
再建築不可物件の建て替えや新築ができないことは既にご存知のことと思いますが、リノベーションができるかどうか疑問に思われたことはないでしょうか。
この記事では、どのようなリノベーションなら認められるのか、ローンを利用できるのか、リノベーションに向いている物件や控えたほうがいい物件などについて解説します。
目次
再建築不可物件はリノベーションできる?
一口にリノベーションと言っても、内装を原状回復や模様替えよりさらに綺麗にするものから建て替えに近いものまで、様々な規模のものが考えられます。
再建築不可物件であっても、内装を大規模にリフォームするのであれば問題ありません。
しかし、再建築不可物件は増築や改築が禁止されていますので、建物の構造部分や外壁に手を入れるリノベーションを行う場合には注意が必要です。
特に、建築確認を受ける必要があるかどうかによってリノベーションができるかどうか大きく異なりますので、まずは建築確認について調べてみましょう。
建築確認とは
建築確認とは、建物の大規模修繕を行おうとする場合、事前に行うことが求められている手続きです。
建築確認の手続きを行うと、これから行おうとしている工事が、建築基準法に違反していないかどうか地方自治体が確認を行います。
建築確認を受ける前の工事施工は法令で禁止されていますので、建築確認を受けて地方自治体からOKをもらうことが工事をする際の必須条件となっています。
特殊な例外はありますが、大規模修繕を行おうとしている物件が、建築基準法上の「4号建築物」に該当するかどうかにより、大規模修繕を行う際に建築確認を受ける必要があるかどうか判断されます。
通常の住居や店舗についてはこれから解説する基準で判断できますが、特殊な用途の建物のリノベーションを検討している場合には、地方自治体や専門家に建築確認の必要があるかどうか事前に相談することをお勧めします。
4号建築物に該当する場合
4号建築物とは、建築基準法第6条1項に定められている1号~3号以外の建築物です。
4号建築物を建築する際には建築確認が必要ですが、大規模修繕や大規模模様替えを行う場合には建築確認が不要とされています。
4号建築物とは、簡単に言うと個人が住宅として利用したり、小規模な店舗や病院、学校として利用したりするような小型の建物です。
正確には、以下の条件を満たす建築物のことを指します。
一般建築物の場合(戸建住宅・事務所等)
2階建て以下
かつ延べ面積500平方メートル以下
かつ高さ13m・軒高9m以下
<非木造の場合>
平屋
かつ延べ面積200平方メートル以下
特殊建築物の場合(学校、病院、店舗、共同住宅等)
2階建て以下
かつ延べ面積100平方メートル以下
かつ高さ13m・軒高9m以下
<非木造の場合>
平屋
かつ延べ面積100平方メートル以下
4号建築物でも建築基準法の諸規定は遵守しなければいけませんが、行政からの事前審査があるわけではありませんので、4号建築物に該当する再建築不可物件をリノベーションするにあたり問題になるケースはほとんどないと言っていいでしょう。
参考:国土交通省 4号建築物
参考:埼玉県 4号建築物
4号建築物に該当しない場合
これからリノベーションしようとしている再建築不可物件が4号建築物に該当しない場合には、建築確認を受ける必要がない工事となるために少し工夫が必要となります。
「必要なら、原則どおりに建築確認を申請すればいいんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、再建築不可物件の建築確認申請はまず通りません。
試しに建築確認を申請してみようと言う方もいますが、地方自治体の注意をひいてしまいますから、控えたほうが賢明でしょう。
4号建築物以外の物件を大規模修繕・大規模模様替えするにあたり、建築確認申請が必要なのは主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根または階段)のうち一つ以上を、1/2超修繕する工事です。
したがって、建築確認を受けることなく建物の大部分を修繕する工事を行うために、工事を複数にわけてひとつひとつが全体の1/2を超えないようにする方法が考えられます。
この方法を用いて建築確認を受けることなく再建築不可物件を大規模修繕・大規模模様替えしています。
しかし、ある工事が大規模なひとつの工事なのか、それとも小規模な複数の工事なのかを判断するにあたり明確な判断基準はありません。
建築確認を受けることなく大規模修繕・大規模模様替えを行って、後々地方自治体とトラブルになることがないよう、事前に地方自治体と相談しておくとよいでしょう。
しかし、事前相談では専門的な知識や交渉が必要となるため、素人が自身で対応するのは困難です。また、通常の工務店も再建築不可物件を取り扱った事例が少なく、十分な知識がない可能性もあります。
近くに再建築不可物件の大規模修繕・大規模模様替えを多く取り扱っているリフォーム会社があれば、ぜひその業者に依頼することを前提に、事前相談の代行をお願いすることをお勧めします。
再建築不可物件をリノベーションする際の注意点は?
再建築不可物件をリノベーションするにあたり問題となるのは、建築確認だけではありません。
その他にも複数の注意点がありますので、特に再建築不可物件を新たに購入してリノベーションする計画を立てている方は、事前に対応を検討しておきましょう。
他の物件と比較してリノベーションのコストが高いかも?
再建築不可物件をリノベーションする際は、すでに解説した建築確認の問題の他にコストにも注意しましょう。
再建築不可物件は道路への接道義務を果たしておらず、工事車両が物件の近くに接近できなかったり、また接道していても幅員の狭い裏道しか使用できず、大型車両が通り抜けることができなかったりします。
さらに、建物の周囲に足場を組んだり資材を置いたりするスペースがないことが多く、そもそも工事ができなかったり多額の費用がかかるケースがあります。
また、築年数が経過している物件がほとんどですから、いざ工事に着工して天井や床を剥がしてみたら屋根裏や床下の状態が悪く、想定以上のコストがかかることがあります。
ご自身が購入して長く住まれていたり、相続で入手したりした場合には仕方ありませんが、新たに物件の購入を検討している場合には契約前にリノベーションにかかる費用の見積もりを済ませておくことをお勧めします。
また、物件購入前に建物の天井や床を剥がしてみるわけにはいきませんが、売主に理由を説明して可能な限り調査をさせてもらい、大きなダメージがないことを確認しておきましょう。

賃貸する場合には築年数に注意
再建築不可物件をリノベーションし、アパートのような形で賃貸しようと考えている場合には、築年数に注意しましょう。
最近の入居希望者はアパートを借りようとするとき、まずはインターネット検索をして物件を探す傾向にあります。
その際「築年数5年未満」のような形で物件を絞っていくのが一般的ですが、あまりに築年数が経過しているとそのような検索条件に該当せず、入居希望者の目にとまらないことが多いです。
築古のアパートは入居希望者から敬遠されがちです。特に再建築不可物件は再建築ではなくリノベーションをすることになりますから、極端に築古の表示をすることになってしまいます。
いくら全体的にリノベーションをしていたとしても、事情を知らない方が「築60年」という表示を目にしたら、それだけで積極的に入居を検討したいとは思わなくなってしまうでしょう。
せっかくリノベーションをするのですから、最近の入居者が上記のような方法で物件を探す傾向にあることを十分に考慮しましょう。
たとえば、物件資料に掲載する写真をひと目見ただけで大規模なリノベーションをしたことがわかるように、近代的な外観にできないかどうか、リノベーション業者に相談してみましょう。
また、物件資料にリノベーション済みであることを記載することも有効です。
再建築不可物件をリノベーションする場合、ローンは利用できるのか?
再建築不可物件をリノベーションするにあたり、費用をキャッシュで支払うことが困難なケースがあります。
そのような場合にはローンの利用を検討することになりますが、再建築不可物件のリノベーションに向けた融資申し込みが金融機関の審査を通過するのは現実的には難しいでしょう。
再建築不可の土地にはほとんど利用価値がありませんし、リノベーションするとはいえ建物の老朽化も激しいですから、土地も建物も担保価値が低く査定されてしまいます。
また、金融機関は原則として、建物の耐用年数の期間内でしか融資を行いません。
しかし、再建築不可物件の建物は既に耐用年数を経過していることが多いため、いくらリノベーションを行うと言っても建物の担保価値はゼロだと指摘されることも少なくありません。
建物を賃貸用にリノベーションするのであれば、その収益率によってはローンを受けることが可能かもしれませんが、金利や返済期間などの条件は厳しいものとなるでしょう。
まして自身の居住用にリノベーションする場合には、その物件から収益があがるわけではありませんので、なおさらローンを受けるにあたり不利な状況となってしまいます。
したがって、もし再建築不可物件を購入し、その直後にリノベーションをしようと考えている場合には、購入前に銀行とよく相談し、リノベーションのコストも含めて融資を受けられるかどうか確認しておきましょう。

日本政策金融公庫の利用を検討しよう
たとえ事業用に再建築不可物件をリノベーションしようとしても、民間の金融機関ではなかなかローンの承認がおりません。このようなケースでは日本政策金融公庫の利用を検討しましょう。
日本政策金融公庫は通称「公庫」と呼ばれる政府系金融機関です。
民間の金融機関とは異なる基準で担保物件を評価し、融資をしますから、民間の金融機関からは担保価値が低いと評価される不動産を事業用に購入したり、リノベーションしたりする場合に利用を検討する方が多いです。
また、公庫は担保価値よりも事業計画を重視して融資をするという方針を打ち出しています。事業計画が優れていれば、担保評価が低くても融資を受けられるケースは多いです。
公庫が定期的に事業計画の作成を支援するイベントを企画していますから、そのようなイベントに参加して担当者と親しくなり、アドバイスを受けるといいでしょう。
ただし、いくら担保価値より事業計画を重視するといっても、無担保でも問題ない、担保については確認しないという意味ではありません。
いくら公庫とはいえ、担保価値が高いに越したことはありませんので、くれぐれも楽観することなく、担保価値と事業計画のどちらにも注意を怠らないようにしましょう。
参考:日本政策金融公庫
再建築不可物件でリノベーションに向いている物件は?
再建築不可物件のうち、リノベーションに向いている物件は、大きくわけて2種類あります。
まず1種類目は、自身が長年その物件に住んでいたり、相続したりした思い入れのある物件です。
そのような物件に今後も住み続けたいが老朽化してしまったという状況であれば、リノベーションに向いている物件と言うよりリノベーションをせざるを得ない物件でしょう。
また、長年住んでいる物件が老朽化してしまったものの、買手も見つからず、さりとて他の物件を購入するほどの資金的な余裕がないというケースでは、予算の範囲内でリノベーションを検討せざるを得ないでしょう。
これらのケースではリノベーションが不可避ですから、リノベーションに向いているかどうかというよりも、どれほどの思い入れがあるか、予算に余裕があるか、という観点でリノベーションの内容を検討することになります。
もう1種類は、立地がよい再建築不可物件を賃貸向けにリノベーションする場合です。
新たに中古物件を購入するのであっても取得価格は安く済みますし、元々所有している物件を賃貸向けにリノベーションするのであればリノベーション費用しか、かかりません。
どちらにしても物件を安価に取得できますから、その分家賃を低く設定しても十分な収益を得ることができます。
主要な電車の沿線や駅の近くなど、利便性の高いエリアに立地しており、なおかつリフォーム済みで家賃が適正であれば入居を希望する方は一定数います。
さらに、ロフトがついていて、間取りが便利、デザインも洒落た設計のリノベーションを行った物件であれば、なおさら入居希望者の目を引くことでしょう。
また、地域によっては家族向けの賃貸住宅が不足していますので、単身世帯向けの賃貸だけを考えるのではなく、中古一戸建ての再建築不可物件を購入してファミリー向けにリノベーションしてみるのも面白いでしょう。
住まいとして便利な場所にある再建築不可物件を所有しているなら、取得価格の安さを武器に賃貸向けのリノベーションにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
再建築不可物件をリノベーションするにあたり、まずはそもそも再建築不可物件にリノベーションするだけの利用価値があるのかどうか冷静に判断しましょう。
また、せっかく多額のコストを掛けてリノベーションしても、再建築不可物件は売却が難しいケースも多いため、ご自身はもちろん、お子様も含めて最後まで所有を続ける意思があるのかどうか、話し合いをすることをお勧めします。