
「地代や借地権の更新の管理が面倒」「相続対策に底地など財産を整理しておきたい」などの事情から、底地の整理を考えている人も少なくありません。
ただ、底地を整理するといっても複数の方法があります。その中からどれを選べば、自分にとって一番メリットが大きいのか判断が難しいでしょう。
この記事では、底地を整理する5つの方法を中心に詳しく解説していきます。
また、価格査定の仕組みや不動産会社を選ぶコツなどもわかりやすく説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
底地整理とは
地主が借地権を買い取ったり借地人が底地を買い取るなどすれば、権利関係が解消できます。その結果、通常の物件と同じ扱いになるため本来の資産価値に回復します。
また、完全な所有権であるため自分の意思だけで売買・活用することが可能となります。
仮に底地のまま第三者に売却するとしたら本来の評価額の10%程度くらいの価格になってしまうのが一般的だといわれています。
そのため、本来の評価額が3,000万円の土地だとしても、底地として貸し出していることで300万円ほどの売却価格になってしまうというわけです。
借地権を買い取って完全な所有権を取り戻すことができれば、相場に近い値段で売却できるでしょう。

底地整理の5つの方法
底地を整理する方法は主に以下の5つあります。
- 借地人に底地を売却する
- 借地人から借地権を買い取る
- 底地と借地権を同時売却する
- 底地と借地権を等価交換する
- 底地のみを売却する
底地を整理する目的を明確にしておくと、整理方法を選択しやすくなるかもしれません。
①借地人に底地を売却する
相続税やその他、急にまとまったお金を支払う必要があり、底地を売却して工面しなければならなくなったときは、はじめに借地人への売却を検討してみましょう。
借地権のままでは建物の増改築や大規模なリフォーム、売却するには地主の承諾を得て、承諾料を支払う必要があります。
自由に土地を利用・処分したいなどの理由で借地人が底地を買い取って権利関係の解消を希望していることもあるでしょう。
お互いのタイミングや利害が一致すれば、相場に近い価格で底地を購入してくれるかもしれません。

借地人に売却するときの価格目安
底地を借地権者に売却するときは、底地割合が価格査定時の目安です。まずは所有権の土地として更地価格を算出したあと、底地割合を掛けます。
この底地割合は地域によって異なり、路線価図(以下の図)で確認できます。
赤丸で囲った部分には、数字とアルファベットが書かれています。数字は1平方メートルあたりの価額で、千円単位です。
そのため、「145」は「145,000円/平方メートル」ということになります。そしてアルファベットは借地権割合です。
借地権割合と底地割合は合計して1(100%)になるので、1から借地権割合を引いた値が底地割合です。
「D」は「借地権割合が60%」ということを示しているので、底地割合は「40%」になります。
たとえば、更地価格が3,000万円で、底地割合が40%だった場合、底地の価格の目安は1,200万円になるということです。
ただし、実際には底地割合通りになることはほとんどありません。借地権者との交渉によりますが、更地価格の50%前後で売却することが一般的です。
参照:路線価

②借地人から借地権を買い取る
土地を手放したくはないけれど、底地を整理したいときには、借地人から借地権を買い取ることができないか考えます。
借地権を買い取って完全所有権にできれば、将来売却するときにも買主を見つけやすくなり、市場価格で売却できるようになります。
このとき、借地人に売却の意思があれば、交渉もスムーズに進められます。また、売却を考えていなかったとしても、希望の買取価格とあわせて提案することで前向きに考え始めてくれることも多いです。
買い取るときの相場は借地権割合より少し低く、更地価格の50~60%です。
建物もあわせて買い取る場合には、建物価格もプラスされます。借地権を買い取るときには土地の担保価値が向上することから融資も受けやすくなるでしょう。
そのため、手元に買い取る資金がなかったとしても不動産会社に相談してみることをおすすめします。
③底地と借地権を同時売却する
借地人に底地の買い取りを提案するとき、借地人にも借地権の売却の意思を持っているタイミングであれば「同時売却」することも選択肢の一つです。
これは、底地と借地権を地主と借地人が共同で売却することになるので、通常の所有権の不動産として売却できます。
底地と借地をそれぞれ単独で売却するときには、どちらも使用に制限があるので、買主を探すことも難しく、売却価格も低くなりやすい傾向があります。
しかし、同時売却であれば相場通りの市場価格で売却できる可能性が高くなります。
そのため、地主と借地人のどちらも手放したい、売却したいというときに妥当な選択だといえるでしょう。同時売却が成立すると借地権割合を目安に売却金額を分配しますが、最終的には話し合って決定するのが一般的です。
ただし、当事者同士での交渉はお互いの利益が反するのでまとまらず、トラブルへと発展しやすいので注意が必要です。
また、買主は地主と借地人それぞれと売買契約を結ぶことになり、2つの売買契約が成立することで契約が有効になるという条件をつけるなどの特殊な手続きが必要です。

④底地と借地権を等価交換する
底地の整理方法は売買だけではなく「等価交換」という方法もあります。
これは、地主が所有している底地と借地人が所有している借地権とを合意した割合で交換してお互いに所有権を取得する方法です。
等価交換することで敷地面積が変動しますが、お互いにお金を支払うことなく所有権を取得できる点がメリットです。
土地が十分に広く底地を手放すつもりはないものの、借地権を買い取るだけの資金を準備できないというケースであれば等価交換によって底地を整理するとよいかもしれません。
そして等価交換するときには、どのような割合で交換するかが重要になります。
このとき、目安になる指標も同時売却のときと同じく路線価による借地権割合です。ただし、住宅地域の借地権割合は60%または70%に設定されていることが多く、その割合通りに交換すると地主が所有権として取得できる土地は狭くなります。
その割合では納得できないこともあるため、実際には当事者同士で交渉するのではなく、専門の不動産会社に仲介を依頼して割合を調整してもらうとよいでしょう。
⑤底地のみを売却する
前の項目で解説した4つの方法で整理が困難である場合、底地のみの売却も検討するとよいでしょう。
この場合、買主の候補となるのは買取業者あるいは個人投資家が一般的です。
底地を取得しても借地人が借地権を手放さない限りは自由に利用できません。しかし、建物がある限り地代は支払われます。
通常の不動産投資とは異なり空室リスクがないので、購入する価格によっては手堅い投資物件として売り出せるかもしれません。
また買取業者であれば、底地を管理するだけでなく、活用するためのノウハウも豊富に持っています。ただし、底地のみの売却価格の相場は低いです。
地代の支払いを受けられるとはいっても年間収入は少なく、その利回りが小さいためです。
底地を第三者に売却するときの価格
底地を借地権者ではなく、買取業者や個人投資家などの第三者に売却する場合、地代の収益性が価格の目安になります。
第三者は底地を取得しても、借地権者がいる限り自由に利用できません。自由に利用できない代わりに、借地権者から地代を受け取っています。このことから地代の収益性が価格の目安になるといえます。
ただし、地代による収益は固定資産税や都市計画税を除くとわずかしか残りません。
その結果、第三者に売却するときには、更地価格の10%程度になることがほとんどです。

底地売却の不動産会社選びの4つのコツ
最後に、底地売却で失敗しないための不動産会社選びのコツをお伝えします。
底地を誰に売るかによって売却価格は大きく変わりますが、誰に売ってもらうか、つまり、どの不動産会社に仲介・買取を依頼するかによっても大きく変わります。そのため、不動産会社選びも非常に重要です。
そして、不動産会社選びにもコツがあります。具体的には、次の4つのポイントをそれぞれ確認するようにしてください。
- 底地・借地権の取扱い実績が豊富か
- メリットだけでなくデメリットも教えてくれるか
- 質問や相談に対して担当者の返信は早いか
- 地主の要望を実現しようとしているか
これら4つのポイントを確認して納得できれば、底地売却での力強いパートナーとなってくれるでしょう。
①底地・借地権の取扱い実績が豊富か
底地売却は不動産売却の中でも専門的な知識が必要であり、特殊な取引です。底地売買の実績がなかったり、少なかったりする不動産会社に依頼すると不安が大きいです。
売却価格が安くなるだけでなく、いつまで経っても買い手を見つけられず、売却が成立しない可能性もあります。
底地売却について不動産会社に相談・依頼するときには、底地や借地権を専門に扱っているか、底地や借地権の取引実績が豊富な会社を選ぶようにしましょう。
取引実績は売主・買主それぞれの個人情報を守るために、誰でも確認できるインターネット上には公開していない可能性もあります。
そのため、ホームページなどで確認できなかったとしても、電話もしくは直接不動産会社に出向いて、確認するようにしてください。
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②メリットだけでなくデメリットも教えてくれるか
底地を売却すれば、面倒な土地の管理や固定資産税・都市計画税の支払い、借地人との人間関係などに悩まされなくなります。また、まとまったお金が手に入る可能性があります。
しかし、底地売却はメリットだけではありません。売却相手が借地人以外の第三者になると、必要経費を差し引くとほとんど手元に残りません。
また、売却して収益が出ると譲渡所得税が課税される場合もあります。
そして、底地を売却することで確実に得られる「地代」という継続的な収益を失うことになります。
このようなデメリットがあるので、良い話だけでなく、底地売却で考えられる地主にとってのデメリットやリスクを教えてくれる不動産会社かどうかも重要なポイントです。

③質問や相談に対して担当者の返信は早いか
底地売却に関する質問や相談をするとさまざまな疑問や不安が浮かんでくるかもしれません。
少しでも疑問や不安があれば電話やメールなど都合のよい方法で担当者に伝えることが大切です。そして、担当者からの返信が早いかを確認しましょう。
すぐには回答できないことであっても、「調べて○日までにお伝えします」という言葉があるだけでも信頼できると判断できます。
そのような担当者であれば、地主の不安にも寄り添って誠実な対応をしてくれるでしょう。
④地主の要望を実現しようとしているか
・時間はかかってもいいから、高値で売却したい
・売却に手間をかけたくない
底地を売却したい地主の要望はさまざまです。そして、現実には難しい要望の可能性もあります。しかし、だからといって「それはできません」という担当者では、納得できない結果となる可能性が高いです。
・等価交換や同時売却といった底地単独での売却以外の方法もあわせて教えてくれる
上記のような地主の要望を汲み取り、なんとか実現させることができないかと考えてくれる不動産会社を選ぶことがポイントになります。
そして、ここまで解説した4つのポイントを主に確認し、さまざまな可能性を考えたうえで底地売却をおこなえば満足できる結果になるでしょう。

まとめ
目的によって底地を整理する方法は異なるでしょう。もし底地を現金化したいのであれば、借地人に底地を売却したり借地人と協力して底地と借地権を同時売却するとよいでしょう。
ただし、底地を買い取るつもりがなかったり借地権を手放す予定がなければ、取引に応じてくれる可能性は低いです。
それでも底地をなんとか売却したいという場合、底地を専門的に扱っている買取業者に売却することも検討してみましょう。
底地・借地権の売買実績が豊富な業者であれば、相場に近い価格で買い取ってくれるかもしれません。