底地は権利関係が複雑な不動産で、完全所有権の土地と比べて価値も低く、売れにくいといわれています。
しかし「等価交換」という手段で、地主と借地人の権利関係を解消すれば、さまざまな問題を抱える底地の不動産価値を上げることができます。
とはいえ、分筆登記や所有権移転登記などの手続きも発生するので、等価交換をおこなう際は不動産業者や弁護士などの専門家にサポートしてもらったほうが安心です。
以下のリンクから「弁護士と提携した不動産業者」の無料相談が受けられるので、まずは等価交換についてアドバイスをもらうとよいでしょう。
不動産の等価交換とは
等価交換とは「価値の等しいものを相互に交換すること」で、不動産業界においては、土地と土地、土地と建物など、さまざまな不動産の等価交換がおこなわれます。
また、地主と借地人が不動産を完全所有権にするため、底地と借地権を分筆して、それぞれ一部分を相互に交換することもあります。
具体的に説明すると、借地権の一部分を地主に返還、底地の一部分を借地人に譲渡する形になります。
上の図は「底地と借地権を交換した結果、借地人が60%・地主が40%という割合で互いに完全所有権の土地を保有したこと」を表したものです。
これらの割合を決める際、土地の評価や価格などを参考にしますが、最終的に当事者同士の話し合いで決められます。
例えば、6:4の割合を5:5にしてほしいときなど、話し合いで出された割合に納得できず、もう少し土地を多く保有したい場合、相手に金銭を支払って承諾してもらうケースもあります。
このときに支払う金銭である「交換差金」を伴う交換は、等価交換に該当しないので譲渡所得税などの課税対象となるため注意しましょう。
また、金銭の授受が発生しない交換でも法的には資産の譲渡と扱われてしまい、譲渡所得税が課税されるケースもあります。
固定資産の交換の特例
交換によって資産の譲渡がおこなわれた際には譲渡所得税などの税金がかかりますが、土地や建物といった固定資産を交換する場合、同じ種類のものであれば譲渡がなかったものとする特例があります。
この特例を「固定資産の交換の特例」といい、等価交換による譲渡所得税を無税にできます。
同じ種類の物々交換というのは、例えば土地と土地、建物と建物を交換するケースなどで、底地と借地権の一部分を交換する場合でも、同種の固定資産の交換と認められることがあります。
しかし、固定資産の交換の特例が適用されるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
- 交換により譲渡・取得する資産は自身が所有する「固定資産」であること
(企業が販売する目的で一時的に保有している資産などは対象外) - 交換する資産は相互に同じ種類と認められるもの
(底地と借地権も可能・建物の設備や構築物は「建物」として認められる) - 交換する資産は1年以上所有していたもので、交換する目的で取得した資産の場合は認められない
(相手の資産も同様に1年以上所有のもの) - 交換により取得する資産は、譲渡する資産の直前の用途と同じ用途で使用すること
(交換によって自身が譲渡するものが宅地だった場合、取得したものも宅地として使用する) - 交換によって譲渡・取得する資産の時価の差額が、高い方の資産の時価の20%以内であること
(例:時価1000万円の土地Aと時価800万円の土地Bの交換は可能・土地Bが700万円の場合は不可)
上記の要件を満たす場合は、固定資産の交換の特例が適用となります。
ただし、特例の適用対象でも、交換により金銭等を受け取った場合は課税される恐れもあるため注意が必要です。
また、特例を受けるためには、確定申告書に必要事項を記載の上、「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」を添付して、税務署に提出する必要があります。
※不動産所得税や登録免許税、印紙税などは別途通常通り支払わなければなりません。
底地と借地権の等価交換におけるメリット・デメリット
底地と借地権を等価交換すれば、地主と借地人の関係を解消できるため、権利関係のトラブルをなくせる上、土地も自由に利用できるようになります。
しかし、等価交換にもメリットとデメリットがあるので、それらを把握しておくことも大事です。
この項目では、底地・借地権のデメリットを確認した後、等価交換におけるメリットを解説していきます。
底地のデメリット
底地は土地の利用権がないので家や建物を建設することはできません。
借地人から地代を受け取る権利はありますが、地代が現在の経済状況に見合わない場合は赤字です。
不動産価値も低く売却が難しいため、所有しているだけで損失の出る「負動産」になりがちです。
借地権のデメリット
借地権は建物の建設などに制約はありませんが、増改築や他者への譲渡などに関して地主の承諾が必要です。
地主が承諾しなければ基本的にNGとなるので、底地と同じく利用に制約があるといっても間違いではないでしょう。
また、地代に加えて、契約の更新や承諾などにも料金がかかります。
これらの金額は地主の裁量で決められるものなので、契約によっては支払いが厳しくなってしまうこともあります。
メリットが少なくなりがちな底地と借地権ですが「等価交換」によってこれらのデメリットを払拭することができます。
等価交換のメリット
底地と借地権を等価交換したとき、主なメリットは以下のとおりです。
- 権利関係が解消される
- 完全所有権の土地が手に入る
- 不動産の価値が上がる
それぞれのメリットを1つずつ確認していきましょう。
権利関係が解消される
等価交換により底地、借地権の一部分を相互に交換することで、完全所有権の土地となり地主と借地人の権利関係が解消されます。
完全所有権の土地は所有者が自由に扱えるので、土地を自分自身で管理して、さまざまなことに利用できます。
底地や借地権は相続などで代替わりが進むと、誰が権利者なのか、お互いに把握しきれなくなることも少なくありません。
親族ではない第三者を含む複数人が共有で相続した場合、さらに権利関係が複雑になります。
例えば、借地人が借地権を第三者に譲渡する場合、地主から承諾を貰わなければなりません。
しかし、権利者の誰かが遠方に住んでいる場合などでは、承諾を貰いにいくだけでも手間がかかります。
このような地主と借地人の複雑な権利関係を等価交換によって解消することで、面倒な手続きを踏まずに土地活用がしやすくなります。
完全所有権の土地が手に入る
底地単体では不完全所有権の不動産かつ、借地権には所有権が含まれないので、土地の利用方法によっては地主の承諾が必要になります。
そこで、底地と借地権を等価交換して、完全所有権の土地にすることで利用・譲渡・処分を自由におこなえるようになります。
不動産の価値が上がる
等価交換で底地と借地権をあわせて完全所有権の土地にすると、不動産としての価値が上昇します。
とくに、売却が難しく売れたとしても低価格になってしまう底地は完全所有権化することで換金性が大幅に上がります。
土地利用の制約が無くなることが、不動産価値を上げる最大の要因です。
等価交換のデメリット
等価交換にはメリットが多いように思えますがデメリットもあります。
- 固定資産税や都市計画税を支払う必要がある
- 所有地の面積が交換分だけ狭くなる
地主よりも借地人のほうが、これらのデメリットを感じやすいかもしれません。
それぞれのデメリットを1つずつ確認していきましょう。
固定資産税や都市計画税の支払い
固定資産税や都市計画税は本来、土地の所有者である地主が支払う税金です。土地を借りているだけの借地人はこれらの税金を支払う必要はありません。
しかし、等価交換などによって権利関係が解消され完全所有地になった場合、自身の所有地になるので固定資産税や都市計画税を支払うことになります。
完全所有地になれば地代や更新料、承諾料などの支払いがなくなるので、デメリットと感じるかどうかは契約内容によりますが、負担が増える恐れがあるため注意しましょう。
所有する土地の面積が狭くなる
底地と借地権の等価交換は、結果的に1つの土地を複数人で分けることなので、一人が保有できる土地面積は狭くなります。
どのような割合で交換するのかにもよりますが、土地面積が狭すぎる場合、土地利用に支障をきたすデメリットのほうが大きいかもしれません。
また、場合によっては借地人が建物を取り壊す必要も出てくる可能性もあり、そうした場合は解体費用を負担しなければなりません。
ある程度の広さがあり、地主と借地人で分割可能な土地の場合に等価交換は効果的といえるでしょう。
等価交換に必要な手続き
底地と借地権の等価交換で、必要になる手続きの流れは以下のとおりです。
- 土地の価格を調べる
- 交換割合を決める
- 交換割合の決定後に分筆登記をおこなう
- 分筆後は所有権移転登記をする
- 確定申告を忘れずにおこなう
それぞれの手続きを順番に紹介します。
1.土地の価格を調べる
等価交換をするために、交換する土地が現在どれだけの価格になるのかをはっきりとさせる必要があります。
売買ではなく交換なのに、価格を明確にする意味があるのかと思う人もいるかもしれませんが、交換によって保有する土地の割合を決める話し合いなどで土地の価格について話すこともあります。
交換が成立し完全所有地となった場合、土地がどのくらいの価値になるのか推測するための情報にもなります。
「完全所有地になったときに価値は大幅に上がるのか?」あるいは「あまり変わらずにデメリットのほうが大きいのか?」によって交渉相手は等価交換の承諾を決定するので、重要な情報ともいえます。
一般人が底地の価格を調べるのは困難なため、不動産鑑定士などの専門家に調べてもらうことをおすすめします。
不動産に関わる専門家については、以下の記事でも紹介しているので参考にしてみてください。
2.交換する割合を決める
お互いに完全所有権の土地を保有するためには底地と借地権の一部分ずつを交換する必要があります。
そこで、明確化された土地の価格をもとに、交換する割合を相手と話し合って決めます。
また、一部分ではなく全部分を交換することもできますが、権利者が変わるだけなので底地と借地権を等価交換するメリットは少ないでしょう。
固定資産の交換の特例を受けるためには、交換する不動産がなるべく等価となるように割合を決めていく必要があります。
実際には、等価交換契約において交換対象が等価であることの合意をする形になります。
3.交換割合の決定後に分筆登記をおこなう
不動産全てを交換するのであれば土地を分割する必要はありません。
しかし、一部分を交換する際には両者が相談のうえ決定した割合だけ分筆登記(登記簿上で土地を複数に分割して登記し直す手続き)が必要になります。
分筆登記をおこなうためには、前提として境界が明確化されていなければなりません。
古くから存在する底地や、相続などで権利者が増えいつの間にか境界が曖昧になってしまったなどの場合は、改めて境界確定をする必要があります。
境界確定測量は土地家屋調査士に依頼することになります。
また、分筆登記などの登記手続きは自分でおこなうこともできますが、弁護士などに依頼したほうが安心です。
ただし、登録免許税という税金が別途かかることもおさえておきましょう。
■登録免許税の税率
登録免許税の税率は、等価交換の場合「20/1000」となります。
詳しくは以下の国税庁ホームページを参考にするとよいでしょう。
4.分筆後は所有権移転登記をする
分筆登記によって不動産の一部を相手に渡す準備ができたら、所有権移転登記をして名義変更をおこないます。
名前の通り、譲渡資産の所有権を相手に移転するための登記で、分筆登記と同様に登録免許税もかかるため注意しましょう。
5.確定申告を忘れずにおこなう
不動産の等価交換は相手に不動産を譲渡するという意味も含まれますので、譲渡所得税などが課税されます。
無税にするための「固定資産の交換の特例」を受けるには、確定申告書を提出しなければならないため、忘れずに確定申告をおこないましょう。
また、底地と借地権を等価交換して完全所有権の土地となった場合、固定資産税や都市計画税なども負担しなければならない点も認識しておきましょう。
デベロッパーが関わる「等価交換方式」について
一般人同士での等価交換とは異なる「等価交換方式」という解決策もあります。
等価交換方式とは、マンションやビルなどを建設したい開発業者(デベロッパー)に地主などの土地所有者が土地を提供、建物の建設費はデベロッパーが負担するという仕組みのビジネスモデルです。
業者と土地所有者が協力して建物を建てることから、共同建設方式ともよばれます。
等価交換方式による解決事例とメリット
等価交換方式を用いれば、一般人同士での等価交換における問題を解決できます。
例えば、地主は複数人存在する借地人との権利関係を解消して土地を活用したいとします。
しかし、借地人たちが「土地から離れたくない」「建替えるお金がない」「等価交換で建物面積が狭くなるのは嫌だ」と主張して、両者の折り合いがつかないケースは多いです。
そこへデベロッパーが参入して、等価交換方式をおこなうと、次のように解決できます。
地主と借地人とデベロッパーがマンション住戸を取得する
等価交換方式では、地主と借地人たちがデベロッパーに土地権利(底地・借地権)を譲り、新たに建設されたマンションの住戸を各地権者それぞれが取得します。
これにより、地主は借地人との関係を解消できる上、取得した住戸を賃貸として活用できます。
一方で、借地人は古くなった家から新築のマンションに住むことができたという、両者にメリットを与える解決事例もあります。
そして、地主・借地人ともに住戸の所有権を取得できたので、賃貸・売却などが自由におこなえるようになります。
このように、等価交換方式によって資金のあるデベロッパーが参入することで、全員にメリットを生み、問題解決できるケースは非常に多いです。
まとめ
底地や借地権の問題は、不動産売買以外にも「等価交換」という手段で解決できます。
地主と借地人の双方が完全所有権を保有できることは両者にとって大きなメリットといえるでしょう。
しかし、等価交換は基本的に同じ種類の不動産同士でおこなう必要があり、譲渡所得税などを無税にするには「固定資産の交換の特例」の適用要件を満たさなければならないため注意しましょう。
分筆登記や所有権移転登記などの手続きも発生するので、むずかしいことは不動産業者や弁護士などの専門家に依頼したほうが安心でしょう。
底地・借地権の問題で折り合いがつかない場合は「等価交換方式」を交えた解決策もひとつの手段として、覚えておくとよいかもしれません。