
借地契約が満了または解除されたとき、借地を地主へ返還しなければいけません。
そして、借地に建物を建てた場合、返還時に取り壊して更地の状態に戻すのが原則です。
建物の解体にも数十〜数百万円もの費用がかかるため、借主にとっては大きな負担といえます。
借地契約の種類によっては、借地上の建物を買取してもらうように地主へ請求できるので、不動産問題に詳しい弁護士と相談しながら交渉してみましょう。
また、借地契約が切れる前に、借地権を建物ごと売却することも可能です。
その場合は、借地権や建物を直接買取してくれる「専門の買取業者」に相談するとよいでしょう。
借地権における「旧法」と「新法」について
借地を貸主に返還する場合に知っておかなければならない法律があります。それが、一般的に「旧法」と「新法」と呼ばれる借地権の更新を定めた法律です。
不動産の賃貸では、貸主と借主の間で賃貸借契約を結びます。しかし、立場の弱い借主が不利になってしまうことが多くあります。
そこで、さまざまな法律で基準を定めています。その中に、借地権の更新を定めた「借地法」と「借地借家法」があります。
2つある法律のうち、自分はどちらの法律が適用されるのか疑問に思う人も少なくないでしょう。
実は、賃貸契約をした時期によって、どちらの法律が対象となるか異なります。
平成4年7月31日以前に契約した借地については借地法が、平成4年8月1日以降に契約した借地については借地借家法が適用されます。
これは、最初に借地法が制定され、時代の変化とともに、新たに借地借家法が制定されたためです。
そのため、借地法は旧法、借地借家法が新法と呼ばれています。
旧法と新法にはいくつか違いがありますが、一般的に新法の方がより借主を保護したものとなっています。
借地の返還に関係する旧法と新法の違いが契約期間です。
1.借地法(旧法)
借地法(旧法)では、建物の造りによって最初の契約期間が異なります。
木造などの非堅固建物は20年以上、鉄筋コンクリート造などの堅固建物は30年以上の契約期間にしなければなりません。
もし、これより契約期間が短い、もしくは期間の定めがない賃貸契約であった場合、非堅固建物の契約期間は30年、堅固建物の契約期間60年となります。
また、契約を更新した場合の更新期間も非堅固建物、堅固建物で定めがあります。
非堅固建物 | 20年以上 |
---|---|
堅固建物 | 30年以上 |
非堅固建物 (期間の定めがない場合) |
20年 |
堅固建物 (期間の定めがない場合) |
30年以上 |
2.借地借家法(新法)
借地借家法(新法)では、非堅固建物や堅固建物の区別はありません。
最初の契約期間は原則、一律30年です。
ただし、30年以上契約をした場合はその期間となります。
また、契約を更新した場合の更新期間は、1度目と2度目以降で期間が異なり1度目は20年以上、2度目以降は10年以上です。
借地の更新手続きにおける旧法と新法の違い
借地の返還に関係する旧法と新法の違いとして、もうひとつ挙げられるのが、契約期間の満了時に、新たな期間などを定めて引き続き契約を続行する借地権の更新手続きです。
原則、借地権を更新できるケースには次の3つがあり、これらは、旧法、新法ともに共通です。
- 貸主と借主の合意による更新(合意更新)
- 借地権者から契約更新の請求を受けた場合による更新(更新請求による更新)
- 貸主に更新拒絶の正当事由がない場合の自動的な更新(法定更新)
では、何が問題であるかというと更新が法定更新である場合です。
法定更新の場合では旧法と新法で違いがあります。
借地法では、貸主が更新を拒絶できる正当な事由がどのようなものなのかの規定はないので、しばしば裁判等での争いが起きています。
一方の借地借家法は貸主が更新を拒絶できる事由や条件を次のように規定しています。
・借地に関するこれまでの経過
・宅地などの土地の利用状況
・立退料の支払いなど
これらを総合的に判断することになります。借地の賃貸契約の更新ができない場合は、借地権を返還することになります。

借地と借地権の返還方法
借地の賃貸契約の更新ができない場合は、借地権を返還します。では、借地権はどのように返還する必要があるのでしょうか。
借地権の返還には大きく分けて次の3つの方法があります。
地主に無償で借地権を返還する方法
借地や借地権の返還としてまず思い浮かぶのが、地主に返還するケースでしょう。
貸主に借地や借地権を返還するとき、無償で返還する場合と有償で変換する場合があります。無償で返還する場合に問題になるのが、借地の返還です。
借地の上に存在する建物については、借主が取り壊し、更地にして貸主に返還する必要があります。
その際、解体業者などに依頼して、借地の返還前に建物を取り壊すことになります。
解体費用も借主が全額負担するのが原則となっていて、資金を用意する必要があります。
業者の選定から建物の解体が完了するためには数カ月かかることもあるため、借地や借地権を貸主に無償で返還する場合、計画的に準備を進めておきましょう。
認定課税を受けないことを届け出る特例
また、社長などの個人が自分で経営している法人に、無償で土地を貸しているというケースもあります。
この場合、法人と個人の間には権利金の課税にかかわる問題があります。
多くの場合、借地権の認定課税(借主は貸主から借地権をもらったものとして多額の税金を支払う)を避けることを目的に、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出しています。
これは、土地を借りている法人が、土地の返還時には個人に無償で返還する代わりに、借地権の認定課税を受けないことを届け出る特例的な制度です。
そのため、土地の無償返還に関する届出書が手許にある場合は、必ず無償で返還することになります。
地主に有償で借地権を返還する方法
次に、地主に有償で返還をする方法があります。
この場合に考えなければならないのが、借地権と借地の上に存在する建物です。
1.借地権を買取してもらう
借地権には土地の価格の数10%相当もの価値があります。
借地権は価値があるため、売買や親から子への相続なども可能です。
そのため、借地権の返還は無償ではなく、貸主に借地権を買い取ってもらうケースも多いです。

2.借地の上に存在する建物を解体する
借主が借地を返還する場合、その上にある建物を取り壊す必要があります。
しかし、契約期間満了などの一定の要件に当てはまる場合、借主側は貸主に対して借地の上に存在する建物を買取するように請求できる権利「建物買取請求権」をもっています。
つまり、借主が建物の解体費用を負担するところを、逆に建物を売却してお金が入ってくることになります。
これは借主にとって有利な権利ですが、次の要件すべてを満たす必要があります。
- 借地契約の期間が満了したこと
- 借地契約の更新がないこと
- 借地に建物があること
建物買取請求権を行使できるのは、原則、契約の解除や地主が土地の継続利用を拒んでいる場面です。
また、賃貸借契約書に建物買取請求権の拒否をするといった記載があったとしても、その記載は無効です。
ただし、借主に地代の未払いや遅滞、重大な契約違反などの理由がある場合、地主側は建物買取請求権を拒否できます。
地主に借地権や借地の上に存在する建物の買取を求める場合、普段から地主と良好な関係を築いておき、事前に建物買取請求権などに詳しい弁護士などの専門家へ相談しておくことをおすすめします。
第三者に売却する方法
借地権には価値があるため、貸主に売却(譲渡)できますが、貸主だけでなく、第三者にも売却することが可能です。
このケースでは、地主である貸主に経済的負担をかけることなく、適正な価格で借地権を売却することが可能です。
借地権の第三者への売却は、不動産会社を通して買主を探す、または借地権の買取専門業者に買取を依頼するなどの方法で行います。
ただし、借地権の第三者への売却には、貸主の承諾が必要です。
そのため、普段から地主である貸主と良好な関係を築いておくことが重要です。
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借地を更地にするための解体費用
以下のような場合、借地を更地にして返還する必要があります。
- 地主に無償で借地権を返還する場合
- 有償で借地権を返還する際に建物買取請求権を行使できない場合
借地を更地にするための解体費用がどれぐらいかかるのか、見ていきましょう。
解体費用は建物の構造によって異なる
解体工事は、足場の建設などの仮設工事や重機による解体、屋根の解体や内装の解体、樹木等の撤去など、建物がどのような構造になっているのかによって、大きくその内容が異なります。
また、作業内容によって作業員の人数なども決まるため、人件費や諸経費なども大きく異なります。よって、一概に相場というものはありません。
一般的には、木造の場合坪あたり3万~4万円、鉄骨造(S造)の場合坪あたり4万~5万円、鉄筋コンクリート造(RC造)の場合坪あたり5万~6万円程度が目安といわれています。
建物の構造によって大きく異なるため、一概にはいえませんが、解体業者を選ぶ際に法外な見積もりになっていないかどうかを確認する目安として、上記の額を頭に入れておくとよいでしょう。
解体費用は業者によって大きく異なる場合がある
解体費用は、建物の構造によって異なりますが、業者によってもその金額が異なります。場合によっては、数十万円単位で異なるということもあります。
そのため、解体業者を選ぶ場合は、必ず複数の業者に査定をしてもらうようにしましょう。
ただし、安い価格を提示して、不法投棄などの違法行為を行う業者も中にはいます。
解体業者を選ぶ場合には、価格ももちろんですが、信頼できる業者を選ぶことにも注意が必要です。

解体費用を低くするには?
解体費用は、低くできないと考えがちですが、実はちょっとしたことで低く抑えることができるケースもあります。ここでは、解体費用を低くする方法について見ていきましょう。
1.自分で処分できるものは自分で行う
建物の解体を業者に依頼する場合、もう使わないからということで、現状のまま、建物の解体を依頼することが多くあります。
しかし、建物の中には、家具や電化製品など自分で処分できるものが多く残っています。
これらを自分で処分することで、業者の手間を抑え、解体費用を低くできます。
価値のあるものは、リサイクルショップやインターネットでなどで売却することで、お金を得ることも可能です。
また、粗大ごみなどは、各自治体に頼んで処分することで、費用を安くすることができます。
2.自治体の助成金が出る場合もある
解体する建物が古い場合など、自治体によっては助成金が出るケースもあります。
助成金の金額は一律だったり、解体費うちの一部(上限あり)だったりと自治体によってさまざまです。
解体を行う必要がある場合は、助成金の有無や、助成金がある場合は条件や手続き方法などの詳細について、事前に各自治体に問い合わせましょう。
借地を返還する手続きの流れ
ここからは、借地を返還する手続きの流れを見ていきましょう。
一般的な手続きの流れは次のようになります。
- 貸主への報告・交渉
- 解体業者の選定と解体工事
- 更地の返還と建物滅失登記
それぞれの流れを1つずつ確認していきます。
1.貸主への報告・交渉
借地を返還する場合は、まずは貸主への報告や交渉が必要です。
貸主に何も報告せずに解体工事などを行うと、トラブルや裁判になる可能性があります。
そもそも、賃貸契約の継続をどうするのか、借地権や建物の買取はできるのか、解体工事が必要かどうかなどの交渉を行います。
更地にする必要がある場合は、いつまでに更地にして返還するのかなどの交渉を行います。トラブルをなくすため、貸主への報告や交渉は、最初はもちろん、返還までの間、随時行った方が良いでしょう。
2.解体業者の選定と解体工事
貸主との交渉がまとまったら、次に解体業者を選びます。
解体業者によって解体費用が異なったり、業者の中には悪徳業者が存在したりするので、必ず複数の業者に査定の依頼や相談を行います。
解体業者が決まったら、解体工事の開始です。近所への挨拶なども忘れずに行いましょう(解体業者が代わりに行う場合もあります)。
3.更地の返還と建物滅失登記
解体工事が完了すると、更地を貸主に返還します。ただし、これで手続きが完了したわけではありません。
実は、建物が無くなったことを法務局に登記する必要があります。
これを「建物滅失登記」といいます。
不動産登記法では、建物を解体してから1カ月以内に建物滅失登記を行うよう定められています。
建物滅失登記を行わないと、その土地の売却や貸付ができなかったり、無くなった建物に固定資産税などの税金が課されたりする可能性があるので、忘れずに建物滅失登記をする必要があります。

まとめ
借地を返還する場合、原則として借地の上にある建物を解体し、更地として返還する必要があります。
しかし、場合によっては借地権を有償で返還できるケースや建物買取請求権を行使できるケースもあります。
さらに、建物を解体する際には、解体業者の選定にも十分に注意する必要がありますが、自分ひとりですべてを判断することは簡単ではありません。
そのため、まずは信頼のおける不動産業者に相談することをおすすめします。
借地を返還する際のよくある質問
平成4年7月31日以前に契約した借地に適用されるのが旧法である「借地法」です。平成4年8月1日以降に契約した借地に適用されるのが、新法である「借地借家法」になります。
地主に無償で借地権を返還する方法と、地主に有償で借地権を買取してもらう方法の2種類があります。
借地権には土地の価格の数10%相当もの価値があります。地主または買取業者に売却することが可能です。
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解体費用は建物の構造・依頼する解体業者によって異なります。一般的には、木造の場合3万~4万円/坪、鉄骨造(S造)の場合4万~5万円/坪、鉄筋コンクリート造(RC造)の場合5万~6万円/坪が目安とされています。
貸主への報告・交渉をおこなった後、解体業者の選定と解体工事を実施します。その後、更地の返還と建物滅失登記をおこないます。