東京都内で事故物件が多いのは「新宿」と「池袋」!?
あくまで参考程度ではありますが、事故物件の情報提供サイト「大島てる」を確認すると、東京都内で事故物件が多いのは「新宿」と「池袋」であることがわかります。
そのほか、中野区や荒川区でも多くの情報が寄せられています。
どんな物件が事故物件になる?
「事故物件」には明確な定義はありませんが、一般的には「以下のような原因で人が亡くなった土地や建物」を指します。
- 他殺
- 自殺
- 自然死
- 孤独死
国土交通省のガイドラインによると、病気や老衰による自然死、階段での転落死や入浴中の溺死などについては、事故物件にあたらないとされています。
しかし一見事故物件にあたらない死因でも、発見が遅れれば特殊な薬剤・機器で体液による汚れの除去や脱臭などを行う「特殊清掃」が必要になり、ほとんどのケースで事故物件として扱われます。
参照:宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン|国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課
【東京都】事故物件の相場
事故物件の売却相場は、通常の物件の売却金額よりも安くなる傾向にあります。「人が亡くなった物件」を購入することに抵抗を感じやすく、買い手がつきにくいためです。
あくまでも目安ですが、通常の物件に比べ、以下のように価値が下がると思っておくとよいでしょう。
事故物件の原因 | 下落率の目安 |
---|---|
自然死・不慮の死(特殊清掃が必要な場合) | 10~20% |
自殺(特殊清掃が不要な場合) | 20~30% |
自殺(特殊清掃が必要な場合) | 20~40% |
他殺(特殊清掃が不要な場合) | 10~50% |
他殺(特殊清掃が必要な場合) | 50~90% |
売却金額を左右するポイントは、「特殊清掃の有無」です。特殊清掃が不要なケースならそれほど大きく価値が下がらないこともありますが、特殊清掃が必要な場合、売却金額が大きく下落する可能性が高くなります。
ここでは、仲介による通常物件の売却事例を紹介します。「以下の金額に、上表の下落率をかけた金額が事故物件の売却相場」と認識しておくとよいでしょう。
エリア | 取引価格 | 建築年 | 土地平米数 | 構造 |
---|---|---|---|---|
東京都大田区池上 | 1億2,000万円 | 令和6年 | 75㎡ | 木造 |
東京都大田区池上 | 2,000万円 | 昭和41年 | 120㎡ | 木造 |
東京都大田区石川町 | 2,000万円 | 昭和36年 | 175㎡ | 木造 |
東京都大田区石川町 | 8,300万円 | 平成16年 | 80㎡ | 鉄筋コンクリート・木造 |
東京都大田区鵜の木 | 5,600万円 | 昭和63年 | 80㎡ | 木造 |
エリア | 取引価格 | 建築年 | 土地平米数 | 構造 |
---|---|---|---|---|
東京都世田谷区赤堤 | 3億6,000万円 | 令和2年 | 270㎡ | 鉄筋コンクリート造 |
東京都世田谷区赤堤 | 1億2,000万円 | 昭和59年 | 115㎡ | 木造 |
東京都世田谷区池尻 | 3億3,000万円 | 令和5年 | 110㎡ | 鉄筋コンクリート造 |
東京都世田谷区池尻 | 1,500万円 | 昭和50年 | 35㎡ | 木造 |
東京都世田谷区宇奈根 | 3,500万円 | 平成9年 | 115㎡ | 木造 |
エリア | 取引価格 | 建築年 | 土地平米数 | 構造 |
---|---|---|---|---|
東京都渋谷区上原 | 1億3,000万円 | 令和6年 | 60㎡ | 木造 |
東京都渋谷区上原 | 4億8,000万円 | 昭和35年 | 270㎡ | 木造 |
東京都渋谷区鶯谷町 | 7,300万円 | 平成10年 | 40㎡ | 木造 |
東京都渋谷区鶯谷町 | 7億9,000万円 | 昭和60年 | 165㎡ | 鉄骨造 |
東京都渋谷区恵比寿 | 1億2,000万円 | 平成26年 | 50㎡ | 木造 |
エリア | 取引価格 | 建築年 | 土地平米数 | 構造 |
---|---|---|---|---|
東京都中野区新井 | 8,000万円 | 令和5年 | 65㎡ | 木造 |
東京都中野区新井 | 1億5,000万円 | 昭和62年 | 140㎡ | 木造 |
東京都中野区江古田 | 6,200万円 | 平成23年 | 85㎡ | 木造 |
東京都中野区江古田 | 9,400万円 | 令和4年 | 85㎡ | 軽量鉄骨造 |
東京都中野区江原町 | 7,900万円 | 平成27年 | 110㎡ | 木造 |
たとえば1億円の物件なら、以下のような売却金額になります。
- 孤独死(下落率20%):8,000万円
- 自殺(下落率30%):7,000万円
- 他殺(下落率90%):1,000万円
※あくまでこの売却金額は目安となります。
【東京都】事故物件の買取例
実際、事故物件はどの程度の金額で取引されているのでしょうか。
ここでは、東京都における事故物件の買取例を紹介します。
エリア | 買取価格 | 事故物件の種類 |
---|---|---|
東京都品川区 | 1,000万円 | 孤独死 |
東京都足立区 | 1,300万円 | 飛び降り自殺 |
東京都板橋区 | 1,800万円 | 孤独死 |
東京都青梅市 | 50万円 | 孤独死 |
東京都八王子市 | 1,200万円 | 孤独死 |
東京都府中市 | 600万円 | 孤独死 |
東京都杉並区 | 2,280万円 | 自殺 |
東京都練馬区 | 1,480万円 | 孤独死 |
東京都新宿区 | 2,480万円 | ゴミ屋敷 |
東京都目黒区 | 3,980万円 | 孤独死 |
このように、やはり通常物件の売却相場よりも安く取引されています。
事故物件の売却に欠かせない「告知義務」
事故物件の売却には、「告知義務」が欠かせません。
物件の購入希望者に対し、その物件に関する瑕疵(かし)を契約前に告知する義務のこと。告知義務を果たさないと損害賠償を請求されたり、売買契約書に記載のない瑕疵が後日判明したときに売主が負う「契約不適合責任」に問われたりといったリスクがある。
※瑕疵:問題や欠陥のこと
告知義務があるのは、以下の4つの瑕疵についてです。
心理的瑕疵 |
・他殺や自殺、孤独死などがあった ・近隣に墓地や嫌悪施設がある(環境的瑕疵にも該当) |
---|---|
環境的瑕疵 |
・火葬場や下水処理場、反社会的勢力の事務所などが近い ・踏切の騒音や工場からの異臭がある |
物理的瑕疵 |
・建物の基礎や柱が損傷している ・雨漏りがある ・シロアリ被害を受けている |
法律的瑕疵 |
・建築基準法違反があり再建築ができない ・建物の高さが制限されている |
事故物件の場合、心理的瑕疵はもちろん、家の汚損が深刻な場合などは物理的瑕疵も関わってくるでしょう。
なお、賃貸であれば「死が発覚してから3年」という期限がありますが、売買には時効がありません。賃貸よりも、買主に与える影響がより大きいといえるためです。
他殺や自殺などから何十年経過していても、告知義務を背負い続けることを覚えておきましょう。
東京都で事故物件を売却するなら仲介?買取?
事故物件を売却するなら、仲介か買取かの2パターンがあります。
仲介・買取のメリット・デメリットは以下のとおりです。
売却方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
仲介 | 高値で売却できる可能性がある |
・買い手がつくまでに時間がかかりやすい ・特殊清掃やリフォームを自分で行う必要がある ・契約不適合責任を負う |
買取 |
・早く現金化できる ・特殊清掃やリフォームを自分で行う必要がない ・契約不適合責任を負わない |
売却金額が安くなりやすい |
仲介業者に売却する場合、高値で売却できる可能性があります。売却金額を売主自身が決められるためです。
たしかに事故物件は嫌がられることが多いですが、中には「とくに気にしない」という人もいるでしょう。運よくそのような買い手に巡り会えれば、事故物件でも希望の金額で売却できるかもしれません。
ただし買い手がつくとは限らず、買主が現れても時間がかかる場合があります。
また、特殊清掃やリフォームを売主側で行う必要があるため、現状のまま売却できない点にも注意が必要です。
さらに、契約不適合責任を負うリスクもあります。買い手の同意を得られれば免除できますが、事故物件で契約不適合責任の免除に同意してくれるケースはあまりないでしょう。
一方、買取業者に買い取ってもらう場合は、早く現金化できるというメリットがあります。仲介のように買い手が現れるのを待つのではなく、買取業者が買主になるためです。
特殊清掃やリフォームが不要で、現状のまま引き渡せる点もメリットです。そのほか、契約不適合責任も負いません。
しかし、売却金額が安くなりやすい点はデメリットです。とくに他殺で特殊清掃が必要なケースであれば、コストがかかるため買取金額は大きく下がるでしょう。
そのため、23区内のような需要のあるエリアなら、仲介業者への売却をおすすめします。事故物件でも、人気のエリアなら買い手がつく可能性が高いためです。
反対に、23区外の人口が少ないエリアの場合、仲介では買い手がつかないことも考えられるため買取のほうがよいでしょう。
なお、「令和6年 地価公示 区市町村別用途別平均価格表」によると、東京23区の中でも、とくに不動産需要があると考えられるエリアは以下のとおりです。
エリア | 1㎡あたりの平均価格 |
---|---|
千代田区 | 296万8,600円 |
港区 | 229万7,300円 |
中央区 | 149万800円 |
渋谷区 | 148万3,200円 |
また、「令和6年地価公示 区市町村別用途別前年変動率」や「平均価格推移(指数)(用途別・地区別)」によると、東京都23区すべての地価が前年よりも上昇しています。
中でも、上記4区の1㎡あたりの平均価格は高く、いかに需要が高いかがわかります。
事故物件を売却する流れ
事故物件を売却する流れは以下のとおりです。
仲介業者に売却する場合 |
1.仲介業者に物件を査定してもらう 2.仲介業者と媒介契約を結ぶ 3.販売活動を開始する 4.買主と売買契約を結ぶ 5.決済を行い仲介手数料を仲介業者に支払う 6.物件を引き渡す |
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買取業者に買い取ってもらう場合 |
1.買取業者に物件を査定してもらう 2.買取金額に納得できたら売買契約を結ぶ 3.買取代金が支払われる 4.物件を引き渡す |
どちらと契約する場合でも、まずは査定してもらうところからスタートします。
買取業者に買い取ってもらう場合は、買取金額に納得できたらそのまま買取業者と売買契約を結び、買取代金が支払われます。そのあと物件を引き渡せば完了です。
一方、仲介業者に売却するなら、はじめに仲介業者と媒介契約を結び、そこから仲介業者に協力してもらいながら販売活動を行います。業者に任せっきりではなく、価格・条件の交渉や内覧の希望が入ったら、その都度対応する必要がある点に注意しましょう。
買い手がついたら購入者と売買契約を結びます。そして買主から売買代金が支払われ、物件を買主に引き渡します。
注意点は、仲介業者に仲介手数料を支払う必要があることです。買取の場合はかかりません。
なお、仲介業者に売却するときは、査定してもらう前にハウスクリーニングや特殊清掃、特殊清掃でも汚れやにおいが残るときはリフォームを行うなど、事故現場をきれいにしておく必要があります。
また、義務ではありませんが、お祓いもしておくと買い手が安心して購入できます。中には事故物件に対応してくれる神社や、サービスでお祓いしてくれる特殊清掃業者などもあるため、探してみるとよいでしょう。