所有者不明の土地が生まれる理由と売却方法を解説

所有者不明土地

昨今、問題になっている空き家や空き地。その中でも所有者が不明の土地が今後増加していく傾向があるようです。

古くからある土地の所有者が不明という問題に対して政府は、全国各地に存在する所有者不明の土地において一定の条件で売却を可能とし、国・自治体が主体となってこの問題を解消していく段階に入ることを表明しました。

そこで今回は、所有者不明の土地はなぜ生まれるのか、手入れがされない荒れた土地をどのように売却し活用していくのかに加えて、不動産相続の問題や対策についても詳しく解説していきます。

所有者不明の土地が生まれる理由

空き地
なぜ正常に登記されていない所有者不明の土地が生まれるのか、疑問に思う人もいるでしょう。

現行の法律では「登記は義務ではなく任意」でおこなうこととなっています。これが所有者不明の土地を生んでしまう大きな原因だといえます。

では、なぜ登記しないのかですが、

「土地を相続したけれど管理の手間がかかるため相続登記したくない」
「登記における登録免許税が高額で払えない」

などの事情が考えられます。

売れない「死に地」は放置されがち

価値の高い土地であれば、相続後に売却することも難しくはありません。しかし、地方の土地などで誰も欲しがらないし活用もできない、いわゆる「死に地」となっている物件の場合、所有しているだけで損失を生みます。

そのため、登記申請自体を放棄・放置する人も多く、相続人などがそのまま死去してしまうなどで誰も扱うことのできない所有者不明の土地が生まれます。

また、登記申請で登記簿を正常に更新しない場合、所有権を持つはずの相続人が本人たちも知らない状態で何十年も増え続けます。これにより国であっても所有者が明確に把握できないケースもあります。

相続登記未登記は長期間表面化されない

代々、土地を相続登記によって相続人に引き継いでいくことが一般的です。

しかし、未登記のまま放置していても普通に生活する分には不都合はありません。名義を変えなくても、納税通知書の送り先を指定して税金の支払いをしていくこともできます。

そのため、未登記による問題が表面化せずに長期間放置、そのまま所有者不明の土地となってしまうケースが多いです。

相続登記の義務化が検討されている

所有者不明の土地問題において政府は相続登記の義務化を検討することも明言しています。

これまで任意とされてきた不動産登記ですが、法律上義務化することで変則型登記を減らそうという目論見です。

登記を義務化するにあたって「相続登記自体をしやすくする」「登記所が他公的機関から死亡情報等を取得して更新する」などさまざまな方策が考えられています。

共有物件も見直される方針

共有物件の一部の共有者が不明の場合においても、制度の見直しが考えられています。

基本的に共有している土地などを一筆で売却する場合などは共有者全員の同意が必要です。しかし、一部の共有者が不明の場合、同意を取ることが困難になります。

こういった制度を見直し、判明している共有者だけの同意で土地利用を可能とする方策を推進していくことも検討されています。

将来において国や自治体が積極的に所有者不明の土地を再活用できるようになれば、道路のインフラ整備や防災対策、住民の生活環境がより良いものになっていくことでしょう。

相続による所有者が不明の土地が増加!?

今後は少子高齢化によって、土地などを相続する機会が増えることが予想されます。

正常に相続されればよいですが、所得の低い世代は固定資産税や登録免許税の負担ですら大きいものですから、そのまま登記せずに放置してしまうことも考えられます。

特に、地方にある土地は相続する人自体がいないなど人口減少の弊害も受けていることに加えて、自治体の組織力も大きくありません。

いずれ北海道全土の面積相当に拡大

田舎の山林や不整形地なども含め、所有者不明の土地は2016年時点で九州全土の面積を上回る約410万ヘクタールあると推計されています。

さらに、2040年になると北海道全土に相当する約780万ヘクタールにまで拡大する可能性があるともされています。

所有者不明の土地が増えていくことで、住民の生活環境にも影響が出てくるでしょう。

土地の活用が可能な人はきちんと登記をして所有権の所在を明確にしておくことが重要ともいえます。その上で、売却や譲渡などを検討することが大切でしょう。

参照:内閣官房ホームページ「所有者不明土地問題研究会最終報告概要

所有者不明の土地が売却可能に

全国各地で問題とされている所有者不明の土地を含め、財産となりうるものは財産権の面において絶対的な保護を受けます。

そのため、所有者が不明であっても国や自治体がその物件に手を出すことができませんでした。

しかし、所有者不明の土地によるさまざまな弊害を問題とし、政府は「所有者不明の土地を一定の条件で売却できるようにする」法案を2019年2月22日に閣議決定しました。

参照:参議院「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案」26ページ

売却可能の対象は「変則型登記」の土地

法案で可決された売却可能の対象となる所有者不明の土地は、

「変則型登記の土地」

です。

変則型登記の土地・・・簡単に説明すると、登記記録における表題部所有者の氏名・住所が正常に登記されていない土地のことです。

まず、不動産を所有すると一般的に財産所有者の権利を守るため登記(法務局の登記官が登記簿に情報を記録)をおこないます。

その登記記録は主に

表題部(土地や建物の状況が記載されている部分)
権利部(権利関係を記載した部分)

というものに分けて作成されます。

この表題部分に所有者の情報(土地であれば、所在、地番、地目、地積など)が記録されていないものが存在し、それが変則型登記の土地、いわゆる所有者不明の土地に該当します。

相続後に正常な登記がおこなわれないまま引き継がれる土地は、年数が経過していくうちに不動産登記簿上の所有者が変則的になります。(記載情報に空白部分があるなど)

これが変則型登記と呼ばれる所以でもあり、相続した人の中で結局誰が現存する所有者に該当するのか探すこと自体も困難になります。

所有者不明の土地を売却する方法

土地売却
所有者不明の土地で困っているケースとして「共有者の一部が不明で売却ができない」などが考えられます。

また、共有者と連絡が取れなくなったり、全く知らない共有者が死亡してしまって誰かに相続していたなどで知らないうちに共有関係が複雑化してしまうこともあります。

そういった場合、どのような手段で所有者不明の土地を売却すればよいのかわかりやすく説明していきます。

※今回は共有物件において一部の共有者が不明であるというケースを中心として説明していきます。

まずは登記事項証明書で関係者を確認

登記事項証明書は登記記録事項の全部もしくは一部を証明する書類で、所有者の住所や氏名、抵当権の設定などさまざまな情報が記載されています。

また、過去の所有者がどういった理由でいつ登記したのか、共有者は誰なのか、なども分かるので要確認です。

登記事項証明書は「登記所」、「法務局証明サービスセンター窓口」、「郵送」、「オンラインサービス」などで交付請求することができます。

参照:法務局「不動産登記の登記事項証明書等の様式が変更されます!」

所有者の関係者や相続人を探す

登記事項証明書等を確認しても所有者が判明しないケースは少なからずあります。

前の項目でも説明しましたが、登記自体は任意のため登記していなければ証明書等に記載されません。

その場合、所有者の現在を住民票や戸籍からどうにかして調べる他ありません。所有者の関係者や相続人などを辿ることで判明することもあります。

調査しても所有者が不明ということであれば、不在者財産管理人の選任申立てをする必要があります。

不明のままなら不在者財産管理人を選任

不在財産管理人は、行方不明の所有者の代わりに遺産分割や不動産の売却を実行することができます。

そのため、共有者の一部が行方不明であっても不在財産管理人を選任することで不動産の売却が可能となります。

不在財産管理人・・・不在者自身や共有者などの利害関係を有する第三者の利益保護のために家庭裁判所から専任される財産管理者のこと。

※この記事では、不在者のことをわかりやすく行方不明の所有者と称します。(以降、行方不明の所有者)

不在財産管理人の選任方法と条件

行方不明の所有者の共有者や相続人、配偶者のいずれかが家庭裁判所に申立てることで不在財産管理人が選任されます。

その際、申立書に不在財産管理人の候補となる人を記述することもできますが、財産管理がしっかりできるかどうかや、行方不明の所有者との利害関係の有無なども考慮され選任されます。

ちなみに、弁護士や司法書士などの士業専門家を候補として挙げることもできます。(報酬費用などがかかる場合もある)


参照:裁判所「不在者財産管理人選任」

所有者不明の土地活用と対策

土地活用
所有者不明の土地となり得る変則型登記を解消するため、政府や自治体がさまざまな土地の活用方法を検討しています。

「共有関係を解消する方策」「近隣の土地所有者が管理不足の土地を改善できる方策」など明確な名称は決まっていませんが、将来的に政府主体で推進される方策がいくつか明言されています。

また現在では、所有者不明となってしまうこと自体を未然に防ぐ対策・物件活用が実際に各地で実行されています。

売主買主のマッチングサービス

物件が売れない、タダでも手放すことができない(自治体が引き取ってくれない)などの場合、その物件は空き地として放置されてしまう可能性があります。

そこで、とある地域では自治体と地域住民が連携して「空き家・空き地バンク」などのサービスを展開し空き家・空き地・放置物件の解消を図っています。

どのようなサービスなのか簡単に説明すると、「空き家・空き地の情報を把握しデータベース化、欲しい人にその情報を提供する」といった売主買主のマッチングに近いサービスです。

空き家・空き地を手放したい人・欲しい人がサービスの利用登録をおこない、橋渡し的な意味でマッチングさせるシステムを作ることで、さらなる空き家の二次的活用につながることを目的としています。

空き家・空き地管理の受託事業

物件を相続したけれど遠方にあって定期的な管理が難しい、高齢になって日々の点検ができないなどの人のために、「空き家・空き地の点検や管理を引き受けるサービス」があります。

事業ごとに名称が異なるので割愛させていただきますが、主にこのサービスでは月々一定の金額を支払うことで、空き地の除草や手入れ空き家内部・外部の清掃などをおこなってくれます。

第三者による定期的な物件管理によって、放置されてそのまま所有者が不明になってしまうことを防ぐことができます。

所有者不明の土地を時効で取得できる?

時効
相続した土地を長年使用しており、後々になって隣地の一部が混ざっていたことが判明するケースがあります。

この場合、隣地所有者が存命で所在がはっきりと分かるのであれば、返還するか譲ってもらうかの話をすることになるわけですが、所有者が不明になっている場合は「所有権の時効取得」によってその土地を取得できる可能性があります。

所有権の時効取得とは

所有権の時効取得は民法で定められている、物の占有期間と権利取得に関する法律です。

わかりやすく説明すると「他人の所有物であっても、一定期間占有することによって所有権を得ることが認められる」というものです。

この占有に関する期間や条件は以下のように定められています。

占有期間:10年、もしくは20年(※意思と過失によって異なる)
条件:所有の意思を持ち、平穏かつ公然として占有していたこと

時効取得において、占有者の意思や過失というものも関わってきます。

具体的に民法で語られているのは、

「占有が善意かそうでないのか」
「占有に過失が有るのか無過失なのか」

という点で時効取得を主張できるまでの期間が変わります。

参照:総務省 行政手続のオンライン利用の推進「民法 第162条 所有権の取得時効」

占有が善意で無過失の場合は10年

占有が善意?無過失とは?と疑問に思う人も多いでしょう。

まず、善意とは「自身にその土地の所有権があることを、当然として思っていた」等の意思が善意としてみなされます。

例えば、他人の土地であることを知らずに相続し純粋に自分の土地だと思っていた、加えて占有において何も過失(他人の土地だと知っていて奪ったなど)が一切無かった等のケースが当てはまります。

この場合、占有期間が10年で時効取得が成立すると考えられます。

占有が悪意で有過失の場合は20年

占有が悪意である場合は当然として時効取得できないと思いがちですが、実は悪意によるものであっても時効取得が成立する可能性があります。

まず、悪意による時効取得の条件は、

「20年以上の占有期間がある」
「時効完成時点で所有権が自身にあることを主張(時効の援用)する必要がある」

です。

悪意・善意という言葉は法律的に、「事情を知っている」もしくは「事情を知らない」という解釈になります。

つまり、他人の土地であることを知っていて占有していた場合は「悪意による占有」ということになりますが、道徳的な悪・善とは少し違った意味合いになることをおさえておきましょう。

例えば、隣地所有者から無償で土地を借りていた場合などを想像するとわかりやすいかもしれません。

逆に、道徳的な悪意を持った不法占拠であっても、20年以上の占有が続いた場合は占有者の時効取得が認められる可能性もあります。

特に、所有者が不明の土地であれば時効取得の訴訟時(時効援用時)に被告が存在しないため、そのまま占有者の土地になることもあり得ます。

まとめ

所有者不明の土地はこれまで、個人はもちろん国や自治体でも扱うことが難しいとされてきました。今や九州全土の面積に相当するくらい有り余る土地があることも明言されています。

空き家や空き地が放置されると近隣住民の普段の生活に害を及ぼすだけではなく、災害時の被害拡大、復旧作業の停滞などその地域全体に関わる問題になります。

しかし近年、法律自体の整備と適正化空き家・空き地バンクや物件管理受託事業などの地域サービスによって土地問題を解消する流れになっています。

将来的には時効取得などの私法もうまく機能することで、無駄で弊害しかなかった土地が国や地域の発展につながることも考えられます。

そのためにはまず、土地の所有者である個人がしっかりと相続登記などをおこなって、所有者不明の土地を減らしていくことが大切なのかもしれません。

最終更新日:

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