市街化調整区域の家の売却が難しい原因
市街化調整区域の家が売却しにくくなる背景には、都市計画法による建築制限や金融機関の評価、立地条件など、一般的な住宅地とは異なる特有の事情があります。
市街化調整区域の家の売却が難しい原因としては、主に以下の5つが挙げられます。
ここからは、それぞれの原因について詳しく解説します。
住宅ローンが通りにくい
市街化調整区域は、都市計画法により建築や増改築が原則として制限されている地域です。そのため、市街化調整区域の不動産は、一般的な住宅地と比べて将来の利用や再販に制約が生じやすく、金融機関からの評価が低くなりやすい傾向があります。
住宅ローンを組む際、金融機関は購入する不動産を担保として評価します。しかし、市街化調整区域の不動産は、建て替えや再建築ができない可能性があることから、担保としての価値が低く見積もられやすいのが実情です。
その結果、金融機関によっては住宅ローンの審査が通らなかったり、通常の住宅地に比べて融資条件が厳しくなったりするケースが多くみられます。
住宅ローンが利用できない場合、買主は現金での購入を求められるため、購入できる層が限られ、売却が成立しにくくなる要因となります。
生活インフラが整っていない
市街化調整区域では、計画的な市街化を抑制する目的から、道路や上下水道などの生活インフラが十分に整備されていない地域も少なくありません。
特に、上下水道が引き込まれていないケースでは、浄化槽の設置や給水管の延長工事が必要になることがあります。また、都市ガスが供給されておらず、プロパンガスを利用するケースもあるでしょう。
インフラが未整備の場合、その整備費用は原則として所有者の自己負担となるケースが多く、購入後のコスト負担が大きくなりがちです。
こうした事情から、生活面での不便さや追加費用を懸念され、市街化調整区域の不動産は買主から敬遠されやすく、売却が難しくなる傾向があります。
周辺環境の利便性が悪い
市街化調整区域は、スーパーやコンビニ、学校、駅、病院、ドラッグストアなど、生活に欠かせない施設が周辺に少ないケースが多く、日常生活の利便性が低くなりがちです。
「駅が遠く、通勤・通学に車が必須になる」「日用品や食料品の買い出しに時間がかかる」「急病時にすぐ受診できる医療機関が近くにない」といった不便さを感じる場面も少なくありません。
こうした立地条件は、居住用として購入を検討する買主にとって敬遠されやすい要素となるため、市街化調整区域の不動産が売却しにくくなる要因の1つとされています。
一方で、市街化区域に隣接している場合や既存集落内に位置する場合など、立地によっては一定の生活利便性が確保されているケースもあります。
家の建て替えや新築ができない可能性がある
市街化調整区域では、原則として新たな住宅の建築や大規模な開発行為が制限されています。そのため、住宅の新築や既存住宅の建て替えが自由にできないケースも多く、売却時に大きなネックとなることがあります。
実際に新築や建て替えを行うには、都市計画法や自治体条例で定められた要件を満たし、自治体の許可を得る必要があるのが一般的です。
ただし、許可の要否や可否は物件ごと・自治体ごとに異なります。また、市街化調整区域では「建て替え」と「増改築」で扱いが異なる場合があり、外壁の修繕や内部改修など、内容によっては比較的認められやすいケースもあります。
このように、将来的な建築の可否が不明確な不動産は利用計画が立てにくく、買主から敬遠されやすい傾向があるでしょう。
農地の場合は転用許可が必要
農地は農地法により、原則として農業従事者や農業法人など、農地を取得できる要件を満たす者にしか売却できず、その可否は農業委員会の許可によって判断されます。そのため、市街化調整区域の不動産のなかでも売却が難しくなりやすいといえます。
農地を転用すれば、宅地など農地以外の地目として売却することも可能です。しかし、市街化調整区域の場合は、市街化区域とは異なり、原則として自治体の転用許可を得なければなりません。
市街化調整区域は自然環境や農業振興を目的とした地域であるため、農地転用は厳しく制限されています。立地や利用目的によっては許可が下りないケースも多いでしょう。
さらに、農地転用の許可が下りた場合でも、その後に住宅などの建築許可が別途必要です。転用できれば住宅として売れるとは限りません。
転用許可が得られない場合、農地のまま売却することになりますが、購入できる人が限られるため、売却はさらに難しくなります。
市街化調整区域でも売れやすい家の特徴
市街化調整区域にある不動産でも、建築や将来的な利用の見通しが立ちやすい条件を満たしていれば、比較的売却が進みやすいケースがあります。
次の5つのケースに該当する場合、買主が見つかる可能性が高まるといえるでしょう。
- 市街化区域に隣接している
- 市街化調整区域になる前から家が建てられている
- 事業のために開発された地域にある
- 低層住居専用地域(用途地域)内にある
- 都市計画法第60条証明に当てはまっている
ただし、建築や再建築の可否、許可の要否は自治体ごとに判断基準が異なります。同じ条件に見えてもエリアによって扱いが変わるため、必ず個別に確認することが重要です。
1.市街化区域に隣接している場合
市街化調整区域の土地でも、市街化区域との境界付近に位置している場合は、条件次第で建築の許可が検討されるケースがあります。
すでに周辺まで市街化が進んでいる地域であれば、住宅を新築・建て替えしても「市街化の抑制」という都市計画の趣旨に反しにくく、インフラ整備の面でも非効率になりにくいためです。
都市計画法第34条では、自治体が条例で定めている場合に限り、次のような条件を満たす地域について、市街化調整区域での開発行為を許可できるとされています。
・市街化区域に隣接、近接していて、市街化区域と一体的な生活圏を構成している地域
・市街化区域部分も含めた周辺地域に、おおむね50以上の建築物が建築されている
参照:e-Govポータル「都市計画法34条11号」
建築の可否について一定の見通しが立てやすく、生活利便性も確保されやすい立地であることから、市街化調整区域のなかでは売却が進みやすい傾向があります。
ただし、すべての隣接地が一律に許可されるわけではなく、具体的な建築可否は自治体の条例や個別審査によって判断されます。
2.市街化調整区域になる前から家が建てられている場合
市街化調整区域にある不動産でも、市街化調整区域に指定される前から建っている家については、条件次第で建て替えが認められる場合があります。
かつては「既存宅地確認制度」により、市街化調整区域の指定前から宅地として利用されていた土地では、建築に際する許可が不要とされていました。
この制度は平成13年に廃止されていますが、現在でも自治体が独自の基準を設け「既存宅地確認制度」に準じた判断を行っているケースが見られます。
また近年では、国土交通省が観光振興や地域集落の維持を目的として、既存建築物の用途変更について柔軟な運用を促す方針を示しています。そのため、住宅として使われてきた建物を、店舗や事業用途などに変更できる可能性がある点も特徴です。
こうした物件は、将来的な利用の選択肢が比較的広く、買主が用途をイメージしやすいため、市街化調整区域のなかでも売却が進みやすい傾向があります。
参照:国土交通省「開発許可制度運用指針の一部改正」
3.事業のために開発された地域の場合
市街化調整区域の不動産であっても、すでに事業目的で開発許可を受けた実績がある地域では、建築行為について、自治体の判断が比較的行われやすい傾向があります。
過去に工場や倉庫、事業施設などの開発許可が下りている場合、同一エリア内での建築についても、都市計画上の位置づけが明確になっていることが多いからです。
こうした地域では、住宅用途に限らず、事業用途や特定目的での利用を前提に検討されるケースもあり、市街化調整区域のなかでは比較的売却が進みやすい傾向があるでしょう。
ただし、許可の可否は用途や規模によって異なり、住宅としての新築・建て替えが認められるとは限りません。そのため、売却を検討する際は、想定される用途を前提に自治体へ事前確認しておくことが重要です。
4.低層住居専用地域(用途地域)内にある場合
用途地域とは、建築できる建物の用途や規模があらかじめ定められている区域のことです。低層住居専用地域では、主に戸建て住宅や低層住宅の建築が想定されています。
原則として、市街化調整区域には用途地域は指定されません。しかし、線引き前から用途地域が指定されていた地区や、都市計画上の経緯により、例外的に用途地域が残っているエリアも存在します。
たとえば住宅の供給不足を防ぐため、1970〜1980年代に街の中心部から離れたエリアで造成された公営団地やニュータウンは、市街化調整区域内でも低層住居専用の用途地域として認められている可能性が高いです。
このような地域では、住宅用途としての位置づけが比較的明確なため、市街化調整区域のなかでも建築の可否を判断しやすく、居住用として検討されやすい傾向があります。
5.都市計画法第60条証明に当てはまっている
都市計画法第60条証明とは、建築物が都市計画法に基づく開発許可や建築許可を必要としない建築物に該当することを示す書類です。都市計画法施行規則第60条に基づく証明で「60条証明」と呼ばれることもあります。
都市計画法施行規則第60条証明の対象となる建築物には、主に次のようなものがあります。
- 農家住宅
- 農林漁業の用に供する建築物
- 公益上必要な建築物
- 日常生活用品の販売・加工等の業務用建築物
これらに該当する場合、開発許可や建築許可が不要となるため、建築や利用の見通しが立てやすく、市街化調整区域の不動産であっても売却が進みやすくなる傾向があります。
ただし、すべての建築物が対象となるわけではなく、具体的な用途や建築内容によっては別途確認が必要です。
家の所在地が市街化調整区域に入っているか確認する方法
市街化調整区域かどうかは、売却の可否や建て替えの可否、必要な許可の有無に大きく影響します。そのため、売却を検討する前に、まずは自分の家がどの区域に該当するのかを正確に把握しておくことが重要です。
家の所在地が市街化調整区域に入っているか分からない場合は、主に以下の2つの方法で確認できます。
ここからは、それぞれの方法について詳しく解説します。
役所で確認する
市街化調整区域について何か質問したいことがあれば、市区町村の役所の管轄窓口を直接訪ねて確認するのが確実です。市街化調整区域かどうかだけでなく、建て替えの可否や過去の建築許可の有無なども確認できます。
多くの自治体では「都市計画課」が管轄していますが、自治体によっては部署名が異なる場合があるので、事前に確認しておきましょう。役所を訪ねるのが難しければ、電話やメールでも問い合わせることが可能です。
インターネットで確認する
地域によっては、市街化調整区域に関する情報がインターネットで公開されている場合もあります。GoogleやYahooなどで「地域名 市街化調整区域」と検索すれば、ネット上からでも簡単に調べられます。
たとえば、横浜市の場合は「iマッピー(横浜市行政地図情報提供システム)」から確認できます。
ただし、インターネット上の情報はあくまで目安となるため、最終的には役所の窓口で正式に確認することが重要です。
市街化調整区域の家を売るポイント
市街化調整区域の家は、一般的な住宅地と比べて売却が難しい傾向がありますが、工夫次第で売却できるケースも少なくありません。
具体的なポイントとして、次の7つを押さえておきましょう。
- 自治体に申請して「開発許可」を取得する
- 市街化調整区域のメリットを買主へ伝える
- 購入する可能性が高いターゲットを絞る
- 市街化調整区域の「区域指定」を確認する
- 売りたい不動産の「地目」を確認する
- 市街化調整区域の「建築年月日」を確認する
- 訳あり物件専門の買取業者に買取してもらう
それぞれ詳しく解説します。
自治体に申請して「開発許可」を取得する
あらかじめ売主側で「開発許可」を取得してから、建物を建てられる不動産として売却する方法です。
市街化調整区域にある不動産については、自治体へ申請を行い、次のような流れで開発許可を取得します。
- 市区町村役場で事前相談を行う
- 申請書および必要な資料を提出する
- 自治体による現地調査・審議が行われる
- 問題がなければ、自治体から開発許可が下りる
事前相談の際には、以下のような書類の提出を求められる場合があります。
- 不動産の案内図
- 公図の写し
- 土地・建物の登記事項証明書
ただし、開発許可の申請手続きや必要書類、許可基準は自治体ごとに異なります。そのため、必ず売却予定の不動産が所在する市区町村役場で確認したうえで進めましょう。
また、開発許可は申請後すぐに下りるものではありません。自治体による現地調査や審議が行われるため、申請から許可までに1〜2ヵ月程度かかるケースもあります。売却スケジュールには、あらかじめ余裕を持っておくことが重要です。
市街化調整区域のメリットを買主へ伝える
市街化調整区域の不動産は、制限ばかりが注目されやすく、メリットが十分に伝わらないまま検討から外されてしまうケースも少なくありません。しかし、市街化調整区域にはデメリットだけでなくメリットもあるため、適切に買主へ伝えることで、売却できる可能性が高まります。
以下のような市街化調整区域のメリットを買主へ伝えるとよいでしょう。
- 宅地以外にも利用用途がある
- 建物が少ないので、静かで環境がよい
- 都市計画税がかからないので税金が安い
それぞれのメリットを解説します。
【メリット1】宅地以外にも利用用途がある
市街化調整区域の不動産でも、建築を伴わない用途や認められた範囲であれば、住居以外の目的で活用できるケースがあります。
- 更地にして駐車場を経営する
- 農地として利用し、農業を営む
すべての買主が居住目的で不動産を購入しているわけではなく、資産運用や事業利用を目的に検討しているケースも少なくありません。
こうした買主に対して宅地以外の利用用途を提示できれば、価格を大きく下げずに売却できる可能性があります。
【メリット2】建物が少なく静かで環境がよい
市街化調整区域は建物が少ないので、自然豊かで静かな環境が多いです。そのため、住環境を重視する層から一定の需要があります。
建物の建築が制限されているおかげで大型商業施設などはありません。将来的にも大型開発が許可される可能性は低いため、今後も静かな環境が続くものと考えられます。
こうした都市部の騒音や混雑を避け、静かな住環境を求める買主であれば、市街化調整区域の不動産を購入してくれる可能性は高いでしょう。
【メリット3】都市計画税がかからないので税金が安い
市街化調整区域は市街化を抑制する区域であるため、不動産を所有しても都市計画税がかかりません。
固定資産税はかかりますが、市街化調整区域は公示地価や評価額が低くなりやすいため、税額も比較的抑えられる傾向にあります。
税負担が軽くなりやすい点は、購入する買主にとって節税面でのメリットといえるでしょう。
購入する可能性が高いターゲットを絞る
市街化調整区域の不動産のターゲット層としては、以下のような人が挙げられます。
- 隣地の所有者
- 農業従事者
- 近隣で事業を行っている個人・法人
隣地の所有者からすれば、隣地を購入することで自身の所有地が広がり、土地の活用方法が広がるというメリットがあるため、交渉を持ち掛ければ購入してもらえる可能性があります。
また、農業従事者であれば、一定の要件を満たすことで農家住宅や農業用倉庫などの建築が認められるケースもあるため、農家の人や新たに農業を始めようとしている人にも需要があるでしょう。
近隣で事業を行っている個人・法人であれば「従業員やお客様用の駐車場が欲しい」「社宅を建てたい」「資材置き場が欲しい」などのニーズがあるため、市街化調整区域の不動産でも購入してくれる可能性があります。
市街化調整区域の「区域指定」を確認する
区域指定とは、市街化調整区域のなかでも、一定の条件を満たすことで開発許可や建築許可が認められているエリアのことです。
区域指定がされている場合、住宅などの建築が可能となるケースもあるため、同じ市街化調整区域であっても、買主からの需要が比較的高く、売却が進みやすい傾向があります。
区域指定の対象となるかどうかは、一般的に次のような条件をもとに判断されます。
- 近隣に50戸以上の集落がある
- 上下水道が整備されている
- 公道に接している
ただし、区域指定の基準や運用は自治体ごとに異なります。そのため、売りたい不動産が区域指定に該当するかどうかについては、事前に市区町村役場へ確認しておくことが重要です。
売りたい不動産の「地目」を確認する
地目とは、不動産登記法における土地の種類のことで、
宅地や農地をはじめとする23種類に区分されています。
売りたい不動産の地目は、以下の方法で確認可能です。
- 毎年届く「課税明細書」や「評価明細書」を確認する
- 法務局で申請して登記記録を取得する
- 法務省のホームページから登記記録を取得する
なお、課税明細書などに記載されている地目は、実際の利用状況に基づくものであり、正式な地目は登記記録(登記簿)で確認する必要があります。
同じ市街化調整区域にある不動産でも、地目が「宅地」か「農地」かによって売却のしやすさや必要な手続きが異なります。
参照:「登記・供託オンライン申請システム」(法務省)
市街化調整区域の「建築年月日」を確認する
最後に、市街化調整区域にある建物の「建築年月日」を確認しましょう。
市街化調整区域は1968年の都市計画法改正をきっかけに制度化されましたが、実際の線引き時期は自治体ごとに異なります。そのため、建築年月日が線引き前か後かによって、売却のしやすさに差が出るケースがあります。
| 建築年月日 |
傾向 |
| 線引き前に建築された建物 |
売却しやすい傾向 |
| 線引き後に建築された建物 |
売却が難しい傾向 |
建物の建築年月日は「固定資産税課税台帳」で、線引き時期については「市区町村役場」で確認できます。
「線引き前に建築された建物」は売却しやすい
線引き前に建築された建物は、市街化調整区域に指定される前から存在していた可能性が高いです。
行政の都合で後から市街化調整区域に指定された不動産であるため、一定の条件を満たす場合には、居住者の権利が考慮され、建替え・増改築にあたって開発許可が不要と判断されるケースがあります。
- 用途が同じ
- 敷地面積が同じ
- 延べ床面積が1.5倍まで
ただし、線引き前に建築された建物であっても、線引き後に1度でも建替えを行っている場合は、線引き後の建物として扱われます。その場合、2度目以降の建て替えには許可が必要となり、売却しにくくなるケースがあります。
「線引き後に建築された建物」は売却しにくい
線引き後に建築された建物は、市街化調整区域に指定された後に建てられた可能性が高いです。
線引き後に建てられた建物は、市街化調整区域であることを前提に、開発許可を受けて建築されています。そのため、再建築や将来の利用に制約が生じやすく、第三者への売却では買主が敬遠しやすい傾向があります。
このような理由から、線引き後に建築された建物は、市街化調整区域のなかでも売却が難しくなるケースが多いといえるでしょう。
訳あり物件専門の買取業者に買取してもらう
市街化調整区域の不動産は開発許可がないと建物を建てられない大きなリスクを抱えているため、一般的な買取業者では、市街化調整区域の不動産は対応が難しいと判断されるケースも少なくありません。
さらに、市街化調整区域の不動産は通常よりも需要が少ないため、仲介業者だと売却まで数ヵ月〜数年かかってしまうケースも少なくありません。
一方、買取業者のなかでも「訳あり物件の専門業者」であれば、市街化調整区域の活用方法を熟知しているので、開発許可がなくても問題なくスムーズに買取してもらえる可能性が高いです。
ただし、仲介に比べると売却価格は相場より低くなる傾向があるため、スピードを優先するか価格を重視するかを踏まえて検討するとよいでしょう。
買取までの期間も「訳あり物件の専門業者」なら自社で不動産を買取しているので、買主を探す手間がかかりません。そのため、書類が揃っている場合などは、最短2日ほどで市街化調整区域の不動産を手放して現金化できる点も魅力です。
なかなか買主が見つからない場合や開発許可を取るのが面倒な場合は「訳あり物件の専門業者」への売却を検討するとよいでしょう。
市街化調整区域にある不動産の売却先
住宅の建築許可を得られない場合でも、不動産売却をあきらめる必要はありません。市街化調整区域にある不動産が「絶対に売却できない」わけではないからです。
ただし、市街化調整区域の不動産は、一般的な住宅地と比べて購入できる人や利用目的が限られるため、「誰に売るか」を見極めることが重要です。
実際に「市街化調整区域の土地をあえて探している」買主も一定数存在します。需要のある層に向けて適切にアプローチすれば、高額での売却が成立するケースもあるでしょう。
市街化調整区域の不動産の主な売却先としてあげられる候補は以下のとおりです。
- 農業・林業・漁業を営んでいる人
- 農産物・水産物の加工業者
- 市街化調整区域で事業をしようと考えている業者
- 隣地の所有者
- 中古住宅を探している人
- 訳あり物件の専門買取業者
売却先1.農業・林業・漁業を営んでいる人
農地は農地法により取得できる人が農業従事者などに限定されているため、一般の人に向けて売却するのは難しい傾向があります。
しかし、農地のまま近隣の農家や林業・漁業従事者へ売却する場合であれば、都市計画法上の開発許可を取得せずに売却できるケースがあります。この場合でも、農地法に基づく許可は必要となりますが、宅地転用を前提としない分、手続きのハードルは比較的低くなります。
そのため、物件の地目が農地や山林である場合には、農業・林業・漁業などを営んでいる人への売却を検討するとよいでしょう。
売却先2.農産物・水産物の加工業者
農地の多い市街化調整区域では、その地域で生産された農作物・水産物を加工する工場用地の需要もあります。農産物加工業者や水産物加工業者は、市街化調整区域でも事業用途として開発許可の対象になりやすいため、有力な買主候補といえます。
地産地消を推奨する動きも強まっているため、地元の農産物・水産物加工業者が直営のレストランを営業するケースも増えています。
農産物・水産物の加工業者とうまくマッチングすれば、立地や用途条件によっては高額で不動産を買い取ってもらえるかもしれません。
売却先3.市街化調整区域で事業をしようと考えている業者
市街化調整区域で事業を営もうとしている事業者も、有力な買主候補となります。近年での具体例としては、老人ホームといった介護事業者が挙げられます。
また、主要道路に面した土地であれば、コンビニエンスストアやレストラン、ガソリンスタンドなどに利用できるため、住宅を建てられない土地でも需要が高いです。
主要道路に面していない土地であっても「レジャー施設周辺の駐車場」「危険物を取り扱う工場」のように事業用地としての需要があれば、市街化調整区域での開発申請のハードルが低くなるでしょう。
売却先4.隣地の所有者
隣地の所有者も有力な買主候補です。土地を一体で利用できれば(合筆など)、買主にとっても資産価値を高められる大きなチャンスとなるからです。
隣地所有者が「子どもが結婚した後も自分の近所に住まわせたい」と考えている場合も、買主・売主の双方にメリットがあるでしょう。
また、街の中心部から離れたエリアの市街化調整区域では、世帯人数分の自動車がないと生活に不便になりやすいということも珍しくありません。そのため、駐車場として隣地の購入を検討する人も多くいます。
売却先5.中古住宅を探している人
初期費用を抑えたいという理由などで、中古物件を探している人も有力な買主候補となります。
近年では「広い古民家に住みたい」と考える人も増えているうえに、リフォーム費用に補助金を支給する自治体も増えているため、中古住宅は以前よりも売却しやすくなっています。
ただし、市街化調整区域では建て替えや用途変更に制限があるため、増改築を伴う大規模なリフォームには、内容によって自治体の許可が必要となる場合があります。
住宅を残したまま物件を売却する際には、再建築の条件をしっかり確認し、売買契約前に十分な説明をしておきましょう。
売却先6.訳あり物件の専門買取業者
「市街化調整区域であっても売却できる」と解説しましたが、それでも一般的な不動産と比べて売却しにくいことは確かです。
とくに、建築許可の申請手続きは複雑です。そのため、一般の人はもちろん、不動産業者であっても取り扱いを避けるケースがあります。
「すぐに不動産を手放したい」「急いで現金化したい」という場合には、訳あり物件専門の買取業者に相談するのも1つの選択肢です。訳あり物件専門の買取業者なら、一般的な不動産会社が取り扱えないような物件でも、条件次第では比較的スピーディーに買取してもらえる可能性があります。
市街化調整区域の家が売却しにくい場合は更地にして活用する
市街化調整区域の家がなかなか売却できない場合には、更地にして土地を活用するのも1つの方法です。更地にした土地の具体的な活用例は下記の通りです。
- 駐車場経営(コインパーキング・月極駐車場)
- 太陽光発電用地
- 資材置き場
- 霊園・墓地
このなかでも特におすすめなのが駐車場経営です。アスファルト舗装せずに枠線を引くだけでも駐車場として活用できるため、初期費用を大幅に節約できます。
月極駐車場として長期的に利用する人が見つかれば、毎月安定した収入を得られるでしょう。ただし、家を解体して更地にすると、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、固定資産税の負担が大きくなるのでご注意ください。
まとめ
市街化調整区域が売りづらいのは、土地の利用方法に制限がかかるためです。しかし、用途や活用方法がまったくない市街化調整区域ばかりではありません。販売方法を工夫したり、物件の特性に合った売却先を選ぶことで、条件次第ではスムーズに売却できるケースもあります。
とくに、訳あり物件専門の買取業者であれば、市街化調整区域など取り扱いが難しい不動産の実績やノウハウを持っているため、許可の有無や条件を踏まえた現実的な価格での買取が期待できます。
市街化調整区域の処分にお困りの方は、訳あり物件専門の買取業者へ査定を依頼してみるとよいでしょう。
市街化調整区域についてよくある質問
市街化調整区域にある不動産の売却価格はどのくらいですか?
市街化調整区域にある不動産の売却価格は、周辺の市街化区域にある同条件の不動産と比べて、おおむね5割〜7割程度まで下がるケースが多いとされています。
これは、建築や用途に制限があり、購入できる人や活用方法が限られるためです。
ただし、区域指定の有無や建築年月日、開発許可の状況、立地条件、売却先によって価格差は大きく、条件次第では相場に近い価格で売却できる場合もあります。
市街化調整区域で家の貸し出しはできますか?
原則として、市街化調整区域では新たに賃貸目的の住宅を建築することは認められていません。
ただし、市街化調整区域に指定される前に建てられた建物や、指定後であっても適法に建築された既存建物については、建築時の用途に反しない範囲であれば、例外的に賃貸が認められるケースがあります。
たとえば、市街化調整区域に指定される前に建てられた居住用の建物を、居住用の賃貸物件として貸し出すことは可能です。