【親子の共有名義不動産の売却方法】親が認知症になった場合の対応法についても解説

認知症

相続などのさまざまな要因により、親子で共有名義の不動産を持っているケースはよくあります。

住宅などとして活用している不動産も多くありますが、利用予定のない不動産については売却を考える人も少なくないでしょう。

じつは、共有名義の不動産は単独名義の不動産と売却方法が異なります。また、親が認知症になった場合、さらに複雑な手続きが必要です。

この記事では、親が認知症になった場合のケースも触れながら、親子の共有名義不動産の売却方法について詳しく解説します。

「親子の共有名義不動産」を売る3つの方法

親子共有名義

親と子の共有名義で不動産を持っている場合は、単独名義の不動産と手続きなどが異なります。

共有名義不動産の主な売却方法は3つがあります。

  • 共有不動産全体を売却して売却代金をわける方法
  • 持分を売買する方法
  • 分筆して売却する方法

それぞれにメリット・デメリットはありますが、3つのうち自分の判断のみでおこなえるのは「持分を売買する方法」のみで、他の2つは共有者の合意が必要です。

具体的な内容を解説しますので、自分に合った方法を選んでいきましょう。

1.共有不動産全体を売却して売却代金をわける方法

親子 共有名義不動産 持分売却

親子の共有名義不動産を売却する方法で最も一般的なものは、親子両名で不動産の全部を第三者に売却する方法です。ここで、重要となるのが「持分」の考え方となります。

共有持分とは、共有不動産をどれほど所有しているのかを示す割合です。

持分とは所有権の割合であり、所有している面積を示しているわけではないので注意しましょう。「親の持分2/3、子供の持分1/3」というように表され、不動産の登記簿や契約書に記載されます。

共有名義の不動産全部を第三者に売却するには、共有者全員の同意が必要です。

そのため、原則として売買契約の際には共有者全員※が揃う必要があります。そして、売却代金を持分割合にそってわけることになります。

※契約に立ち会えない共有者は、委任状を作成することで別の共有者や弁護士などに権限の代行を依頼することも可能です。

例えば「親の持分が2/3、子供の持分が1/3」の不動産を3,000万円で売却した場合は、親が受け取る金額は3,000万円×2/3=2,000万円、子が受け取る金額は3,000万円×1/3=1,000万円となります。

2.持分を売買する方法

親子 共有名義不動産 持分売買・贈与

親子の共有名義不動産を両名で第三者に売却する場合には、売買契約の際に共有者全員が出席する必要があったり、委任状を作成する必要があったりと手間がかかります。

しかし、自分の持分であれば自己の判断で売却可能です。共有者同士で売買することもあれば、第三者に持分のみを売ることも可能です。

例えば、親の持分を贈与や売却によって子供が取得すれば、単独名義の不動産としてあらためて売却できます。共有不動産のまま売るよりも、売買契約の際における手間は省けるでしょう。

自分の持分のみを第三者に売却する方法は、例えば親子の仲が悪く、一刻も早く共有関係から抜け出したいときなどは有効といえます。

ただし、共有者のいる物件を購入しようとする人は少なく、買主が不動産業者や親族間売買などに限られるので売却しにくいというデメリットもあります。

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3.分筆して売却する方法

親子 共有名義不動産 分筆して売却

親子共有名義の不動産が土地の場合は、分筆して売却するという方法もあります。分筆とは、1つの土地を2つ以上の土地にわけることです。

つまり、親子共有名義の不動産を分筆するということは、親と子の各人が分割した土地それぞれにおける単独所有者になるということです。自分1人が所有する土地となるため、売却なども自由にできます。

ただし、分筆は持分に応じて土地をわけなければなりません。先述したように持分は土地の面積を示すわけではなく、所有権の割合です。分筆する際には、持分に応じた価値でわける必要があります。例えば、同じ面積でも、道路に面している土地とそうでない土地では価値が変わるので注意が必要です。

認知症が心配な場合は早めに子供へ贈与しておく

贈与税

ここまで、親子共有名義の不動産の売却方法について見てきました。

しかし、親子の共有不動産には「親が高齢で認知症になる」という、特有のリスクがあります。認知症になってしまうと不動産の処分は非常に難しくなってしまいます。

そこで、相続を待たずに生前贈与することにより、共有不動産の権利を子供に移しておく方法があります。

次に、これから親の認知症が心配な場合にどうすればよいかを見ていきましょう。

親から子供に共有持分を譲る方法

親から子供に持分を譲る方法には、売却と贈与の2つがあります。

売却については、先に解説した「持分を売買する方法」で持分と同じです。しかし、子供に売却する場合は子供がまとまった現金を用意する必要があります。

すぐにまとまった現金が用意できない場合、無償で財産を譲る贈与が使われます。

贈与には贈与税がかかる

贈与を使えば、親から子供へ無償で持分を譲れます。ただし、贈与を受けた子供は、贈与税の申告と納税する必要があります。贈与税計算は以下のとおりです。

贈与税=(贈与した財産の価格※-基礎控除110万円)×贈与税率-控除額
※不動産の場合、贈与した財産の価格は路線価や固定資産税評価額などを用いて計算した評価額

贈与税の税率は、その年の1月1日において子供が20歳未満か20歳以上かで次のように異なります。

■その年の1月1日において子供が20歳未満の場合

基礎控除後の課税価格 200万円
以下
300万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
3,000万円
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

■その年の1月1日において子供が20歳以上の場合

基礎控除後の課税価格 200万円
以下
400万円
以下
600万円
以下
1,000万円
以下
1,500万円
以下
3,000万円
以下
4,500万円
以下
4,500万円
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

贈与には最大で55%の税率がかかります。親から子供に持分を贈与する際には、贈与税のことも考慮する必要があるでしょう。

相続発生まで贈与税を先送りにする「相続時精算課税制度」

贈与には通常の方法の他に、相続時精算課税制度という特例があります。

相続時精算課税制度とは、持分の贈与時には贈与税をかけずに、親が亡くなったときの相続で、生前に引き継いだ持分を含めた親の財産すべてに相続税をかけるという制度です。

相続時精算課税制度を選択した場合は、2,500万円までは、贈与税がかかりません。

ただし、相続時精算課税制度を利用するためには、贈与した年の1月1日で親が60歳以上、子供が20歳以上であることなど一定の要件が必要となります。

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一般的な財産の贈与では贈与額から基礎控除額110万円を差し引いた金額に贈与税が課税されます。 この課税方式を「暦年課税」といいますが、一定の要件を満たす場合には「暦年課税」ではなく「相続時精算課税」という課税方式を選択することもできます。 では、相続時精算課税とはどのような課税方式で、土地売却においてどのような影響をも…

贈与の手続き

次に、親から子供へ持分を贈与する場合の手続きを見ていきましょう。

贈与時の手続きは、大きくわけると以下の3段階にわけられます。

  1. 贈与契約書の作成
  2. 持分移転登記
  3. 贈与税の申告と納税

1.贈与契約書の作成

贈与は財産を贈与する側(親)と受け取る側(子)の両者の合意があって、はじめて成立します。両者が合意した証拠を残すためにも、一般的には贈与契約書を作成します。

贈与契約書に決まった形式はないため、自分で作成も可能です。通常、次の事項は記載します。

贈与する不動産の情報
登記事項証明書(謄本)に記載されている以下の情報を記載します。
土地:所在、地番、地目、面積
建物:所在、家屋番号、種類、構造、床面積
財産を贈与する側(親)と受け取る側(子)の情報と押印
財産を贈与する側(親)と受け取る側(子)の氏名や住所を記載します。氏名の横には、実印を押印します。
その他
その他、状況に応じて、引き渡しの期日や公租公課(固定資産税)の負担をどうするかなどを記載します。

2.持分移転登記

贈与契約書を作成しただけでは、贈与が完了したとはいえません。贈与を完了するためには、法務局で持分移転登記をする必要があります。

持分移転登記は自分でもおこなえますが、印鑑証明書や登記済権利証、固定資産評価証明書などの必要書類を揃えたり、登記申請書を作成したりする必要があります。

手続き方法が不明な場合は、司法書士などの専門家に登記を依頼したほうがよいでしょう。

3.贈与税の申告と納税

贈与税の計算をして支払う贈与税がある場合は、贈与した翌年の2月1日から3月15日までに贈与を受けた人(子)の住所を所轄する税務署へ、贈与税の申告と納税をおこないます。

ちなみに、年間の合計贈与額が基礎控除(110万円)以下のときは、贈与税を申告する必要はありません。

ただし、相続時精算課税制度を選択した場合は支払う贈与税がなくても、相続時精算課税選択届出書などを添付して贈与税の申告をする必要があります。

親がすでに認知症の場合は「成年後見制度」を利用する

認知症

親が認知症になる前であれば、贈与するという方法があります。では、認知症になった後に、共有不動産を売却するにはどうすればよいでしょうか?

親が認知症になった場合には、成年後見制度を利用することで共有不動産の売却が可能になります。

成年後見制度は認知症などで判断能力が低下した人に対し、財産の管理や法的な手続きを補佐する制度です。

以下の項目から、具体的な内容を解説していきます。

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成年後見制度とは「判断能力が低下した人の意思決定を補う制度」

成年後見制度とは、認知症や障害などのさまざまな理由で判断能力が不十分な人を、法律的に支援・保護するという制度です。

後見人を選び、預貯金の引き出しや遺産分割協議、不動産の売買などで、後見制度を受ける人の権利が侵害されないようにします。

後見人に特別な資格は不要ですが、民法には下記リストの「後見人になれない人」の規定があります。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人または補助人
  • 破産者
  • 被後見人に対して訴訟をした人やその配偶者・家族
  • 行方不明者

参照:e-Govポータル「民法第847条」

成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つがある

成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」の2種類があります。違いは「後見人を本人があらかじめ決めておくか、裁判所で指定するか」です。

任意後見制度は、本人が意思決定能力のあるうちに後見人を指名し、委任する業務内容を取り決めて「任意後見契約」を結びます。本人の意思決定能力や判断力が低下したら、任意後見契約を結んだ後見人が契約にある業務を代行します。

法定後見制度は、本人の意思決定能力や判断力が低下してから周囲の人が申し立てる制度です。制度名に「法定」とあるように、家庭裁判所が法律上で定められた一定の後見人を選任します。

法定後見制度には本人の判断能力の低下具合で3つにわかれる

法定後見制度は、意思決定能力や判断力がどれくらい低下しているかによって、後見人のおこなえる業務を下記の3つにわけています。支援をおこなう人を下記リストの段階に合わせて、それぞれ「補助人」「保佐人」「後見人」とよびわけることもあります。

  1. 補助・・・判断能力が不十分な場合の支援。裁判所が認めた一定の業務のみ代行する。
  2. 保佐・・・判断能力が著しく不十分な場合の支援。裁判所が認めた一定の業務の他、金銭や不動産に関わる同意権と取消権を持つ。※1
  3. 後見・・・判断能力がない場合の支援。保佐業務の他、法律行為の代理権と取消権を持つ。※2

※1:同意権は「本人が該当の法律行為をするときに保佐人の同意を得なければならない」とされるものです。借金や訴訟行為、相続の承認や建物の新築・増改築などがあてはまります。取消権は「保佐人の同意が必要な行為を、本人が無断でおこなったときに取り消す権利」です。

※2:保佐人の業務内容を含む、あらゆる法律行為を代理できます。ただし、日用品の購入や日常生活に関する行為は当てはまりません。

成年後見制度の開始までに必要な手続き

上記のように、任意後見制度は「本人があらかじめ任意に後見人を選ぶ契約」で、法定後見制度は「判断能力が低下した人を法律で支援する救済措置」です。

同じ後見制度といえど、それぞれ手続きには違いがあります。

次は、2つの成年後見制度を開始するまでの具体的な手続きを、詳しく解説していきます。

任意後見制度の手続き

任意後見制度では、あらかじめ後見人と委託する業務の内容を決めて、任意後見契約を結びます。

任意後見契約は、公証人役場で公正証書を作成して締結します。公証人が法務局で任意後見契約の登記を申請し、登記が完了すれば契約も完了です。公正証書を作成するには、15,000円程度の費用と本人の戸籍謄本や住民票、本人確認書類などの必要書類が意です。

本人の判断能力が低下したら、任意後見制度を開始するために、家族や後見人が家庭裁判所へ申し立てます。申し立てから2~4カ月程度で申し立てに対する審判が下り、家庭裁判所で後見人が認められた時点から後見業務が開始されます。

法定後見制度の手続き

法定後見制度は、家庭裁判所への申し立てからおこないます。家庭裁判所が本人・申立人・後見人候補者から各自の意見や事情を確認して審判を下します。

後見人の候補は申立人が指名できますが、必ずそのとおりになるとは限りません。場合によっては、家庭裁判所が選んだ弁護士などの専門家が選任されます。審判の2週間以内であれば、不服申し立ても可能です。

後日、家庭裁判所から審判書謄本が送られてきたら、後見人業務が開始できます。

申し立ての作業が難しい場合は、相続問題に詳しい弁護士に相談することもおすすめです。

共有不動産をできるだけ高く売るコツ

成年後見制度を使えば、親が認知症でも共有不動産の売却は可能であると解説しました。

少し面倒ではありますが、申し立てが認められれば後の売却方法は通常の不動産売却と変わりません。

そこで、最後に「共有不動産をできるだけ高く売るコツ」について見ていきましょう。

複数の不動産業者に査定を依頼する

不動産の売却価格を決めるのは不動産の所有者です。ただし、所有者が1人で適正な売却価格を決めるのは現実的には難しく、一般的には不動産会社に価格の査定を依頼します。

では、どの不動産業者で査定を依頼しても査定価格は同じかというと、じつはそうではありません。

不動産会社によって、査定実績や購入希望の顧客数、不動産が所在する地域のデータ量に違いがあります。

そのため、同じ不動産でも査定価格に大きな差が出るケースもあります。そこで、複数の不動産業者に査定を依頼することが重要です。

価格だけでなく、過去の取引実績や担当者の人柄を見て、自分に合った不動産会社を選びましょう。

売買経験の豊富な専門業者に買取や査定の依頼をする

共有不動産の売買は、売買契約の際に共有者全員の出席が必要だったり、委任状を作成する必要があったりと、売却のための手続きが複雑です。

とくに親が高齢者の場合、認知症がネックとなり売却が進まない可能性もあります。そこで、共有不動産の専門買取業者に査定・買取を依頼することがおすすめです。

売買実績の豊富な専門業者であれば、その経験から適切な価格で査定をすることが可能です。また、トラブルが起きた場合の対処も重要であり、弁護士などの法律の専門家とどれだけ連携が取れるかも不動産会社を選ぶ上での基準になります。

本サイト「イエコン」を運営する株式会社クランピーリアルエステートは、税理士や弁護士などを中心とした士業とのネットワークを活かした買取を行っているので、他の共有者などとトラブルにならない方法で柔軟に対応できるという強みがあります。

共有持分の売却をご検討の方は、お気軽にご相談ください。

まとめ

相続などにより、親子で共有名義の不動産を持っているケースは少なくありません。

いまは利用していない、今後も利用する予定のない不動産は、持ち続けていても固定資産税などの税金や修繕費などの維持費がかかるだけになってしまいます。

なるべく早く売却したいと考えている人も多いと思いますが、大事なのは状況に応じた売却方法を選ぶことです。

納得のいく取引ができるように、法律の専門家や共有不動産専門の業者などに相談してみましょう。

最終更新日:
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