任意売却とリースバックで住み続けられる!併用時のメリット・デメリットを解説

任意売却 リースバック

不動産の任意売却では、リースバックを併用することも可能です。併用すれば物件を残せるため、売却後も自宅に住み続けられます。

任意売却とリースバックを併用するには、これらに対応したリースバック会社に売却を依頼する必要があります。

任意売却時にリースバックを併用するメリットやデメリットに加えて、手続きの流れも解説していくため、併用を検討している場合は参考にしてみてください。

なおリースバックを利用して物件に住む場合、住宅ローンの残債返済に合わせて賃料の支払いが必要です。任意売却とリースバックを併用する場合は、売却後に支払いが必要な費用についても把握しておくようにしましょう。

任意売却でリースバックが併用できる

リースバックは住んでいる住宅を売却したうえで、賃貸物件として借りなおして、そのままその物件に住み続けられる売却方法です。

基本的にアンダーローン(※)であるときにリースバックは利用されますが、任意売却と併用することも可能です。任意売却とリースバックを併用する場合、売却する物件の買主と貸主はリースバック会社となるのが一般的です。

なお、任意売却により住宅ローンの借入額をすべて返済できない場合、売却後は賃料とともにローンの残債を支払わなければなりません。

任意売却とリースバックを併用する場合、まずは任意売却によって住宅ローンの残債を完済できるのかが大切です。完済できない場合は、売却後に残債と賃料を支払えるほどの経済的な余裕があるのかを把握しておくことが重要です。

※アンダーローンとは、ローンの残債が不動産売却による金額よりも低い状態のことです。逆の状態を「オーバーローン」といいます。

任意売却とリースバックを併用するメリット

任意売却とリースバックを併用することには、下記のようなメリットがあります。

■任意売却とリースバックを併用するメリット

  • 売却しても自宅に住み続けることができ、住宅ローンの返済問題も解消できる
  • 近隣住民などにバレずに自宅を売れる
  • 将来的に物件を買い戻すことも可能

リースバックで不動産を売却すれば、賃料を払うことで現在住んでいる自宅に今後も住み続けられます。また物件の売却額を住宅ローン残債の返済に充てられる任意売却を利用するため、住宅ローンの返済問題も解消できるメリットがあります。

さらに、売却後の転居や物件の取り壊しなどの必要性がありません。不動産売却に関する周囲への秘匿性の高さや将来的に物件を買い戻せることも、任意売却とリースバックを併用するメリットの一つです。

「不動産を売却したくても引っ越しは難しい」「住宅ローンの返済が苦しい」「家を売ったことが周囲にバレたくない」といった場合には、任意売却とリースバックの併用を検討してみてもよいでしょう。

任意売却とリースバックを併用するデメリット

任意売却とリースバックの併用には下記のようなデメリットもあります。

■任意売却とリースバックを併用するデメリット

  • 住宅ローン残債と賃料を合わせて支払うため、経済的負担が大きくなる(ローンの残債がある場合のみ)
  • リースバックでの売却価格が仲介による売却よりも安くなる可能性がある
  • 債権者やリースバック会社が任意売却を認めるとは限らない
  • リースバックを取り扱う会社を見つけることが難しい

物件の売却価格が住宅ローンの残債よりも多い場合、任意売却によってローンの完済が可能です。しかし残債のほうが多い場合は、任意売却後も住宅ローンの返済が必要です。

リースバックを利用すると賃料の支払いが必要になるため、任意売却と併用すれば残債の返済と賃料を合わせて支払わなければなりません。経済的な負担が大きくなることも考えられるため、この点は任意売却とリースバックを併用するデメリットといえます。

またリースバックによる売却価格は、仲介による売却よりも安くなる傾向があります。仲介による売却価格を想定して売却を進めると、実際の売却価格が予想よりも低くなることも少なくありません。

場合によっては、売却価格が住宅ローンの残債よりも低くなる可能性もあるため注意が必要です。そもそも任意売却は住宅ローンの残債返済が目的の一つでもあるため、売却価格が安すぎると債権者や依頼した業者から任意売却が認められない可能性もあります。

任意売却とリースバックを併用する場合、まずは「売却によって残債を完済できるのか」「完済できない場合は売却後も支払いが経済的に可能なのか」といった点を考えたうえで、依頼する会社を探してみるとよいでしょう。

任意売却時にリースバックを併用する主なケース

任意売却は、住宅ローンの残債の返済に物件売却による金額を充てられる方法です。そして、リースバックは現在住んでいる自宅を売却しても、その物件に住み続けられる方法です。

つまり、現在住んでいる自宅を残したうえで住宅ローンの返済問題を解消したい場合に、任意売却によるリースバックが選ばれることが多いです。具体的には、下記のような状況にある場合に選ばれることが考えられます。

  • 離婚後でも環境変えずに子どもと住み続けるために家を残したい
  • 親の介護が必要で仕事ができず住宅ローンの返済が厳しくなった
  • 子どもの進学で教育ローンを利用したために、住宅ローンを返済することが厳しくなった
  • 年金だけでは住宅ローンの返済が厳しいが、自宅から引っ越したくない

上記に該当しない場合でも、任意売却時にリースバックを併用するのが向いているケースもあることでしょう。

一般社団法人の「全日本任意売却支援協会」では、任意売却とリースバックに関する無料相談が可能です。

任意売却とリースバックを併用するべきかを悩んでいる場合、「任意売却とリースバックで住み続ける」のページを参考に相談することを検討してみるのもよいでしょう。

任意売却時にリースバックを併用する流れ

任意売却時にリースバックを併用する場合、物件の買主はリースバック会社となるのが一般的です。通常の任意売却であれば、不動産会社による販売活動のうえで買主を募れる一方、リースバックを併用する場合は買主が限定されたうえで販売活動は行なわれません。

また、任意売却のみであれば契約は不動産の売買のみですが、リースバックを併用する場合は不動産の売買だけでなく物件の賃貸借の契約も必要です。

そのためリースバックを併用して不動産を売却する手順は、通常の任意売却と異なります。任意売却時にリースバックを併用する流れは、下記のとおりです。

  1. 債権者に任意売却の合意を得る
  2. 任意売却可能なリースバック会社を探す
  3. リースバック会社と売買契約・賃貸借契約を同時に進める
  4. 決済し売却金が住宅ローン残債へ充当される
  5. 賃料支払いと残債返済が開始する

任意売却時にリースバックを併用するには、どちらにも対応している業者を見つけるのが前提です。業者によって不動産の売却価格は異なるため、任意売却が可能であり高値で売却できるリースバック会社を見つけるようにしてみてください。

債権者に任意売却の合意を得る

住宅ローンの残債がある場合、基本的にその不動産には抵当権がついています。抵当権とは、住宅ローンを利用して購入する不動産を金融機関が担保として設定できる権利のことです。

抵当権がついている不動産を任意売却するには、この抵当権を抹消しなければなりません。抵当権を抹消する場合は、債権者である金融機関から同意を得る必要があります。

つまり、住宅ローンの残債がある不動産を任意売却するには、債権者から同意を得たうえで、抵当権を抹消しなければなりません。

通常の不動産売却と異なり、任意売却では債権者である金融機関、債務者である売主、不動産の買主の3者が関わります。そしてこの3者間の交渉は、不動産会社が仲介を務めるのが一般的です。

そのため、任意売却の合意を得るための交渉は不動産会社が行なってもらえます。残債の返済が可能な売却金額を提示して、債権者からの同意を得られれば、任意売却の手続きを進められる仕組みです。

任意売却可能なリースバック会社を探す

リースバックを併用するには、任意売却にも対応しているリースバック会社を探す必要もあります。

ただし、任意売却とリースバックに対応している会社に依頼すれば、不動産を売却できるわけではありません。どちらにも対応している会社であり、債権者が認めた売却価格を提示できる会社である必要があります。

任意売却をするには住宅ローンの残債返済のために、交渉の際に債権者が認めた金額よりも高い価格で売却をしなければなりません。たとえば残債が1,000万円であれば、1,000万円よりも高い価格で任意売却する必要があります。

債権者が認めた売却価格よりも低い金額の場合、債権者から同意が得られずに任意売却ができません。そのため、少なくとも住宅ローンの残債よりも高い金額を売却金額として提示してもらえるリースバック会社を選ぶようにしてみてください。

なおリースバック会社が行なっている査定をしてもらえば、リースバックによる売却金額の目安を把握できます。

複数の会社に依頼をすることで、最も査定額が高いリースバック会社を探せるため、まずは一括査定をしてみるとよいでしょう。

リースバック会社と売買契約・賃貸借契約を同時に進める

リースバックで不動産を売却する場合、物件の売買とともに賃貸借の契約を同時に行なう必要があります。この際には、下記の点が確認されます。

  • 任意売却により住宅ローンの残債を完済できるのか
  • リースバックによる賃料を売却後に支払っていけるのか
  • (完済できない場合)住宅ローンの残債と賃料を合わせて支払えるのか

これらの点は、物件の売主とリースバック会社だけでなく、任意売却に同意する債権者も含めて確認が必要です。リースバック会社と債権者から合意を得られれば、契約が締結する流れとなります。

決済し売却金が住宅ローン残債へ充当される

契約が締結した後は不動産の売却が行なわれ、売却金額が住宅ローンの残債に充てられます。売却金額が残債よりも多ければ完済となりますが、少ない場合は今後も住宅ローンの返済が必要です。

なお任意売却による売却金額は、住宅ローンの残債だけでなく、不動産会社への仲介手数料や滞納している税金といった売却にかかった諸経費の支払いにも充てられます。

場合によってはこれらの支払いで、住宅ローンの残債が完済できないことも考えられるため、物件売却にどれだけの費用がかかるのかを依頼した業者に聞いておくとよいでしょう。

賃料支払いと残債返済が開始する

任意売却が完了した後は、リースバックによる賃料の支払いが必要です。賃料は賃貸借の契約時に決定され、売却金額や依頼する業者などによって異なります。

あくまで目安ですが、下記の計算式を用いてリースバックの賃料が算出されるのが一般的です。

  • 賃料(月額)=不動産の売却金額×期待利回り(※)÷12か月

たとえば不動産の売却金額が1,000万円で、期待利回りが6.0%の場合、計算式は「1,000万円×6.0%÷12か月」となり、ひと月の賃料は5万円となります。

なお、任意売却後も住宅ローンの残債がある場合、賃料とともに残債の返済が必要です。ひと月に返済する金額は、債権者との交渉時に決定されるのが一般的です。

任意売却後も住宅ローンの返済が必要な場合は、賃料とともにひと月の返済額を把握しておくようにしましょう。

※リースバックにおける利回りとは、不動産の購入資金に対する収益の割合のことです。基本的には不動産の買主が設定します。

任意売却とリースバックの違い

どちらも不動産を売却する方法ではありますが、任意売却とリースバックの目的は異なります。違う目的をもち、異なる状況で選択される方法であるため、同列に扱えるものではありません。

前提として「任意売却の代わりにリースバックを利用する」ではなく、「任意売却後の選択肢の一つとしてリースバックがある」のように考えるようにしてみてください。

■任意売却とリースバックの比較表

任意売却 リースバック
主な目的 住宅ローンの滞納による競売回避 ・資金調達
・自宅での生活継続のうえでの物件売却
実行のタイミング 住宅ローンの返済が困難になり支払いが滞納しているとき 売買契約時に結ばれる賃貸契約
売却後の居住の可不可 不可(転居が必要) 可能
物件の所有権の移転 必要 必要
売却価格の目安 市場価格の約80〜約90%程度 市場価格の約60~約80%程度
主な物件の買主 一般客や不動産会社 リースバック会社
売却後に必要な支払い 住宅ローンの残債(完済できない場合) 物件の賃料
信用情報への登録 あり(住宅ローン滞納の履歴が登録) なし

任意売却は住宅ローンの滞納で、競売によって不動産の強制的売却を回避することが主な目的となります。一方リースバックは、資金調達や現在の生活を継続したうえでの物件売却が主な目的です。

これらを踏まえると、任意売却時にリースバックを併用した場合、競売を回避しつつ現自宅での生活を継続できるうえで、物件売却による資金調達が可能となります。

ただし、売却価格の目安はリースバックのほうが低くなる傾向があります。そのため、任意売却のみを利用するよりも、リースバックを併用したほうが物件の売却価格が低くなる可能性があるのです。

場合によっては、任意売却かリースバックの片方のみを利用したほうが不動産を高く売れる可能性もあります。不動産売却の際には、現在の状況や将来のライフスタイルなどを踏まえて、利用する方法を選ぶのがよいでしょう。

まとめ

任意売却とリースバックを併用すれば、住宅ローンの返済問題を解決できるうえに、現在の自宅に住み続けることも可能です。併用するには任意売却に対応しているリースバック会社に依頼が必要であるため、まずはこのような会社を探してみるとよいでしょう。

ただし任意売却とリースバックの併用には、経済的な負担が大きくなる点や物件の売却金額が下がる可能性といったさまざまなデメリットがあります。

任意売却時にリースバックを併用する場合、デメリットを把握したうえで、将来的に問題が起きないかどうかを事前に検討しておくことが重要です。

任意売却やリースバックに関するQ&A

住宅ローンの滞納中にリースバックを利用できる?

不動産の売却金額が住宅ローンの残債を超えている場合、滞納中もリースバックを利用できる可能性があります。なお、売却金額が残債より少ない場合も、任意売却と併用すればリースバックが可能です。

任意売却後に住み続ける方法はリースバック以外にある?

任意売却と併用するのであれば、リースバック以外に住み続ける方法はありません。任意売却をしたうえで現在の自宅に住み続ける前提であれば、リースバックを併用するしかないといえます。

なお、リースバックに似た方法には「リバースモーゲージ」があります。リバースモーゲージとは、自宅を担保に生活資金を借りられる借入方法です。

不動産の価値に応じた金額を限度として借入が可能で、借入後も持ち家として住み続けられます。原則として借入人が死亡した際に担保とした不動産を処分して、借入金が返済される仕組みです。

リースバックとリバースモーゲージの違いには、利用時に不動産を売却するか否かにあります。任意売却は不動産売却が前提の方法であるため、リバースモーゲージと併用することはできません。

債権者に話す前にリースバック会社に任意売却の相談をしてもいい?

リースバック会社に相談するだけであれば、債権者への交渉前に任意売却の相談をすることも可能です。

そのため「査定によって売却価格の相場を知りたい」「売却にはどのような手続きが必要なのかを知りたい」といった場合には、まずリースバック会社に相談してみるとよいでしょう。

ただし任意売却を実際に行なうには、債権者への交渉が必須です。債権者への交渉をせずに任意売却をすることはできないと覚えておきましょう。

最終更新日:
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