代位弁済通知書は「保証会社が債務者の代わりに住宅ローンをすべて支払った」という通知
代位弁済通知書は「代位弁済をしました」ということを知らせる書類です。
代位弁済とは、住宅ローン締結時に契約したローン保証会社が、住宅ローンを債務者の代わりにすべて返済したことを意味します。
保証会社が返済したといっても、債務者の返済義務はなくなりません。代位弁済により、以降は保証会社に対して債務の返済をする必要があります。
代位弁済がおこなわれた住宅ローンは保証会社に一括で返済しなければならない
代位弁済をおこなった保証会社は、債務者に対して一括返済を請求してきます。
代位弁済後に分割払いを交渉しても、保証会社が受け入れる可能性はほとんどないでしょう。
代位弁済がおこなわれる時点で、すでに数ヶ月の返済滞納があるはずです。債務者の信用はかなり低くなっていると考えたほうがよいでしょう。
代位弁済は「期限の利益喪失」によって発生する
代位弁済がおこなわれる前に、住宅ローンは期限の利益を喪失します。
期限の利益とは、「定められた期限が来るまでは、債務の全額をただちに返済しなくてよい」という債務者側の利益のことです。住宅ローンでいえば、「契約で定めた毎月の分割払いで返済すればよく、一括返済を求められない」という状態を指します。
期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。出典:e-Govポータル「民法136条第1項」
通常、定められた期日まで債権者は債務者に返済を請求できません。
期限の利益の喪失とは、言い換えれば「もう支払いの分割も猶予も認めないので、ローンのすべてをすぐに返済してもらいます」という意味です。
代位弁済をおこなった保証会社は「求償権」を得る
代位弁済をおこなった保証会社は債務者に対して求償権を得ます。
求償権とは、借金やローンの支払いを肩代わりした人or会社が、本来支払うべきだった債務者に肩代わりした分の返済を求める権利です。
住宅ローンにおける代位弁済の場合、肩代わりした会社が保証会社、返済を求められる債務者がローン契約者である自分になります。
代位弁済通知書が届いたら「差し押さえ・競売」の一歩手前
差し押さえとは、ローンを滞納した人が勝手に不動産を売却したり処分したりできないように、所有する財産を自由に処分する権利を法的に制限する手続きのことです。
求償権をもつ保証会社などは、まずこの「差し押さえ」によって不動産を確保したうえで、裁判所に対して「強制的に家を売却して返済に充てさせてください」と申し立てる「競売」の手続きへと進んでいく流れとなります。
代位弁済通知書は裁判所へ申し立てる1つ前の段階であり、差し押さえや競売となる一歩手前といえるでしょう。
「住宅ローン滞納」から「差し押さえ・競売」までの流れを確認しよう
住宅ローンは滞納してもすぐに差し押さえ・競売とはならず、いくつかの段階を踏む必要があります。
代位弁済もその段階の1つになります。代位弁済通知書が届いた時点でどの程度差し押さえ・競売に近づいているのか、下の表を見て確認しましょう。
住宅ローンの滞納期間と債権者・保証会社のアクション
| 滞納期間1~2ヶ月 |
催促状の送付や電話による返済の催促 |
| 滞納期間3~5ヶ月 |
督促状、催告書の送付 |
| 滞納期間6ヶ月 |
期限の利益喪失の通知 |
| 滞納期間7ヶ月 |
代位弁済の通知 |
| 滞納期間8ヶ月 |
差し押さえ予告の通知 |
| 滞納期間9ヶ月 |
競売申立・競売開始決定 |
| 滞納期間10ヶ月 |
裁判所の執行官による現況調査 |
| 滞納期間11~12ヶ月 |
競売の入札開始 |
| 入札終了、落札後 |
立ち退き、強制退去 |
※上記の滞納期間はあくまで目安です。金融機関や保証会社の方針によって前後し、実際にはこれより早く進むケースもあります。
実務上の感覚として、滞納が3〜5ヶ月の督促段階であれば、金融機関に相談してリスケジュール(返済条件の見直し)に応じてもらえる余地が残っていることもあります。代位弁済(滞納7ヶ月前後)まで進むと一括返済を求められ選択肢が一気に狭まるため、「払えない」と気づいた段階で早めに動くことが何よりも重要です。
競売で落札されると強制退去となる
競売の開始が決定すると、裁判所の執行官が現地で状況を確認し、その後入札が開始されます。
入札期間が終わり、落札されれば、その後1~2ヶ月で所有権は落札者に移ります。
以前の所有者および住人は立ち退かなければなりません。自主的に立ち退かない場合は裁判所の執行官のもと強制執行がおこなわれ、家財道具などがすべて運び出されます。
競売の落札価格は市場価格より低い
競売の代金は、裁判所を通して求償権をもつ保証会社にわたります。
しかし、競売の落札相場は安くなるのが一般的で、市場価格の7割以下になるといわれます。
また、不動産の価値自体が年月とともに下がっていくため、競売の代金では住宅ローンの残債を支払いきれないケースがほとんどです。
支払いきれなかった分の残債は、債務者が引き続き返済しなければなりません。
この残債には契約に応じた遅延損害金(年14%前後に設定されているケースが多い)が加算されるうえ、不良債権として債権回収会社(サービサー)に譲渡されることが一般的です。
債権回収会社によっては取り立ての厳しいところもあり、給与の差し押さえなどがおこなわれる可能性があります。
代位弁済通知書が届いたら任意売却を検討しよう
差し押さえや競売は、債務者にとって不利にしかなりません。
そのため、代位弁済通知書が届いた時点で速やかな対応をすべきといえるでしょう。
代位弁済後にできる有効な手段として、任意売却というものがあります。
そのメリットとやり方について、詳しく解説していきます。
任意売却はローンが残った状態で家を売る方法
任意売却は、住宅ローンが残っている状態で家を売り出す方法です。代位弁済後は債権者である保証会社の同意を得る必要があります。
売却益は返済に充てられますが、任意売却は市場価格に近い値段での売却が可能です。
債権者にとっても、競売より回収できる金額が多くなるというメリットがあります。
しかし、実際に債権者に同意してもらえるかはあくまで交渉次第となります。
【任意売却のメリット1】競売より高い価格で売却しやすい
任意売却は債権者の同意が得られれば、通常の不動産売買と同じように売却活動を進められます。
そのため、自ら価格設定できない競売と比べて高い価格で売却しやすく、住宅ローンの残債をより多く減らせる可能性があります。実務的な感覚として、競売の落札価格が市場価格の7割以下になりやすいのに対し、任意売却では市場価格に近い水準で売却できるケースもあります。
ただし、任意売却だからといってかならず残債を完済できるとは限りません。
任意売却によっても支払いきれなかった分は、分割で返済していく必要があります。
しかし、競売後の返済と違い、保証会社とよい関係性を築いて交渉すれば、無理のない返済計画を立てられます。
【任意売却のメリット2】強制退去にならない
任意売却は強制退去にならず、引っ越しのタイミングをある程度であれば自分で決められるのもメリットです。
競売の場合は強制執行の恐れもありますが、任意売却なら債権者や購入者と引っ越し時期を交渉できます。
また、債権者の判断によっては、任意売却の売却代金から引っ越し代金を支払ってもらえる可能性もあります。
ただし、債権者が引っ越し代を負担するのは善意からではなく、債権者側にもメリットがあるためです。具体的には、引っ越し代を一部負担することで売主(債務者)の協力を得やすくし、結果的に高い価格・短い期間での売却を成功させることが狙いです。
【任意売却のデメリット1】任意売却には債権者の同意が必要
すでに伝えたとおり、任意売却には債権者の同意が必要です。
債権者にも大きなメリットがある任意売却ですが、同意するか否かは債権者の考え次第であり、かならず認められるわけではありません。
任意売却に詳しく、弁護士など法律の専門家と連携を取れる不動産業者に相談するのがよいでしょう。
【任意売却のデメリット2】自分の希望価格で売り出せない
通常の不動産売買の場合は、最初に高めの価格を設定して、売れなければ値下げしたり、購入希望者との価格交渉で下げたりといった戦略が取れます。
しかし、任意売却はあくまで債権者がローンを回収するための手段です。売り出し価格は、基本的に債権者の意向を汲まなければなりません。
債権者は早期に売却することよりも、1円でも多くローンを回収することを優先する傾向があります。
そのため、価格が安く抑えられるとは限らず、むしろ債権者から市場価格より高い査定額での売り出しを求められるケースもあります。
注意点としては、売り出し価格が市場の相場より高すぎると買い手がつきにくく、売却までに時間がかかってしまう点です。競売の開札日までに売却を成立させる必要があることを踏まえると、債権者の回収希望額と、現実的に買い手が見つかる価格とのバランスを取ることが重要になります。
こうした価格調整は個人で進めるのが難しいため、任意売却の取扱実績がある不動産会社に相談し、債権者との交渉を含めてサポートを受けるのが現実的です。
任意売却の具体的な流れ
代位弁済通知書が届いたのならば、差し押さえ・競売まで時間に余裕がありません。
任意売却をする場合は、すぐに行動を起こしましょう。
任意売却のステップは、以下の通りです。
- 不動産業者への相談
- 価格査定と残債の確認
- 債権者に任意売却の同意をもらう
- 売却活動と売買契約
- 引っ越し・残った住宅ローンの返済
それでは、1つずつ詳しく解説していきます。
1.不動産業者への相談
まずは、任意売却を取り扱う不動産会社に連絡を取りましょう。
すでにお伝えしたとおり、相談先は「任意売却の実績が豊富で、弁護士など法律の専門家と連携している不動産会社」を選ぶのがおすすめです。
任意売却は債権者との交渉や期限管理など専門的な対応が求められるため、こうした実務に慣れた会社かどうかが重要なポイントになります。仲介・買取の両方に対応している会社であれば、物件の状況や残された時間に応じて適した売却方法を提案してもらいやすくなります。
多くの不動産会社が無料相談を受け付けているため、疑問や不安がある場合は早めに相談してみましょう。
2.価格査定と残債の確認
不動産業者が現地に出向き、不動産がどれくらいで売却できるか査定します。この査定は通常の不動産売買と同じものです。
住宅ローンの残債は、金融機関から定期的に送られている住宅ローン残高証明書や返済予定表でわかります。もしくは、ウェブサイトで確認できる金融機関もあります。
書類を紛失し、ウェブサイトでも確認できない場合は、債権者である金融機関や代位弁済をした保証会社に連絡して確認しましょう。
3.債権者に任意売却の同意をもらう
債権者である金融機関や代位弁済をした保証会社から、任意売却の同意を得るための調整を行います。
実際には、売却価格や売却代金の配分案の調整といった売却に関する実務は不動産会社の担当者が窓口となって進めるため、債務者自身が債権者と直接やり取りする場面は比較的少ないでしょう。
ただし、債務の減額や返済計画そのものに関する法的な交渉は弁護士の業務範囲となるため、必要に応じて連携先の弁護士がサポートする形になります。
4.売却活動と売買契約
売却活動は一般的な不動産売却と同じです。
任意売却では、購入希望者の内覧も受け付けるのが一般的です。可能な限り家を綺麗にしておいて、購入希望者の印象をよくしましょう。
買主が決まれば、債権者に購入申し込み書と売買代金配分表(売却代金をどの債権者にいくら配分するかをまとめた書面)を提出して承諾をもらいます。
その後、買主と売買契約を結び、決済をおこないます。
実務上のポイントとして、住宅ローン以外にも複数の抵当権が設定されているケースでは、この配分案の調整が任意売却の山場になります。第1順位の金融機関が、第2順位以降の債権者に対して「ハンコ代(抵当権抹消の承諾料)」として数万円〜数十万円を配分し、全員の同意を取りつける形で調整するのが一般的です。
この調整がまとまらないと決済まで進めないため、複数債権者がいる場合は特に、任意売却の実績が豊富な不動産会社に依頼することが重要です。
5.引っ越し・残った住宅ローンの返済
家の明け渡しは契約の内容にもよりますが、売買契約から1ヶ月前後でおこなうのが一般的です。
すでに解説したとおり、債権者との交渉次第では任意売却の売却益から引っ越し代を負担してもらえる可能性があります。
売却金もしくは売却した資金を返済に充てた後も残債がある場合は、引き続き返済していきます。
任意売却後の返済計画を無理のないものにするためには、あらためて債権者との交渉が必要です。
イエコンの提携先である法律事務所へのご相談でも、「残債を一括で払えと言われるのではないか」と不安を抱える方は少なくありません。しかし実務上は、現在の収入や生活状況をまとめた書類(生活状況報告書など)を提出したうえで、月々5,000円〜3万円程度の無理のない範囲で分割返済の合意を結ぶケースが一般的です。
債権者としても、債務者が自己破産してしまえば回収できる金額がさらに減るため、現実的に支払い続けられる返済計画に応じる余地は十分にあります。残債への不安から任意売却そのものをためらう必要はなく、まずは返済の見通しも含めて、不動産会社や連携先の弁護士に相談してみるのが現実的です。
代位弁済通知書がきたときの「任意売却以外の解決方法」
代位弁済後の対処としては任意売却がもっともおすすめですが、解決方法は他にもあります。
それぞれの状況や希望によって、どの方法が最適なのか違います。
下記の解説を参考に検討してみて、必要であれば不動産業者や弁護士の無料相談も活用してみましょう。
家族や親族に借りて一括返済する
家族や親戚に一括返済できるだけのお金を借りられれば、家を手放さずに延滞問題を解決できます。
家族や親戚であれば、厳しい取り立てをする可能性も低いでしょう。
ただし、相手が例え家族や親戚であっても、借金である事実に変わりありません。
借用書を作成し、しっかりとした計画を立てて返済していきましょう。
弁護士に依頼して債務整理をする
債務整理とは、借金の減額や帳消しをおこなえる制度です。以下の3種類があります。
自己破産は、住宅ローンも含むすべての借金やローンを帳消しにします。ただし、財産のほとんどを手放さなくてはなりません。
個人再生は、借金やカードローンなど債務の一定割合を、再生計画に沿って原則3年間で返済していく手続きです。再生計画どおりに返済することで、残りの債務の免除が受けられます。
任意整理は、債権者と直接交渉して、将来利息のカットや返済スケジュールの組み直しを行う方法です。任意整理は整理する債務を選べるため、住宅ローンを対象から外して他の借金(カードローンなど)だけを整理すれば、自宅を残しながら返済負担を軽くできます。
しかし、それは「住宅ローンの支払いに遅れがない(期限の利益を喪失していない)段階」に限られます。すでに滞納が進み「代位弁済」まで進んでしまった段階では、住宅ローンの一括返済義務が生じているため、任意整理で自宅を残すことは難しい傾向があります。
任意売却と並行して債務整理をすることも可能です。ただし、方法によっては財産の処分などリスクが大きくなるため、弁護士と相談して最適な方法を選びましょう。
代位弁済から6ヶ月以内に個人再生を申し立てれば家を手放さずに済む
住宅を処分したくない場合は、代位弁済の対応策として個人再生が選択肢となります。「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」という制度を利用することで、マイホームを個人再生の対象から外すことができるからです。
ただし、この場合は住宅ローンが減額の対象から外れるため、これまでどおり支払い続けることとなります(返済スケジュールを組み直すことは可能)。
また、住宅ローン特則を利用するための条件として、保証会社の代位弁済日から6ヶ月以内に個人再生を申し立てることが民事再生法第198条にて定められています。
この期間内に個人再生(住宅ローン特則付き)を申し立てたときは、「代位弁済の巻き戻し」といって、法律上「保証会社による代位弁済がなかった状態」に戻す扱いが認められています。
この6ヶ月という期限は厳格で、過ぎてしまうと巻き戻しができず自宅を残せなくなる可能性が高まります。代位弁済通知書が届いた時点で個人再生を視野に入れる場合は、できるだけ早く弁護士・司法書士に相談することが重要です。
なお、代位弁済が巻き戻されると、返済相手は保証会社からもとの金融機関に戻ります。
その後、金融機関との間で、月々の支払いに無理がないよう返済計画を立てることとなります。
リースバックで売却した後も住み続ける
リースバックとは、自宅を売却して所有権を手放しつつ、買主にリース料(=家賃)を支払うことで、引き続きその家に住み続ける方法です。
「家は手放さなければならないけれど、そのまま住み続けたい」というときに有効な方法で、引っ越しの手間も省けます。任意売却と組み合わせてリースバック契約を結ぶことも可能です。
ただし、注意点もあります。リースバック前提で売り出しても、物件の状況や立地によっては買主(投資家など)がつかないケースがあります。
また、設定される家賃は売却価格をもとに決まるため、周辺の賃貸相場より高くなりやすい傾向があります。将来的に買い戻しを希望する場合も、買い戻し価格は売却額より高くなるのが一般的です。
任意売却でリースバックを検討する際は、月々の家賃が無理のない範囲かどうかを事前にしっかり確認しておきましょう。
代位弁済通知書が届いたらすぐに法律に詳しい不動産業者や弁護士に相談しよう
代位弁済通知書が届いたら、差し押さえや競売まであまり時間がありません。
差し押さえ・競売になる前に、任意売却などの対応をおこなって住宅ローンの延滞を解決しましょう。
解決には不動産と法律の両面の専門知識が欠かせません。売却そのものは任意売却の実績がある不動産会社が、債務整理や債権者との法的交渉は弁護士が担当するというように、それぞれの専門家が連携することでスムーズに進みます。
1人で悩むより、弁護士など士業と連携している不動産会社や、債務整理に詳しい弁護士に早めに相談してみましょう。