不動産売却を高くスムーズに!
空き家・訳あり不動産も対応

共有名義で片方が死亡したまま放置するリスク!今すぐ対応すべき方法も解説

共有名義人の片方が死亡したまま放置するリスク!今すぐ対応すべき方法も解説

共有名義で不動産を所有されている方の中には、共有名義人の片方が死亡した後でも「今すぐ売る予定がない」「住み続けているから問題ない」「何かすべきだとは思うが、何をすればいいか分からない」といったように、特段の対応を行わず放置してしまう方は少なくありません。

しかし結論から言えば、共有者の一人が死亡した不動産を放置することは、将来にリスクを持ち越す、注意が必要な行為といえます。

【相続登記をしないまま放置した場合のリスク】

  • 過料の対象となる恐れがある
  • 不動産の売却や賃貸、建て替えができない
  • 時間の経過とともに相続人が増え、権利関係が複雑化する
  • 売却や活用に必要な合意が得られず、不動産が「塩漬け」状態になる

相続登記を行わないことによる問題を避けるには、亡くなった共有者の持分を誰が相続するのかを明確にし、相続登記を速やかに行うことが重要です。

共有不動産の相続が発生して、何から手を付けたらいいのか分からない場合は、相続登記や共有者間の調整を含め、早めに弁護士・司法書士など専門家に相談しましょう。

本記事では、共有名義の片方が死亡した不動産を放置するリスクと、今すぐ取るべき具体的な対応策を実務目線で解説します。

訳あり不動産の売却でお悩みなら
今すぐご連絡ください

イエコンで訳あり不動産に強い
買取業者を探す

共有名義人の片方が死亡したまま相続登記を放置すると過料が科される恐れがある

共有名義不動産の共有者の一人が亡くなった場合、その不動産の名義は自動的に切り替わるわけではありません。2024年4月1日より、相続や遺贈によって不動産の所有権を取得した相続人には、相続登記の申請が法律上の義務が課されています。この制度改正により、相続登記を行わずに放置している状態は、明確に義務違反であることが示されました。

相続登記の申請期限は、「相続によって不動産の所有権を取得したことを知り、かつ登記を行う必要があると認識した日から3年以内」です。共有名義の場合、亡くなった共有者の持分については、遺言書があるときは遺言で指定された相続人や受遺者に、遺言書がないときは法定相続人全員に承継されます。そのため、亡くなった共有者の持分を承継した相続人側に、相続登記の申請義務が生じることになります。

相続人が正当な理由がないまま相続登記を行わずにいると、10万円以下の過料が科される恐れがあります。被相続人が死亡した後に不動産を放置していた事実そのものに対して過料が科されるわけではなく、「正当な理由がない」という状態がポイントです。

正当な理由として考慮され得る事情には、次のような例があります。

  • 相続人が多く、書類集めや相続人の確定作業に時間がかかっている場合
  • 遺言の有効性や遺産の範囲で揉めていて、不動産を誰の名義にするか決められない場合
  • 相続登記を進めるべき本人が、重い病気や長期入院などで手続きできない場合
  • DVなどの事情で避難中で、手続きによって居場所や生活状況が知られて危険がある場合
  • 金銭的な余裕がなく経済的な困窮によって手続きに着手できない場合

参考:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

これらはあくまで代表的な例であり、該当する事情があるからといって、必ず過料が免除されるわけではありません。最終的な判断は、個別の事情を踏まえて行われます。

また、すべての未登記状態が直ちに過料の対象になるわけではなく、行政側の判断や事情確認を経て対応が検討されます。そのため、正当な理由がないと判断された場合であっても、即座に過料が科されるとは限りません。さらに、相続登記の申請が遅れた場合でも、不動産が没収されたり、所有権そのものを失ったりすることはありません。

しかし、不動産買取の現場では、相続登記がなされず長期間放置されていたことで、売却や管理が一切進められなくなっているケースを数多く見てきました。過料の有無以前に、相続登記を怠ることで実務上の選択肢が著しく狭まる点こそ、早めに理解しておくべきリスクといえます。

その他にも共有名義不動産の相続登記を放置することで様々なリスクがある

相続登記の義務化によって、相続登記を怠った場合の過料が注目されがちですが、問題はそれだけではありません。

共有名義不動産で相続登記を放置すると、「不動産を売却しようとしても契約に進めない」「賃貸に出そうとしても全員の同意を得られない」「建て替えや大規模修繕の話が止まる」「担保に入れて資金を調達できない」といった実務上の支障が次々に生じます。結果として、不動産を持っているだけで何もできない状態に陥る点こそ、相続登記放置の本質的なリスクといえるでしょう。

ここからは、過料とは別に、共有名義不動産の相続登記を放置することで生じるリスクについて詳しく解説します。

共有名義不動産全体を売却できない

相続登記を放置している共有名義不動産は、不動産全体を売却することができません。共有名義不動産を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要であり、相続登記が完了していない状態では、売却に不可欠な共有者全員の同意を得るという前提条件を満たせないためです。

共有名義の不動産を売却する場合、法律上は「処分行為」にあたるため、共有者全員の合意が前提です。

「共有物の変更」
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
e-Gov法令検索 民法第251条

しかし、相続が発生しているにもかかわらず相続登記が行われていないと、亡くなった共有者の持分について誰が正式な権利者なのかが登記簿上で明らかになりません。そのため、売主として契約に関与すべき人物を特定できず、売買契約を結ぶことができないのです。

実務上も、相続登記が完了していない共有名義不動産は、買主から敬遠されやすい傾向があります。将来的な権利関係のトラブルを懸念されるだけでなく、金融機関の融資審査にも通りにくくなるため、売却活動を行っても内覧や価格交渉に進めないまま、契約に至らないケースが少なくありません。

このように、相続登記をしないまま共有名義不動産を放置すると、不動産全体の売却という選択肢が事実上使えなくなる点が大きなリスクといえます。

なお、不動産全体ではなく、自身が保有する共有持分のみであれば、他の共有者の同意を得ずに売却することが可能です。ただし、共有持分の売却は不動産全体の売却と比べて買い手が限られやすく、一般的な売却方法では進めにくいのが実情です。

そのため、共有持分や相続未了不動産の取り扱いに慣れた訳あり不動産専門の買取業者へ依頼することが、現実的な解決策となります。

弊社クランピーリアルエステートでは、相続登記が未了の不動産や共有持分のみの買取にも対応しており、権利関係が整理できていない段階からでも相談が可能です。実務経験に基づいた対応で、一般の仲介では進まないケースでも、現実的な売却の出口として検討いただけます。

共有名義不動産の建て替え・増改築・大規模な修繕・取り壊しを行えない

相続登記を放置している共有名義不動産では、建て替えやリフォーム、大規模な修繕、取り壊しといった工事を進めることが困難になります。法律上、建物の維持に不可欠な軽微な修理を除き、各種工事の実施には共有者の同意が不可欠ですが、相続登記が完了していない状態では必要な同意を得られないためです。

共有名義不動産において、建て替えや取り壊しなどは「処分行為」にあたり、原則として共有者全員の合意が必要とされています。増改築や大規模な修繕については、民法上「管理行為」に該当し、共有者の持分価格の過半数の同意が必要になります。

相続が発生しているにもかかわらず相続登記が行われていない場合、亡くなった共有者の持分について誰が正式な権利者なのかが確定していません。そのため、本来必要とされる共有者の同意を得ることができず、建て替えや修繕の話を進めようとしても、手続きが途中で止まってしまいます。

実務では、工事の計画自体は立てたものの、同意が揃わず着手できないケースは珍しくありません。

相続登記が完了せず、共有者の合意を得られない状態が続くと、建物が老朽化していても十分な修繕ができず、結果として資産価値が下がってしまう恐れがあります。売却を検討しようとしても、建物の状態が悪化していれば取引条件はさらに不利になり、共有名義不動産を処分すること自体が一層難しくなります。

相続登記を放置することで、売却だけでなく、リフォームや建て替えといった選択肢まで失われていく点は、大きなリスクといえるでしょう。

共有名義不動産の長期間(概ね3年以上)の賃貸を行えない

相続登記を放置している状態のまま、共有名義不動産で長期間の賃貸を行うことは困難です。共有名義不動産の賃貸は、契約期間によって必要となる共有者の同意の範囲が異なり、相続登記が未了の状態では、法的に有効な同意を揃えることができません。

共有名義不動産において、短期間の賃貸借契約は民法上の「管理行為」に該当し、共有者の持分価格の過半数の同意が必要です。一方、契約期間が3年を超えるような長期の賃貸については、「変更行為」とみなされる可能性が高く、共有者全員の同意が必要です。

亡くなった共有者の持分が誰に帰属しているのかが法的に確定しないと、過半数の同意が必要な「管理行為」であっても同意の有効性を証明できません。結果、全員の合意が必要な長期賃貸については事実上、契約の締結自体が不可能となります。

相続登記が行われておらず、賃貸に必要な共有者の同意を揃えられない状態では、不動産を活用して賃料収入を得る道が閉ざされ、空き家のまま固定資産税や維持費といったコストだけを負担し続けることになるのです。相続登記の放置は、売却だけでなく賃貸による収益機会まで奪ってしまう大きなリスクといえます。

共有名義不動産を担保にしてお金を借りられない

相続登記を放置している共有名義不動産では、不動産全体を担保にしてお金を借りることができません。不動産全体に抵当権を設定する行為は、法律上の「処分行為」にあたり、共有者全員の同意が必要となるためです。

通常、金融機関は共有者全員が担保設定に同意していることを融資の条件とします。しかし、相続登記が未了の状態では権利者が確定していないため、必要な同意を揃えることができず、抵当権の設定自体が不可能となります。

なお、法律上は自己の共有持分のみに抵当権を設定することも可能ですが、実際には共有持分のみを担保とした融資はほとんど行われていません。共有持分は不動産全体と比べて市場性が極めて低く、万一返済不能となった場合でも換金が難しく、資金の回収が難しいためです。

共有者全員の同意を得ることもできず、持分のみの価値も低いという2つの問題によって、共有名義不動産を活用して資金を調達することは現実的に困難となります。事業資金や生活資金の確保を目的として不動産を担保に入れようとしても審査に入る前に行き詰ってしまい、結果として土地や建物を売却したり、担保に入れたりといった選択肢が制限されます。

相続登記を放置することで、売却や賃貸だけでなく、資金調達の手段まで失われてしまう点は、共有名義不動産における見落とされがちなリスクといえるでしょう。

亡くなった共有者の持分の相続人が増え続け、権利関係が複雑化する恐れがある

相続登記を放置すると、相続が発生するたびに共有者の人数が増え、共有名義不動産の権利関係が次第に複雑になります。亡くなった共有者の持分は、その時点の相続人に承継されるため、相続登記を行わないまま次の相続が発生すると、持分の細分化が繰り返され、世代をまたいで共有者が増えていくためです。

共有者が増えると、不動産の売却や賃貸、建て替え、担保設定など、あらゆる場面で必要となる同意の取得が困難になります。特に、相続人全員で遺産分割協議を行う必要がある場面では、関係者が増えるほど意思の統一が困難になり、協議が長期化しやすくなります。相続登記を放置することは、結果として遺産分割協議そのものを成立させにくくする要因になるのです。

さらに、相続人の中に「所在が分からない人」「未成年者」「認知症などにより判断能力を欠いている人」など特別な事情を抱える人物が含まれる場合、手続きのハードルは一層高まります。

相続人の状況 必要な手続き 手続きする場所 主な選任対象 手続きにかかる日数(目安)
行方不明者 不在者財産管理人の選任 家庭裁判所 弁護士・司法書士・親族など 約3ヶ月〜6ヶ月
未成年者 特別代理人の選任 家庭裁判所 叔父・叔母など利害のない親族 約1ヶ月〜2ヶ月
認知症など 成年後見人の選任 家庭裁判所 弁護士・司法書士・親族など 約2ヶ月〜4ヶ月

相続登記を行わないまま時間が経過すると、共有者の数が増えるだけでなく、代理人や後見人の選任といった家庭裁判所を介した追加の法手続きが必要になる可能性も高まります。正式な代理人が決まるまでには数ヶ月単位の時間が必要であり、その間、不動産の処分や活用に関するすべての計画はストップしてしまいます。

世代を経て共有者が増えると、顔も合わせたことがない親族同士で話し合いをしなければならず、円滑な合意形成は極めて困難だというのが実情です。相続登記の放置は、権利関係を雪だるま式に複雑化させ、不動産の処分や活用を事実上不可能にしてしまう大きなリスクといえるでしょう。

共有名義人の片方が死亡した後に相続手続きせずに放置して発生したトラブルと解決事例

共有名義人の片方が亡くなったにもかかわらず相続手続きを行わずに放置した結果、思わぬトラブルに発展してしまうケースは決して珍しいものではありません。

弊社では、共有持分の買取に関するご相談の中で、相続登記を先延ばしにしたことが原因となり、売却や建て替え、賃貸経営が進まなくなってしまったケースを多く見てきました。なかには、権利者が増えて話し合いがまとまらなくなったり、手続きの遅れによって経済的な不利益を被ったりした事例もあります

ここでは、実際のご相談内容をもとに、共有名義人の片方が死亡した後に相続登記を放置したことで発生したトラブルと、その解決に至った事例を紹介します。なお、紹介する内容は、実際の事例をもとに個人が特定されないよう一部を調整したものです。

これから紹介するようなトラブルに巻き込まれないためにも、共有者の片方が亡くなった場合は、できるだけ早い段階で相続登記を行うことが重要です。

事例①:夫婦共有名義の自宅で夫が死亡したが相続登記を放置、10年後に売却できず二次相続で権利者が5人に増加した

項目 内容
発生したトラブル 夫の死亡後、10年間相続登記を放置し、長男も死亡。権利者が5人に増加し、自宅売却時に全員の同意が必要となった。
解決方法 司法書士に依頼し数次相続の手続きを実施。5人全員で遺産分割協議を行い妻が単独相続。

夫婦共有名義(各2分の1)の自宅を所有していたAさん。10年前に夫が死亡しましたが、「自分が住み続けるから問題ない」と相続登記を放置していました。

高齢者施設への入居のため自宅を売却しようとしたところ、不動産業者から「夫の持分が未登記のため売却できない」と指摘されました。

さらに、長男が3年前に病死していたことが判明し、最終的な権利者は妻・長女・長男の配偶者・長男の子ども2人の計5人に増加。司法書士に依頼し、全員で遺産分割協議を行い、妻が夫の持分を単独相続することで解決しました。

事例②:兄弟共有名義の実家で兄が死亡、相続登記を放置したため弟が単独で建て替えできなかった

項目 内容
発生したトラブル 兄の死亡後、5年間相続登記を放置。実家の建て替え時に兄の配偶者の同意が必要と判明し、意見が対立した。
解決方法 弁護士を介入させ、弟が兄の配偶者・子どもの持分を買い取り単独名義に変更。

兄弟共有名義(各2分の1)の実家を所有していたBさん。兄が海外赴任中に病死しましたが、「自分が住んでいるから大丈夫」と相続登記を放置していました。

5年後、実家の老朽化により建て替えを検討したところ、建築確認申請で兄名義のままと判明。建て替えには共有者全員の同意が必要なため、兄の配偶者に連絡したところ、「建て替えは不要。売却したい」と主張され意見が対立しました。

弁護士に相談し、Bさんが兄の配偶者・子どもの持分を買い取り、単独名義にすることで解決しました。

事例③:夫婦共有名義の賃貸アパートで夫が死亡、相続登記を放置したため大規模修繕ができず入居者が退去した

項目 内容
発生したトラブル 夫の死亡後、7年間相続登記を放置。賃貸アパートの大規模修繕時に夫名義のままでは契約不可と判明。入居者が退去し賃料収入が減少。
解決方法 急遽相続登記を実施し、妻が単独相続。相続登記完了後に大規模修繕を実施。

夫婦共有名義(各2分の1)の賃貸アパート(6世帯)を所有していたEさん。7年前に夫が死亡しましたが、「賃料は自分の口座に入っているから問題ない」と相続登記を放置していました。

アパートの外壁が劣化し大規模修繕を検討したところ、修繕業者から「共有者全員の同意が必要」と指摘され、夫名義のままでは契約できないと判明。その間に入居者から「外壁が剥がれて危険」とクレームが入り、2世帯が退去。賃料収入が減少しました。

急いで相続登記を完了させ、大規模修繕を実施することで解決しました。

事例④:共有名義の実家で父が死亡、母が認知症を発症し成年後見人を立てる必要が生じ、相続手続きが大幅に遅延した

項目 内容
発生したトラブル 父の死亡後、5年間相続登記を先延ばしにし、母が認知症を発症。実家売却時に成年後見人の選任が必要となった。
解決方法 成年後見人を選任し、代理で遺産分割協議に参加。長男が単独相続し実家を売却。

父・母・長男の3人共有名義(各3分の1)の実家を所有していたFさん。5年前に父親が死亡しましたが、「母が元気だから後で」と相続登記を先延ばしにしていました。

3年後、母が認知症を発症し高齢者施設に入居。施設費用捻出のため実家を売却しようとしたところ、父の持分が未登記で売却不可と判明。さらに母は意思能力がなく遺産分割協議ができないため、家庭裁判所に成年後見人選任を申立てました。

弁護士が成年後見人に就任し、母の代理で遺産分割協議に参加。Fさんが父の持分を相続し、最終的に実家を売却することで解決しました。

事例⑤:父が死亡後、実家の名義を放置し続けた結果、建物が老朽化し倒壊リスクが発生したケース

項目 内容
発生したトラブル 父の死亡後、5年間相続登記を先延ばしにし、母が認知症を発症。実家売却時に成年後見人の選任が必要となった。
解決方法 成年後見人を選任し、代理で遺産分割協議に参加。長男が単独相続し実家を売却。

Hさん一家は、父が死亡した後、誰も住んでいない実家をどう扱えばいいのか分からず悩んでいました。登記簿上では亡くなった父の名義のまま放置されており、固定資産税の納付書が母宛に届き続けている状態でした。

建物は築年数が古く、外壁の劣化や屋根の傷みが目立っており、倒壊リスクもあるため早めの対応が必要でした。しかし、相続人の間で管理や処分について具体的な話し合いが進んでおらず、名義整理の手続きも滞ってしまいました。

Hさんは専門家に相談し、司法書士と連携しながら相続人全員に連絡を取り、相続登記の手続きを一つずつ整理しました。その後、訳あり不動産専門の買取業者に空き家を現況のまま買い取ってもらい解決に至りました。

共有名義人の片方が死亡した際は放置せずに速やかに相続手続きを行う

共有名義人の片方が死亡した場合でも、不動産の名義が自動的に切り替わるわけではありません。相続人側が適切な手続きを行って初めて、「相続人がその持分を引き継いだ正当な持ち主である」ということを法的に証明できるようになります。

2024年4月からは相続登記が義務化されたこともあり、相続登記の手順を正しく把握していないと、後からペナルティを受けたり、名義変更ができずに売却のチャンスを逃したりといったリスクが生じるため速やかな手続きが重要です。

共有名義不動産の権利を引き継ぐ手順は、主に次の通りです。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 法定相続人と相続財産を確定する
  3. 遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する
  4. 相続税の申告と納付を行い、相続登記を実施する

共有名義不動産をトラブルなくスムーズに引き継ぐために、相続手続きの全体像を正しく理解し、一つずつ進めていきましょう。以下では、それぞれの手続きについて、共有名義不動産に特有の注意点をふまえながら詳しく解説します。

①遺言書の有無を確認

共有名義人の片方が死亡した場合、相続手続きを始める前に遺言書の有無を必ず確認する必要があります。遺言書が存在するかどうかによって、その後の手続きの進め方が大きく変わるためです。

遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容に従って相続が行われます。不動産の取得者が遺言で指定されていれば、指定された相続人や受遺者が手続きを引き継ぎ、「④相続税の申告と納付・相続登記の実施」のステップへ進むことになります。この場合、法定相続人全員で遺産の分け方を話し合う必要がなく、不動産の取得者が遺言で明確に定められていれば、相続税の申告や相続登記といった実務手続きに直接進める点が特徴です

一方、遺言書が見つからない場合は、法定相続人全員で相続手続きを進める必要があり、次の「②法定相続人と相続財産の確定」から順に対応していくことになります。

遺言書には主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。自筆証書遺言は、遺言者本人が手書きで作成する形式で、内容によっては家庭裁判所での検認手続きが必要になります。公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言で、形式不備のリスクが低く、裁判所による検認も不要です。秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま公証役場で存在のみを証明する方式ですが、実務上は利用されることは多くありません。

いずれの形式であっても、相続手続きを円滑に進めるためには、まず遺言書の有無と有効性を正確に把握することが重要です。遺言書の確認を怠ると、不要な遺産分割協議や手続きのやり直しが発生する恐れがあるため、相続手続きの第一段階として慎重に確認しましょう。

②法定相続人と相続財産の確定

遺言書がない場合や、遺言書の内容どおりに相続を進められない場合には、誰が法定相続人に該当するのか、どのような財産や債務が存在するのかを正確に確定させることが不可欠です。法定相続人の範囲や相続財産の内容が不明確なままでは、遺産分割協議や相続登記を進めることができません。

法定相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍関係書類をすべて収集し、戸籍の移動履歴を時系列で確認していく必要があります。具体的には、次のような書類を取得します。

書類名 概要 取得場所
登記申請書 不動産の所有者を、亡くなった人から相続人へ名義変更するために提出する申請書。相続登記の中心となる書類。 法務局(または法務局のホームページ)
故人の出生から死亡までの戸籍謄本 被相続人の出生から死亡までの身分関係を連続して証明し、法定相続人を確定するための書類。 最寄りの役所窓口(または本籍地の役所窓口)
相続人全員の戸籍謄本 相続人であることを証明するために必要な書類。 最寄りの役所窓口(または本籍地の役所窓口)
不動産を取得する人全員の住民票 相続後に不動産を取得する相続人の住所を登記簿に反映させるための書類。 各相続人の住所地の役所窓口
固定資産評価証明書 登録免許税の算定基礎となる、不動産の評価額を証明する書類。 不動産所在地の市区町村役場
遺産分割協議書(協議を行った場合) 相続人全員で合意した遺産分割の内容を記載した書類。誰がどの不動産を相続するかを証明する。 相続人が作成
相続人全員の印鑑証明書(協議書がある場合) 遺産分割協議書に押印された実印が本人のものであることを証明する書類。 各相続人の住所地の役所窓口

戸籍関係書類を一つずつ確認し、配偶者や子ども、場合によっては兄弟姉妹など、法律上の相続人に該当する人物を漏れなく特定します。表面的な家族関係だけでは把握できない、過去の婚姻や養子縁組、認知といった事実が判明するケースもあります。この確認作業を疎かにすると、後から相続人が見つかった場合に遺産分割協議がすべて「無効」になってしまうため、慎重に行う必要があります。

あわせて、相続財産の内容も正確に把握しなければなりません。相続財産には、不動産・預貯金・株式などのプラスの財産だけでなく、住宅ローンや借入金といったマイナスの財産も含まれます。共有名義不動産については、被相続人が保有していた持分の割合や不動産の評価額を確認し、登記簿謄本や固定資産評価証明書などを用いて、不動産の権利関係や評価内容を整理します。

法定相続人の確定や相続財産の調査が不十分だと、後から新たな相続人や借入金が判明し、遺産分割協議のやり直しや相続登記の修正が必要になる事態に発展しかねません。トラブルのリスクを避けるためにも、遺産分割協議に入る前の段階で、法定相続人と相続財産を正確に確定させておくことが、相続手続きを円滑に進めるための重要なポイントといえるでしょう。

③遺産分割協議の実施・遺産分割協議書の作成

相続人の間で遺産の分け方を決める必要がある場合には、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、その内容を書面として残すことが不可欠です。遺産分割協議と遺産分割協議書の作成を経なければ、相続登記をはじめとする後続の手続きを進めることができません。

遺言書がない場合はもちろん、遺言書がある場合であっても、法定相続人全員が協議による分割を希望する場合には、遺産分割協議を行うことができます。遺産分割協議では、法定相続人全員が参加し、誰がどの財産を相続するのかを具体的に決定します。不動産については、「単独で相続するのか」「共有のままとするのか」「持分をどう分けるのか」といった点まで明確に決める必要があります。

遺産分割協議は、法定相続人全員の合意が前提となります。一人でも欠けた状態で行われた協議や、合意が成立していない内容は法的に有効とは認められません。そのため、相続人の範囲が確定していない状態や、連絡が取れていない相続人がいる状態では、遺産分割協議そのものが不成立となります。

遺産分割協議がまとまった後は、その内容を「遺産分割協議書」として書面に残します。遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印を押印する必要があります。遺産分割協議書は相続登記を行う際に必須となる重要な書類であり、不動産の名義変更や金融機関での手続きにも使用されます。

遺産分割協議書の内容が曖昧であったり、相続人の署名や押印が揃っていなかったりすると、相続登記が受理されず、手続きをやり直すことになります。相続登記を確実に進めるためにも、遺産分割協議の段階で内容を明確に整理し、法的に有効な遺産分割協議書を作成しておくことが重要です。

④相続税の申告と納付・相続登記の実施

遺産分割の内容が確定したら、相続税の申告・納付および相続登記の手続きを進めます。

相続財産の総額が、「基礎控除額」を超える場合には、相続税の申告と納付が必要です。相続税の申告期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」と定められており、この期限を過ぎると延滞税や加算税が課される可能性があります。

あわせて、不動産については相続登記を行い、登記簿上の名義を被相続人から相続人へ変更します。相続登記を行わないまま放置すると、不動産の売却や賃貸、担保設定などができなくなるため、遺産分割協議がまとまり次第、速やかに手続きを進めることが重要です。

相続登記の際には、遺産分割協議書の有無や相続の形態に応じて、複数の書類を揃える必要があります。主な必要書類は以下のとおりです。

書類名 概要 取得場所
登記申請書 不動産の所有者を、亡くなった人から相続人へ名義変更するために提出する申請書。相続登記の中心となる書類。 法務局(または法務局のホームページ)
故人の出生から死亡までの戸籍謄本 被相続人の出生から死亡までの身分関係を連続して証明し、法定相続人を確定するための書類。 最寄りの役所窓口(または本籍地の役所窓口)
相続人全員の戸籍謄本 相続人であることを証明するために必要な書類。 最寄りの役所窓口(または本籍地の役所窓口)
不動産を取得する人全員の住民票 相続後に不動産を取得する相続人の住所を登記簿に反映させるための書類。 各相続人の住所地の役所窓口
固定資産評価証明書 登録免許税の算定基礎となる、不動産の評価額を証明する書類。 不動産所在地の市区町村役場
遺産分割協議書(協議を行った場合) 相続人全員で合意した遺産分割の内容を記載した書類。誰がどの不動産を相続するかを証明する。 相続人が作成
相続人全員の印鑑証明書(協議書がある場合) 遺産分割協議書に押印された実印が本人のものであることを証明する書類。 各相続人の住所地の役所窓口

戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本は、2024年3月から始まった広域交付制度により、請求者が配偶者や直系親族である場合に限り、本籍地以外の最寄りの市区町村役場でも取得できるようになりました。ただし、代理人による請求や戸籍の附票などは対象外となるため、ケースによっては本籍地での取得が必要になります。

相続税の申告・納付と相続登記は、期限や必要書類が明確に定められている手続きです。特に、共有名義不動産の場合では、相続登記を先延ばしにすると、後の世代で権利関係が複雑化し、解決が一気に難しくなります。遺産分割がまとまった段階で、税務と登記の手続きをまとめて進めることが、将来的なトラブルを防ぐうえで重要といえるでしょう。

共有名義不動産の相続で発生する費用・税金

共有名義不動産を相続する際には、相続税だけでなく、登記に伴う税金や専門家への報酬、各種書類の取得費用など、複数の費用や税金が発生します。相続に伴って発生する税金や諸費用は、相続の進め方や取得形態によって大きく変わるため、全体像を把握せずに手続きを進めると、想定外の出費に戸惑うことにもなりかねません。

ここでは、相続時に発生し得る主な費用・税金を整理して確認しておきましょう。

  • 相続財産の総額が基礎控除額を超える場合に課税される「相続税」
  • 相続登記を行う際に必ず発生する「登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)」
  • 相続登記を司法書士に依頼した場合に発生する「司法書士への報酬」
  • 戸籍謄本や印鑑証明書などを取得するための「必要書類の発行手数料」
  • 特定遺贈や死因贈与の場合に課税される「不動産取得税」

それぞれの費用・税金について、課税の仕組みや注意点を具体的に解説していきます。

相続税:基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人)を超える部分に課税

相続税は、被相続人が残した財産の総額が、「基礎控除額(3,000万円+(600万円 × 法定相続人の数)」を超える場合に課税される税金です。

相続財産の総額が基礎控除額の範囲内であれば、原則として相続税の申告や納付は不要となります。ただし、後述する「配偶者控除」や「小規模宅地等の特例」などを適用して納税額をゼロにする場合には、税務署への申告自体は必須となるため注意が必要です。

相続税の税率は、財産の金額に応じて10%から55%まで段階的に上がる仕組み(超過累進課税)が採用されています。特に、2024年からは、大きな税制改正が行われ、実質的な増税となるケースが増えています。

■マンション評価額の新ルール
2024年1月より、市場価格と相続税評価額の乖離を解消するため、評価額を市場価格の約6割まで引き上げる新基準が導入された。新ルール導入により、タワーマンション等では以前よりも相続税の負担が増大する可能性がある。
■生前贈与の加算期間の延長
2024年1月より、相続財産に持ち戻して計算する生前贈与の対象期間が、従来の死亡前3年間から7年間へと段階的に延長された。これにより、死亡直前の駆け込み贈与による節税対策が通用しにくくなるほか、課税対象財産の膨張に伴って、当初の想定よりも税負担が重くなる可能性がある。

共有名義不動産の場合、相続税の対象となるのは「被相続人が保有していた持分割合に応じた評価額」です。計算方法そのものは単独名義の不動産と同様ですが、持分が不明確なままだと正確な申告ができません。

なお、相続税には配偶者控除や小規模宅地等の特例など、一定の条件を満たすことで税負担を大きく軽減できる制度が設けられています。

特例・控除の名称 概要 軽減内容のポイント
配偶者の税額軽減(配偶者控除) 配偶者が相続した財産について適用される特例 法定相続分または1億6,000万円まで、相続税がかからない
小規模宅地等の特例 被相続人の居住用・事業用などの土地が対象
  • 居住用宅地は評価額を最大80%減額
  • 事業用は最大80%
  • 貸付事業用は最大50%減額
未成年者控除 相続人が未成年の場合に適用 満18歳までの年数×10万円を相続税額から控除
障害者控除 相続人が障害者の場合に適用 一定額を相続税額から控除
相次相続控除 10年以内に連続して相続が発生した場合に適用 前回の相続税の一部を控除できる
贈与税額控除 生前贈与を受けていた場合に適用 すでに納付した贈与税額を相続税から控除

相続税は必ずかかる税金ではなく、財産の内容や相続人の構成、特例の適用可否によって大きく結果が変わる税金です。共有名義不動産を含む相続では、早い段階で専門家に財産評価を依頼し、相続税が発生するかどうかを確認しておくことが重要といえるでしょう。

登録免許税:固定資産税評価額×0.4%

登録免許税は、相続登記を行う際に必ず課税される税金です。相続によって不動産の名義を変更する場合、相続税がかかるかどうかに関わらず、登録免許税の納付は避けられません。

相続登記における登録免許税の税額は、不動産の固定資産税評価額に0.4%を乗じて計算されます。評価額は売買価格や相場ではなく、市区町村が定める固定資産税評価証明書に記載された金額が基準となります。

例えば、固定資産税評価額が2,000万円の不動産を相続する場合、登録免許税は「2,000万円×0.4%=8万円」となります。共有名義不動産であっても、相続により取得するのが不動産全体ではなく持分のみであれば、その持分割合に応じた評価額をもとに税額が計算されます。

なお、相続税が基礎控除内に収まり、相続税の申告や納付が不要なケースであっても、相続登記を行う以上、登録免許税は必ず発生します。「相続税がかからない=費用が一切かからない」と誤解されがちですが、相続登記には最低限の税負担が伴うことは押さえておく必要があります。

また、一定の条件を満たす土地については、固定資産税評価額が100万円以下であれば登録免許税が非課税となる特例があります。共有名義不動産では、持分換算後の評価額がこの基準を下回るケースもあるため、該当するかどうかは事前に確認しておくとよいでしょう。

司法書士への報酬:5〜10万円が相場

相続登記を司法書士に依頼する場合には、登録免許税などの実費とは別に、司法書士への報酬が発生します。報酬額は依頼内容によって異なりますが、一般的な相続登記であれば、5万円〜10万円程度が相場です。手続きが複雑な場合や、不動産の数が多い場合、相続関係が入り組んでいる場合には、10万円を超えるケースもあります。

司法書士報酬は、不動産の評価額に加え、相続関係の複雑さや必要書類の多さによって左右される傾向があります。たとえば、相続手続きを行わないまま相続人が亡くなっており、相続関係が複数世代に及んでいる場合や、戸籍の収集範囲が広い場合には、その分、司法書士報酬が高くなることがあります。。

なお、相続登記は法律上、権利者本人が行うことも可能ですが、戸籍の収集や書類作成、法務局への申請には一定の専門知識が求められます。書類の不備によって申請が差し戻されると、手続きが長期化する原因にもなります。そのため、確実かつスムーズに相続登記を進めたい場合には、司法書士に依頼することが現実的な選択肢といえるでしょう。

必要書類の発行にかかる手数料:数千円〜

相続登記を行うためには、戸籍謄本や住民票、印鑑証明書など、複数の公的書類を取得する必要があります。手続きに必要な書類は1通ごとに発行手数料がかかるため、相続関係の複雑さによっては、合計で数千円から数万円程度の費用が発生します。ただし、取得する戸籍の通数や相続関係の複雑さによって必要書類の枚数が増えるため、実際の費用には個人差があります。

相続登記に必要な書類 費用
戸籍謄本 1通450円
除籍謄本 1通750円
改製原戸籍謄本 1通750円
戸籍の附票の写し 1通300円前後
印鑑証明書 1通300円前後
固定資産税評価証明書 1通300円〜400円程度
住民票の写し 1通300円前後

不動産取得税(特定遺贈や死因贈与の場合):固定資産税評価額×3%

相続によって不動産を取得した場合、不動産取得税は原則として非課税です。

ただし、すべてのケースで非課税となるわけではありません。遺言によって相続人以外の第三者に不動産を取得させる「特定遺贈」や、生前に死亡を条件として財産を与える「死因贈与」の場合には、不動産取得税が課税されます。形式上は相続に近い手続きであっても、税務上は相続とは区別される点に注意が必要です。

不動産取得税の税額は、「課税標準額×税率」で計算されます。税率は、土地および住宅用家屋については原則3%とされており、課税標準額には固定資産税評価額が用いられます。売買価格や相場ではなく、市区町村が定める評価額が基準となる点は、登録免許税と同様です。

なお、土地については軽減措置が設けられており、2027年3月31日までに取得した土地については、課税標準額が固定資産税評価額の2分の1に引き下げられます。特定遺贈や死因贈与によって不動産を取得する場合でも、この軽減措置が適用されるケースがあります。

相続では原則かからない不動産取得税ですが、取得の形態が相続ではなく、遺贈や死因贈与に該当する場合には、思わぬ税負担が発生することがあります。名義変更の方法によって課税関係が変わるため、事前に取得形態を正確に整理しておくことが重要です。

共有名義人が死亡したが、自分は相続人ではない場合の対応

共有名義の不動産で共有者の一人が死亡した場合、その持分は原則として法定相続人が相続します。死亡した共有者の持分が、自動的に生存している共有者へ移転するわけではありません。

相続人が存在しない場合などには、民法上の別の仕組みもあります。具体的には、相続人がいなければ特別縁故者に財産分与がなされ(民法958条の3)、それでも残余があれば、民法255条により他の共有者に帰属するという流れが整理されています。ただし、実務的にはこうした例外的なケースは手続きが煩雑で期間も長くなりやすい面もあります。

一方で、生存している共有者自身が相続人でない場合、相続手続きの主体になることはできず、相続登記や遺産分割を主導する立場にもありません。しかし、相続人が確定しない、相続登記が未了のままという状況では、誰と協議すべきかが定まらず、不動産の売却・賃貸・建替えなどの契約行為に進むことができません。共有不動産は処分や利用にあたり関係者の合意が前提となるため、相続手続きが止まるだけで実質的に動かせない資産になり得ます。

そのため実務では、まずは相続人の確定→相続登記→協議体制の整備という順に進めることが重要です。相続人が存在する場合であれば、最初の協議相手が明確であるため、結果的に手続も早期に動きます。逆に、相続人が不明・複数・連絡不能といった要素があると、それだけで共有者側の持分も自分では使えない資産になりかねない点が問題となります。

以下では、共有者でありながら相続人ではない立場にある場合に、どのように対応すべきかを整理して解説します。

亡くなった共有者の相続人を特定する

共有名義人が死亡したものの、生存している共有者自身が相続人ではない場合、まず対応すべきなのが亡くなった共有者の相続人の特定です。生存共有者は相続手続きの当事者ではありませんが、今後その不動産について協議や意思決定を行う相手が誰になるのかを把握しなければ、売却や賃貸、建て替えなどの具体的な手続きを進めることができません。

相続人の確認方法としては、以下のような対応が考えられます。

  • 亡くなった共有者の配偶者や子どもなど、家族に直接確認する
  • 可能であれば、遺族側に戸籍調査を行ってもらい、法定相続人を確定してもらう
  • 相続人が不明、または連絡が取れない場合は、弁護士や司法書士に調査を依頼する

相続人が確定しない状態では、共有名義不動産の売却や建て替え、賃貸といった判断は一切行えません。誰が持分を相続するのかが不明確なままでは、新たな共有者が確定せず、協議そのものが成立しないためです。

実務上も、相続人の特定が遅れたことで、不動産の処分や活用が長期間止まってしまうケースは少なくありません。生存共有者の立場であっても、まずは相続人の把握を最優先で進めることが、その後のトラブルを防ぐ第一歩となります。

相続人に相続手続きを行ってもらうよう依頼する

亡くなった共有者の相続人が判明した後は、その相続人に対して相続手続きを進めてもらう必要があります。生存している共有者は相続手続きの当事者ではないため、相続登記を含む手続きを代行することはできません。

そのため、実務上は相続人に対して、相続手続きを放置した場合の影響や必要性を正しく理解してもらうことが重要です。具体的には、次のような点を説明しましょう。

  • 亡くなった共有者の持分は、法律上、相続人が相続することになる
  • 相続登記が行われない限り、不動産の売却・建て替え・長期賃貸といった処分や活用ができない
  • 登記を放置すると、固定資産税や管理責任が相続人側に残り続ける

相続人が相続登記を行うことで、誰が正式な共有者となるのかが登記簿上で明確になります。登記簿上の共有者が確定することで、生存している共有者としても、今後協議すべき相手が明らかになり、不動産の売却や管理、共有関係の解消といった具体的な話し合いを進めることが可能になります。

実際の現場では、相続登記が行われないまま時間が経過し、共有関係が不透明な状態が長期化することで、不動産が動かせない資産になってしまう例も珍しくありません。生存共有者の立場としては、相続人に対して相続手続きの必要性を早い段階で伝え、登記の実施を促すことが重要な対応となります。

不動産の今後の方針について相続人と協議する

相続登記が完了し、登記簿上の共有者が確定した後は、当該不動産を今後どのように取り扱うかについて、相続人と協議を行う必要があります。共有名義の不動産では、今後の方針を明確にしないまま放置すると、管理負担やトラブルの原因になりやすいため、早い段階で方向性を整理しておくことが重要です。

具体的には、次のような選択肢が考えられます。

  • 共有状態のまま保有を続ける
  • 不動産全体を売却し、代金を分配する
  • 生存している共有者が、相続人の持分を買い取って単独名義にする
  • 相続人が、生存共有者の持分を買い取って共有関係を解消する

いずれの方法を選択する場合であっても、原則として相続人全員の合意が必要となります。共有名義不動産の売却や建て替え、取り壊しは、共有者のうち一人でも反対している場合には、手続きを進めることができません。

そのため、相続人の意向を早めに確認し、現実的に合意形成が可能かどうかを見極めたうえで、不動産の活用や処分方法を検討しましょう。

相続人と連絡が取れない・協力が得られない場合の対応

相続人の中に、所在不明者や未成年者、認知症などにより判断能力を欠く人が含まれている場合、共有名義不動産に関する協議は大きく停滞します。共有名義不動産の売却や建て替えには共有者全員の意思確認が前提となるため、特殊な事情があると、当事者同士の話し合いだけで判断を行うことができません。

相続人と連絡が取れない・協力が得られない場合、不在者財産管理人や特別代理人、成年後見人の選任といった家庭裁判所を介した法的手続きが必要となります。申立てから選任までに数か月単位の時間を要することも多く、あわせて専門家への依頼費用も発生するため、手続き全体の負担は大きくなります。

相続人と直接協議できない事情がある場合には、早い段階で司法書士や弁護士に相談し、現実的な解決ルートを検討することが重要といえるでしょう。

協議が難航する場合は、自分の持分のみ売却することも可能

相続人との協議が長期化し、共有状態が解消されないまま放置されると、管理や維持に関する負担が増えるだけでなく、不動産そのものの資産価値が下がるリスクも高まります。

相続人との協議がまとまらない状況では自身の共有持分のみを売却して共有関係を解消する方法が有効となるケースがあります。共有持分は法律上、他の共有者の同意がなくても売却自体は可能です。

もっとも、共有持分は一般市場での流通性が低く、通常の不動産会社では取り扱いを断られるケースが少なくありません。そのため、実務上は共有持分や権利関係が複雑な不動産の取り扱いに慣れた専門の買取業者を利用することが、現実的な解決策となります。

相続登記が完了した後は、正式な共有者と適切な管理を行う

相続登記が完了すると、亡くなった共有者の持分について新たな権利者が確定し、法的に正式な共有関係が成立します。相続登記が完了し、新たな共有者が確定した後に重要になるのが、共有者間で不動産の管理や費用負担、今後の利用方針を明確にしておくことです。

  • 固定資産税や都市計画税の負担割合をどうするのか
  • 修繕費や管理費などの維持費を、誰がどこまで負担するのか
  • 誰かが居住を続けるのか、賃貸に出すのか、売却するのか

相続登記が済んでいるからといって、その後の管理を放置してしまうと、実態として誰も責任を持たない状態となり、将来的に所有者不明土地と同様の扱いを受けるリスクも高まります。

所有者が不明な土地として扱われると、売却や賃貸について共有者全員の合意が取れず、契約そのものが進められなくなります。公共工事や再開発で土地の利用や立ち退きが必要になった場合でも、補償の支払先や同意者を確定できないため、補償交渉が滞り、結果として土地の利用が制限されたまま放置される可能性が考えられます。

さらに、空き家対策特別措置法の対象となれば、行政からの指導・勧告・固定資産税の軽減措置解除などの不利益を受けることもあるでしょう。結果として、資産として活用できないまま、費用負担と法的リスクだけが残る点が大きな問題です。

共有名義不動産を適切に維持・活用していくためには、相続登記後こそ、共有者同士で実務的な管理体制を整えておくことが不可欠といえるでしょう。

共有名義不動産の相続に不安な方は放置せず専門家に相談しましょう

共有名義不動産の相続では、相続登記や共有者との協議、税金の扱いなど、検討すべき事項が多く、何から手を付けるべきか分からず不安を感じる人も少なくありません。結論から言えば、問題を放置したまま自己判断で進めるほど、手続きは複雑化し、解決までに時間や費用がかかるリスクが高まります。

そのため、状況に応じて司法書士・弁護士・税理士といった専門家や、共有持分の取り扱いに慣れた不動産業者へ早期に相談することが推奨されます。今ある選択肢を整理し、必要な対応に動くことで、スムーズな解決につながります。

ここでは、共有名義不動産の相続において相談先となる主な専門家と、それぞれの役割について解説します。

司法書士:相続登記に関する相談

共有名義不動産の相続において、まず関与することになる専門家が司法書士です。司法書士は不動産登記の専門家であり、相続による名義変更(相続登記)を法的に正しく進める役割を担います。共有者の死亡が関係するケースでは、相続関係や権利関係が複雑になりやすく、登記手続きを誤ると不動産全体が長期間動かせなくなるリスクがあります。

司法書士に相談・依頼できる主な内容は、次のとおりです。

  • 相続登記(名義変更)の手続き全般
  • 遺産分割協議書の作成サポート
  • 戸籍謄本や住民票など、必要書類の収集・確認
  • 共有名義不動産における持分の整理や登記内容の確認

相続登記は、単に申請書を提出すれば終わる手続きではありません。被相続人の出生から死亡までの戸籍収集や、相続関係の確定、遺産分割協議の内容整理など、専門的な判断を要する工程が複数存在します。特に、共有名義不動産では、相続人の数や持分割合によって登記内容が大きく変わるため、自己判断で進めると記載ミスや申請却下につながる恐れがあります。

そのため、相続登記が未了の状態や共有関係が絡む相続では、早い段階で司法書士に相談し、登記手続きを正確に完了させておくことが、その後の売却や管理、共有関係の解消に向けた前提条件となります。

弁護士:共有者とのトラブルに関する相談

弁護士は、共有名義不動産をめぐって相続人や共有者との間で意見対立や紛争が生じた場合に相談できる法律の専門家です。相続登記が完了していても、共有者の一部が売却や管理に反対している、協議が進まないといったケースでは、当事者同士の話し合いだけで解決することが難しくなります。

弁護士に相談・依頼できる主な内容は、次のとおりです。

  • 遺産分割協議や共有不動産の処分方針をめぐる共有者間の交渉サポート
  • 売却や管理に反対する共有者への法的な説明・対応
  • 共有物分割請求など、共有関係を解消するための法的手続きの検討・代理
  • 調停や訴訟が必要となった場合の代理対応

共有名義不動産の問題は、感情的な対立が絡むと長期化しやすく、結果として不動産が放置される原因にもなります。弁護士に早期に相談することで、法的に取れる選択肢を整理し、不要な対立や手続きの行き詰まりを避けながら、現実的な解決に向けた道筋をつけることが可能です。

共有者との協議が難航している場合や、法的手続きを視野に入れざるを得ない状況では、弁護士への相談を検討する段階といえるでしょう。

税理士:相続税や不動産取得税など税金面の相談

税理士は、相続に伴って発生する税金の計算や申告を専門とする税務の専門家です。共有名義不動産の相続では、不動産評価や特例の適用可否によって税負担が大きく変わるため、早い段階で税務面を整理しておくことが重要になります。

税理士に相談・依頼できる主な内容は、次のとおりです。

  • 相続税が発生するかどうかの判定および課税額の試算
  • 相続税申告書の作成および税務署への申告代理
  • 配偶者控除や小規模宅地等の特例など、各種特例の適用可否の判断
  • 特定遺贈や死因贈与に該当する場合の不動産取得税の確認・対応
  • 共有名義不動産の評価方法や持分割合に応じた税務整理

相続税は必ず発生するものではありませんが、申告が必要なケースを見落とすと、後から追徴課税や加算税が課されるリスクがあります。また、特例を正しく適用できるかどうかによって、最終的な税負担に大きな差が生じる点も注意が必要です。

共有名義不動産を含む相続では、登記や協議の問題だけでなく、税務面の整理が不十分なまま手続きを進めてしまうと、後から修正が難しくなることがあります。相続税や不動産取得税が関係する可能性がある場合には、税理士への相談を通じて、事前に税務リスクを把握しておくことが欠かせないといえるでしょう。

専門の買取業者:不動産の査定や売却の相談

共有持分専門の買取業者は、共有名義不動産の持分のみを対象にした買取を行っている不動産会社です。共有者全員の合意が得られず、不動産全体の売却や共有関係の解消が進まないケースでも、手軽に持分を処分する選択肢として検討されることがあります。

専門の買取業者に相談・依頼できる主な内容は、次のとおりです。

  • 自身が保有する共有持分のみの査定
  • 共有者の同意を得られない状態での持分売却の可否確認
  • 共有関係が解消できない場合の現実的な出口戦略の検討
  • 権利関係が複雑な不動産における売却スキームの提案
  • 必要に応じた司法書士・弁護士など士業との連携・紹介

共有持分は、単独では利用や処分が制限されるため、一般の不動産会社では取り扱いを断られるケースが多くあります。そのため、通常の仲介による売却が難しい状況では、共有持分の取り扱い実績がある専門業者への相談が現実的な選択肢となります。

共有者との協議が長期化し、不動産を保有し続けること自体が負担になっている場合には、自分の持分を売却して共有関係から離れるという判断も含めて、専門の買取業者に相談し、具体的な条件やリスクを確認しておくことが重要です。

まとめ

共有名義の不動産で片方が死亡した状態を放置すると、相続登記義務化による過料のリスクだけでなく、不動産の売却・賃貸・建て替え・担保設定といった実務上の選択肢がほぼすべて封じられます。

実際の不動産買取の現場でも、相続登記を先延ばしにした結果、相続人が世代をまたいで増え、権利関係が複雑化し、解決までに数年を要するケースを数多く見てきました。相続登記を怠っても不動産そのものを失うわけではありませんが、「何もできない資産」になってしまう点が最大の問題です。

なお、不動産全体の売却が難しい場合でも、自身が保有する共有持分のみであれば、他の共有者の同意を得ずに売却することは可能です。ただし、共有持分は一般の不動産市場では買い手が限られやすく、通常の仲介による売却が現実的に難しいケースが多いのが実情です。そのため、他の解決策を検討しても前に進まない場合には、共有持分の取り扱いに特化した専門業者への売却が、最終的な選択肢となってしまいます。

共有名義で共有者の一人が死亡した場合は、放置せず相続人の確定と相続登記を早期に行うことが基本となります。そのうえで、協議が難航する場合や保有を続けることが負担になっている場合には、共有持分の売却といった現実的な選択肢も含めて検討することが、将来的なトラブルや資産価値の低下を防ぐうえで重要といえるでしょう。

共有持分に関するコラムはこちら

条件を変えて検索する
条件を変更する
  • 訳あり不動産に強い買取業者を探す

    掲載業者
    703
    更新日 : 2025年11月07日
    買取業者を探す

    共有持分の売却でお悩みなら
    今すぐご連絡ください