事故物件を建て替え・更地にしても告知義務はある?告知義務違反や売却価格も解説

事故物件

殺傷事件や自殺が起きてしまうと、その物件は心理的瑕疵物件、いわゆる事故物件になってしまいます。

物件の所有者としては、そのままだと物件を活用できないため

「事故物件を建て替え・更地にすれば普通の物件と同じように売却できる?」

「事故物件を売却するときの告知義務ってなに?」

など、さまざまな疑問や悩みがあるかもしれません。

この記事では「事故物件を少しでも高く売却したい人」のために不動産専門家の観点から、あなたの疑問やお悩みを解決します。

具体的には

・事故物件の告知義務についての基礎知識
・事故物件を建て替え・更地にしても告知義務はなくならないこと
・事故物件を建て替え・更地にした場合でも売却価格は下がること

などの内容を、重要なポイントに絞って解説していきます。

この記事を読めば、事故物件を建て替え・更地にしても告知義務が発生することを理解し、事故物件でも高く売却できるようになります。

事故物件の告知義務と告知事項

告知義務

殺人事件や自殺の起きた「事故物件」を法律上では「心理的瑕疵物件」といいます。

心理的瑕疵物件では、その物件が抱える心理的瑕疵を買主へ告知しなければなりません。

まずは「心理的瑕疵物件」の定義と、告知しなければならない事項を確認しましょう。

事故物件とは買主への心理的瑕疵のある物件

事故物件 心理的瑕疵物件

建物や部屋の中で事件や事故が起きた物件は、宅地建物取引業法において「心理的瑕疵物件」と呼ばれます。

瑕疵とは住宅における欠点や問題などを指す言葉です。つまり瑕疵物件とは、なにかしらの欠陥や問題のある物件なのです。

新築物件の購入時には、10年間の瑕疵に対する保証責任が定められており、瑕疵がある場合は販売業者が修繕などの義務を負います。

中古不動産の売買時には、売主が一定期間の「瑕疵担保責任」を負います。「瑕疵担保責任」とは、売却した中古住宅で瑕疵が発覚した時に売主側が修繕費などを負担する責任です。

瑕疵担保責任期間が長いほど、瑕疵発覚時に修繕費用を負担しないといけないリスクは高いですが、売却価格も高くなります。

瑕疵は建物の傷や欠陥だけではなく「怖い」「不愉快」など、買主の心理に影響する事項「心理的瑕疵」も含まれます。

事故物件の売主は心理的瑕疵を買主へ告知する義務がある

買主が安心して生活できるように、心理的な不具合を与えるリスクのある心理的瑕疵物件には、宅地建物取引業法上で告知義務が定められているのです。

告知義務の内容は宅地建物取引業法35条に明記されています。

宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない出典:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC1000000176、e-Govポータル「宅地建物取引業法35条」

宅地建物取引業法35条の13にも以下の記載があります。

当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要出典:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC1000000176、e-Govポータル「宅地建物取引業法35条の13]

つまり、事故物件の売買時、売主は建物の瑕疵や心理的瑕疵になりうる点を買主へ必ず告知しなければいけません。

心理的瑕疵の適用範囲はケースバイケース

法律上では、通知しなくてはいけない瑕疵の内容までは明文化されていません。

物理的瑕疵の場合は「雨漏りがする」「排水が故障している」など、目に見える不具合が現れるので共通認識を持ちやすいです。

しかし心理的瑕疵については曖昧で、人によっては「小学校のチャイムがうるさい」と感じる人もいますし、まったく気にない人もいます。

このように心理的瑕疵は個人によって解釈が分かれやすいのです。

そのため、心理的瑕疵物件の売却時には、心理的瑕疵になりそうな事項をすべて告知しておくのが無難です。

買主とトラブルを抱えないためにも、以下のような細かい問題まで告知しておきましょう。

  • トラブルによる殺人事件や事故が起きた
  • 周辺に暴力団事務所やパチンコ屋などがある
  • 物件内で入居者の病死・自然死・火災が発生した
  • 霊現象が起きたので入居者の希望でお祓いをした
  • 隣人が大声で歌うので夜中うるさい

国土交通省のガイドラインにある事項は告知するべき

心理的瑕疵の適用範囲は法律で明文化されておらず、個人差があるため「告知すべきか?しなくてよいか?」の判断基準が難しいです。

国土交通省のガイドラインには、以下の事項を告知すると望ましいとしています。

  • 土地関係・・・境界確定の状況、土壌汚染調査等の状況、土壌汚染等の瑕疵の存否又は可能性の有無、過去の所有者と利用状況、周辺の土地の過去及び現在の利用状況
  • 建物関係・・・新築時の設計図書等、増改築及び修繕の履歴、石綿の使用の有無の調査の存否、耐震診断の有無、住宅性能評価等の状況、建物の瑕疵の存否又は可能性の有無、過去の所有者と利用状況
  • その他・・・従前の所有者から引き継いだ資料、新築・増改築等に関わった建設業者、不動産取得時に関わった不動産流通業者等

参照:国土交通省サイト

義務ではありませんが、これらの事項を買主へ告知しておけば、売却後のトラブルを防げるでしょう。

『宅地又は建物の過去の履歴や隠れた瑕疵など、取引物件の売主や所有者しか分からない事項について、売主等の協力が得られるときは、売主等に告知書を提出してもらい、これを買主等に渡すことにより将来の紛争の防止に役立てることが望ましい。

告知書の記載事項としては、例えば売買であれば、

①土地関係:境界確定の状況、土壌汚染調査等の状況、土壌汚染等の瑕疵の存否又は
可能性の有無、過去の所有者と利用状況、周辺の土地の過去及び現在の利用状況

②建物関係:新築時の設計図書等、増改築及び修繕の履歴、石綿の使用の有無の調査
の存否、耐震診断の有無、住宅性能評価等の状況、建物の瑕疵の存否又は可能性の有無、過去の所有者と利用状況

③その他:従前の所有者から引き継いだ資料、新築・増改築等に関わった建設業者、
不動産取得時に関わった不動産流通業者等

などが考えられ、売主等が知り得る範囲でこれらを記載してもらうこととなる』

参照:国土交通省サイト

事故物件を建て替え・更地にしても告知義務はなくならない

更地
事故物件の建て替えや更地にしても、過去の心理的瑕疵になりうる点の告知義務はなくなりません。

建物内で事件が起きた場合、血痕や壁への傷、設備の破損など、物理的に損害が生じているケースも多いです。

そのため、事件や事故があった建物を取り壊して、建て替えたり、更地にして売却する人もいます。

そうすれば、心理的瑕疵の告知義務もなくなり、早く売れると考えている方は少なくありません。

しかし、実際には建て替えたり、更地にしても、心理的瑕疵物件の告知義務は残り続けるため注意しましょう。

不動産売買は賃借以上に告知が重要

じつは宅地建物取引業法には、心理的瑕疵の告知義務への罰則規定が一切記載されていません。

とはいえ、心理的瑕疵の告知義務を破っても、まったく罰則がないわけではありません。

特に心理的瑕疵物件を売却した時は、心理的瑕疵の告知を怠ると、売主の負う責任が大きいため注意しましょう。

賃貸用物件で心理的瑕疵があっても、借主は引越しなどの選択肢を選べるので、損害賠償を求められたとしても、せいぜい数カ月分の家賃と引越し代程度で済みます。

しかし、心理的瑕疵物件を売却する場合、長期間使用することを前提に購入するケースがほとんどでしょう。

想定外の心理的瑕疵があった場合、買主側の損失は非常に大きいため賠償額も膨大になります。

心理的瑕疵なの告知を怠ると、債務不履行責任を買主から追及されることもあります。

債務不履行とは、債務に対して、債権側が責任を果たさないことを指します。

買主側は瑕疵のない物件と想定して購入したのに、売主側は瑕疵のある物件を売っていると判断されると、売主としての責任を追及されてしまいます。

このような問題が起こらないように、建て替えや更地にしていても、重要事項説明書では必ず過去の心理的瑕疵を告知するようにしましょう。

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告知義務を怠った時は「告知義務違反」として損害賠償の責任を負う

損害賠償
告知義務を怠った時、具体的には、どのような罰則を受けるのでしょうか。実例を確認してみましょう。

事故物件の告知義務を怠った裁判の判例

事故物件の告知義務を怠った場合、以下のような判決が最高裁判所で下されています。

「平成17年(ワ)第20687号売買代金等返還請求事では、飛び降り自殺が過去にあったマンションを売却した売主に対し、買主が売買契約の解除と損害賠償を請求。売買契約は解除されず、2,500万円の損害賠償を売主側が支払う」

この判例のように、告知義務を怠ると売主側の瑕疵担保責任が認められて、損害賠償を支払うことになります。

この判例から見ても、告知義務不履行のリスクは大きいことがわかります。

売主も知らない心理的瑕疵は免責される

自分も心理的瑕疵を知らずに売却した場合、損害賠償請求が認められる可能性は低いです。

例えば、10年前に購入した物件を買主へ売却したとしましょう。

その後、買主から「ここは50年前に殺人事件があったので、やはり手放したい。」と瑕疵担保責任を追及されたとします。

10年前の購入時に、自分も心理的瑕疵を告知されていなければ、責任を問われる可能性は低いです。

事故物件の告知を受けていなかった場合、売主が知り得る範囲ではないため、損害賠償は支払わずに済むでしょう。

ただし、売主も心理的瑕疵を知らない事実を証明するのは難しいため、必ずしも責任追及されないとは限りません。

事故物件を建て替えたり、更地にしたりしても売却価格は下がる

事故物件を建て替えたり、更地にしたりしても、心理的瑕疵に関する重要事項説明において告知の義務があることはお分かりいただけたでしょう。

心理的瑕疵物件の活用が難しい時、早期に処分して現金化したい時、実際の売却はどのような方法を取ればよいのでしょうか。一般的な相場に比べ、売却価格はどの程度下がるのでしょうか。

事故物件の売却価格は通常より約20%値下げされる

事故物件を最初に賃貸に出す時は、相場から20~50%家賃を下げなければ、部屋を借りてもらうことが難しいです。

売却する時は、一時的な賃借ではなく、土地や建物を長く利用することを前提にする人が多いので、賃借と同程度の値引きが必要でしょう。

何か問題が発生した不動産に関しては、インターネット上に心理的瑕疵が発生したという物件情報が、半永久的に残される恐れもあります。

たとえ建物を建て替えたり、更地にしたりしても、心理的瑕疵を抱えてしまった事実は変わりません。

心理的瑕疵を嫌悪する買主であれば、値引きしないと売却できませんし、心理的瑕疵を知った時点で、購入を避けるケースも多いです。

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値下げ幅は事故物件の立地条件でも変わってくる

不動産の売買相場は、売主と買主間の交渉次第で変わってきます。心理的瑕疵物件は家賃が安くなる傾向があるので、不動産業者にあえて事故物件の紹介を依頼し、積極的に住もうとする若者も増えています。

心理的瑕疵がマイナスポイントでも金銭的なメリットがあるならば、借主側が歓迎する傾向も高まっているのです。

そのため不動産大家業においては、事故物件のリスクはそれほど大きくないと言えます。

自分が所有する不動産が事故物件となった時に、極端な値引きをせず、相場に近い値段で売れるかどうかは、最終的には需要のあるエリアかどうかで変わってきます。

需要のあるエリアならば相場から1~2割値引きするだけでも、お得物件になるので、心理的瑕疵を気にせずに購入し自分で有効活用したいと思う人も出てくるでしょう。

逆に、郊外や地方など、不動産がなかなか売れないエリアの事故物件は売主を探す上で大きなマイナスになり、相場の半値以下にしなければ売れない可能性が高いです。

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まとめ

事故物件の1つである心理的瑕疵物件を売却する場合、売主から買主へ心理的瑕疵を告知する義務があります。

どんな些細な事でも告知するべきであり、売主側が勝手に告知の有無を判断するのは危険です。

インターネットを利用すれば、一般ユーザーでも事故物件を調べられるので、瑕疵担保責任を追及する訴訟が増えています。

心理的瑕疵の告知は宅地建物取引業法で義務化されているため、告知せず売却すると多額の損害賠償を負う恐れもあります。

建て替えても、更地にしても、事故物件の心理的瑕疵は必ず買主へ告知しましょう。

事故物件の価格は安くなりやすいですが、需要のあるエリアならば値下げせずに売却できますし、最近は心理的瑕疵物件に抵抗のない人も増えています。

比較的新しい物件の場合、大幅なリノベーションやリフォーム、築古物件であれば、建て替えたり、更地にしてから売るなどの対処をしましょう。

心理的瑕疵物件を気にしない買主さえ見つけられれば、事故物件でも十分な値段で売却できます。

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