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共有持分権(所有権)に基づく妨害排除請求とは?不当に占有・利用・執行された共有不動産の解決策

共有持分権(所有権)に基づく妨害排除請求とは?不当に占有・利用・執行された共有不動産の解決策

共有持分権(所有権)に基づく妨害排除請求とは、共有不動産について本来持っている使用や管理の権利を、他の共有者や第三者に妨げられている場合に、その状態を解消し元の状態に戻すよう求める法的な手段です。

共有不動産をめぐっては「自分は所有者なのに自由に使えない」「勝手に占有されたり、不正な登記をされたり、差し押さえを受けたりしている」といった悩みを抱える方も少なくありません。

具体的には、以下の表のような手段を用いて権利を取り戻すことになります。

共有持分権(所有権)に基づく妨害排除・執行阻止の手段
項目 概要
明渡請求 無権利で共有不動産を占有している第三者に対して、不動産の明渡し(退去・返還)を求める請求。
抹消登記請求 不正・無効な登記がなされている場合に、その登記の抹消を求め、正しい権利関係に戻すための請求。
第三者異議の訴え 他の共有者の債務などが原因で、自分の持分まで差し押さえられた場合に、その執行の取り消しを求める訴訟。

これらの請求は各共有者が単独で行うことができ、場合によっては自分の持分を超える範囲についても認められることがありますが、すべてのケースで請求が認められるわけではなく、法的に可能な対応と現実的な解決策を見極めることが重要です。

そのため、現在トラブルに直面している読者の方は、まず「登記事項証明書(登記簿)」を取得して現在の権利関係を正確に把握し、その上で共有持分問題に精通した弁護士などの専門家へ「自分のケースで妨害排除請求が認められる見込みがあるか」を速やかに相談してください。 法的措置には専門的な証拠収集が必要となるため、独断で動く前にプロの診断を受けることが、早期解決と自身の権利を守るための最も確実な第一歩となります。

本記事では、共有持分権に基づく妨害排除請求の基本的な考え方や具体的な手段、妨害排除請求を行う流れについて、解説します。

共有不動産の扱いに悩んでいる方や、今後の対応を検討している方は、判断の整理に役立つ情報として参考にしてみてください。

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共有持分権に基づく妨害排除請求とは?

共有持分権とは、共有名義の不動産について、各共有者が持分割合に応じて権利を持ち、共有不動産全体を使用・収益できる権利をいいます。共有者であっても第三者であっても、正当な理由なく共有不動産の利用を妨げる行為は認められません。

このような場合に検討されるのが、共有持分権に基づく妨害排除請求です。共有者が共有不動産を使用や管理する権利が妨げられているときに、その状態の是正や回復を求める法的手段を指します。例えば、第三者が無権利で共有不動産を占有している場合や、他の共有者が全員の同意を得ずに建物を解体・改変するなどが挙げられます。

妨害排除請求には、返還請求(明渡請求)、抹消(更正)登記請求、第三者異議訴訟があります。

妨害排除請求
種類 内容
返還請求(明渡請求) 無権利者が不動産を占有している場合に建物や土地の明け渡しを求める
抹消(更正)登記請求 実際の権利関係と異なる登記を正しい内容に戻すことを求める
第三者異議訴訟 共有者の債務を理由に不当に不動産を差し押さえられた場合に、執行の排除を求める

妨害排除請求は、一定の条件のもとで共有者の一人でも単独で行える点が特徴です。

返還請求(明渡請求):不法占拠者(第三者)に対して建物の明け渡しを求める請求

返還請求(明渡請求)とは、共有不動産が第三者によって正当な権限なく占拠されている場合に、その建物や土地の占有を排除するため、占拠者に対して明け渡しを求める法的手段です。例えば、賃貸借契約がないにもかかわらず他人が居住しているケースや、契約終了後も退去しない元借主などが該当します。

共有不動産の場合は、共有者全員の同意がなくても、共有者の一人が単独で返還請求を行える点が特徴です。

返還請求を行うにあたっては、占拠が「不法」であることを主張するだけではなく、手続き上の注意点にも配慮する必要があります。具体的には、誰が・どの範囲を・どのような根拠で占有しているのかを明確にし、登記簿や現地写真、やり取りの記録など、占有状況を裏付ける証拠を整理しておくことが重要です。

また、共有不動産の場合は、共有者による占有なのか、第三者による占有なのかで法的な評価や請求方法が異なります。第三者が無権限で占有している場合は、共有者の一人でも単独で明渡請求を行えるのが原則です。ただし、他の共有者が占有している場合には、その共有者も共有持分に基づく使用権を有しているため、直ちに「不法占拠」とは評価できず、明渡請求が認められないケースがあります。請求の前提関係を誤ると返還請求が認められないおそれがあるため、誰がどのような権限で不動産を使用・占有しているのかを正確に整理したうえで、適切な請求手段を選択することが重要です。

返還請求は形式的に行えばよいものではなく、事実関係の整理と法的構成を慎重に検討する必要があります。状況によっては訴訟に発展することも少なくありません。

そのため、共有持分が絡む不動産トラブルは、早い段階で弁護士などの専門家の助言を得ることが大切です。

共有者相手の「返還請求」は原則として認められない

共有者相手の「返還請求」は原則として認められません。共有不動産では、各共有者が持分割合に応じて「不動産全体を使用する権利」を有しているからです。

特定の共有者が建物や土地を事実上独占していたとしても、共有者である限り、原則として返還請求(明渡請求)によって退去を強制することはできません。

共有持分権に基づく返還請求が認められない場合、現実的な解決手段となるのが「金銭請求」です。具体的には、他の共有者が不動産を占有している期間について、本来得られるはずの利益として「家賃相当額(不当利得)」や、状況によっては「損害賠償」を請求できます。

ただし、過去に共有者間で「特定の共有者が単独で使用する」旨の合意がある場合には注意が必要です。口約束であっても合意が成立していれば、後から金銭請求を行うことは困難になるケースがあります。

無断で共有不動産を占有する共有者に対する金銭請求の法的根拠として、令和3年の民法改正が挙げられます。民法249条2項で以下のように明記されています。

共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う
引用元 民法249条2項

金額の算定方法は、「賃料相場」×「請求者の持分割合(共有持分割合)」を基準とするのが一般的です。

ただし、請求権には時効があり、「権利を行使できることを知ったときから5年」、または「権利を行使できるときから10年」です。民法第166条で以下のように明記されています。

債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき
権利を行使することができる時から十年間行使しないとき
引用元 民法166条

このように、共有不動産のトラブルは、時間が経過するほど状況が固定化され、権利主張が通りにくくなる点で不利になりやすくなります。

詳しくは、共有不動産の占有者に対する明渡請求は原則認められないことについて解説したこちらの記事もご覧ください。

抹消(更正)登記請求:不正な登記を抹消(是正)するための請求

抹消(更正)登記請求とは、共有不動産に関して行われた不正・誤りのある登記を正しい状態に戻すための法的手段です。登記は不動産の権利関係を公示する制度であり、内容に誤りがあると、売却や相続、担保設定などに大きな支障をきたします。例えば、売却時の支障として、登記名義や持分割合が実態と異なる場合、買主が安心して取引できず売買自体が成立しにくくなります。

登記の適正さを回復する請求は、共有持分トラブルにおいて重要な役割を果たすのです。

「抹消登記請求」とは、法的に無効な登記や、権限のない者によって行われた不正な登記を消すことを求める請求です。一方、「更正登記請求」は、登記自体は有効であるものの、内容に誤りがある場合に、正しい内容へ修正することを目的としています。両者は似ていますが、対象となる登記の性質が異なります。

以下が、抹消登記請求と更正登記請求の違いです。

抹消登記請求と更正登記請求の違い
種類 目的 具体例
抹消登記請求 無効・不正な登記を消す 無断で単独名義に変更された登記など
更正登記請求 誤った登記内容を正す 持分割合の記載ミスなど

例えば、共有者の一人が他の共有者に無断で不動産を単独名義で登記した場合や、実際とは異なる持分割合を偽って登記した場合には、抹消登記請求または更正登記請求の対象となります。

抹消(更正)登記請求は共有者の一人からでも単独で行うことが可能であり、原則として他の共有者全員の同意は不要です。共有不動産に不正な登記が存在する場合、早期に是正を求めることで、不動産を売却できなくなるなどの将来的なトラブルを防ぐことにつながります。

第三者異議訴訟:違法な差し押さえに対して執行の解消を求める請求

第三者異議訴訟とは、強制執行の対象とされた財産について、所有権や持分権などの正当な権利を有する第三者が、その執行の排除を求めるための訴訟です。民事執行法38条に基づく制度で、差し押さえ自体が誤っている、または自分の権利を侵害している場合に用いられます。

強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不許を求めるために、第三者異議の訴えを提起することができる
引用元 民事執行法38条

共有不動産では、特にこの第三者異議訴訟が重要な意味を持ちます。例えば、共有者Aが個人的な借金を返済できず、Aの債権者が強制執行を申し立てた結果、共有不動産の「全部」が差し押さえられてしまったケースが考えられます。Aが所有しているのはあくまで共有持分にすぎず、他の共有者Bの持分まで差し押さえることはできません。

このような場合、共有者Bは「自分の持分は執行の対象ではない」として、第三者異議訴訟を提起し、差し押さえの排除を求めることができます。

第三者異議訴訟は、執行手続きが現に進行していることが前提となります。すでに競売が終了してしまった後では原則として利用できません。差し押さえを知った時点で、できるだけ早く対応する必要があります。

第三者異議訴訟は、共有者自身に債務がなくても、他の共有者の事情によって不動産全体が巻き込まれるリスクを防ぐための手段です。差し押さえが「本当に自分の持分まで及んでいるのか」を確認し、必要に応じて法的手続きを検討することが重要です。

共有持分権に基づく妨害排除請求を行えるケース

共有持分権に基づく妨害排除請求は、共有不動産に関する権利が不当に侵害されている場合に認められる法的手段です。

以下の内容が、共有持分権に基づく妨害排除請求を行える代表的なケースとなります。

  • 無断で共有不動産全体を売却・登記された場合
  • 無断で建物の解体や大規模な変更が行われた場合
  • 無断で共有名義の土地に建物が建築されようとしている場合
  • 共有者が実力行使で共有不動産を占有している場合
  • 第三者が共有不動産を占有している場合
  • ほかの共有者が使用できないように妨害した場合

ここでは、それぞれの具体的な考え方や対応方法を解説します。

無断で共有不動産全体を売却・登記された場合

共有不動産の全体を売却する行為は、共有物の「変更行為」にあたり、共有者全員の同意が必要です。民法第251条で以下のように明記されています。

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
引用元 民法251条

共有者の一人が他の共有者の同意を得ずに不動産全体を売却した場合、その売却行為自体は無効となります。

また、無断売却を前提として行われた単独名義への所有権移転登記や、実態と異なる持分割合の登記については、抹消登記請求や更正登記請求によって是正を求めることが可能です。

これらの請求は、共有物の権利関係を保全する「保存行為」にあたるため、共有者の一人でも請求自体は単独で行えます。

無断で建物の解体や大規模な変更が行われた場合

建物の解体や大規模な改築、増築といった行為も、共有物の性質や形状を大きく変えるため、「変更行為」に該当します。このような行為を行うには、民法251条により共有者全員の同意が必要です。

もし共有者の一人が無断で解体工事や大規模な変更を進めている場合、妨害排除請求として工事の中止(差止め)や原状回復を求められます。

すでに工事が完了している場合には、原状回復が現実的でないこともあるため、損害賠償請求に切り替えることも検討します。

無断で共有名義の土地に建物が建築されようとしている場合

共有名義の土地に建物を新築する行為は、共有物の利用形態を根本的に変えるため、変更行為に該当します。そのため、共有者全員の同意がなければ建築することはできません。

同意のないまま建築工事が進められている場合には、妨害排除請求として建築工事の差止めを求めることができます。すでに一部工事が進んでいる場合であっても、状況によっては原状回復を請求できる可能性があります。

共有者が実力行使で共有不動産を占有している場合

共有者は、原則として共有不動産全体を使用する権利を持つため、単に一人が住んでいるというだけでは返還請求(明渡請求)は認められません。ただし、鍵の交換やバリケードの設置など、実力行使によって他の共有者の使用を完全に排除している場合は例外です。

このような場合には、妨害排除請求として、妨害物の撤去や占有状態の解消(明け渡し)を求められる可能性があります。

第三者が共有不動産を占有している場合

無権利の第三者が共有不動産を不法に占拠している場合は、共有者の一人でも単独で明渡請求を行うことができます。これは、共有物全体の権利を守るための保存行為として認められています。

ただし、第三者が共有者の一人から正当な使用承諾を受けて占有している場合には、原則として明渡請求は認められません。その場合は、共有者間での調整や金銭請求など、別の解決手段を検討する必要があります。

ほかの共有者が使用できないように妨害した場合

共有者には、持分に応じて共有不動産全体を使用する権利があります。そのため、他の共有者の使用を不当に妨げる行為は違法です。

具体的には、鍵の交換、入口の封鎖、共有スペースへの私物放置などが妨害行為にあたります。

このようなケースでは、妨害排除請求として、妨害物の撤去や妨害行為の差止めを求めることが可能です。

共有者が行方不明・連絡不能な場合の対応(令和5年改正民法)

共有者の一人が行方不明や連絡が取れない状態が長期間続いている場合、従来は共有物の売却や大規模な改築などについて全員の同意を得られず、事実上身動きが取れないケースがありました。

令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)により、共有者の中に所在が不明な人がいる場合には、裁判所の決定を得ることで、所在不明者以外の共有者全員の同意があれば変更行為を行うことが可能となりました。民法第251条2項で以下のように明記されています。

共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる
引用元 民法251条

これにより、行方不明者が一人いるだけで不動産の売却や建替えができないといった事態を回避できるようになりました。

同様に、管理行為についても特例があります。所在不明共有者がいる場合、裁判所の決定を得ることで、所在が判明している共有者の持分の過半数により管理行為を行える制度が設けられました。民法252条2項で以下のように明記されています。

裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。

一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
引用元 民法252条2項

例えば、老朽化した建物の賃貸借契約を解除したい場合や、適切な管理のために契約内容を見直したい場合でも、所在不明者の同意が得られないことを理由に手続きが止まる事態を防げます。

これらの制度は、自動的に適用されるものではなく、裁判所への申立てと決定が必要です。共有者が本当に「所在不明」であることを裁判所に認めてもらうためには、その事実を疎明(そめい)する必要があります。疎明とは、「おそらくそのとおりである」と裁判所が判断できるために、資料などで事情を示すことです。例えば、住民票の除票や、郵便物が返送された事実、長期間連絡が取れていない経緯などを提出して説明します。

さらに、裁判所がすぐに「売却や改築を認める決定」を出すのではなく、公告手続という手続きも行われます。官報などに掲載して「この手続きを進めます。心当たりのある方は申し出てください」と広く知らせるものです。所在不明の共有者の権利を守るための確認期間となります。

一定の資料準備や公告期間が必要となるため、手続きには半年から1年程度の時間と手間がかかります。そのため、早い段階で専門家に相談し、適切な手続きを検討することが重要です。

共有持分権に基づく妨害排除請求が認められた判例

共有持分権に基づく妨害排除請求が実際に裁判所で認められたケースを事例ごとに紹介します。各事例では「原因」「請求内容」「裁判所の判断」を整理し、どのような状況で妨害排除請求が認められたのかを具体的に解説します。

  • 実力行使で共有不動産を占有した事例
  • ほかの共有者が使用できないように妨害した事例
  • 共有者が無断で農地転用を行い宅地造成工事を実施した事例

実力行使で共有不動産を占有した事例

実力行使で共有不動産を占有した事例
項目 概要
原因 共有不動産について、ある共有者が他の共有者の同意を得ず、実力行使で不動産を占有
請求内容 妨害排除請求(建物の明渡請求)
裁判所の判断 建物の明渡請求を認める

共有建物をめぐり、一部の共有者が実力行使によって他の共有者の使用を排除した行為が、共有持分権の侵害にあたるかが争われた事例です。

問題となった建物は、長年にわたり特定の共有者が平穏に居住し、使用していた状態です。しかし、別の共有者が当該共有者の同意を得ることなく建物内に勝手に立ち入り、私物を持ち込んだうえ、仏壇を取り壊そうとしました。さらに、神棚や遺影を撤去し、生活用品や着物を屋外に運び出し、物置の鍵を交換するなど事実上その共有者が建物を使用できない状態にしました。

裁判所は本件行為について、単なる共有者間の使用の問題にとどまらず、「控訴人を実力で排除するに等しい行為」であると指摘しました。たとえ行為を行った側が多数の持分を有する共有者であったとしても、このような実力行使は、共有物の使用に関する権利の行使としての範囲を逸脱し、権利濫用と評価されてもやむを得ないと判断されています。

裁判所は、少数持分権者である控訴人に対しても、建物の明渡請求を認めるのが相当であるとして、妨害排除請求を認容しました。

この判例は、共有者であっても、実力行使によって他の共有者の使用を排除することは許されないと判断しています。共有持分にかかわらず、妨害排除請求が認められる場合があることを明確に示した重要な判断です。

ほかの共有者が使用できないように妨害した事例

ほかの共有者が使用できないように妨害した事例
項目 概要
原因 共有通路の使用方法をめぐり、一方の共有者の行為が他方の共有者の持分権を侵害
請求内容 妨害排除請求(妨害行為の禁止)
裁判所の判断 被告に対して通行妨害行為の禁止に加え、越境している竹木の枝を剪除する義務があると結論づけられた

共有通路の使用方法をめぐり、一方の共有者の行為が他方の共有者の持分権を侵害するかどうかが争われた事例です。

問題となったのは、持分割合が各2分の1とされている共有通路です。被告である共有者の一人は、この通路上に自動車、スクーター、自転車、植木鉢などを継続的に置き、原告である他の共有者の通行を妨げていました。これにより、共有通路として本来想定されている円滑な通行が困難な状態です。

原告は、被告の行為が共有物の適正な使用を妨害するものであるとして、妨害行為の禁止を求める妨害排除請求を提起しました。裁判所は、被告が過去に原告の通行を妨害した事実があり、今後も同様の妨害が繰り返されるおそれがあると認定しました。そのうえで、被告に対し、共有通路の通行を妨害する行為を禁止することが相当であると判断されています。

さらに、本件では、被告が所有する竹木の枝がかなりの規模で通路側へ張り出し、敷地を越境していた点も問題となりました。これにより、通路を利用する賃借人や駐車場利用者の自動車の出入りが円滑に行えない状態となっていました。裁判所は、この状態を長期間放置していたことについて、被告の持分に応じた使用の範囲を超え、原告の共有持分権を侵害する行為であると判断しています。

その結果、裁判所は、被告に対して通行妨害行為の禁止に加え、越境している竹木の枝を剪除する義務があると結論づけました。

この判例は、共有者であっても、共有物を自己の都合で使用し、他の共有者の利用を妨げることは許されないとしています。妨害行為の差止めや原状回復を求める妨害排除請求が認められることを明確に示しています。

共有者が無断で農地転用を行い宅地造成工事を実施した事例

共有者が無断で農地転用を行い宅地造成工事を実施した事例
項目 概要
原因 共有土地の一部を使用していた共有者が、他の共有者の同意を得ることなく土地の性質を大きく変更した
請求内容 妨害排除請求(工事の禁止と原状回復)
裁判所の判断 妨害排除請求や原状回復請求が認められる

共有土地の一部を使用していた共有者が、他の共有者の同意を得ることなく土地の性質を大きく変更した場合に、妨害排除請求や原状回復請求が認められるかが争われた事例です。

共有者の一部が、他の共有者の同意を得ないまま、畑として利用されていた土地に宅地造成工事を行い、土地を非農地化しました。この行為に対し、他の共有者は、自らの共有持分権が侵害されたとして、工事の禁止および原状回復を求める妨害排除請求を提起。

最高裁は、共有者の一部が無断で共有物に物理的な損傷や改変を加える行為は、共有物の変更行為にあたると判断しました。他の共有者は、自己の共有持分権に基づき、当該行為の全面的な禁止を求められるとされた判例です。

最高裁は、共有物を原状に復することが可能である限り、原状回復そのものを請求することも認められると判示しました。原状回復が不可能であるなどの特段の事情がない限り、元の状態に戻すことを求めるのが相当であるとしています。

その理由として裁判所は、共有者は民法249条に基づき、共有物全体について持分に応じた使用・収益をする権利を有しているとしています。その権利が侵害された場合には、侵害者が他の共有者であっても、単独で妨害排除請求を行えると説明しました。また、共有物に変更を加える行為は他の共有者の持分権を直接侵害するものであり、民法251条により、同意なしに行うことは許されないとしています。

この判例は、共有者による無断の解体・造成・用途変更といった行為に対して、妨害排除請求や原状回復請求が認められることを示した重要な最高裁判断です。

共有持分権に基づく妨害排除請求を行う流れ

共有持分権に基づく妨害排除請求は、話し合い → 専門家への相談 → 法的手続きという段階を踏んで進めていきます。ここでは、一般的な流れを整理したうえで、各段階のポイントを解説します。

妨害排除請求の基本的な流れ

  • 共有者との話し合いで解決を目指す
  • 証拠収集・弁護士への相談
  • 内容証明郵便による相手方への通知
  • 交渉がまとまらなければ調停・訴訟を提起
  • 判決または和解によって解決

まずは共有者との話し合いで解決を目指す

共有不動産のトラブルでは、まずは共有者との話し合いで解決を目指します。相手方が第三者ではなく「他の共有者」であるケースも多く見られます。訴訟は、時間や費用だけではなく精神的な負担も大きいため、話し合いで解決できる余地がある場合は、まず協議を試みることが重要です。

共有者同士であれば、今後も何らかの関係が続く可能性があります。最初から強硬な法的手段を取るよりも、冷静に状況を整理し、互いの主張を確認することで、関係悪化を最小限に抑えられる場合もあります。

証拠収集・弁護士への相談

話し合いが難航する、あるいは相手が協議に応じない場合には、無理に交渉を続けず、共有不動産に詳しい弁護士へ相談します。

弁護士に相談することで、下記の点について具体的なアドバイスを受けることが可能です。

  • 可能な請求(返還請求・抹消登記請求・妨害排除など)
  • 必要な証拠
  • 今後の手続きの見通し

弁護士に相談することで、相手方との交渉を代理してもらえるため、精神的な負担も軽減されます。
一般的な弁護士費用の目安は以下のとおりです。

一般的な弁護士費用の目安
弁護士費用 金額
相談料 5千円〜1万円程度
着手金 30万円〜50万円程度(結果にかかわらず支払う必要あり)
成功報酬 60万円〜100万円程度

なお、事務所によっては無料法律相談を実施している場合もあります。

内容証明郵便による相手方への通知

本格的な訴訟に進む前の段階として、内容証明郵便で正式に意思表示を行う方法があります。内容証明郵便は、文書の内容・発送日・受取日を郵便局が証明する制度で、「いつ、どのような請求をしたか」を明確に残せます。

これにより、相手方に対して法的措置を視野に入れていることを伝え、話し合いによる解決を促す効果が期待できるのです。弁護士に依頼すれば、文面の作成から発送までを任せることも可能になります。

内容証明郵便にかかる費用は、下記の通りです。

基本料金+一般書留の加算料金+内容証明の加算料金

内容証明郵便の費用例(定型郵便)
内容 金額
基本料金 110円
一般書留加算 480円
内容証明加算 480円(2枚目以降290円)
配達証明(任意) 350円
合計 1,420円

交渉がまとまらなければ調停・訴訟を提起する

話し合いや内容証明郵便でも解決しない場合は、調停または訴訟を検討します。調停と訴訟の違いは以下のとおりです。

調停と訴訟の違い
項目 調停 訴訟
手続きの違い 調停委員が当事者の間に入り、話し合いにより紛争の解決を図る手続き 双方の言い分や証拠を踏まえて、裁判官が判決を下し、紛争の解決を図る手続き
解決方法 当事者双方の合意によって成立 判決または裁判上の和解によって解決
強制力 合意が成立すれば調停調書に強制力あり 判決には強制力がある
費用 調停への申立手数料は、比較的安いが弁護士費用が高額になる場合がある 裁判所への申立手数料は請求金額に応じて変わる。弁護士費用が高額になりやすい
期間 数か月程度かかる場合がある 1年以上かかる場合がある
向いているケース/th> 話し合いの余地がある場合 相手が話し合いに応じない、話し合いがまとまらない場合
注意点 合意できなければ解決しない 時間・費用・精神的負担が大きい

調停は柔軟な解決が可能ですが、合意が成立しなければ解決に至りません。一方、訴訟は時間がかかるものの、判決には強制力があるという特徴があります。

調停と訴訟どちらを選ぶべきかは、弁護士と相談しながら判断することが重要です。

判決または和解によって解決する

調停や訴訟の結果、和解が成立すれば、その合意内容に従って解決となります。和解は、双方が納得した条件で解決できるため、柔軟な取り決めが可能です。

一方、判決が出た場合には法的な強制力が生じ、妨害排除請求が認められれば、相手方は判決内容に従う義務を負います。それでも従わない場合には、強制執行の手続きを取ることも可能です。

共有不動産のトラブルは長期化しやすいため、状況に応じて適切な段階で弁護士などの専門家の力を借りることが、納得のいく解決への近道です。

共有持分権に基づく妨害排除請求が認められない場合の選択肢

共有持分権に基づく妨害排除請求は有効な手段ですが、すべてのケースで認められるとは限りません。
その場合でも、共有状態を放置せず、次のような選択肢を検討することで、将来的なトラブルや精神的負担を軽減できます。

  • 共有者に自分の持分を買い取ってもらう
  • 自分の持分のみを不動産会社に売却する
  • 共有物分割請求を行い、共有関係そのものを解消する

それぞれの方法にはメリット・注意点があるため、状況に応じた判断が重要です。

共有者に自分の持分を買い取ってもらう

妨害排除請求が難しい場合、現に不動産を使用・占有している共有者に対し、自分の持分を買い取ってもらう交渉を行う方法があります。

この方法では、自分は共有関係から完全に離れることができ、相手方は持分を増やすことになります。共有持分が2分の1ずつである場合には、相手方が単独所有者となり、管理や利用の自由度が大きく高まるのです。一方、3分の1ずつなど複数の共有者がいる場合でも、持分割合を増やすことで発言力や意思決定への影響力が高まり、将来的な共有関係の整理を進めやすくなるというメリットがあります。

このように、持分の割合によって効果の現れ方は異なります。共有状態の整理や解消に向けた一歩となる点で、双方に一定のメリットが生じるケースは少なくありません。持分を売却する側にとっては、共有不動産に関わり続ける精神的・時間的な負担から解放されることが大きな利点です。

共有状態のままでは、利用や処分のたびに他の共有者との協議が必要となり、トラブルが長期化しやすくなります。持分を買い取ってもらえば、こうした調整や紛争のリスクを避けつつ、金銭という明確な形で資産価値を確定できます。

一方、買い取る側(現に使用・占有している共有者)にとって、持分取得には現実的な意義があるのです。持分割合が増えることで、不動産の管理や利用に関する意思決定において主導的な立場を確保しやすくなり、将来的な共有関係の整理や最終的な解消に向けた選択肢も広がります。

また、共有者間の利害対立が解消されることで、相続や資産承継の場面においても、権利関係の明確化につながります。

このように、共有者同士での持分買取は、紛争の解消と不動産の価値向上を同時に実現できる現実的な選択肢です。妨害排除請求が難しい場合には、検討する価値の高い解決方法です。

持分の買取価格については、不動産鑑定士による評価や周辺の市場相場を参考にしながら、客観的な根拠をもって交渉する必要があります。

自分の持分のみを不動産会社に売却する

共有不動産であっても、自分の共有持分だけであれば、ほかの共有者の同意を得ることなく売却することが可能です。民法第206条で以下のように明記されています。

所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
引用元 民法206条

不動産会社には「仲介」と「買取」の2つの方法があります。共有持分のみの売却は、一般の個人買主が利用しづらいため、仲介では買い手が見つかりにくい傾向があります。仲介は、不動産会社が売主と買主の間に入り、第三者の買主を探して売買を成立させる方法です。市場価格に近い金額で売れる可能性がある一方、買い手が見つかるまで時間がかかることがあります。

買取は、不動産会社自身が買主となり、直接不動産を買い取る方法です。価格は仲介より低くなる傾向がありますが、買主探しが不要で、仲介よりも短期間で売却できる点が特徴です。

共有持分のみの売却は、一般の個人買主には利用しづらくなります。理由として、購入しても不動産を自由に使えない点にあります。共有持分を取得しても、建物への居住や土地の利用、売却などには他の共有者の同意が必要となり、単独での判断ができません。また、将来的に共有者との関係が悪化した場合、トラブルに発展するリスクもあるのです。

そのため、共有持分の取り扱い実績が豊富な買取業者に直接売却する方が、短期間での解決につながる場合があります。買取業者に直接売却する方法は、長期化する共有トラブルから早期に離脱できる点が大きなメリットです。

詳しくは、共有持分を専門の買取業者へ売却するメリットについて解説したこちらの記事もご覧ください。

共有物分割請求を行う

共有物分割請求とは、ほかの共有者に対して、共有状態の解消を法的に求める手続きです。共有者であれば、いつでも請求でき、相手方の同意は必要ありません。

分割方法には、次の3つがあります。

共有物分割方法
分割方法 内容
現物分割 土地などを物理的に分ける方法
代償分割 一方が不動産を取得し、他方に代償金を支払う方法
換価分割 不動産を売却し、売却代金を分配する方法

現物分割は、土地を物理的に分けてもそれぞれが独立した利用価値を持つ場合に選択されます。広さに余裕のある土地や、分筆しても建築や利用に支障が出ないケースでは、売却せずに各共有者が直接不動産を取得できる方法として適しています。

代償分割は、共有者の一人が不動産を単独で利用・居住している場合や、物理的に分けることが難しい建物がある場合に選ばれることが多い方法です。不動産を取得する共有者が、他の共有者に対して金銭(代償金)を支払うことで、共有状態を解消します。

換価分割は、共有者間で利用方針がまとまらない場合や、誰も単独取得を希望しない場合に選択されます。不動産を売却して現金化し、その売却代金を持分割合に応じて分配するため、公平性が高い方法です。

どの方法が適切かは、物件の性質や利用状況、共有者間の関係性などを踏まえ、最終的には裁判所が判断します。

共有物分割請求の仕組みや流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。

まとめ

共有不動産における妨害行為は、放置すればするほど解決が難しくなります。共有持分権に基づく妨害排除請求は有効な手段ですが、すべてのケースで認められるわけではありません。そのため、請求が難しい場合でも、別の選択肢を知っておくことが重要です。

具体的には、共有者に自分の持分を買い取ってもらう方法や、自分の持分のみを不動産会社に売却する方法、さらには共有物分割請求によって共有関係そのものを解消する方法があります。いずれも「共有状態を続けない」という点では共通しており、将来的なトラブルや精神的負担を軽減する現実的な解決策です。

どの方法が適しているかは、不動産の状況や共有者との関係性、費用や時間の許容度によって異なります。共有関係の解消を望む場合は、共有持分専門の買取業者に相談する選択肢もあります。 共有不動産の問題は一人で抱え込まず、選択肢を整理することから始めることが大切です。

共有持分に関するコラムはこちら

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    更新日 : 2025年11月07日
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