固定資産税がかからない土地も相続の手続きは必要
「固定資産税がかからない土地なんて本当にあるの?」と思うかもしれませんが、実際にそうした土地は存在します。たとえば、国や地方自治体が所有する土地や、課税評価額が30万円未満の土地などは、固定資産税の課税対象外です。
とはいえ、固定資産税がかからない土地であっても、相続財産であることに変わりはありません。そのため、他の財産と同様に、相続人を確定して遺産分割協議を行う、相続登記や相続放棄をする、相続税の申告をするといった一連の手続きが必要です。
なお、相続登記は2024年4月から義務化されているため、すみやかに手続きを行う必要があります。手続きは土地の管轄の法務局、もしくは「登記・供託オンライン申請システム」によるオンライン申請で行えます。必要書類の準備や手続きに不安がある場合は、司法書士への依頼も検討すると良いでしょう。
また、土地を含む相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税の申告・納付が必要です。課税対象でない土地であっても、評価額が一定以上であれば相続税の計算に影響するため、見落とさないようにしましょう。
固定資産税がかからないのはどんな土地?
固定資産税がかからないのは、下記のような土地です。
- 国や地方自治体が所有している土地
- 課税標準額が30万円未満の土地
- 地方税法で非課税と定められた公的性質の強い土地
- 公共の用に供する土地(私道)
次の項目から、それぞれの条件について詳しくお伝えします。
国や地方自治体が所有している土地
国が所有している土地は、固定資産税がかかりません。
また、国だけでなく都道府県や市区町村などの地方自治体が所有している土地も、固定資産税は非課税となります。
上記のような用途で利用されている土地は、所有者が国や地方自治体となるため、固定資産税の課税対象外となります。
課税標準額が30万円未満の土地
固定資産税には免税点というものがあり、不動産の課税標準額がこの基準を下回ると固定資産税はかかりません。
固定資産税の免税点は不動産の種別によって以下のように定められています。
土地の課税標準額 |
30万円未満 |
建物の課税標準額 |
20万円未満 |
土地と建物の両方を所有していたとしても、それぞれの課税標準額が免税点の範囲内なら固定資産税はかかりません。
同一市区町村内で複数の土地を所有する場合は税金が発生する可能性あり
同一市区町村の区域内で複数の不動産を所有している場合は、課税標準額の合計によって固定資産税の課税対象となるかが決まります。
同一市区町村内の区域内で課税標準額20万円の土地A、課税標準額15万円の土地Bを所有している場合、課税標準額の合計が免税点の30万円未満を上回るため、固定資産税がかかります。
なお、上記の課税標準額20万円の土地A、課税標準額15万円の土地Bが、別の市区町村にある場合は、両方とも免税点の範囲内であるため、固定資産税が発生しません。
地方税法で非課税と定められた公的性質の強い土地
地方税法第348条では、固定資産税が非課税となる土地が定められています。具体的には下記のような土地が、公共性や公益性が高いことから非課税とされています。
- 墓地
- 境内地
- 保安林
- 国・都道府県・市町村などが公共の用に供する土地
- 公共の用に供する用悪水路、ため池、堤とう、井溝
- 国立・国定公園の一部区域
上記のなかで、私有地である可能性が高いのは保安林です。保安林は、水害防止や水源保全などを目的として保護されている森林で、森林法により伐採などが厳しく制限されています。保安林に指定された山林は、保安林の維持管理を促進するための優遇措置として、固定資産税が非課税となります。
公共の用に供する土地(私道)
「地方税法の第三百四十八条」では、「公共の用に供する道路、運河用地及び水道用地」は固定資産税の非課税の範囲と定められています。
そのため、私有地であっても、不特定多数の人が日常的に通行に利用しているような私道は、「公共の用に供する土地」と判断され、固定資産税が課されない場合があります。
ただし、すべての私道が非課税となるわけではなく、実際の利用状況や管理の実態などに基づいて、市区町村が非課税にするかを判断します。
1月2日以降に取得した土地の固定資産税は、前所有者が納付する場合もある
固定資産税は、その年の1月1日時点で土地を所有している人に課されます。したがって、1月2日以降に土地を取得した場合、その年の固定資産税は前の所有者が納めることになり、自分で支払う必要はありません。
ただし、翌年以降は新たな所有者として、固定資産税を自分で納める必要があります。
また、売買契約や遺産分割協議の内容によっては、税負担を日割りなどで調整することもあるため、税負担が誰に生じるかをしっかりと確認しておきましょう。
固定資産税がかからない土地を相続する際の流れ
固定資産税がかからない土地の場合を相続する際は、下記のような流れで進めます。
- 名寄帳で土地の情報を確認する
- 遺産分割協議で土地を相続する人を決める
- 法務局へ相続登記を申請する
- 相続税の申告・納付をする
一般的な土地の相続とほぼ変わりませんが、納税通知書がないため、「名寄帳(なよせちょう)」を取得して、固定資産税評価額を確認する必要があります。
それぞれの手順を、順番に解説していきます。
【手順1】名寄帳で土地の情報を確認する
まずは、故人が所有していた土地の情報を正確に把握することが大切です。固定資産税がかからない土地には納税通知書が届かないため、「名寄帳(なよせちょう)」を取得する必要があります。
名寄帳とは、市区町村が管理している台帳で、故人がその自治体内に所有していたすべての土地や建物の所在地、地目、地積、固定資産税評価額などが一覧で確認できます。
名寄帳を取得できるのは土地の所有者本人と相続人、代理人で、下記のような書類が必要です。
- 交付申請用紙
- 申請者の本人確認書類
- 相続関係が確認できる書類(戸籍謄本、遺産分割協議書、遺言書など)
- 被相続人の死亡を確認できる書類(除籍謄本など)
- 委任状や代理人の本人確認書類(代理人が取得する場合)
取得は、該当する土地がある市区町村の役所や役場で申請できます。窓口申請のほか、郵送での対応も可能な自治体が多いため、事前にホームページなどで確認するとスムーズです。
名寄帳以外では、法務局で取得する「登記簿謄本」や、市区町村の役所で取得する「固定資産税評価証明書」で土地の情報を確認できます。ただし、登記簿謄本では固定資産税評価額が確認できません。また、固定資産税評価証明書は、土地の所有者本人しか取得できないため、被相続人が亡くなった後では取得不可となります。
【手順2】遺産分割協議で土地を相続する人を決める
続いて、相続する土地の分け方を相続人全員で話し合いましょう。
「遺産分割協議」という話し合いをおこなうことで「誰が土地をどの程度相続するか?」といった土地の分け方を相続人全員で決めます。
遺産分割協議とは?
相続発生時に相続人全員で遺産の分け方について、協議・合意することです。
ただし、遺産の分け方は必ず相続人全員で決定する必要があり、1人でも反対している場合は決定内容が無効にされてしまいます。
ですので、遺産分割協議によって土地の分け方を決めた後は、必ず「遺産分割協議書」を作成して、相続人全員が納得している事実を残しておきましょう。
【手順3】法務局へ相続登記を申請する
遺産分割協議がまとまったら、相続登記の申請をします。相続登記とは、不動産の名義を故人から相続人に変更する手続きで、2024年4月からは義務化されています。手続きを怠ると過料(罰金)の対象となる可能性もあるため、早めの対応が重要です。
相続登記の申請は、土地の所在地を管轄する法務局の窓口のほか、郵送やオンラインでも申請可能です。申請が済むと、平均1週間程度で相続登記が完了して、正式に土地の所有権が被相続人から相続人に移転します。
書類の準備や手続きに不安がある場合は、司法書士に依頼する方法もあります。約6万円程度の手数料が発生しますが、専門家のサポートを受けることで、スムーズかつ正確に手続きを進められます。
相続登記に必要な書類
相続登記に必要な書類は、「遺産分割協議による相続」「法定相続分の相続」「遺言書による相続」の3パターンで異なります。
【遺産分割協議による相続の必要書類】
相続人全員で遺産分割協議を行い、その結果に基づいて相続登記をする場合の必要書類は以下のとおりです。
必要書類
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入手先
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・登記申請書
・不動産の登記簿謄本
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法務局
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・遺産分割協議書
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相続人もしくは専門家に依頼して作成
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・被相続人の戸籍謄本(戸籍事項証明書)
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の改製原戸籍
※出生から死亡まで、在籍していた全ての戸籍・除籍謄本が必要
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被相続人の本籍地の市区町村
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・被相続人の住民票の除票
・被相続人の戸籍の附票
※上記のいずれか。登記簿上の住所及び本籍地の記載のあるもの
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住民票の除票:被相続人の住所地の市区町村
戸籍の附票:被相続人の本籍地の市区町村
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・相続人の戸籍謄本(抄本)(戸籍事項証明書)
※相続人の死亡日以降に発行されたもの
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相続人の本籍地の市区町村
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・相続人の印鑑登録証明書
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相続人の住所地の市区町村
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・相続人の住民票
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相続人の本籍地の市区町村
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・固定資産評価証明書(名寄帳)
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土地のある市区町村
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【法定相続分の相続の必要書類】
遺産分割協議を行わず、法定相続分に基づいて相続登記をする場合の必要書類は以下のとおりです。
必要書類
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入手先
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・登記申請書
・不動産の登記簿謄本
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法務局
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・被相続人の戸籍謄本(戸籍事項証明書)
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の改製原戸籍
※出生から死亡まで、在籍していた全ての戸籍・除籍謄本が必要
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被相続人の本籍地の市区町村
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・被相続人の住民票の除票
・被相続人の戸籍の附票
※上記のいずれか。登記簿上の住所及び本籍地の記載のあるもの
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住民票の除票:被相続人の住所地の市区町村
戸籍の附票:被相続人の本籍地の市区町村
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・相続人の戸籍謄本(抄本)(戸籍事項証明書)
※相続人の死亡日以降に発行されたもの
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相続人の本籍地の市区町村
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・相続人の住民票
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相続人の本籍地の市区町村
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・固定資産評価証明書(名寄帳)
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土地のある市区町村
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【遺言書による相続の必要書類】
遺言書に基づいて相続登記をする場合の必要書類は以下のとおりです。
必要書類
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入手先
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・登記申請書
・不動産の登記簿謄本
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法務局
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・遺言書
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自筆証書遺言:自宅等又は法務局
公正証書遺言:公証役場
秘密証書遺言:自宅等
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・被相続人の戸籍謄本(戸籍事項証明書)
・被相続人の除籍謄本
・被相続人の改製原戸籍
※出生から死亡まで、在籍していた全ての戸籍・除籍謄本が必要
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被相続人の本籍地の市区町村
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・被相続人の住民票の除票
・被相続人の戸籍の附票
※上記のいずれか。登記簿上の住所及び本籍地の記載のあるもの
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住民票の除票:被相続人の住所地の市区町村
戸籍の附票:被相続人の本籍地の市区町村
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・相続人の戸籍謄本(抄本)(戸籍事項証明書)
※相続人の死亡日以降に発行されたもの
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相続人の本籍地の市区町村
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・相続人の住民票
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相続人の被相続人本籍地の市区町村
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・固定資産評価証明書(名寄帳)
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土地のある市区町村
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参考:法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」
相続登記については、下記の記事でも紹介しています。
【手順4】相続税の申告・納付をする
次項で詳しく解説しますが、固定資産税がかからない土地も相続税の課税対象です。土地を含む相続財産の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税の申告・納付が必要です。
相続税の申告期限は「相続開始から10ヵ月以内」と定められているため、早めの確認と準備が大切です。
「申告が必要であるかの判断に迷う」「相続税の申告が自分でできるか心配」といった場合は、税理士など専門家への相談をおすすめします。
「固定資産税がかからない土地」でも相続税の申告は必要?
相続税は、被相続人のすべての財産に対して発生するものです。そのため、固定資産税がかからない土地であっても、土地の評価額を確認し、相続財産として計算する必要があります。
相続税の申告が必要かどうかは、相続財産の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)に収まるかどうかで決まります。基礎控除内の場合は申告は不要、基礎控除を超える場合は申告・納税が必要です。
固定資産税がかからない土地も相続税の課税対象
固定資産税がかからない土地を相続した場合でも、その土地は相続税の課税対象となります。固定資産税の有無は関係なく、相続税は被相続人の全財産を対象に課税されるため、該当する土地があれば、通常の土地と同様に相続財産として評価・申告しなければなりません。
相続する際には、市区町村役場で「名寄帳」を取得し、被相続人が所有していたすべての土地を確認することが重要です。
もし申告漏れがあった場合には、延滞税や過少申告加算税などの追徴課税が科される可能性があるため、事前にしっかりと確認・整理しておきましょう。
なお、相続税の計算に用いる相続税評価額は、「路線価方式」もしくは「倍率方式」によって算出され、固定資産税評価額とは異なります。名寄帳に記載された固定資産税評価額は参考値であり、相続税の申告には「別途評価」が必要です。
路線価方式
路線価方式は、市街地や住宅地などで道路に接している土地に対して用いられる評価方法です。国税庁が毎年公表している「路線価図・評価倍率標」に記載された1㎡あたりの路線価をもとに、土地の形状や奥行き、利用状況などを加味して計算します。
計算式は下記のとおりです。
路線価 × 土地の面積 × 各種補正率(奥行きや形状、間口など)=相続税評価額
【計算例】
路線価:1㎡あたり20万円
土地の面積:100㎡
補正率:90%(例:奥行きが短いなど)
相続税評価額=20万円 × 100㎡ × 0.9(補正率)=1,800万円
路線価方式は、実勢価格(市場価格)に近い評価ができるため、土地の価値が高い地域では相続税の負担も大きくなる傾向があります。
倍率方式
倍率方式は、路線価が設定されていない地域で使われる評価方法です。国税庁が公表している「路線価図・評価倍率標」に記載された倍率を固定資産税評価額に乗じて算出します。
計算式は下記のとおりです。
固定資産税評価額 × 倍率=相続税評価額
【計算例】
固定資産税評価額:200万円
評価倍率:1.1
相続税評価額=200万円 × 1.1=220万円
倍率方式は市街化調整区域や農村部、山林などにある土地に適用されることが多く、路線価方式よりも計算が簡単ですが、地域によっては実勢価格とかけ離れることもあります。
相続財産の総額が基礎控除内であれば申告は不要
相続税の申告が必要かどうかは、相続した財産の合計額が「基礎控除額」を超えるかどうかで決まります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と定められており、これを下回る場合は、相続税の申告・納付は不要です。
たとえば、法定相続人が3人いる場合、基礎控除額の金額は以下のとおりです。
■法定相続人が3人いる場合
3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
上記の場合、固定資産税がかからない土地とその他の相続財産の合計額が4,800万円を下回るのであれば、相続税の申告は不要となります。
固定資産税がかからない土地の相続に関する注意点
固定資産税がかからない土地を相続する際は、下記のような点に注意する必要があります。
- 3年以内に相続登記しないと10万円以下の過料が科される恐れがある
- 相続税の申告漏れに該当すると延滞税や加算税など追徴課税が科される恐れがある
- 今後、固定資産税が発生する可能性がある
- 相続放棄後も現に占有している者は保存義務を負う
それぞれの項目について、詳しく解説していきます。
3年以内に相続登記しないと10万円以下の過料が科される恐れがある
2024年4月の法改正により、不動産を相続した際の登記申請が「義務化」されました。そのため、不動産の相続が発生したことを知った日から3年以内に相続登記を行わない場合、正当な理由がなければ10万円以下の過料(行政罰)が科される可能性があります。
正当な理由と認められる可能性があるのは、下記のようなケースです。
- 相続人が非常に多く、戸籍収集や他の相続人の把握に時間を要している場合
- 遺言の有効性や遺産の範囲をめぐって争いがあり、相続不動産の相続人が確定していない場合
- 登記義務者が重病などにより登記手続きが困難な状態にある場合
- 登記義務者が配偶者からDVを受けており、身の安全のため避難している場合
- 登記義務者が経済的に困窮しており、登記費用を負担する能力がない場合
正当な理由がない場合は、固定資産税がかからない土地であっても登記義務の対象となります。「使っていないから」「価値が低いから」と放置していても、登記の義務は免除されません。
過料のリスクを避けるためにも、土地を相続したら早めに相続登記を行うようにしましょう。手続きが不安な場合は、司法書士などの専門家に相談するのも有効です。
相続税の申告漏れに該当すると延滞税や加算税など追徴課税が科される恐れがある
相続税には申告期限があり「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内」に相続税の申告と納付を済ませなければなりません。
自分が土地を相続したことに気づかず、相続税の申告期限を過ぎてしまうと、無申告加算税という罰金を科せられるので注意してください。
科せられる罰金の金額は、以下のとおりです。
期限が過ぎた後に自主的に申告した場合 |
税金総額の5% |
税務調査で指摘を受けて申告した場合 |
税金総額の10% |
なお、新たに相続財産が見つかるなどして申告した税額が少なかった場合も、過少申告加算税という罰金が科せられる恐れがあります。
今後、固定資産税が発生する可能性がある
今ままで固定資産税がかからなかった土地も、急に固定資産税の課税対象となることがあります。
固定資産税の課税対象となるケースには、主に以下の2つが挙げられます。
- 同一市町村の区域内で別の土地や建物を取得した。
- 土地の評価額が上がった。
同一市町村内で別の土地や建物を取得し、課税標準額の合計が免税点以上になった場合は、固定資産税の課税対象となります。
また、土地の評価額は常に固定されているわけではなく、数年ごとに見直しがおこなわれています。
評価額が見直され課税標準額が免税点を超えてしまうと、今まで非課税だった土地が固定資産税の課税対象になってしまう恐れがあることを覚えておきましょう。
相続放棄後も現に占有している者は保存義務を負う
相続放棄したからといって、土地に関する一切の権利や義務がなくなるとは限りません。
民法940条では、下記のように定められています。
(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
引用元 e-Gov「民法」
「現に占有している」とは、その財産を事実上支配・管理している状態を指します。たとえば、土地を日常的に使用する、土地の上に物置や資材などを置く、土地の手入れを定期的に行っているといった場合は、「現に占有している」とみなされ、相続放棄後もその財産について保存義務(管理義務)を負います。
「保存義務」とは、相続財産が劣化したり、他人に損害を与えたりしないように、自己の財産と同じように適切に管理する責任のことです。草木が伸び放題になって近隣に迷惑をかけていたり、倒木などの危険が放置されていたりする場合、法的責任を問われる可能性もあります。
一方で、被相続人の家から離れた場所に住んでいて、実際にはその土地の管理に関わっていない相続人は、「現に占有している」とは判断されないことがあります。
なお、「現に占有している」の文言は2023年4月の法改正により明文化されたばかりで、実務上の解釈がまだ完全には定まっていません。相続人全員が相続放棄しそうな場合、相続財産を放置することでトラブルになるおそれがある場合は、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てるなど、早めの対応を検討しましょう。
管理義務の所在が曖昧な場合や判断に迷うときは、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続した固定資産税がかからない土地を処分する方法
固定資産税がかからない土地は、価値が低かったり活用の見込みがなかったりするケースが多く、相続後に「使い道がない」「維持管理が大変」と悩む方もいます。
土地を処分したいのなら、下記のような方法を検討してみてください。
- 隣地所有者に交渉して売却する
- 不動産買取業者に売却する
- 相続土地国庫帰属制度を利用して処分する
それぞれの処分方法について、詳しく解説していきます。
隣地所有者に交渉して売却する
隣接地の所有者に直接売却を打診する方法です。隣地所有者にとっては、自分の土地の利便性や資産価値を高めるために隣の土地を取得するメリットがあるため、交渉が成立しやすい場合があります。
法務局で隣地の登記簿謄本を取得すれば、隣地所有者の確認ができます。仲介を通さずに直接交渉することも可能ですが、価格交渉や契約内容でトラブルが起きやすいため、不動産会社や司法書士などの専門家を間に入れると安心です。
不動産買取業者に売却する
活用の難しい土地でも、不動産買取業者に相談することで現金化できる可能性があります。一般的な仲介による売却が難しい土地でも、買取業者であれば開発用地や投資用としてのニーズがある場合があり、早期売却につながることがあります。
買取価格は市場価格よりも低くなる傾向にありますが、管理の手間などを回避したいと考えるなら、検討に値する選択肢です。スピーディに現金化したい、現金化して相続人で分配したい場合などに向いています。
相続土地国庫帰属制度を利用して処分する
2023年4月にスタートした「相続土地国庫帰属制度」は、不要な土地を一定の条件下で国に引き取ってもらえる制度です。制度を利用すれば、将来的な管理義務や税負担から解放されるため、相続後に放置されがちな土地問題の解決策として注目されています。
ただし、制度を利用するには「建物が建っていない」「土壌汚染がない」「隣接地との境界が明確」などの厳しい条件を満たす必要があります。
また、審査には時間がかかり、10年分の管理費相当額(原則20万円)の負担金もかかるため、事前の調査と準備が重要です。
「相続土地国庫帰属制度」を利用できる土地、申請方法や費用については、下記の記事を参考にしてみてください。
まとめ
固定資産税の有無にかかわらず、相続した土地は相続登記が必要です。また、相続財産の合計額が基礎控除を超える場合は、相続税の申告・納付も行わなければなりません。
相続登記や相続税の申告漏れは、ペナルティを課されるおそれもあるため、相続する際はすみやかに手続きを進めましょう。「相続登記の方法がわからない」「相続税の申告が必要か判断できない」といった場合は、司法書士や税理士といった専門家に相談することをおすすめします。
なお、「土地を相続したうえで処分したい」といった場合は、隣地所有者や買取業者への売却、相続土地国庫帰属制度の利用を検討してみてください。処分に時間をかけたくない場合は、買取業者への依頼がおすすめです。
当サイトを運営している「株式会社クランピーリアルエステート」でも、訳ありの物件を積極的に買い取りしているため、ぜひご相談ください。
固定資産税がかからない土地のよくある質問
土地の相続時にかかる税金を安く抑える方法はある?
土地の相続時にかかる税金を安く抑えるには、2種類の方法があります。
- 相続税の控除・特例を受ける
- 相続放棄で土地を手放す
各種控除・特例を利用すれば、相続税を抑えつつ土地を相続できますし、相続放棄をおこなえば、相続税・登録免許税を一切負担せずに済みます。
それぞれの方法を順番に解説していきます。
相続税の控除・特例を受ける
1つ目は、相続税の控除や特例を受ける方法です。
相続税には、各種控除や特例が用意されているので、これを用いることで節税できます。
相続税を安く抑えるには、以下のような控除・特例があります。
種類 |
減額される金額 |
基礎控除 |
3,000万円+600万円×法定相続人の数 |
贈与税額控除 |
相続から3年以内の生前贈与で支払った贈与税額 |
配偶者控除 |
最大1億6,000万円または法定相続分の金額 |
未成年控除 |
満20歳になるまでの年数×10万円 |
障害者控除 |
満85歳になるまでの年数×10万円
(一般障害者) |
満85歳になるまでの年数×20万円
(特別障害者) |
小規模宅地等の特例 |
相続する宅地の330㎡までの部分の評価額を80%減額 |
2.相続放棄で土地を手放す
2つ目は、相続放棄で土地そのものを手放す方法です。
相続放棄とは?
被相続人の遺産を一切相続せず、財産・負債をすべて手放すことです。
相続放棄をおこなえば、土地を含めた被相続人の遺産を一切相続しないので、相続税も負担せずに済みます。
ただし、相続放棄をおこなうと、土地以外の財産も相続できない点に注意しましょう。
被相続人の抱える負債が土地を含めた遺産を上回る場合でない限り、相続放棄をおこなうことで損をしてしまう結果となります。
被相続人が負債を抱えている場合でも、土地を売却すれば返済資金に充てられるので、基本的には土地ごと遺産を相続することをおすすめします。
相続放棄については、下記の記事でも詳しく解説しています。
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