
地盤の状態や地震の影響などによって、家が沈下して傾いてしまうことがあります。
家の傾きは生活環境や健康状態にも悪影響があるため、傾いた家を売却して引っ越したいと考えている人も多いでしょう。
しかし、いざ売却といっても、
・傾いた家を売ってもいいの?売れるとしても、どの程度の傾きまでなら売却できるの?
・家がどれくらい傾いているか調べたい
・傾いた家をなるべく高く売却するコツを知りたい!
といった、さまざまな悩みや疑問を抱えることになります。
この記事では「傾いた家をもつ人」のために、不動産専門家の観点から解説し、疑問やお悩みを解決します。
具体的には、
・どのくらいの傾きなら家を売れるか
・傾いた家の売却価格はどのくらい下がるか
・傾いた家を売却する3つの方法
・傾いた家を放置し続けることのリスク
などの内容を、重要なポイントに絞って紹介していきます。
この記事を読めば、傾いた家でも「高く・早く・トラブルなく」売れて、正常な新しい家に引っ越すことも可能になります。
最後まで読んで、ぜひ参考にしてみてください。
目次
家の傾きは何度まで許容範囲なのか?
一般的に傾きがある家とは、どれくらいの角度で傾いている状態を指すのか確認しましょう。
家の傾きは瑕疵にあたるのか
「瑕疵」とは「きず」という意味で、法律上何らかの欠点・欠陥があることを指します。
より具体的には、売買の目的物が本来備えている機能・性質を備えていない状態です。
そして、家を購入する場合、通常では傾いていないことが前提であると考えます。
つまり、購入した家が傾いていた場合、売買の目的物である「家」に瑕疵があると判断される恐れがあるのです。
瑕疵に該当するのはどの程度の傾きか
家が傾いている場合に「瑕疵がある」と判断されますが、すべての傾きが瑕疵となるわけではありません。
建築技術の都合により避けられない微妙な誤差、材料である木材などの建築後の劣化やゆがみなどで、家に多少の傾きが生じることは比較的多いです。
それらすべてが「瑕疵」に該当して、売主が瑕疵担保責任を負担しなければならないわけではありません。
「どの程度までの傾きが許容範囲で、どこから先が瑕疵と扱われるのか?」の判断基準が問題となります。
ただし、瑕疵の判断基準については、法律上で明確な基準が定められていません。
以下のような要素から「瑕疵であるか否か?」を買主個人が判断します。
- 物件が新築物件か?中古物件か?
- 建物全体が傾いているか?一部に歪んでいるだけか?
- 建付けなどに支障が生じているか?
- 実際に生活を営む上で支障があるか?

具体的な判断基準
傾きが瑕疵に該当するか否かは、法律によって判断されるケースが多く見られます。
住宅の品質確保の促進に関する法律(品確法)
住宅の品質確保の促進に関する法律(品確法)第74条は、住宅トラブルをスムーズに解決するため、参考となる技術的基準を定めています。
参照:国土交通省HP
・傾きが3/1000未満であれば、構造上主要な部分に瑕疵が存在する可能性は低い
・傾きが3/1000以上6/1000未満の場合には、構造上主要な部分に瑕疵が存在する可能性がある
・傾きが6/1000以上の場合には、構造上主要な部分に瑕疵が存在する可能性が高い
ただし、技術的基準はあくまでも参考に過ぎず、建物の傾きが「瑕疵」に該当するか否かの判断基準ではありません。
したがって、技術的基準に該当したからといって、建物の傾きが瑕疵として認められるとは限りません。
災害にかかる住家の被害認定基準の運用指針
国は災害等によって家屋が被害を受けた場合における「被害認定基準」を定めています。
参照:内閣府防災情報
自然災害などで家が被害を受けた場合の住宅の修理費用について、被災者支援を受けるときの基準となるものです。
そこでは家の傾きが1/20(=50/1,000)を全壊、家の傾きが1/60以上1/20未満(=17/1,000〜50/1,000)を大規模半壊、1/100以上1/60未満(=10/1,000〜17/1,000)を半壊としています。
このように建物の傾きについて、さまざまな基準が設けられています。
住居として使用するうえで購入した家である以上、日常生活に何らかの支障が生じている場合を「瑕疵」と考えるのが妥当でしょう。
東京地方裁判所の判例からわかるように、5/1000程度の微細な傾きでも、壁に亀裂が入るなどの問題が生じれば瑕疵と認められる可能性が高いです。
つまり、傾きの大きさよりも「どのような支障が生じているか?」が重要になります。
家の傾きを調べる方法
家の傾きを調べたい場合、どのような方法で確認できるのでしょうか。
家の傾きを計測して貰う方法
家の傾きの測定は、レーザーレベルと下げ振りによる方法が主に用いられています。
レーザーレベルによる方法
これは、本体の機械部分から水平または一定の角度でレーザー光を照射して線を表示させ、床からの高さを複数の壁で計測し、その差によって床の傾きを計測する方法です。
下げ振りによる方法
これは、災害に遭った住家の被害認定基準の運用指針で定められた測定方法です。
傾いた壁の一点から下げ振りを下げ、下げ振りの先端までの長さに対して壁からどの程度距離が離れているのか、その割合によって傾きを測定します。
その他の方法
上記のレーザーレベルと下げ振りによる方法などは、ある意味では専門的な方法です。
簡易的に調べるには、ホームセンターなどで購入できる水平器を用いる方法などがあります。
また、現在ではスマートフォンのアプリでも計測できるものがあり、ある程度は測定可能です。
とりあえず、簡易的な方法で計測してみて、怪しいと思ったら専門家へ依頼して、詳細に調査してもらうのがよいでしょう。
傾いた家の売却価格はどのくらい下がる?
傾きが発生している家の売却価格については、ケースバイケースで物件ごとに異なります。
そのため、正確な数字は出しにくいですが、基本的には傾きを修繕する工事費用の分だけ値下げされると思っておきましょう。
一般的に傾いた家の修繕工事にかかる費用は以下のとおりです。
地盤沈下による修繕工事を安く請負う工務店でも、300万円ほどは必要となります。
さらには、家が大きかったり、工事を行う地形によっては500万円以上かかったりするケースも考えられるでしょう。
また、修繕工事を依頼する場合、工事費用だけではなく、工務店と打ち合わせする時間的な手間もかかってしまいます。
そうした様々な手間を考慮してみると、一般的な相場よりも売却価格を500万円程度下げなければ、傾いた家を購入してもらうのは難しいでしょう。
買主の気持ちを考えて「これぐらい安ければ、買ってもいいか」と自分なりの相場を算出して、不動産会社と相談しながら売却価格を決めましょう。
傾いた家を売却する3つの方法
傾いた家であっても、状態によっては売却できないわけではありません。
対策を立てればきちんと購入者を見つけることは可能です。
どのような対策を講じれば良いかを確認していきましょう。
1.現状のまま売却する
まずは現状のまま売却する方法です。
売る側にとって手間はかかりませんが、仲介に入る不動産会社を見つけづらい可能性があります。
また、基本的には修繕工事が前提となるため、修繕工事を請負う工務店が見つからなければ売れないリスクがあります。
さらに瑕疵物件扱いになり、銀行などから融資を受けづらいので、買主も現金購入を検討しなくてはいけません。
一般的には傾きを修繕してある物件を欲しがる買主が多いですが、売主へ任せずに自分で修繕工事したい買主もいます。
その場合は工事費用の分だけ売却価格を値引きする必要があり、周辺住宅の相場よりも500万円ほど値引きしなければ売却できないケースも少なくありません。

2.修理・修繕してから売却する
次に考えるべきは、傾きを修繕してから売却する方法です。
売却前に耐震補強や修繕を手配して傾きを解決しておけば、売主側に手間がかかる代わりに、買主側は安心して購入できるでしょう。
家が修繕されていることを示すには、住宅診断(ホームインスペクション)を実施して、住宅の状態が居住に十分耐えうることを証明する必要があります。
証明できれば購入する方にとっても心理的なハードルが下がるため、修繕工事の費用による経済的負担こそありますが、相場に近い価格で売却可能です。
修繕工事を安く依頼できる工務店であれば、工事費用を抑えられるため、売却による利益も大きくなるでしょう。

3.解体して更地で売却する
「一度でも傾いた家は修繕しても信用できない」と考える買主もいます。
その場合は住宅を完全に解体して更地にすると、住宅用地として売却しやすくなります。
ただし、土地自体に問題がない場合でないと更地にするメリットがありません。
例えば、沈下が起こりやすい土地の場合、新しく家を建て直しても再び沈下して傾く恐れがあるため、更地にする意味がありません。
その反対に、地盤調査をして地盤自体に問題がなければ、更地にするメリットは大きいでしょう。
強固な地盤の土地であれば建物を解体して、更地として売却すれば周辺の土地相場と同等の値段で売却できます。
30~40坪の木造住宅の場合、建物の解体にかかる工事費用は100万円前後ですので、傾きの修繕工事よりも安く済みます。

売却後に家の傾きが発覚した場合はどうなるのか?
中古住宅を売却したあとに家の傾きが発覚してしまった場合、売主はどのような責任を負うのでしょうか。
瑕疵担保責任期間か否かで負うべき責任は変わる
基本的に瑕疵担保責任の期間内であれば、売主は責任を負わなければいけません。
買主が不動産業者の場合、宅地建物取引業法によって最低2年間は瑕疵担保責任を負うことが定められています。
ただし、個人が売主となっている場合、瑕疵担保責任の期間を売主と買主で決定でき、一般的には1~3カ月程度に設定されるケースが多いです。
もし瑕疵担保責任の期間内であれば、買主から売買契約の解除を求められたり、損害賠償を請求されたりする恐れがあります。
ただし個人が売主の場合、買主の合意があれば、瑕疵担保責任の免責が認められます。
売却後のリスクを避けるのであれば、価格を下げるかわりに瑕疵担保責任の免責を別に定めて契約を交わすことも考えておきましょう。

傾いた家を放置し続けることのリスク
傾き続けている家に住むことは、居住者にとって数々のリスクがあります。
それぞれのリスクを1つずつチェックしておきましょう。
住宅の機能に関するリスク
まず住宅と設備の機能が損なわれるリスクです。
傾きが起きれば窓や扉の戸が閉まりにくくなり、建物の断熱性や気密性も損なわれます。
エアコンの効きなども悪くなりますし、窓枠などが歪めば、建物の美観を損ねてしまいます。
つまり、住宅の機能だけでなく内外観も損なわれてしまうのです。
安全性に関するリスク
土台や柱、梁が曲がると建物の耐震性が損なわれます。
耐震性が損なわると、家そのものが揺れやすくなり、耐震基準を満たせません。
地震の発生によって、建物が一気に倒壊してしまうリスクも増大します。
すると、住宅の安全性は著しく低くなってしまうでしょう。
健康に関するリスク
傾いている家で生活していると、住民の健康面にも影響が出てきます。
平衡感覚が徐々に失われ、平地を歩くと逆に違和感を覚え、頭痛やめまいが発生するケースも少なくありません。
特に小さなお子さんの成長過程において、平衡感覚が保たれない家は成長に重大な影響を及ぼす恐れが大きいです。
健康被害のリスクを避けるためにも、傾いた家は放置せず修繕するか売却したほうがよいでしょう。
まとめ
傾いている家は住宅の機能・美観・安全面、そして住んでいる方たちの健康にも悪影響を及ぼします。
そのため、傾き続けている家に住み続けるリスクは高いのです。
売却して他の家に住むか、それとも、地盤沈下の修繕工事などをして住み続けるか、いずれかの選択を迫られることになります。
ただし、安全な場所に住みたいのであれば、新しい家を探すほうが手間なく確実に問題解決できるでしょう。
傾いている家は避けられやすい物件なので、なかなか買主が見つかりません。
そうした場合、欠陥住宅の取扱いに長けている不動産業者に頼むか、もしくは専門業者に買取依頼しましょう。
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