賃貸業界では空き家率が増加している
まずは、賃貸業界の動向について理解しておきましょう。業界全体の情報をおおまかにでも把握しておけば、今後どのような対策が有効なのか見えてきます。
空き家率が増加している
参照:総務省
近年、賃貸住宅の空き家率が増加しています。平成31年に総務省が集計した「土地統計調査」によると、賃貸住宅のみならず全体的な住宅の空室率が全国的に増加傾向にあるようです。上記のグラフを見ると、賃貸用住宅の空き家は全国で846万戸とかなり多い結果に。5年前に実施された集計データと比較すると、26万戸以上増えています。現在の日本は、高齢者が増える一方でアパートやマンションを借りたいと思う若者が減りつつあります。つまり、入居募集をかけても人が集まらないのです。そのため、繁忙期を迎えても満室にならないと頭を抱える不動産経営者が多い傾向にあります。このように全国的に空き家が増えている現状をみると、賃貸物件の需要自体が減ってきていることが読み取れます。
しかしながら、国が公表している「不動産ビジョン」によると、不動産投資の市場は拡大傾向にあるというデータもみられます。つまり、空き家率は増加しているものの、不動産投資市場は広がりを見せているということ。このことから、需要は減っているものの、まだまだ賃貸市場で戦っていけるということがわかります。
空室対策を考えるなら「まずは現状把握」から
まずは、所有している収益物件の現状を把握することから始めましょう。もし、物件にしばらく足を運んでいないのであれば、現在物件はどのような状態なのか、見に行ってみましょう。賃貸経営の最終責任者はオーナー自身。経営者自らが現状を把握せずに、空室対策をすることはできません。一度物件に足を運び、以下のことを確認してみてください。
・入居者の生活状況
・空室内の様子
・敷地内の様子
・入居者に不満はないか
・競合物件にどんな差があるのか
どんなに立地がよく、築年数の浅い物件でも、入居者の建物使用状況が悪ければ入居率はアップしません。また、敷地内にゴミがあったり共用部分が汚れていたりするような、不衛生な状況であれば、空室対策どころか適切な運営がされていないという印象を与えてしまいます。所有しているだけで収益を生む時代ではありません。空室が多い物件には、それなりの理由があります。実際に物件まで足を運ぶと、空室対策のヒントが見つかるはずです。
当たり前の「おもてなし」ができていない物件が多い
費用対効果の高い空室対策というと、お金をかけたリフォームやリノベーション、または多方面にインターネット広告を出すことをイメージするオーナーも多いと思います。しかし、ただお金をかければいいというものではありません。当たり前のおもてなしをするだけで、立派な空室対策となることもあります。当たり前のおもてなしとは「建物や住む人を大切にする」ということ。
「自分の物件は立地条件もいいし、募集条件も悪くない」と過信している人ほど、この当たり前のおもてなしが出来ていない傾向にあります。「安定した家賃収入がほしい」「収益をさげたくない」ということにばかり目をむけてはいけません。物件を訪れる人に「いい物件だな」と思ってもらうために、現状に合った対策を実施していきましょう。
まずはここから!無料でできる6つの空室対策
お金をかけずにできる空室対策もあります。まずは、無料でもできる6つの空室対策から紹介していきます。
対策1.敷地内や共用部を清掃する
建物や敷地内のイメージを向上させるために、敷地内や空室を見回り、清掃を行いましょう。ゴミが落ちていたり蜘蛛の巣がはっていたりする物件は、それだけで印象が悪いもの。室内が立派でも外観が汚ければ、入居率はダウンします。具体的な方法は、以下の通り。
・駐車場の植栽を整える
・敷地内の草を除草する
・共有部の砂や泥汚れを掃除する
草が伸びっぱなしになっていたりゴミが散乱していたりすると、内見者に悪印象を与えるどころか、入居者からのクレーム発生の原因になります。また、共用部が汚いと、内見者に「この物件は適切な管理がされていない」というイメージをもたれてしまうことも。外観つまり見た目をキレイにすることは、賃貸管理の「基本」と言えます。ハウスクリーニング業者を頼まずとも、草をむしったりホウキで埃や蜘蛛の巣を取り払ったりするだけでも、建物の印象はずいぶん変わります。特に夏場は、草木の成長が早く悪臭も発生しやすい環境。最低でも月に2回ほどは、清掃作業を行った方がいいでしょう。
対策2.害虫や害獣駆除を実施する
賃貸住宅にかかわらず、建物には、蜘蛛・ハチ・蚊・コウモリ・猫・蛇など、実にたくさんの害虫や害獣が寄り付きやすいもの。虫や動物が棲みついている建物は、不衛生な印象を与えたり、建物資産価値をさげたりします。これらの害虫や害獣は、日中には姿を見せませんが、朝方や夕方に現れ、建物や敷地内を汚していきます。害虫や害獣駆除は業者でもできますが、費用をかけずにオーナー自身が行える方法もあります。
・換気口にネットを取り付ける
・ゴミ捨て場にネットを取り付ける
・入居者が猫に餌付けしていないか確認
害虫や害獣の侵入を防ぐために、換気口をチェックしましょう。各部屋に設置されている換気口は、コウモリやネズミが棲みつきやすい傾向にあります。さらに、地方の物件だと、わずかな隙間からハクビシンが侵入することもあります。これらの害獣は体が小さく関節が柔らかいため、考えられないようなわずかな隙間からも侵入するので注意が必要です。換気口は板などで塞ぐのではなく、網目の細かいネットを取り付け侵入できないように工夫しましょう。
また、野良猫やカラスが、ゴミ捨て場を荒らすこともあります。ゴミ捨て場にはネットや蓋をかけ、害獣が寄り付かないように対策してください。特に入居者が野良猫に餌付けをしていると、ゴミを荒らす頻度が高くなりますので、餌付けしている場面をみかけたら、やめるように注意しましょう。
対策3.内見のために空室と共有部分を清掃する
内見に備えて、空室は定期的に清掃を行いましょう。入居希望者に「ここに住みたい」と思ってもらえるためには、内見に備えて空室をキレイにしておかなければいけません。しかし、内見はいつ起こるかわからないもの。そのため、定期的に空室を見回り、見栄えをよくしておくことが大切です。内見のために清掃をする時は、以下のことをしましょう。
・室内をはき掃除する
・排水溝にラップをする
・エントランス付近を整理する
空室期間が長いと、綿埃が溜まったり、排水の嫌な臭いが室内に充満したりすることも。退去時にハウスクリーニングをかけていると思いますが、何もない部屋でも汚れは溜まります。簡単なはき掃除でも構いません。内見時に不衛生な印象を与えないよう、定期的に空室をチェックし清掃しておきましょう。
もし排水の臭いが気になるときは、水を少し流し、排水ポンプの中に水だまりを作ってからラップで排水溝に蓋をすると、臭いが気にならなくなります。また、内見者が通るエントランス付近はできるだけキレイにしておきましょう。砂埃や蜘蛛の巣があれば清掃し、他の入居者の自転車や鉢植えがあれば片づけてもらってください。
対策4.入居者からもらうお金を減らす
入居者からもらう「敷金」「礼金」「家賃」のいずれかを減らし、入居希望者を増やすという方法も有効です。入居者の金銭的な負担を減らし入居条件を緩和することで、入居しやすい状況をつくります。例えば、以下のような方法です。
・敷金礼金をゼロにする
・フリーレントにする
・家賃設定を見直す
急に募集賃料をさげてしまうと、他の入居者から「うちも値下げしてほしい」と芋づる式で賃料減額請求をされる可能性もあります。家賃の値下げは最終手段とし、まずは敷金礼金などの初期投資費用の負担を減らすことから始めましょう。近年では、敷金礼金をもらわない「ゼロゼロ物件」や契約から1~3カ月は家賃をもらわないフリーレント物件が増えています。敷金・礼金や最初の家賃を下げるのであれば、賃料設定はそのまま継続できますので、不公平感が生まれにくくなるというメリットがあります。それでも空室が埋まらないときは、募集家賃を下げることを検討してみてください。
対策5.仲介会社とコミュニケーションをとる
仲介会社とは、賃貸契約を手助けしてくれたり客付けしてくれたりする不動産仲介会社のこと。入居者獲得のために、仲介業者に入居付けを依頼しているオーナーも多いと思います。内見者増加のためには、客付け会社の力は欠かせません。窓口となってくれるべき仲介業者に頑張ってもらい入居率をアップさせましょう。仲介会社に本気になってもらうためには、以下のことを試してみてください。
・定期的に仲介業者を訪問する
・担当者と仲良くする
・内見に立ち会う
オーナーと不動産会社との間で、積極的にコミュニケーションを取ることで信頼度がアップします。仲介を依頼した後も定期的に不動産会社を訪問し、差し入れをしながら進捗状況などを聞いてみましょう。担当者も「人」ですので、こうした心遣いは嬉しいものです。
また、仲介会社に入居付けを任せっきりにするのではなく、オーナー自身も内見に立ち会ってみましょう。入居希望者が室内のどこを見ているのか、どんな部分を気にするのかがわかります。オーナーも積極的に入居付けに参加すると、仲介会社に「大家さんが頑張るなら自分も頑張ろう」と、やる気を出してもらえることもあります。ただし、仲介不動産会社から入居付けをしてもらった場合は、成功報酬として仲介手数料がかかります。しかし、仲介を依頼する分においては特別な依頼をしない限りは無料で請け負ってくれます。
対策6.入居者ターゲットを変更してみる
入居者ニーズに合わせてターゲット層を変更してみるという方法もあります。近年、社会問題となっている少子高齢化や外国人観光者の増加。この波に合わせ、物件の経営路線を変更し、募集体制を変えてみることも検討してみましょう。例えば、以下のようにターゲット路線を変える方法があります。
・単身高齢者でも住める物件にする
・外国人観光客や留学生のためにインバウンド化する
高齢者や外国人と賃貸借契約をするためには、環境づくりからはじめる必要があります。室内を住みやすく作り変えることも大切ですが、「契約内容を明確化」したり「賃料以外の保証」を設定してもらったりすることも重要です。
単身高齢者向けの物件で必要なのは、緊急時の対応です。日常生活を送る中で、突然命が危険な状態になるかもしれません。このようなときには、契約書に「緊急時は室内への立ち入りを許可してもらう」「病気になったら賃貸契約を解除する」というような緊急時の対応を盛り込みましょう。
一方で、外国人との契約に必要なのは、マナーやルールの国際化です。例えば、外国人は日本の口座を持っていないケースが多々あるため、家賃をクレジットカード決済にすることも視野に入れる必要があります。また、勝手に同居人を増やさない、ゴミ出しルールは守るなど、入居前に日本のルールを理解してもらうことが大切です。
知っておきたい!ワンランク上の空室対策
ここまで「無料でできる6つの空室対策」についてご説明してきましたが、それでも空室が埋まらないときは、少し投資が必要な対策も試してみてください。ここからは、お金をかけて実施するワンランク上の対策2つを紹介します。
対策1.設備投資をする
室内や共有部に設置する設備を交換、もしくは新規設置しましょう。入居希望者は立地や賃料以外にも「生活しやすい設備があるかどうか」をしっかりチェックしています。なかには「家賃があがってもいいから設備だけはしっかりしてほしい」と思っている人も。室内に設置されている設備の製造年月日を確認し、古ければ交換し、足りない機器があれば設置してみましょう。例えば、以下のような設備投資がおすすめです。
・エアコン
・お風呂の追い炊き機能
・ピッキング対策仕様の鍵
温暖化の現代、エアコン設備は「付いていて当たり前」の時代です。エアコンが無い部屋を借りたいと思う人はほぼいません。エアコンの平均寿命は約13.6年ですが、使用状況によっては10年ほどで寿命がきます。10年前に購入したエアコンであれば買い替えを検討してみましょう。
また、追い炊き機能があると入浴の利便性が格段に向上します。「自動で湯がはれる」「再湯沸かし」ができるため、ファミリー層の物件であれば絶対に欲しい機能のひとつです。追い炊き機能をつけるためには、浴槽交換か給湯器の交換が必要です。浴槽交換だと100万円かかりますが、給湯器の交換だと20万~40万円程度で設置できます。
そして、ピッキング対策仕様の鍵の設置は、セキュリティ対策が充実しているという付加価値を与えることができます。特に複製しにくい防犯性の高いディンプルキーがおすすめ。ホームセンターで購入できますので、業者に頼まずとも手軽に交換できます。
対策2.管理会社のマネジメントを受ける
賃貸管理のプロに、所有物件のアドバイスを受けるという方法もあります。賃貸管理のプロとは、管理会社のこと。数々の物件を運営してきたプロの知恵を借り、現在の物件に何が必要なのかアドバイスをもらいましょう。マネジメントを受けられる管理会社には、以下のような業者がいます。
・ビルマネジメント会社
・プロパティマネジメント会社
ビルマネジメントとプロパティマネジメントは、どちらも「管理会社」ですが、業務内容と報酬形態が異なります。ビルマネジメントは「建物管理」のプロ。建物の修繕や警備、維持をメインとする会社です。一方でプロパティマネジメントは「資産管理」のプロ。建物の修繕や維持も請け負いますが、空室対策のアドバイスも業務のひとつです。不動産管理会社の種類や提供するサービス内容の違い、そして報酬形態については下記ページで詳しく解説しています。
手っ取り早く効果を出したいなら「管理会社のマネジメント」
紹介してきた空室対策の中で、最も効果的なのが「管理会社のマネジメントを受ける」ことです。なぜならば、管理会社は長年の経験と実績から、現状で最も費用対効果の高い方法を見極めることができるからです。管理会社は「今の運営には何が不足しているのか」のみならず「現在実施している空室対策はどれほどの効果があるのか」など、有効な空室対策が実施されているかどうかを見極めてくれます。
管理会社のマネジメント内容については、以下のページで詳しく解説しています。賃貸管理業務を依頼した場合、どんなメリットを得られるのか知りたいオーナー様は、ぜひ下記ページも参考にしてください。
管理会社を選ぶときの注意点
ただし、空室対策をメインに考えるのであれば、管理会社選びは慎重に行わなければいけません。管理会社を選ぶときは、以下の点に注意していきましょう。
営業力の低い管理会社に依頼しても効果はない
賃貸管理は、管理会社の営業力により大きな差が出るもの。管理会社に営業能力ややる気がなければ成約数が少ないどころか、物件を紹介すらしてもらえないかもしれません。また「すでに管理会社に委託しているけれど、効果が見られない」という場合も、管理会社の営業力の低さが関係している可能性が高いです。つまり、空室対策つまり入居者募集業務に力を入れている業者でなければ、入居率アップは見込めません。集客力がない管理会社にマネジメントを依頼しても、空室対策にはならないということです。
有言実行してくれそうか確認する
管理委託契約は交わして終わりではありません。「きちんと業務が遂行されている可能性があるか」もチェックしていく必要があります。「1カ月以内に成約してみせます」と宣伝することは誰にでもできます。大事なのは、実際に効果が出ているかどうかということ。管理会社の担当者がオーナーと約束したことを本当に実行してくれているのか、契約後も逐一アドバイスをくれるのかを契約前に見極める必要があります。
もしも担当者が「2~3カ月以内に成約させます」と断言するのであれば「その根拠は何か」「どんな対策を実行するのか」を確認してみましょう。また、契約後も定期的に連絡をくれるのか、その頻度はどのくらいかという点も問い合わせてみることが大切です。
賃貸管理会社を選ぶ際の主なチェックポイントについては、以下のページで詳しく解説しています。具体的にどんな点に着目して管理会社を選べばいいのか知りたい人は、必見です。
まとめ
空室対策は、様々な方法を試行錯誤してはじめて効果が出るもの。現在の空室対策に効果が見られないときは、ここまで紹介してきたことを参考に、できる空室対策から始めてみてください。
手っ取り早く効果を出したいのであれば、管理会社に委託するのがおすすめです。管理会社は現在の物件を見極め、適切な対策を講じてくれます。すでに管理会社に委託しているけれど効果が見られないと感じているオーナーは、管理会社変更も視野にいれましょう。管理会社は契約して終わりではありません。営業力が高いだけでなく、空室対策に逐一アドバイスをくれる管理会社と契約することが大切です。
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