共有名義不動産の固定資産税は誰が払う?共有者全員に「連帯納税義務」がある
共有名義で不動産を所有している場合、固定資産税は持分割合に応じて分割して課税されるわけではありません。共有者全員が「連帯納税義務」を負うことになります。
その法的根拠は、地方税法第十条の二に次のように定められています。
第十条の二
共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
引用元 地方税法 | e-Gov法令検索
この規定に基づき、各共有者は持分割合に関係なく、税額全体について納付責任を負う仕組みです。自治体が持分ごとに税額を按分することはなく、納税通知書も原則として代表者1名にのみ送付されます。
共有者のうち誰か一人が全額を納付すれば、その範囲で他の共有者の納税義務も消滅します。
したがって、「自分の持分だけ納めればよい」という扱いにはなりません。なお、この連帯納税義務の考え方は都市計画税にも同様に適用されます。
共有名義不動産の固定資産税の負担割合は原則「持分割合」に応じて決まる
では、共有者の間では固定資産税をどのように負担するのでしょうか。
この点については、民法第253条が基準になります。民法では、共有物に関する費用や負担は各共有者が持分に応じて負担すると定められています。
(共有物に関する負担)
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
引用元 e-Gov法令検索 民法第253条
この規定に基づき、固定資産税も共有者の持分割合に応じて負担するのが原則です。
固定資産税の負担割合 = 共有持分の割合
たとえば、年間の固定資産税が12万円で、共有持分が
A:1/2、B:1/3、C:1/6である場合、それぞれの負担額は次のとおりです。
A:6万円
B:4万円
C:2万円
なお、誰が不動産を利用しているか、誰が居住しているかといった事情は、原則として固定資産税の負担割合には影響しません。
共有者間の合意があれば負担割合を自由に決められる
民法第253条の持分割合による負担は、あくまで原則です。共有者同士の合意があれば、固定資産税の負担割合を変更することも可能です。
たとえば、次のような取り決めです。
- ・不動産を使用している共有者が全額負担する
- ・特定の共有者が多めに負担する
- ・相続人の事情を考慮して負担割合を変更する
といった取り決めも、共有者全員が合意していれば有効とされています。
実務では「実際に住んでいる人が固定資産税を多く負担する」といった取り決めをしているケースも珍しくありません。
ただし、口頭の約束だけでは後からトラブルになることも多いため、合意内容は書面で残しておくことが望ましいでしょう。
【補足】共有者が死亡した場合は相続人に納付義務が移る
共有名義不動産の所有者が死亡した場合、その持分は相続人に引き継がれます。そして、固定資産税の納付義務も相続人に承継されます。
遺産分割協議がまとまっていない場合でも、法定相続人が納税義務を負うことになります。たとえば配偶者や子どもなどの相続人がいる場合は、法定相続人全員が共有者として固定資産税を負担します。
また、相続登記が完了していない場合でも固定資産税の納付義務は発生します。そのため、期日までに相続登記を行うことが難しい場合は、自治体に対して「現所有者申告」を行う必要があります。
現所有者申告とは、登記が変更されるまでの間、実際の所有者を自治体に届け出る手続きです。一般的には、一定期間内(例:3か月以内)に申告が求められます。期限は自治体ごとに異なるため、必ず自治体の案内を確認してください。
なお、死亡した共有者に相続人がいない場合は、民法第255条の規定により、その持分は他の共有者に帰属します。
(持分の帰属)
第二百五十五条 共有者の一人が死亡し、相続人がないときは、その持分は他の共有者に帰属する。
引用元 e-Gov法令検索 民法第255条
その結果、残っている共有者が固定資産税の納付義務を負うことになります。
共有名義不動産の固定資産税の納税通知書は「代表者」に届き、代表者がまとめて納付するのが一般的
共有名義不動産の固定資産税は、共有者それぞれに別々の納付書が届くとは限りません。実務では、共有者のうち1名を「代表者」として登録し、その代表者宛てに納税通知書が送付されるケースが一般的です。
そのため、代表者がいったん固定資産税をまとめて納付し、後日、ほかの共有者へ持分割合に応じた負担分を請求して精算する流れが多く見られます。
ただし、代表者はあくまで納税通知書の送付先にすぎません。代表者だけが納税義務を負うわけではなく、共有者全員が連帯して納税義務を負う点に注意しましょう。
代表者の決まり方は、不動産を共有することになった経緯によって異なります。主なパターンを以下の表にまとめました。
| 状況 |
代表者の決定方法 |
| 共有名義不動産を新築・新規購入する場合 |
・基本的に自治体の基準をもとに決められる
・「共有資産代表者指定届」によって指定することも可能
|
| 相続する場合 |
・相続人代表者指定届を提出する
・提出しない場合は自治体の基準をもとに決められる
|
【共有代表者が決まる基準】※自治体ごとに異なる
- ・所有権異動前の代表者が引き続き所有する場合はその人
- ・納税管理人や現所有者申告等の届出をしている共有者がいる場合はその人
- ・不動産所在地の自治体に住民登録している人
- ・持分が最も多い人
- ・登記簿の記載順
参考:市川市「共有名義で所有している物件の代表者の決定基準と変更方法」
また、共有者全員の同意があれば、「代表者変更届」を提出して代表者を変更することも可能です。
なお、例外的に共有者それぞれへ納付書を送付している自治体もありますが、多くの場合は代表者1名への送付となります。
共有名義不動産の管理やトラブルについては、以下の記事も参考にしてください。
共有名義不動産の固定資産税の計算とシミュレーション
固定資産税は「土地」と「建物」でそれぞれ計算し、合算したうえで共有者間の負担額を持分割合で整理するのが基本です。ここでは、計算の流れがイメージしやすいように、以下の前提条件でシミュレーションします。
| 項目 |
条件 |
| 土地の課税標準額 |
2,000万円 |
| 建物の課税標準額 |
800万円 |
| 持分割合 |
A:1/2、B:1/3、C:1/6 |
土地の固定資産税を計算する:課税標準額×1.4%
土地の固定資産税は、課税標準額に税率(原則1.4%)を掛けて計算します。固定資産税の税率は原則1.4%ですが、自治体の条例によって異なる税率が設定されている場合もあります。
今回のシミュレーションの条件で計算すると、土地の固定資産税は次のとおりです。
- ・土地の課税標準額:2,000万円
- ・税率:1.4%
計算式は以下のとおりです。
2,000万円 × 1.4% = 28万円
つまり、このケースでは土地にかかる年間の固定資産税は28万円となります。
住宅用地の特例
住宅やアパートなど人が居住する建物の敷地として利用されている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税の課税標準額が軽減されます。
- ・小規模住宅用地(200㎡以下):課税標準額が1/6に軽減
- ・一般住宅用地(200㎡を超える部分):課税標準額が1/3に軽減
参考:総務省「固定資産税の仕組み(税額の算定方法)」
建物の固定資産税を計算する:課税標準額×1.4%
建物の固定資産税も、土地と同様に課税標準額に税率(原則1.4%)を掛けて計算します。
多くの自治体では標準税率である1.4%が採用されていますが、自治体の条例によって異なる税率が設定される場合もあります。
今回のシミュレーションでは、建物の課税標準額を800万円とした場合の固定資産税を計算します。
計算式は以下のとおりです。
800万円 × 1.4% = 11万2,000円
つまり、このケースでは建物にかかる年間の固定資産税は11万2,000円となります。
新築住宅の固定資産税の減額特例
令和8年3月31日までに新築された住宅には、一定期間、建物の固定資産税が軽減される特例があります。
- ・一般住宅:3年間(3階建て以上の耐火住宅は5年間)
- ・減額割合:固定資産税額の1/2
- ・対象床面積:居住部分の床面積120㎡まで
長期優良住宅の場合は、減額期間がさらに長くなるなどの特例が適用されます。
参考:総務省「固定資産税の仕組み(税額の算定方法)」
土地と建物の固定資産税を合算し、持分割合で按分する
土地と建物それぞれの固定資産税を合算し、共有者間の負担額を持分割合で按分します。
- ・土地の固定資産税:28万円
- ・建物の固定資産税:11万2,000円
28万円+11万2,000円=39万2,000円
この合計額を持分割合(A:1/2、B:1/3、C:1/6)で按分すると、共有者ごとの負担額は以下のとおりです。
| 共有者 |
持分割合 |
負担額(目安) |
| A |
1/2 |
19万6,000円 |
| B |
1/3 |
13万0,667円 |
| C |
1/6 |
6万5,333円 |
上記は持分割合で按分した共有者間の精算の目安です。端数の扱い(四捨五入・切り捨て等)は、共有者間でルールを決めておくとスムーズです。
上記はあくまで共有者間での「負担の目安」です。自治体への納付は、原則として代表者(納税通知書が届く人)がまとめて行う点に注意してください。代表者が一括で納付した後、他の共有者が持分に応じた金額を代表者へ支払う形が一般的です。
固定資産税の納付方法と納付時期
固定資産税は、自治体から送付される納税通知書にもとづき、指定された期限までに納付する必要があります。共有名義不動産であっても、納付方法や納付時期の基本的な仕組みは単独名義の場合と大きく変わりません。
納付方法には、金融機関やコンビニでの支払いのほか、口座振替やスマートフォン決済など複数の選択肢があります。また、固定資産税は原則として年4回の分割納付となっており、納税通知書に記載された期日ごとに納めるのが一般的です。
ここでは、固定資産税の主な納付方法と納付時期の仕組みについて解説します。
納付方法:窓口・コンビニ・口座振替・アプリ決済など
共有名義であっても、固定資産税の納付方法は単独名義の場合と基本的に同じです。自治体から送付される納付書を使い、納期限までに指定の方法で納付します。
主な納付方法は次のとおりです。
- ・市区町村窓口や金融機関で納付書を持参して支払う
- ・コンビニでバーコード付き納付書を提示して支払う
- ・口座振替(事前登録した口座から自動引き落とし)
- ・PayPay・LINE Pay・楽天ペイなどのスマートフォン決済
- ・クレジットカードによるオンライン納付(対応自治体のみ)
- ・eLTAX(地方税共通納税システム)による電子納付
対応している納付方法は自治体によって異なります。利用できる支払い方法は、納税通知書や自治体ホームページで確認してください。
納付時期:年4回に分けて納めるのが一般的
固定資産税は原則として年4回の分割納付となっています。
ただし、第1期の納期限までに一括納付することも可能です。
納税通知書は自治体から4月〜6月頃に送付され、以下のように4期に分けて納付します。
第1期:6月頃
第2期:9月頃
第3期:12月頃
第4期:翌年2月頃
ただし納付期限は自治体ごとに異なるため、納税通知書の記載内容を必ず確認しましょう。
また、固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税されます。
そのため、年の途中で不動産を売却した場合でも、その年度の納税義務は1月1日時点の所有者に残ります。
他の共有者が固定資産税を払わない場合はどうする?
共有名義不動産では、固定資産税の支払いについて共有者全員に「連帯納税義務」があります。そのため、共有者の中に税金を負担しない人がいる場合でも、固定資産税そのものの支払い義務がなくなるわけではありません。
もし固定資産税が滞納されると、延滞金の発生や督促、財産の差し押さえといったリスクが生じます。共有名義不動産では、こうした影響が代表者だけでなく他の共有者にも及ぶ可能性があるため、放置するのは危険です。
基本的には、まず代表者などが一時的に固定資産税を立て替えて納付し、その後に支払わない共有者に対して請求する形で解決を図ります。また、立て替えた税金については、法律上の「求償権」を行使して回収することも可能です。
共有名義不動産では、このような税金トラブルが発生しやすいため、共有者同士で負担割合や支払い方法を事前に取り決めておくことが重要です。
他の共有者の分を代表者が立て替えることになる
共有名義不動産の固定資産税には「連帯納税義務」があるため、共有者の一部が負担分を支払わなくても、代表者は固定資産税の全額を納付しなければなりません。
「払わない共有者がいるから」といって納付を先延ばしにすると、自治体では滞納扱いとなり、延滞金の発生や督促、差し押さえといった手続きに進む可能性があります。共有名義の場合、こうしたリスクは代表者だけでなく、連帯納税義務により共有者全員に及ぶ可能性がある点に注意が必要です。
そのため、現実的な対応としては、まず代表者が期限内に立て替え納付し、後日、支払わない共有者へ持分割合に応じた負担分を請求するのが一般的です。
立て替えた固定資産税は「求償権」を行使して回収できる
求償権とは、他人の債務を代わりに支払った人が返還を請求できる権利です。
共有名義不動産の固定資産税を代表者が立て替えて納付した場合、共有持分に応じた負担額を他の共有者に請求できます。
(不当利得の返還義務)
第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において返還する義務を負う。
引用元 e-Gov法令検索 民法第703条
求償権を行使する際は、まず書面やメールなど記録が残る方法で支払いを請求することが重要です。支払いに応じない場合は、内容証明郵便で請求したうえで、最終的には訴訟を提起して回収することも可能です。
ただし、共有者1人あたりの固定資産税額は比較的少額であるケースも多く、弁護士費用などが回収額を上回る「費用倒れ」になる可能性もあります。そのため、状況によっては数年分をまとめて請求するといった対応を検討することもあります。
求償権には「5年(または10年)」の時効がある
求償権には消滅時効があり、権利を行使できると知った時から5年、または権利を行使できる時から10年で請求権が消滅します。
そのため、共有名義不動産の固定資産税を代表者が立て替えた場合も、長期間請求しないまま放置すると求償権が消滅する可能性があります。回収を考えている場合は、できるだけ早めに請求しておくことが重要です。
なお、2020年3月31日以前に発生した求償権については旧民法が適用され、消滅時効は10年となります(改正前民法)。
参考:e-Gov法令検索「民法第166条」
共有名義の代表者が固定資産税を滞納した場合はどうなる?
代表者が固定資産税を滞納すると、以下のような流れで対応が進みます。
- ・延滞金が発生する
- ・自治体から督促状が送付される
- ・最終的には財産の差し押さえが行われる可能性がある
固定資産税は自治体が徴収する地方税のため、滞納すると法律に基づいて厳格に対応されます。特に共有名義不動産の場合は共有者全員に連帯納税義務があるため、代表者が支払わない場合でも他の共有者に影響が及ぶ可能性があります。
もし納期限までに納付できないことが分かった場合は、督促状が届く前に自治体の窓口へ相談することが重要です。事情によっては、分納(分割払い)や徴収猶予などの対応を受けられる場合があります。
延滞税が請求される
固定資産税を納期限までに納めなかった場合、納期限の翌日から納付日までの日数に応じて延滞金が発生します。
延滞金の割合は、納期限の翌日から1か月以内か、それ以降かによって異なります。2025年度時点では、おおむね以下の割合が適用されています。
※延滞金利率の画像をここに挿入
- ・納期限翌日から1か月以内:年2.4%
- ・納期限翌日から1か月超:年8.7%
延滞金は滞納期間が長くなるほど増加します。納期限までに納付できない場合は、早めに自治体へ相談しましょう。
参考:e-Gov法令検索「地方税法第20条の4の2」
市区町村から督促状が届き、納付の催告が行われる
固定資産税を納期限までに納付しなかった場合、納期限から20日以内に自治体から督促状が送付されます。これは地方税法で定められている手続きです。
また、督促状の送付から10日が経過しても納付がない場合、自治体は法律上、滞納者の財産を差し押さえることが可能になります。
ただし、実際にはすぐに差し押さえが行われるケースは少なく、まずは文書の送付や電話、自宅訪問などによって納税を促す催告が行われることが一般的です。督促状が届いた場合は放置せず、速やかに自治体へ相談することが重要です。
共有者全員の財産が差し押さえの対象となる
督促や催告にも応じない場合、自治体は滞納者の財産調査を行い、最終的には財産の差し押さえを実行します。
共有名義不動産では、固定資産税に連帯納税義務があります。そのため代表者が滞納した場合でも、他の共有者にも納付義務が及ぶ可能性があります。
差し押さえの対象となる主な財産は、以下のとおりです。
- ・預貯金口座
- ・給与債権
- ・不動産
- ・自動車などの動産
共有名義不動産の固定資産税に関するトラブル事例
共有名義不動産の固定資産税は、代表者が一括納付し、共有者間で持分割合などに応じて精算するのが一般的です。しかし、共有者の事情や関係性によっては、負担の押し付け合いや滞納、第三者の介入などのトラブルに発展することがあります。
ここでは、当社に寄せられた相談内容をもとに、よくあるケースを一般化した事例として、対処のポイントを解説します。
不動産を使用していない共有者が固定資産税を支払ってくれない
兄弟3人で父から相続した実家を共有名義(持分各1/3)で所有。長男が実家に住み続けている一方、次男と三男は遠方に住んでおり不動産を一切使用していない。代表者の長男が毎年まとめて固定資産税を納付していたが、次男が「自分は住んでいないのに税金を負担するのは不公平だ」として、3年前から自己負担分の支払いを拒否。精算を求めても応じてもらえない状態が続いている。
このように、共有者の一部が「自分は不動産を使用していない」という理由で固定資産税の負担を拒否するケースは珍しくありません。しかし、固定資産税は共有者全員に納税義務があるため、誰か一人が立て替えて納付している場合でも、他の共有者に対して負担分を請求することが可能です。
対処のポイント
- ・まずは内容証明郵便で立て替えた固定資産税の支払いを求め、求償権を行使する。任意で支払ってもらえない場合は、訴訟によって回収を求めることも検討する
- ・求償権には消滅時効があり、権利を行使できると知った時から5年で請求できなくなる可能性があるため、立て替えた分は早めに請求することが重要
- ・長男が不動産を使用している場合は、居住の対価としての賃料相当額と固定資産税を相殺する取り決めを共有者間で書面化する方法もある
- ・トラブルが長期化している場合は、不動産の売却や共有持分の売却など、共有関係自体の解消も検討する
共有者が持分放棄したことで固定資産税の負担が増えてしまった
姉妹3人(持分各1/3)で相続した地方の空き家について、三女が「管理の手間も費用も負担したくない」として、突然持分の放棄を主張。三女の持分は姉2人に帰属することになり、長女・次女の持分はそれぞれ1/3から1/2に増加した。その結果、年間約15万円だった固定資産税の一人あたり負担額が5万円から7万5,000円に増え、さらに持分放棄による取得分が「みなし贈与」として贈与税の対象になる可能性も浮上した。
共有名義不動産では、共有者の一人が持分を放棄することで、残りの共有者の持分割合が増えるケースがあります。この場合、固定資産税の負担割合も持分に応じて変わるため、残った共有者の税負担が増えることになります。
また、持分放棄によって他の共有者が無償で持分を取得した場合、その取得分が「みなし贈与」として扱われ、贈与税の対象となる可能性がある点にも注意が必要です。
対処のポイント
- ・持分放棄によって取得した持分は「みなし贈与」として贈与税の対象となる可能性があるため、税理士などの専門家に確認する
- ・持分移転登記には共有者全員の協力が必要であるため、知らないうちに勝手に持分が増えることは基本的にない。登記への協力を急がず、売却など他の解決策を協議する余地もある
- ・空き家の維持費や固定資産税の負担が重い場合は、不動産全体の売却など共有関係そのものの解消を検討する
代表者が固定資産税を滞納していることに気づかず共有名義不動産全体が差し押さえられた
兄弟2人(持分各1/2)で相続したマンションの代表者は兄。弟は毎年、自分の負担分を兄に振り込んでいた。しかし兄は経済的に困窮しており、弟から預かった分も含めて固定資産税を2年間滞納。弟は納税通知書が届かないため滞納の事実を知らず、ある日突然、自治体からマンション全体の差し押さえ通知が届いた。弟自身の預金口座も調査対象となり、日常生活にも影響が出かねない事態となった。
共有名義不動産では、代表者が固定資産税の納付をまとめて行うケースが多くあります。しかし、代表者が納付を怠った場合でも、固定資産税の納税義務は共有者全員にあるため、他の共有者にも影響が及ぶ可能性があります。
そのため、代表者に任せきりにするのではなく、納付状況を共有者全員で確認できる仕組みを作っておくことが重要です。
対処のポイント
- ・毎年の納付完了を証明する領収書や納税証明書を共有者間で確認し、納付状況を共有するルールを作る
- ・滞納が発覚した場合は、共有者が協力して未納分を速やかに納付し、延滞金や差し押さえの拡大を防ぐ
- ・代表者に任せることに不安がある場合は、自治体に「代表者変更届」を提出して代表者を変更することも検討する
- ・立て替えて納付した場合は、求償権を行使して元の代表者に負担分を請求することができる
共有者が自己破産し、新たな共有者とトラブルになった
夫婦(持分各1/2)で購入した自宅に妻が住み続けていたが、離婚後に元夫が自己破産。元夫の持分は破産管財人によって管理され、最終的に不動産買取業者に売却された。妻は突然、面識のない業者が共有者になったことを知り、業者側から「持分を買い取るか、不動産全体を売却するか」を迫られる状況に。固定資産税の負担についても業者との協議が必要になり、精神的にも大きな負担を抱えることとなった。
共有名義不動産では、共有者の一人が自己破産すると、その持分は破産管財人によって換価され、第三者に売却されることがあります。その結果、これまで面識のなかった不動産業者などが新たな共有者になるケースもあります。
共有関係は原則として自由に解消できるものではないため、第三者が共有者になると、不動産の利用方法や売却方針、固定資産税の負担などをめぐってトラブルが生じる可能性があります。
対処のポイント
- ・新たな共有者と、固定資産税の負担割合や不動産の利用方法について速やかに協議する
- ・面識のない第三者と共有関係を続けるリスクを避けるため、相手の持分を買い取る、または自分の持分を売却して共有関係の解消を検討する
- ・トラブルが深刻化する前に、弁護士や共有持分を扱う不動産会社などの専門家に相談する
共有者が認知症になり固定資産税を払えなくなった
母と息子(持分各1/2)で共有している実家に母が一人で暮らしていたが、母が認知症を発症し施設に入所。息子が代表者として固定資産税をまとめて納付しているが、母の負担分を母の預貯金から引き出そうとしても、銀行から「本人の意思確認ができない」として対応を断られた。母の年金や預貯金はあるにもかかわらず固定資産税に充てることができず、息子が全額を立て替え続けている。
共有名義不動産では、共有者の一人が認知症などで判断能力を失うと、本人の預貯金の管理や不動産に関する手続きが進められなくなる場合があります。
銀行は原則として本人の意思確認ができない取引には応じないため、家族であっても自由に預金を引き出すことはできません。
その結果、本来は本人の資産で支払えるはずの固定資産税であっても、他の共有者が立て替えざるを得ない状況になることがあります。また、認知症の共有者がいる場合、不動産の売却や活用などの重要な手続きも進めにくくなる点に注意が必要です。
対処のポイント
- ・家庭裁判所に「成年後見人」の選任を申し立て、成年後見人が本人に代わって財産管理(固定資産税の支払いを含む)を行えるようにする
- ・判断能力があるうちであれば「任意後見制度」を利用し、あらかじめ後見人を指定しておくことで、将来の認知症発症に備えることもできる
- ・認知症の共有者がいると不動産の売却や活用にも支障が出るため、早めに弁護士や司法書士などの専門家に相談する
代表者が固定資産税を私的に使い込んでしまった
兄弟4人(持分各1/4)で共有する収益物件の固定資産税を、代表者の長男がまとめて管理。他の3人は毎年、各自の負担分(約8万円ずつ)を長男に送金していた。ところが3年後、自治体から届いた督促状で、長男が固定資産税を一切納付せず、預かった約72万円を生活費やギャンブルに使い込んでいたことが発覚。他の兄弟は改めて未納分と延滞金をあわせて納付せざるを得ない状況に追い込まれた。
共有名義不動産では、自治体から送付される固定資産税の納税通知書が代表者1人にまとめて届くケースがあります。そのため、他の共有者が代表者に負担分を送金している場合でも、実際に納税が行われているかどうかを確認できないまま時間が経過してしまうことがあります。
仮に代表者が資金を使い込んだとしても、固定資産税の納付義務そのものが消えるわけではありません。滞納が続くと延滞金が発生し、最終的には不動産の差し押さえなどの強制徴収に発展する可能性があるため、早期の対応が重要です。
対処のポイント
- ・使い込みが発覚しても固定資産税の納付義務は消えないため、まずは共有者同士で協力し、未納分と延滞金を速やかに納付して差し押さえを回避する
- ・横領した代表者に対しては「不当利得返還請求」(民法第703条)を行い、使い込まれた金額の返還を求めることができる
- ・速やかに自治体へ「代表者変更届」を提出し、信頼できる共有者へ代表者を変更する
- ・再発防止策として、納付後の領収書や納税証明書を共有者全員で確認する仕組みを作る
- ・悪質なケースでは、横領罪として刑事告訴を検討することもある
共有名義不動産の固定資産税を払いたくない場合は共有持分を手放すことも検討する
固定資産税を負担したくない場合は、共有名義の状態から抜けることも1つの方法です。共有持分を手放すことで、翌年度以降の固定資産税の納税義務を回避できます。主な方法は以下の通りです。
| 方法 |
概要 |
| 共有名義不動産全体を売却する |
共有者全員の同意を得て不動産全体を売却し、売却代金を持分割合に応じて分配する方法 |
| ほかの共有者に共有持分を売却する |
自分の共有持分を他の共有者に買い取ってもらい、共有関係から抜ける方法 |
| ほかの共有者に共有持分を贈与する |
自分の共有持分を無償で譲渡する方法(受け取る側に贈与税が発生する可能性あり) |
| 共有持分専門の不動産会社(仲介・買取)に売却する |
共有持分の買取を行う不動産会社に売却し、共有関係から離脱する方法 |
| 共有持分を放棄する |
民法255条に基づき共有持分を放棄し、他の共有者に帰属させる方法 |
それぞれの方法のメリットや注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
固定資産税は「毎年1月1日時点の所有者」に課税されます。そのため、共有持分を売却や放棄したとしても、1月1日を過ぎている場合はその年度の固定資産税の納税義務はなくなりません。ただし、共有持分を手放した場合でも、翌年度以降の固定資産税の納税義務は発生しなくなります。
まとめ
共有名義不動産では、固定資産税の納税通知書が代表者に届くケースが多く、「誰が払うのか」「負担をどう分けるのか」といった問題が発生しやすくなります。
固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税されますが、共有名義の場合は共有者全員に連帯納税義務がある点が大きな特徴です。誰かが納付しなければ、他の共有者が立て替えなければならない可能性があります。
そのため、共有名義不動産を所有している場合は
- ・納付状況を共有者全員で確認する
- ・固定資産税の負担割合を決めておく
- ・領収書や納税証明書を共有する
といった管理ルールをあらかじめ決めておくことが重要です。
また、固定資産税の負担や不動産管理が長期的な問題になっている場合は、不動産売却や共有関係の整理など、根本的な解決策を検討することも有効です。
共有名義不動産は、早い段階で管理方法や将来の方針を共有者同士で話し合っておくことが、トラブルを防ぐ大きなポイントになります。