
相続が発生し財産を受け取ったら、国に相続税を納めなければなりません。
納付する相続税の金額を計算するためには、相続財産の評価額を算出する必要があります。
不動産の場合、土地と建物で計算方法が異なります。また、貸家として使っているのか、宅地として使っているのかなど、さまざまな要因で計算が変わります。
非常に複雑なルールなので、基本的には税理士に相談したほうがよいでしょう。
また、不動産の売却まで視野に入れるなら、弁護士と連携した買取業者に相談するのもおすすめです。法律面から売却に関する悩みまで、総合的なサポートを受けられます。
目次
不動産の相続税評価額を計算する方法
相続財産のなかに不動産がある場合、不動産の「相続税評価額」を求める必要があります。
相続税評価額の算出は、土地と建物で計算方法が異なります。
次の項目から、土地と建物それぞれにおける相続税評価額の計算方法を見ていきましょう。
建物の計算方法
建物における相続税評価額は、自分で計算する必要はありません。なぜなら、原則「固定資産税評価額」がそのまま相続税評価額とされるからです。
固定資産税評価額は、市区町村から毎年送られてくる納付書や通知書(固定資産税課税明細書)に記載されています。
また、固定資産税評価額は3年ごとに改訂されます。相続が開始されたら、最新年度の納付書や通知書で確認しましょう。
納付書や通知書などを紛失してしまった場合は、各自治体にある「固定資産課税台帳」から確認できます。不動産所在地の役所に問い合わせてみましょう。
貸家の相続税評価額
固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になるのは、自宅として活用している建物の場合です。賃貸物件の場合、評価方法が若干異なります。
他者に貸している建物は「正当な理由がなければ賃貸借契約を破棄しづらい」状態であり、利用に制限があるといえます。
そのため、評価額が低くなるよう計算されるのです。
貸家における相続税評価額の計算方法は、以下の通りです。
・借家権割合・・・都道府県ごとに定められる。一般的には30%。
・賃貸割合・・・入居率の割合。満室なら100%、部屋が半分空いているなら50%。
例えば、建物の「評価額が3,000万円」の物件があるとします。この建物で「借家権割合を30%」「賃貸割合を100%」として計算式に当てはめると、以下のようになります。
このように、貸家の評価額は2,100万円となります。
土地の計算方法
土地における相続税評価額の計算方法は、路線価方式と倍率方式の2通りがあります。
路線価方式 | 国税庁が公表している路線価(各道路に設定された、その道路に面している土地の価格基準)から評価する方法。 |
---|---|
倍率方式 | 固定資産税評価額を基準に、国税庁が公表している倍率をかけて評価する方法。 |
路線価が設定されている地域については「路線価方式」で評価し、それ以外の地域は「倍率方式」で評価します。
路線価や倍率に関しては、国税庁のWebサイトで確認できます。
路線価方式の計算方法
路線価方式では、土地1㎡あたりの価格である路線価に土地の面積などを乗じて、土地の相続税評価額を計算します。これを計算式に表すと、以下の通りです。
路線価図に記載されている数字が、1㎡あたりの土地の価額(千円単位)を表します。
例えば「200D」という表記であれば、1㎡あたりの路線価は20万円です。アルファベットは、後で解説する借地権割合を示しています。
仮に「路線価が20万円」「土地面積が200㎡」だとして、上記の計算式に当てはめると、以下のようになります。
ただし、実際の計算では奥行価格補正率や側方路線影響加算率など、いくつかの補正値が入るため注意しましょう。
倍率方式の計算方法
固定資産税評価額に国税庁が定めている倍率を乗じて、土地の相続税評価額を算出する方法が「倍率方式」です。
計算式は以下のように表します。
例えば「固定資産評価額が3,000万円」「倍率が1.1」の土地における相続税評価額は、以下の通りです。
宅地や借地で適用される評価方法
前の項目では、土地の基本的な評価方法について解説しました。
しかし、土地のなかでも「宅地」や「借地」には特別な制度が適用されます。
次の項目から、宅地と借地における評価方法についてわかりやすく説明します。
宅地は小規模宅地等の特例が受けられる
相続した宅地が一定の条件を満たしている場合、評価額を低くする特例が設けられています。この特例を「小規模宅地等の特例」といいます。
小規模宅地等の特例を利用できれば、敷地面積400㎡までの宅地における評価額を、最大8割減額できます。
例えば「土地面積100㎡」「評価額5,000万円」の土地に小規模宅地等の特例が適用できた場合の評価額は以下のようになります。
このように評価額を4,000万円減らすことが可能です。
評価額を大幅に減額する特例が用意されている理由は、宅地は相続人の生活基盤になり得る財産だからです。
多額の相続税が課せられて宅地や家を売却しなければならなくなると、相続人が生活基盤を失ってしまうことになりかねません。このような事態を防ぐために、特例が設けられています。
より詳しい要件などは、関連記事も参考にしてください。

参照:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
借地は借地権割合を計算に入れる
被相続人が所有している「借地権(土地を借りる権利)」も、相続の対象となります。
相続の対象となるからには、借地権の評価額を計算しなければいけません。
借地権の評価は、土地の相続税評価額に「借地権割合」を乗じて求めます。
計算式に表すと、以下のようになります。
借地権割合は路線価図にアルファベットで示されており、Aの90%~Gの30%まであります。
例えば「評価額が5,000万円」「借地権割合が70%」の場合、評価額は以下のようになります。
相続税を計算する手順
相続税を計算するときは、個別の財産に対してではなく、相続財産全体で計算しなければいけません。
そこで、相続税の計算を順番に解説してきます。
ただし、実際の相続税は複雑な計算が必要で、個々のケースによって適用される控除なども異なります。
そのため、正確に相続税を計算したいときは、専門家である税理士に相談しましょう。
- 遺産の総額を計算する
- 課税遺産総額を計算する
- 法定相続分で分割したものとして相続税を計算する
- 各相続人の相続税額を計算する
参照:国税庁「相続税の計算」
1.遺産の総額を計算する
相続税を計算するためには、まず遺産の総額を計算しなければなりません。
相続対象となる遺産は、主に以下の4つがあります。
- 取得財産(プラスの財産)
- 相続時精算課税制度を選択した贈与財産
- 相続開始前3年以内の贈与財産(贈与加算)
- 債務(借金やローンなどマイナスの財産)
- 葬式の費用
取得財産は、現金や預金、不動産や株式、生命保険金や退職手当金などがあります。
相続時精算課税制度は、生前に贈与をおこない、そのときの贈与税を相続時まで先送りする制度です。詳しくは、関連記事を参考にしてください。

2.課税遺産総額を計算する
遺産総額から基礎控除額を差し引いたものが、相続税の対象となる「課税遺産総額」です。
基礎控除額は、次のように計算します。
例えば「遺産総額が8,000万円」で、相続人が「配偶者1人、子供2人」だとすると、以下の計算になります。
この3,200万円が、課税遺産総額となります。
3.法定相続分で分割したものとして相続税を計算する
上記で算出した課税遺産総額から「法定相続分で分割した」と仮定して、相続税を計算します。
まずは、法定相続分にしたがって課税遺産を分割します。配偶者の法定相続分は1/2、子供の法定相続分は「1/2÷人数」です。
・配偶者は「3,200万円×1/2=1,600万円」
・子供Aは「3,200万円×1/4=800万円」
・子供Bは「3,200万円×1/4=800万円」
上記で分割した課税遺産から、下記の速算表に照らし合わせて「各相続人の相続税額」を計算します。
課税遺産総額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
・子供Aは「800万円×0.1=80万円」
・子供Bは「800万円×0.1=80万円」
4.各相続人の相続税額を計算する
最後に、各相続人の相続税額を計算します。法定相続分どおり遺産分割をするのであれば、上記で計算した相続税額のとおりです。
しかし、法定相続分とは異なる割合で相続する場合、いったん相続税額を合算し、実際の分割割合にあわせて計算し直します。
例えば、実際の遺産分割が「配偶者が1/5、子供Aが3/5、子供Bが1/5」だったとすると、下記の計算となります。
・配偶者は「350万円×1/5=70万円」
・子供Aは「350万円×3/5=210万円」
・子供Bは「350万円×1/5=70万円」
上記が、各相続人が実際に負担する相続税額です。
ただし、配偶者は「配偶者控除」により、法定相続分もしくは1億6,000万円までのいずれか多い金額が控除されるため、上記の例では実質0円となります。
相続税の節税は税理士に相談しよう
不動産の評価額や、相続税の計算について解説しました。
しかし、相続税のルールは非常に複雑であり、一般の人が計算をしようと思っても難しいといえるでしょう。
そのため、税理士に相談して、税金の計算から書類作成、申告手続きまで代行してもらうことをおすすめします。
税理士なら、節税についても個々の事情にあわせた最適な提案ができます。相続税をなるべく抑えるためにも、専門家の知識に頼りましょう。

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まとめ
不動産の相続税評価額は、建物と土地で計算方法が異なるため注意しましょう。
算出した相続税評価額から「基礎控除額」を差し引いたものが「課税遺産総額」です。課税遺産総額に相続税率を乗ずることで、相続税が算出可能できます。
ただし、実際の計算はルールが非常に複雑です。相続税に関しては、専門家である税理士に相談するとよいでしょう。
不動産の相続税についてよくある質問
相続税額は「(すべての相続財産額-基礎控除額)×相続税率」で計算します。不動産の場合、評価額の計算や各種控除、税率に複雑な決まりがあるため、一概に「資産価値の何%」とはいえません。詳しくは、税金の専門家である税理士に相談しましょう。
建物の場合、固定資産税評価額がそのまま適用されます。ただし、建物が貸家の場合は「建物の評価額-建物の評価額×借家権割合×賃貸割合」の計算式で算出します。
土地における相続税評価額の計算方法は「路線価方式」と「倍率方式」の2通りあります。路線価方式は、道路ごとに設定された「1㎡ごとの土地の価格」に、対象の土地の面積を乗じます。倍率方式は、地域ごとに設定された倍率と、対象の土地の固定資産税評価額を乗じる方法です。基本的には路線価方式が採用され、路線価の設定がない土地で倍率方式が使われます。
はい、相続の対象です。借地の相続税評価額は、土地そのものの評価額に「借地権割合」を乗じて計算します。借地権割合は路線価図にアルファベットで示され、Aの90%~Gの30%まであります。
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