現金と不動産の相続はどっちが得?節税対策や相続のケースなども解説

相続 現金 不動産 どっちが得

 
相続税の基礎控除額が改正され、課税対象になっている人が増えています。実際には課税対象者が約1.8倍以上に増加しているので、相続税がより身近な税金になりつつあります。

相続税は金額が大きく、事前に対策が必要なことが多いです。一般的な相続財産は現金と不動産ですが、どちらを相続した方が得になるのでしょうか。

この記事では、現金と不動産の相続はどちらが得になるのかをメインテーマとして、現金を相続する場合と不動産を相続する場合ついて詳しく解説していきます。

また、現金を相続した方が得になるケースや不動産を相続した方が得になるケースなども説明するので、ぜひ参考にしてみてください。

現金を相続する場合

現金 相続

遺産を相続した場合、相続税の金額はいくらになるのか計算する必要があります。

また、現金の相続における節税対策をおこなうことで、そのまま相続するよりも納税額を低くできるケースもあります。

次の項目から、現金を相続したときの相続税と節税対策について詳しく解説していきます。

現金を相続したときの相続税

まず、相続税を算出する際に「相続財産の合計額」から「基礎控除額」を差し引きます。差し引いたあとの金額が「課税金額」となります。

課税金額の算出方法は以下の計算式です。

課税金額=相続財産の合計額-基礎控除額
※基礎控除額=3,000万円+600×法定相続人の数

例えば、相続した現金が5,000万円だとして、法定相続人は1人だとします。これを上記の計算式に当てはめると以下の通りです。

5,000万円-(3,000万円+600万円×1人)
=5,000万円-3,600万円
1,400万円

したがって、課税金額は1,400万円となります。さらにこの1,400万円に税率をかけて相続税額を算出します。その計算式が以下の通りです。

相続税額=1,400万円×15%(相続税率)-50万円(控除額)=160万円
※相続税率と控除額については国税庁ホームページの「相続税率の速算表」を参照

このケースでは支払う相続税は160万円となります。

ただし、節税対策をおこなうことで相続税の負担を減らせる場合もあります。節税対策の具体的な方法については次から解説します。

現金の相続における節税対策

現金の一般的な税金対策は「生前贈与」です。相続財産の金額が多ければ相続税の負担も大きくなってしまいます。そのため、生前に財産を配偶者や子供、孫に贈与することもあるでしょう。

生前贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの制度があります。

これらの制度について詳しく説明するので、節税対策をおこなう際の参考にしてみてください。

暦年課税制度を利用して贈与する場合

暦年課税制度は「贈与額が年間に110万円以内であれば非課税」となります。この制度を利用すれば、長期間に少しずつ贈与することで相続財産を減らすことができるため節税が可能です。

例えば、1人に毎年110万円ずつ20年間贈与するとしたら、計算式は以下の通りです。

110万円×20年間=2,200万円

前の項目のように通常の相続であれば現金5,000万円が課税対象となり、相続税160万がかかります。

しかし、暦年課税制度によって贈与したことで課税対象は5,000万円-2,200万円=2,800万円となります。その結果、基礎控除額よりも金額が少なくなるため相続税が0円となります。

ただし、相続開始前の3年間に贈与した財産は非課税の範囲内だとしても相続財産に含まれてしまうので注意しましょう。

相続時精算課税を利用して贈与する場合

相続時精算課税制度は「期間に関係なく2,500万円までの贈与であれば非課税」です。

そのため、この制度であれば1年間で2,500万円の贈与がおこなわれたとしても税金はかからないというわけです。

ただし、贈与によって非課税となった金額については贈与者が亡くなり相続が発生したときに精算されます。

相続時精算課税制度に関する内容や計算方法などは以下の記事でわかりやすく解説しているので、参考にしてみてください。

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不動産を相続する場合

不動産 相続

不動産の相続は一般的に現金よりも相続税における節税効果が高いといわれています。

なぜなら、不動産の評価額は時価よりも低くなるからです。また「小規模宅地等の特例」もあり、さらに節税できるケースがあります。

次の項目から不動産の節税効果について詳しく解説します。また、居住用物件を相続した場合における相続税の算出方法も説明します。

不動産の評価額は時価よりも低くなる

土地や家屋などの不動産は時価よりも低い金額で評価されます。主な評価方法とその計算式は以下の通りです。

土地の評価方法・・・路線価または固定資産税評価額によって評価されます。一般的に路線価は時価の約80%、固定資産税評価額は時価の約70%で評価されるといわれています。また、計算方法には「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあります。

路線価方式・・・土地面積×路線価
倍率方式・・・固定資産税評価額×倍率
※路線価と倍率は国税庁が公表している「路線価図・評価倍率表」で確認することが可能です。

家屋の評価方法・・・固定資産税評価額によって算出されます。土地と同様に時価の70%程度で評価されるといわれています。

計算式・・・固定資産税評価額×1.0

例えば、不動産の時価が5,000万円だとすると評価額は3,500~4,000万円程度になります。この評価額から相続税が算出されます。

仮に評価額4,000万円の不動産を1人が相続する場合の課税金額は以下の通りです。

4,000万円-(3,000万円+600万円×1人)
=4,000万円-3,600万円
400万円

続いて課税金額400万円に相続税率をかけます。

400万円×10%(相続税率)=40万円
※相続税率と控除額については国税庁ホームページの「相続税率の速算表」を参照

現金5,000万円を相続すると相続税160万円がかかるのに対し、時価5,000万円(評価額4,000万円)の不動産における相続では相続税40万円となりました。

このように、現金よりも不動産を相続するほうが節税効果は高くなり、税金面でお得といえます。

小規模宅地等の特例によって節税できる

被相続人から相続した土地は一定の要件を満すことで、評価額から最大80%減額されるケースがあります。これを小規模宅地等の特例といい、適用された場合は大幅に節税ができます。

小規模宅地等の特例の対象となる土地は「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」の4種類があります。特例が適用される要件はそれぞれ異なります。

小規模宅地等の特例については以下の記事で詳しく解説しています。適用要件をしっかりと確認しておくことで、現金と不動産どちらを相続すると得になるのか判断しやすくなるかもしれません。

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次の項目では、居住用物件を相続したときに小規模宅地等の特例が適用されたと仮定して、相続税の金額がいくらになるのかシミュレーションしていきます。

居住用物件を相続したときの相続税

居住用物件であり評価額8,000万円(時価1億円の80%)の土地を相続する際に、小規模宅地等の特例が適用された場合のシミュレーションをおこなうと以下のようになります。

土地の評価額・・・8,000万円
特例適用後の課税金額・・・8,000×(1−0.8)=1,600万円
相続税・・・1,600万円×15%(相続税率)−50万円(控除額)=190万円
※相続税率と控除額については国税庁ホームページの「相続税率の速算表」を参照

したがって、居住用物件を相続する際に特例が適用されたケースでの相続税は190万円です。

もし相続前に土地を8,000万円で売却してから、現金として8,000万円を相続すると特例が受けられません。

そのため、基礎控除を差し引いても「8,000万円-3,600万円=4,400万円」が課税対象となり、相続税は「4,400万円×20%-200万円=680万円」となります。

つまり、居住用の土地を相続した場合と現金を相続した場合を比較すると「680万円-190万円=490万円」を節税できるというわけです。

賃貸物件は借地・借家権によって節税できる

賃貸物件は前の項目で説明した小規模宅地等の特例以外にも節税できるケースがあります。

なぜなら賃貸物件は「借家権割合」や「借地権割合」を用いて評価額を引き下げることができるからです。

借家権割合は全国一律30%と定められています。そのため、建物を貸している場合は通常の評価額より30%減額されます。建物の一部を自宅として利用している賃貸物件の場合は「賃貸割合」も含めて計算します。

また、賃貸している更地であれば通常の評価額に借地権割合をかけた金額が評価額になります。

土地の上に建物を建設している賃貸物件を「貸家建付地(かしやたてつけち)」といいます。例えば、賃貸アパートや賃貸マンションなどが該当します。

貸家建付地の評価額は本来の評価額に借家権割合と借地権割合、賃貸割合を乗じて計算します。これらをそれぞれ計算式にすると以下になります。

借家・・・建物の評価額-建物の評価額×借家権割合×賃貸割合
借地(更地)・・・更地の評価額-更地の評価額×借地権割合
貸家建付地・・・本来の評価額-本来の評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

借地権割合については地域により異なるため、以下のリンクを参照してみてください。また、賃貸割合が100%の場合は満室ということになり、割合が低いほど空室が目立つということです。

参照:国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」

貸家建付地における相続税の計算方法

貸家建付地における本来の評価額(自用地としての評価額)を4,000万円だとします。また、借家権割合30%・借地権割合70%・賃貸割合100%と仮定した賃貸物件の評価額を計算します。

これらをまとめたものが以下の通りです。

本来の評価額・・・4,000万円
借家権割合・・・30%
借地権割合・・・70%
賃貸割合・・・100%

前の項目でも説明した貸家建付地の評価額を算出する計算式「本来の評価額-本来の評価額×借家権割合×借地権割合×賃貸割合」に当てはめると以下の通りになります。

貸家建付地の評価額

4,000万円-4,000万円×30%×70%×100%
=4,000万円-4,000万円×0.3×0.7×1
=4,000万円-4,000万円×0.21
=4,000万円-840万円
3160万円

したがって、貸家建付地の評価額は通常の物件に比べて840万円低くなります。ここから更に基礎控除を差し引くと課税金額が0円になるため相続税も0円になります。

現金と不動産の相続はどっちが得なのか

どっちが得
相続税に限った話であれば、現金で相続するよりも不動産を相続した方が、小規模宅地等の特例などの制度が設けられているため節税しやすくお得であるといえます。

しかし、ケースによっては現金で相続した方が得である場合もあります。

つまり、相続においてどちらが得なのかは一概にはいえず、ケースごとに判断する必要があります。

次の項目から現金を相続した方が得になるケースと不動産を相続した方が得になるケースについて解説しますので、相続時の参考にしてみてください。

現金を相続した方が得になるケース

1円単位まで遺産分割したい場合

遺産分割協議をおこなう場合、現金であれば1円単位で遺産を分割することができます。

一方で、不動産の場合は共有名義で相続可能ですが、現金のように細かく遺産分割するのは困難でしょう。

また、共有名義の不動産を売却したり活用する際は相続人(名義人)全員の同意が必要なケースもあります。

「売りたい」「売りたくない」と意見が別れてしまうと、その不動産をどうすることもできないまま放置してしまうことも考えられます。

しかし、現金で相続すれば不動産と比べて遺産分割が容易なため、話がまとまりやすいかもしれません。相続した現金を自由に活用できることもメリットの一つです。

万が一、遺産分割協議がまとまらなかったり、交渉に苦手意識があるという場合は相続問題に詳しい弁護士に相談しましょう。

弁護士のような専門家に介入してもらうことで、兄弟の仲が悪くなるなどの相続トラブルを起こさずに遺産分割を終わらせることができるかもしれません。

不動産管理の費用や手間をかけたくない場合

不動産は所有しているだけでも毎年固定資産税を支払わなければなりません。また、修繕費や維持費などの負担も積み重なってしまうかもしれません。

その理由は、活用しないまま空き家・空き地として長期間放置しておくと、建物の老朽化が進んだり雑草が伸び放題になってしまう恐れがあるからです。

自分が住んでいる場所から遠方に相続した不動産がある場合は頻繁に足を運んで管理することも難しいでしょう。

このように不動産管理の費用や手間をかけたくない場合は、不動産を現金化(売却)して相続したほうがよいといえます。

不動産を相続した方が得になるケース

不動産の資産価値が高い場合

不動産の資産価値が高いかつ小規模宅地等の特例を受けられるのであれば、不動産のまま相続した方が得になる可能性が高いです。

特例によって相続税の節税対策をおこなったあとに、高く売却できれば手元に残るお金が多くなるケースがあります。

そのため、不動産を相続する際に特例が受けられそうなのか、資産価値はどのくらいなのか調査することが大切です。

もし不動産を相続したあとにできるだけ高く売りたいという人は、以下の記事で売却方法をわかりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

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相続した不動産を活用する場合

居住用物件や賃貸物件として活用する予定があるのであれば、現金化せずに不動産を相続するとよいかもしれません。

例えば、相続した不動産の住宅ローンが完済されているのであれば、家賃を支払う必要がなくなります。

また、収益性の高さが見込める賃貸物件であるならば、相続してすぐに家賃収入を得られる可能性もあります。

もし特例が適用されなかったとしても、現金を相続するよりも大きなメリットがあるといえます。

不動産を現金化する前にどのくらい利益をもたらす物件なのかしっかりと加味した上で、不動産のまま相続するのか、売却して現金として相続するのか慎重に判断することが大切です。

まとめ

一般的に現金の相続における節税対策する場合、生前贈与をおこないます。生前贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの制度があります。

ただし、暦年課税の控除額は「1年間で110万円以内」相続時精算課税の控除額は「2,500万円以内」と限度があります。

一方で、不動産相続時には「小規模宅地等の特例」が定められており、適用されると不動産の評価額に関わらず最大80%減額される制度です。

そのため、現金を相続するよりも不動産を相続するほうが節税効果が高いといえます。つまり、税金面に限った話であれば不動産を相続するほうが得になる可能性が高いでしょう。

しかし、実際にはどちらの相続が得になるのかはケースによって異なるため一概には言えません。

もし現金を相続するか不動産を相続するか判断に迷った場合は、相続問題や節税に詳しい税理士や弁護士などの専門家に相談することが大切です。

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