
マイホームの購入を検討している場合に「再建築不可物件」に出合うことがあります。
近隣の同条件の物件と比較して非常に安いため魅力的に見えますが、反面どのようなデメリットがあるのかよくわかっていないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、再建築不可物件の問題点や住宅ローンは利用できるのか、また将来、資産価値を上げたり、投資用として活用したりする方法まで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
再建築不可物件を購入する場合の注意点は?
一口に再建築不可物件と言っても、再建築ができない理由は様々です。最も多い理由は「接道義務」を果たしていないことでしょう。
しかし、その決まりができる前に建てられた建物や違法に建てられた建物の場合、土地の一部売却があった場合には、その基準を満たしていないにもかかわらず建物が建っていることがあります。
決まりができる前に建てられた建物の場合には、現在、接道義務を果たしていなくても問題ありません。しかし、その建物を壊して建て替えたり、増築したりできないことに注意が必要です。
違法に建てられた建物の場合には、仮に建てられてから時間が経っているとしても問題があります。最悪の場合、建物を撤去しろと行政から命令されることもあります。
もちろん、接道義務を果たさない限り、撤去したあとに再建築することもできません。
なお、違法に建てられた建物であっても、所有権保存登記や所有権移転登記をすることは可能です。
違法であることを知りながら建築を依頼した場合など、違法建築物の所有権保存登記を行うことができないと思いこんでいることが原因で未登記のケースがあります。
そのようなケースでは物件を購入する前にまずは所有権保存登記をするように売主に促し、その後売買契約が終わったあとで買主に所有権移転登記をする必要があります。
所有権保存登記がなされていない場合には、本当に売主(を自称している人)が所有者なのかどうか判断できませんから、売買契約を行わない方がいいでしょう。
所有権保存登記をする場合には、所有者であることの確認書類として建築確認をした際の建築確認済証と検査済証を添付するケースが多いのですが、違法建築物の場合には建築確認を受けていないと思われますので、それらの書類が発行されていません。
しかし、他の書類で代替できますので、ご安心ください。詳しくは司法書士に確認するといいでしょう。
なお、接道義務には様々な例外規定があります。たとえば、幅員4m未満の道路でもOKとされたり、そもそも都市計画区域外には適用されなかったりします。
ただし、都市計画区域外であっても条例で規制されているなど、その土地の事情により再建築ができるかどうか異なりますので、詳しくは物件所在地の不動産業者に尋ねてみましょう。
接道義務を果たしていないケースの他にも、将来道路とすることや区画を整理することを国が計画しているエリアでは再建築ができません。
しかし、これらのエリアにある物件は将来、国に収容されてしまうため、長期間にわたって土地を所有することができません。
そのような土地を購入して、新しく建物を建てようとする方は多くないでしょうし、そのような計画を立てる方は相当な専門知識をお持ちでしょうから、この記事では詳しく触れないことにします。
この記事では、接道義務を果たしていないため再建築ができない物件についてのみ解説します。

再建築不可物件を購入する場合、住宅ローンは組めるの?
再建築不可物件を購入する場合であっても、理論的には住宅ローンを組むことも、抵当権の設定登記を行うことも可能です。
しかし、以下のような理由から土地も建物も担保価値が極めて低く、実際に借り入れするのは簡単ではないでしょう。

建物の担保価値
再建築不可物件の建物の担保価値は期待しないほうがいいでしょう。その建物が違法建築物の場合、いつ取り壊しの命令を受けるかわかりませんから、建物の担保価値はゼロです。
また、建基法上の接道義務がない時代に建てられた建物の場合には建築されてから相当の年月が経っていますから、どんなに建材を吟味してあったとしても耐用年数ギリギリでしょう。
これらのケースの場合、建物の担保価値はほぼゼロ、解体費用を考慮するとマイナスの可能性が高いです。
土地の担保価値
再建築不可物件の土地部分の担保価値についても、あまり高い評価を受けることはできません。当然ですが、再建築不可物件の土地部分には新しく建物を建てることができません。
だからといって、駐車場や資材置き場などとしての利用価値も高くありません。
なぜなら、接道義務を果たしていない土地ですから、道路に面している間口が2mないか、面している道路の幅員が4mないかのどちらかだからです。
駐車場や資材置き場にする場合、頻繁に車両が出入りします。
しかし、間口が2m未満の場合には大型の車は出入りしにくいですし、面している道路幅が4mなければ車両の利用には不便です。
その上、建物の担保価値でお伝えしたように、資産価値のない建物が建っていますから、その建物を撤去しなければそもそも土地を利用できません。
また、間口と道路が狭いために解体に重機を利用しにくく、解体コストが嵩んでしまいます。
再建築不可物件を安く購入する方法は?
再建築不可物件は、これまでお知らせしたような理由から販売価格が低く抑えられているため、他の物件と比較して条件よく購入することが可能です。
十分に検討せず、価格だけで再建築不可物件を購入することは絶対にお勧めできません。しかし、以下のような方法で再建築不可物件を上手に活用できるのであれば、購入を積極的に検討してもいいでしょう。
建物の雰囲気を上手に利用できる場合
建物の雰囲気がとても良く、多少のコストを掛けてリノベーション(リノベ)してもよいと考えている場合には、購入を検討してもいいでしょう。
特に最近は古民家風の建物が人気を集めていますので、再建築不可物件の古民家を安価に買い取って、その分きちんと費用をかけてリノベし、蕎麦屋やカフェ、アンティークショップを開業するという利用方法が考えられます。
年配の方が購入する場合
お子様がいない年配夫婦の場合で、ご夫婦2人が元気な間だけの住まいと割り切っている場合には購入を検討してもいいでしょう。
ただし、仮に遠方に住んでいる場合であっても、お子様がいる場合には気をつけたほうがいいでしょう。なぜなら、再建築不可物件であっても固定資産税は課税されるからです。
将来お子様がその物件を相続したあと、建物がもっと老朽化した場合に、だれも買い手が現れなければ利用価値のない土地と建物の維持管理費用・固定資産税だけをお子様が将来に渡り負担しなければいけません。
再建築不可物件を相続財産として残すのが適切ではないケースも多く見られますから、お子様にツケを残さないためにも、購入は慎重に検討してくださいね。
再建築不可物件を購入後、資産価値を上げる方法は?
再建築不可物件の資産価値を上げる方法は何らかの方法で接道義務を果たすこと、これに尽きます。したがって、資産価値を上げることを目的とします。
つまり、投資目的で再建築不可物件を購入する場合には、購入前に必ず接道義務を果たすスキームを準備しておきましょう。
どうしても再建築不可という制約を回避することができない場合には、よほどその立地や建物に魅力があり、またその魅力をより向上させるようなアイディアを出せない限り、資産価値を上昇させるのは難しいでしょう。
接道義務を果たす方法として、2つの方法があります。
一つは、接道義務を果たしている自分の土地と隣接している再建築不可物件を購入することです。この場合、再建築不可物件を購入することで自然に自分の土地と繋がり、再建築不可物件ではなくなります。
土地の価値が急激に上昇しますから、このケースでは積極的に再建築不可物件を購入するといいでしょう。似ている方法に、再建築不可物件の土地の中に道路と認められる通路をつくり、接道義務を満たす方法があります。
土地の一部を道路用の敷地として提供することで道路幅を広げる方法もあります。この方法をセットバックといいます。
土地面積と建物面積共に十分な余裕がある場合には専門家と相談しながらセットバックを計画することで再建築可能となるケースがありますが、必要に応じて現在建っている建物を減築する必要が出てくることもあります。
想定以上に大掛かりな工事となることもあり、また建物の構造によっては減築自体が不可能であることも考えられますので、法律の専門家だけではなく、工務店など建築の専門家とも十分相談するとともに必ず見積もりを取るようにしましょう。
住宅ローンを組む場合には、減築する費用も考慮して融資を受ける必要がありますが、その際には接道義務を満たすことで担保価値が上昇することを金融機関にアピールできます。
その際、建物を建てたときの図面があるかどうかも併せて確認し、工務店と相談する際の参考とするために必要に応じて借り受けましょう。あまりに古い建物の場合、図面を紛失してしまっており、入手できない可能性があります。
もう一つは、再建築不可物件と隣接している、接道義務を果たしている土地を併せて購入することです。
同時に2つの物件の購入交渉を進めなければいけませんので一般の方には少しハードルが高いのですが、このような方法で再建築不可物件を再建築可能とし、転売を専門にしているプロの不動産業者もいるくらい、再建築不可物件の価値を高める代表的な方法です。
再建築不可物件を投資用として購入する人はいるの?
上記のように、接道義務を上手に果たす方法がある場合には、その方法がうまくいかないリスクを承知で投資用に購入し、接道義務を果たして再建築不可の条件を回避し、転売する方がいます。
資金的に余裕がある方の場合には、再建築不可物件に隣接している接道義務を果たしている土地が市場に出回るタイミングまで待つことを覚悟して、長期戦で投資する方もいらっしゃいます。
そのようなケースでは銀行が融資を断るケースも多いですし、もし融資をするとしても通常より高い金利を求められますので、自己資金が豊富にある方向けの投資方法でしょう。
また、再建築不可物件は周辺相場と比較して低い坪単価で購入できますし、リフォームやリノベをすることは可能ですから、木造の中古一戸建てや空き家が建っている場合には大規模なリノベをして新築同然の建物にし、内部を区切ってアパートにする方もいます。
ただし、リノベなのか建て替えなのか増築なのか、判断が難しいケースが多いため、細心の注意を払いましょう。どのような工事が増築や建て替えなのか、厳密に決まっているわけではありません。
「柱が1本残っていればリノベだ!」などと強引なことを主張する方もいらっしゃいますし、それが間違っていると断言する根拠はありません。
しかし建基法では、壁、柱、床、はり、屋根又は階段が建物の主要構造部分とされていますから、壁、柱、床、はり、屋根又は階段を全部交換してしまうような工事をリノベだと主張するのは困難です。
なお、一定要件を満たす共同住宅を大規模修繕する場合には建築確認が必要となります。
建築確認を受ける場合には、その工事がリノベではなく建て替えだと指摘される可能性が高まりますので、専門家と事前に十分相談しましょう。
建築確認を受ける必要がない共同住宅についても、接道義務をはじめとした建基法の諸法令は適用されます。
しかし、建築確認を受ける必要がないため、建て替えなのかリノベなのか、厳密な判断を求められる機会は多くないでしょう。

まとめ
このように、再建築不可物件にはデメリットも大きく、必ずしも諸手を挙げてお勧めできるわけではありません。特に、あまり知識のない素人が通常の住宅として購入するのは避けたほうが無難でしょう。
しかし、デメリットを理解した上であえて購入する場合には、近隣相場と比較して相当な安値で購入することが可能なため、上手に購入すると通常の物件では考えられないくらい有利な条件で購入することが可能です。
積極的にリスクを取りたい個人投資家の方や、物件を安価に購入するためなら勉強も手間も厭わない方など、再建築不可物件のメリット・デメリットを知っていても、なおチャレンジしたいという方は、ぜひ理想の物件を手に入れるために努力されてみてはいかがでしょうか?