不動産購入時の消費税が戻ってくるのはなぜ?消費税還付になるわけとは?

所得税還付

不動産投資で投資用物件の購入をする場合、支払う消費税額も決して馬鹿にはなりません。しかし、もし支払った消費税が還ってくるとしたらどうでしょうか?簡単な仕組みではありませんが、数十万や数百万という消費税が還付金として還ってくる可能性があります。

この記事では、不動産投資において消費税還付を受けるために、最低限満たすべき条件について解説します。

消費税が還付される仕組みについて

所得税還付
消費税という税金は、消費者である個人が買い物をする度に、商品代金と合わせて支払っている税金です。納税は基本的に税務署に出向いて申告し納付するものです。消費税も、本来であれは買い物(納税)の都度税務署で納付するべきものですが、現実問題それは不可能なため、お店などの事業者が顧客から一時的に預かり、後日納付しています。つまり、消費税を負担しているのは消費者個人ですが、実際に納付する義務を負っているのは消費税を預かる事業者ということになります。

事業者自身も、自らが買い物をする際には消費税を支払います。そして事業者が支払う消費税は、顧客から預かっている消費税の中から支出することが認められています。つまり、預かった消費税を税務署に納付するのか購入先へ支払うのかは、事業者がコントロールすることが可能ということになります。

ところで、事業者が購入先へ支払った消費税と、顧客から預かった消費税に差額が生まれる場合があります。もし、預かった消費税よりも支払った消費税の方が高額であった場合には、多く払った差額分は還付されることになります。逆に、預かった消費税よりも支払った消費税の方が少なかった場合には、余った差額分は納税します。

1. 預かった消費税 < 支払った消費税 = 消費税還付
2. 預かった消費税 > 支払った消費税 = 消費税納税

消費税還付と納税の基本的な仕組みは、シンプルに表現すると上記のようになります。

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消費税の還付を具体例で検証

お店を例えにして考えてみましょう。仕入れ額が税込み110円、販売価格は税込み550円の商品があるとします。消費者が購入する際に支払う消費税50円から、仕入れの際に支払い済みの消費税10円を引き去ると、40円が残ります。この40円は、消費税として納税されることになります。後日お店を増築することにし、改修費用として建築業者に税込み550万円を支払うことになりました。お店は消費税として50万円を支払いますが、この50万円は先日商品が売れた際に消費者から預かっている消費税から差し引くことができます。消費者が支払った消費税から仕入れの際に支払い済みの消費税を引き、さらに50万円を引くと、次のようになります。

50円 - 10円 - 50万円 = -499,960円

約50万円もの消費税が還付されるということになります。

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不動産投資家が消費税還付を受けることは不可能?

不動産投資において、消費税還付を受けることはもはや不可能と考えられています。不動産投資家だけでなく、税理士などの税金のプロもそう考えているのです。不動産投資家は物件購入の際に消費税を支払いますが、投資家が受け取る家賃収入には消費税が含まれません。顧客から消費税を預かっていない以上、支払った消費税が還って来ることもないだろう、というのが広く見られる見解です。不動産投資における消費税還付は現在でも可能であり、合法的に行うことができます。ただ、消費税還付に対する風当たりが非常に強くなっていることは事実です。

平成22年3月までは、消費税還付はそれほど困難ではありませんでした平成22年4月1日の税制改正を皮切りに、消費税還付はほぼ不可能と思わせるほどの厳しい規制が布かれることになります。事実、平成25年には、数千万円の消費税還付を受けた事業者が不正還付の容疑で逮捕されています。ただでさえ消費税還付がやりづらくなったところに逮捕者まで出たことで、消費税還付を手掛ければ自分にも火の粉が降りかかりかねないと感じ、合法であることを知りながらも消費税還付申告には手を出さない税理士が増えている実態も見受けられます。

税制改正の度に、消費税還付が困難になっている

税制改正
ここで、平成22年度3月31日以前までの消費税還付、平成22年4月1日以降の消費税還付、平成28年4月1日の税制改正後の消費税還付についての概要を解説したいと思います。以下では前提として、不動産投資で住宅用の建物を初めて取得する個人の場合について解説します。

平成22年3月31日以前までの消費税還付の条件

1. 建物の購入・完成月の前月末までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出する。

2. 建物の購入・完成月に、消費税の非課税売上(家賃収入など)が発生しないように賃貸契約を調整しつつ、同月に自販機収入やコンサルタント収入など消費税の課税売上を発生させ、計上する。

3. 消費税の確定申告書(還付申告書)を提出し、遅滞なく「消費税簡易課税選択届出書」を提出する。または、2年間の課税期間が終了する前に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することで、調整計算の適用を免れて消費税還付が確定する。

調整計算については、続く平成28年の税制改正の部分で詳しく解説します。平成22年3月31日までは、ここまでの条件をすべて満たすことで問題なく消費税還付が可能でした。それほど難しくない条件であったため、多くの不動産投資家が自販機による課税売上を計上して消費税還付を受けていました。俗に言う「自販機スキーム」です。平成18年の政府税制調査会では、自販機による課税売上を計上して消費税還付を受ける行為は租税回避行為にあたると指摘され、同様の指摘はその後3年間続きましたが、3年の間には改正がなされず放置状態となっていました。

平成22年4月1日以降の消費税還付の条件

平成22年4月に、消費税還付に関する第一次改正とも言える大規模な税制改正が起こり、以下のように条件が厳しくなりました。この時以降、消費税還付申告業務を引き受けないことにする税理士が多くなります。

1. 不動産投資を希望する人はまず、「消費税課税事業者選択届出書」を提出する。

2. 投資用の建物の購入・新築は、届出書を提出した年の翌々年の1月1日以降に行う。

3. 建物の購入・完成月に消費税の非課税売上が発生しないよう賃貸契約を調整しつつ、同月に自販機収入やコンサルタント収入など消費税の課税売上を発生させ計上する。

4. 消費税の確定申告書(還付申告書)を提出し、遅滞なく「消費税簡易課税選択届出書」を提出する。または、2年間の課税期間が終了する前に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することで、調整計算の適用を免れて消費税還付が確定する。

不動産投資をしたいなら、物件の購入や新築は届出書を出してから最短でも1年、長ければ2年待たなければならない、というルールが追加されました。しかし不動産投資家にとって、優良物件との出会いは逃がしがたいチャンスであり、1年も2年も悠長に待っていることなどできないのが現実です。しかも不動産は一点もののため、優良物件は早いもの勝ちであっという間にライバルに取られてしまいます。不動産投資家にとって、この縛りは非常に厄介なものとなりました。

消費税還付を得意とする税理士の中には、この年数縛り問題を打開して合法的に消費税還付を実現すべく、工夫を凝らしていた人もいます。具体的に言うと、税理士自身が消費税還付の要件を備えた法人を複数設立しておき、消費税還付を受けられなくなった個人の不動産投資家に法人を譲渡し、法人名義の不動産購入や融資、登記や申告をさせることで消費税還付を実現させてきたのです。

平成22年の税制改正ではまだ、調整計算の適用を免れる術がありました。つまり、不動産投資スタートの1.2年前に届出書を出さなければならないという問題さえクリアしておけば、問題なく消費税還付を受けることができたのです。少数ながら消費税還付申告を引き受ける税理士もまだ残っており、「やろうと思えば消費税還付は可能である」という認識が広く見られていた時期とも言えます。

平成28年4月1日以降の消費税還付の条件

平成28年になって、消費税還付に対する規制をさらに厳しいものとする税制改正が行われ、消費税還付のための条件は以下のようになりました

1. 不動産投資をする場合は、物件の取得前に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する。

2. 建物の購入・完成月に消費税の非課税売上が発生しないよう賃貸契約を調整しつつ、同月に自販機収入やコンサルタント収入など消費税の課税売上を発生させ計上する。

3. 消費税の確定申告書(還付申告書)を提出する。

4. 消費税の還付申告をした年を含めて3年間、課税売上割合が一定値以下にならないように注意しつつ課税売上を計上するとともに、調整計算も適用されないようにする。

平成22年4月の改正と比較すると、届出書の提出期限についてはかなり緩和されたことが分かります。しかし代わりに、物件購入後3年以内の課税売上の推移には非常に気を遣わなければならず、ここで失敗すると消費税還付は不可能となってしまうことになりました。

平成28年の税制改正における際立った点と、調整計算について

平成28年の税制改正は、平成22年4月の税制改正における抜け道を利用してなお消費税還付を行っている事業者をなくすために施行された、とも考えられています。特に際立っている点は、「高額資産」という概念が生まれたことです。高額資産とは、ひとつの取引につき税抜1000万円以上を支払って取得する棚卸資産または調整対象固定資産のことです。

免税事業者を除く事業者が、簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に国内で高額資産の課税仕入れまたは高額資産の引き取りを行った場合には、以下の規定が当てはめられることになりました。

1. 当該高額資産の仕入れなどの日を含めた課税期間から、当該課税期間の初日以後3年を経過する日を含む課税期間までの各課税期間において、事業者免税点制度(消費税課税事業者選択不適用届出書の提出によって消費税の納税を免税とし、調整計算も不適用にしようとするもの)は適用できない。

2. 当該高額資産の仕入れなどの日を含めた課税期間から、当該課税期間の初日以後3年を経過する日を含む課税期間までの各課税期間において、簡易課税制度(事業者が支払った消費税額は一切考慮しないことによって調整計算を適用しないとするもの)は適用できない。

つまり、高額資産を取得した場合にはその後3年間、免税事業者になることも簡易課税制度の適用を受けることもできないように規制することで、消費税還付の抜け道を断とうということです。

調整計算について

所得税還付
これまで何度か出てきている「調整計算」という仕組みについても簡単に説明しましょう。調整計算は、消費税という税金が生まれた平成元年から施行された制度です。冒頭で述べた通り原則として消費税は、仕入れのために支払った消費税額を購入先へ支払った消費税額から控除することができるものです。しかし建物など使用期間が長期間に渡るものについては、取得時の用途や取得した日を含む課税期間における課税売上割合だけを考えて控除してしまうと、途中で用途を変更した場合や課税売上割合が大きく変動した場合、売上と仕入れの実態に大きなズレが生じてしまいます

冒頭で紹介した例を見れば、生じ得るズレの大きさがお分かりいただけると思います。このズレを調整するために、一定の要件に該当する場合は第3期目に仕入れ控除税額を調整するということが、調整計算と呼ばれる仕組みです。平成28年の税制改正以前まで、調整計算の適用を免れることが消費税還付において大切な条件だったのは、調整計算が行われた場合、初年度に消費税還付を受けていると3年目には還付額とほぼ同額が没収される可能性があったためです。しかし一定の届け出をしている限りは調整計算の適用外とされ、還付額の没収などということは通常起こりえないことでした。

平成28年の税制改正後は、ついにこの点も通用しなくなりました消費税課税事業者選択届出書を提出することで消費税還付を受けようとする人は、自動的に全員が調整計算の対象とされることになったためです。

調整計算ではまず、次の計算式で還付を受けた初年度の課税売上割合を計算します。

課税売上割合 = 課税売上 ÷ 総売上

次いで、還付を受けた年を含む3年間の通算課税売上割合を計算します。

通算課税売上割合 = 3年間の課税売上 ÷ 3年間の総売上

上記の2つの計算式で算出した数値を用いて、変動率と変動差を割り出します変動率が50%以上、かつ変動差が5%を超えてしまうと、調整計算における仕入れ控除税額の調整すなわち還付金の没収が行われてしまいます

まとめ

ここまでご紹介してきた税制改正の経緯からもお分かりの通り、今後不動産投資において消費税還付を受けるために最低限満たすべき条件は次の4点です。

1.消費税課税事業者になること

2.物件の購入・完成月に課税売上を計上すること

3.物件取得後3年間の課税売上割合および通産課税売上割合の変動率が、50%を超えないようにすること

4.物件取得後3年間の課税売上割合および通産課税売上割合の変動差が、5%を超えないようにすること

不動産投資家である一個人が上記の条件を完璧に満たすことは、不可能ではないかもしれません。しかし法律の抑制力を甘く見ることはできません。本職の税理士ですら、失敗を恐れて消費税還付から手を引いているのが現状なのです。不動産投資家が自分ひとりで挑むなら、ほんの些細な間違いによって消費税還付の権利が否定される可能性は高くなります。

これまでご紹介してきた税制改正の経緯からもお分かりいただける通り、国としては消費税還付の道を狭めたいというのが本音であり、消費税還付を求める人には申請の段階で、あの手この手で諦めさせようとする可能性が高いのが事実です。

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