のうち、1戸あたり200㎡までの部分は「小規模住宅用地」とよばれ、この部分に相当する土地の固定資産税は課税標準額の約1/6となります。
また、都市計画税は課税標準額の約1/3になります。マンションやアパートなら、その戸数×200㎡に当たる面積にこの特例が適用されます。
さらに、相続したときに課せられる相続税についても、住宅はもちろん、駐車場などとして賃貸していた土地も「貸付事業用宅地等の特例」が適応されます。
上限面積は200㎡で、50%の減額となります(相続開始前から土地を貸しているなどの条件があります)。

土地を貸すときのコストとリスク
当然のことですが、土地の賃貸にもメリットばかりではなく、コストやリスクがあります。
地代収入にも税金がかかる可能性がある
土地を貸せば、うまくいけば労力をかけずに定期的な収入を得られますが、土地を貸して地代収入を得た場合、税金がかかる可能性があります。
地代収入から必要経費を引いた儲け(=所得)は所得税法で「不動産所得」とよばれ、所得税の課税対象になります。また、市民税も課せられます。
賃貸借契約を結ぶと土地を自由にできなくなる
土地を貸して賃貸借契約を結ぶと、所有者はその後にその土地を売りたい、あるいは他の用途に使いたいと思っても難しくなります。
なぜなら、借主には「借地権」があるからです。借地権には「普通借地権」と「定期借地権」があります。定期借地権は、さらに「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用定期借地権」の3つに分かれます。
普通借地権と定期借地権には契約期間、更新の有無などに違いがありますが、普通借地権は契約期間30年以上(期間の合意がある場合は30年)、一般定期借地権は契約期間50年以上となっていて、一度契約を結ぶと長期にわたります。

「売却」と「賃貸」どっちがいいの?
売却と賃貸には、それぞれメリットとリスクがあり、コストがかかることがおわかりいただけたと思います。
では、どちらを選択すればよいのでしょうか。ここでは、選択の目安について見ていきましょう。
どのタイミングでお金を得たいのか
売却か賃貸かを決める目安の一つに「どれほどの額のお金がいつ必要になるのか」というプランに照らし合わせる方法があります。
所有している土地を使う予定がなく、転居や改築、子どもの進学や結婚など、まとまったお金が必要になる予定がある場合は、売却したほうが得策といえます。
一方、将来に備えて、労力をかけずに安定した収入を確保したいなら、賃貸を考えてみてもよいでしょう。
土地の形状や場所から決める
所有している土地の状況から、売却と賃貸のどちらが適しているのか見当をつけられることもあります。
たとえば、マンションやテナントを建てられないような狭い土地なら、売却するよりも、飲料メーカーに土地を貸して自動販売機を設置したほうが、ちょっとした副業にもなります。
市街地から離れたロードサイドにテナントを建てられるほどの土地を所有しているなら、コンビニエンスストアなどを運営する法人に土地などを貸すという方法もあります。
リスクやコストを考えて決める
売却と賃貸、それぞれにかかるお金やリスクを考えて「自分が納得いく方を選ぶ」というのも、選択方法の一つです。
上述したように、土地を売却すると、不動産会社などに手数料を払ったり、売却して手に入ったお金に対して税金がかかったりすることがあります。
また、所有していた土地に誰も住んでいない老朽化した古家が建っていると、売却前に更地にしなければならないケースもあります。
手数料や税金、古家の解体費用など売却にかかったコストを差し引くと、あまり手もとに現金が残らない可能性もあります。売却を進める際、信頼のできる不動産会社と相談しながら進めるのが成功のカギになるでしょう。
一方、賃貸には不動産所得に税金がかかったり、貸した土地を自由にできなくなったりするデメリットがあります。
また、先のデメリットやコストの面では触れませんでしたが、賃貸の最大のリスクは「計算通りに借り手がつかず、収益が上がらない」ことでしょう。
仲介業者に任せられる土地の売却に比べ、賃貸に出す場合は所有者自身で勉強すべきことが多いといえます。ただ、いろいろ調べているうちに、土地活用に興味が出てきたという方はチャレンジする価値があるでしょう。

まとめ
土地を使わずに所有しているだけの状態では、税金の支払いや管理の手間という負の部分だけが所有者にのしかかってきます。
しかし、土地を売ったり貸したりすることで現金を得ることができます。所有している土地の特性やライフプランを考慮しながら、売却か賃貸を検討してみましょう。
売却と賃貸のいずれがよいか判断する際、売却・賃貸にかかわるコストや利益のシミュレーション、所有地の相場価格など、さまざまな知識が必要になります。不動産業者のアドバイスを受けることをおすすめします。