事業用不動産を売るときにかかる消費税納税額の計算方法をわかりやすく解説

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事業用不動産の売却と消費税の関係は、複雑に絡み合っています。

事業用不動産売却を初めておこなう場合「事業用不動産を売却する際に、何に対して消費税が課税されるのか」「そもそも売却にかかる消費税とはどういうものなのか」と疑問を抱く人もいるでしょう。

この記事では、事業用不動産の売却と消費税にどのような関係があるのかを詳しく解説していきます。

また、売却時にかかる消費税の計算方法や事業用不動産を個人が売却する場合における消費税についても説明していきます。

事業用不動産売却と消費税の関係

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事業用不動産を売却し利益を得ると、その利益に対して消費税が課税されます。ただし、課税対象となるものは建物の売却利益のみであり、土地の売却利益に関しては免税になるのがポイントです。

また、納税の義務があるのは「課税事業者」であり、それ以外の人は消費税を納める必要はありません。課税事業者と認められた法人や個人は消費税を納める必要があります。

課税事業者・・・課税事業者とは、基準期間(納税義務の判定基準となる一定の期間)における課税売上高が1,000万円を超える事業者のことを指します。基準期間は法人の場合「前々(2年前の)事業年度」、個人事業主の場合は「前々年(2年前)」です。

不動産売却と消費税の関係

まず、日本の消費税は他国においては「付加価値税」とも呼ばれています。付加価値税の意味合いとしては「新たに生み出された付加価値(モノやサービスなど)に対して課税される」というものなっています。

この付加価値という考え方は、不動産における建物・土地売却と消費税の関係に深く結びついています。

建物は売却時に課税される

建物は人工物であり「新たに生み出されたモノ(付加価値)」として認識されます。

同時に、建物は永久的なモノではなく耐用年数や寿命という概念が存在するモノでもあるため、建物は新たに生み出された付加価値かつ「消費するモノ」だとも考えられます。

このことから、建物の売却に対しては消費税が課税される仕組みになっているのです。

ちなみに売上全てにおいて消費税がかかる部分の売上については課税売上という名目で計上されます。(不動産売却においては建物部分の売上が課税売上となる)

土地の場合は免税される

土地は自然界にもともと存在するものであり、新たに生み出されたモノではありません。つまり消費するモノの建物とは異なるため、原則は消費税かかりません。

国税庁は課税の対象としてふさわしくないものや社会的政策配慮から土地の売却は「非課税の取引」だと定めています。(土地売却における売上は非課税売上として計上)

参照:国税庁「非課税となる取引 1 概要」

免税事業者は納税が免除される

前の項目で説明した基準期間における課税売上高が1,000万円以下だった場合「免税事業者」として納税の義務が免除されます。

ですが、会社員のような給与取得者は事業者ではないため、年収1,000万円を超えたとしても消費税を納税する義務はありません。

ただし、会社員が事業用の賃貸物件(テナントや駐車場など)や副業としておこなっている事業などの課税売上が1,000万円を超える場合は、課税事業者なります。(複数の事業における課税売上の合計が1,000万円を超えるケースも同様)

事業用不動産の売却にかかる消費税の計算方法

事業用不動産 計算

事業用不動産の売却にかかる消費税は課税売上のみ(非課税売上がない)の場合と、非課税売上を含む(課税売上+非課税売上)場合で算出方法が異なります。

両ケースそれぞれの消費税計算方法を詳しく解説していきます。

※課税売上・非課税売上とは

課税売上のみの場合

まず、消費税の種類には「預かり消費税」と「支払い消費税」の2つがあります。

預かり消費税・・・商品やサービス等を取引する際に消費者から受け取るもの
支払い消費税・・・売主がおこなう商品の仕入れや経費の支払いなどにかかるもので、消費者として負担するもの

また、一般的に事業での売上は課税売上に該当するため消費税がかかります。ちなみに課税売上にかかる消費税は上記の「預かり消費税」に該当します。

課税売上のみの場合は、預かり消費税と支払い消費税の差額を税務署に納税します。

納税金額の算出例

建物の売却利益が税込550万円とし、売却にかかった経費を税込220万円だと仮定します。

このケースにおいて、売主が買主から支払ってもらう消費税は「50万円」、売主が国へ支払う経費などにかかった消費税が「20万円」となります。

よって、これら差額の30万円が実際の納税金額になります。(以下計算式)

課税売上のみの場合
50万円(預かり消費税)-20万円(支払い消費税)=30万円(納税金額)

しかし実際には、不動産売却において建物のみを売却すること自体が稀で「課税売上のみの場合における消費税」を算出すること自体あまり起こりません。

多くの場合は次の項目で説明する「非課税売上を含む場合の計算方法」で納税金額を算出することと思われます。

非課税売上を含む場合

消費税がかからない売上は「非課税売上」と呼ばれ、代表的なものが土地の売却で得た利益(売上)です。

前の項目では預かり消費税と支払い消費税(経費などにかかるもの)の差額を計算し納税金額を算出しましたが、非課税売上(土地)というものが含まれる取引においては支払い消費税の全額を単純に預かり消費税から差し引くという計算ができません。

不動産のように税務上で土地と建物の売却両方に経費がかかる場合、経費の消費税は次の項目で説明する「課税売上割合」を求める方法で算出していきます。

「課税売上割合」で納税金額を算出

今回の例では、建物と土地を売却して得た利益を合わせて考えていきます。

建物の売却利益が税込①550万円(課税売上)と土地の売却利益が②300万円(非課税売上)だとします。

また、建物と土地の売却にかかる経費を税込③220万円とします。

ただし、経費は課税売上割合によって控除できる消費税額が異なります。

課税売上割合・・・全売上の中における課税売上の割合を表すもの(以下計算式)
①課税売上÷売上総額(①課税売上+②非課税売上)=約0.6(約60%)

したがって、経費にかかる消費税を控除できる金額は以下の通りです。

経費にかかる消費税の控除金額

③20万円(経費の消費税)×0.6=12万円

このように、本来満額の20万円差し引くことができるように思っても非課税売上が含まれる場合は課税売上の割合を乗算して算出するため、控除できる消費税が減ってしまいます。

つまり、今回の例であれば、課税売上のみの場合よりも経費にかかる消費税を「8万円」多く納税しなければならないことになります。

結果、納税しなければならない消費税は12万円(20万円(預かり消費税)-8万円(支払い消費税))となります。

非課税売上は節税できる

たまたま土地の売却があっただけで消費税の控除額が減ってしまうのは不本意でしょう。この場合は「課税売上割合に準ずる割合」という制度が適用されます。

この制度が適用されれば課税割合を限りなく100%に近づけることができるため、納税の負担額を減らすことが可能です。

ただし、この制度を使用するためには税務署に「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請手続」を提出して許可をもらわなければいけません。

具体的な手続きの方法については以下のリンクを参考にするとよいでしょう。

参照:国税庁「[手続名]消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請手続」

土地と建物の価格割合を求める

事業用不動産売却時にかかる消費税を調べるためには、土地と建物の売却価格の割合を求めて課税売上高(建物の売却利益)を把握する必要があります。

基本的に不動産を売却するときは、土地と建物の合計価格で査定・売却がおこなわれます。そのため、土地と建物それぞれの価格がわからないというケースも考えられます。

土地と建物の価格割合は「固定資産税評価額」を使って求めることができます。

固定資産税評価額から求める

固定資産税評価額が「土地=3,000万円」「建物=1,000万円」であり、合計が4,000万円だとします。

この場合、土地と建物の固定資産税評価額の割合は以下の通りです。

土地・・・3,000万円÷4,000万円×100=75%
建物・・・1,000万円÷4,000万円×100=25%

仮にこの物件が5,000万円で売却できた場合、土地と建物それぞれの価格は以下の通りです。

土地価格・・・5,000万円×75%=3,750万円
建物価格・・・5,000万円×25%=1,250万円

このように価格割合を求めることができます。さらに、建物の売却価格1,250万円に対して消費税がかかります。

その結果、消費税額は1,250万円×10%=125万円となります。

事業用不動産を査定してもらう

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事業用不動産の建物にかかる消費税を算出するためには、「価格割合」と「売却価格」が必要です。実際に所有している事業用不動産の売却価格の査定を依頼してみましょう。

査定を依頼する場合は、一社のみではなく複数の不動産会社に見積をお願いすることがポイントです。

その理由は、一戸建てやマンションなどの「住居用不動産」の売買が得意な会社や、オフィスビルや店舗などの「事業用不動産」が得意な会社などがあるためです。

会社によって査定価格が異なるため、一社のみの見積もりではその査定価格では相場に対して適切なのか判断ができません。

事業用不動産査定はクランピーリアルエステートにおまかせ!

クランピーリアルエステートは今回のテーマでもある事業用不動産をはじめ、再建築不可物件や訳あり物件などさまざまな物件の査定・買取に対応しております。

専門知識と経験を持ち合わせた専門スタッフが多数在籍しているため「適正かつ最短12時間でのスピード査定」が可能となっています。

事業用不動産売却時にかかる消費税や売却方法などご相談がある人は、ぜひお気軽にご連絡ください。

事業用不動産売却時にかかる消費税

事業用不動産である建物の売却利益に対して消費税がかかることを説明しました。しかし、売却利益以外にもかかる消費税があるので確認しておきましょう。

次の項目からは消費者として負担する「支払い消費税」に関する説明です。

支払い消費税として課税対象になるもの

支払い消費税として課税対象になる項目は以下の通りです。

  • 仲介手数料
  • 繰り上げ返済手数料
  • 司法書士への報酬金

不動産会社に仲介を依頼して事業用不動産を売却した場合、不動産会社に「仲介手数料+消費税」を支払います。

売却して得たお金でローンの残債を一括返済(繰り上げ返済)する場合は「手数料+消費税」の金額を金融機関へ支払う必要があります。

また、ローンを完済した場合は、抵当権の抹消登記をおこなわなければいけません。一般的に抵当権抹消登記の手続きは、司法書士に依頼するケースが多く「報酬金+消費税」を報酬として支払います。

個人が事業用不動産を売却する事例

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個人が事業用不動産を売却する事例を「非課税事業者」と「課税事業者」の場合に分けて解説していきます。

非課税事業者が売却する場合

アパートや賃貸マンションなどの住居用の収益物件を売却する場合、非課税事業者のため消費税を納税する義務はありません。

ただし、建物の売却利益は課税売上にあたるため、建物の売却利益が1,000万円を超えると2年後に課税事業者となります。

このような場合は、納税地(住所地)を管轄している税務署へ「課税事業者届書」を速やかに提出する必要があります。

課税事業者の条件を満たした年の2年後に課税売上がある場合は、消費税を納税する義務が課せられるため忘れずに納税することが大切です。

ただし、全く課税売上がない場合は、納税する必要はありません。

課税事業者が売却する場合

法人化していない飲食店の経営者や独立・開業している弁護士などの個人事業主が前々年の課税売上が1,000万円を超えている場合、課税事業者となります。

また、会社員のような給与所得者でも、副業として店舗やテナントなどの商業向けの収益物件における賃料の収入が1,000万円を超える場合も課税事業者となります。

上記のような課税事業者が事業用不動産を売却する際に、建物の売却利益に対して消費税がかかります。

しかし、マイホームのような事業用とは異なる建物の場合は、消費税がかかりません。

まとめ

事業用不動産を売却する際に、土地の売却利益には消費税はかかりませんが、建物の売却利益には課税されます。

また、課税事業者と認められた法人や個人は、取引によって消費者から受け取る「預かり消費税」と、消費者として負担する「支払い消費税」の差額を納税する義務があります。

土地を売却して得た利益のような非課税売上が含まれる場合は、「課税売上割合に準ずる割合」の制度を税務署から許可をもらうことができれば節税が可能です。

事業用不動産を売却した場合に、どのくらいの消費税がかかるのかは土地と建物の価格割合を求める必要があります。

固定資産税評価額を使って建物にかかる大まかな消費税額を把握するとよいかもしれません。

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