共有名義人が自己破産した場合の不動産はどうなる?任意売却と競売についても解説

共有名義 自己破産

共有名義人が自己破産してしまったら「自己破産者の共有持分のみ」が差し押さえられ、競売にかけられてしまいます。

自己破産者だけでなく他共有者にも悪影響を及ぼすケースもあります。

そのため、共有者が自己破産した際は、早めに弁護士や不動産会社に相談すべきです。

共有者が自己破産してしまったら、早めの対応が大切です。不動産問題に詳しい弁護士や、法律問題に強い不動産業者へ相談することをおすすめします。

当社は弁護士と提携しており、共有者が自己破産してしまった場合の対応も可能です。まずは一度、お気軽に無料相談をご利用ください。

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共有名義人が自己破産した場合の不動産はどうなるのか?

競売

まずは「自己破産ってそもそもどうなること?」「競売とは?」「そのまま放置したら不動産はどうなるの?」という基本的なところから説明します。

自己破産とは?

自己破産とは、借金を免除してもらう代わりに、財産を全てお金に換え(換価)、債権者に配当する清算手続きです。

ただし税金滞納や破産者の悪意が原因の損害賠償などは、免責とはならないので注意が必要です。例えば「自身の不貞行為による離婚の慰謝料」は、対象外となります。

債権者が通告するのではなく、多重債務や返済不能になった債務者自らが裁判所に申請することから「自己」破産といわれています。

車や不動産、貴金属などの財産は全て差し押さえられ、破産者の手元には、基本的に20万円以上の資産を残すことは認められません。

警備員や士業などの職業には一定期間就くことができず、官報という国による機関紙には住所や名前も掲載されてしまいます。

自己破産は借金が帳消しになるメリットもありますが、まさに「社会的信用をなくす」状態になります。

競売とは?

自己破産した人が所有する不動産は、原則、競売にかけられます。競売とは、債務者の所有する不動産を債権回収のために売却する、裁判所による手続きのことです。

競売は相場より安く落札されるのが一般的で、その額は相場価格の6~7割ほどです。落札後、債務者は一定期間のうちに退去を迫られることになります。落札金額は債権者へ配当され、債務者が得ることはありません。

債務者は競売には一切関与せず、裁判所主導で進んでいきます。売却時期や退去の時期が、債務者の意向や状況によって左右されることはないということです。

強制的に売られ、強制的に退去させられ、売却金額も少ない競売は、債務者にとってメリットはありません。

債務者はメリットなど言っていられない立場ではありますが、その中でも自身や共有者にとって最善の方法で自己破産ができるよう、競売以外の方法がないか、よく考える必要があります。

競売にかけられるのは基本的に破産者の持分のみ

自己破産した人が所有する不動産は、何もしなければ競売にかけられるのを避けることはできません。

ただし共有者がいる場合、つまり持分が100%ではない場合は、破産者が持っている割合だけが競売にかけられることになります。

例えば、2人の共有名義で持分が1/2ずつの不動産が、一方の自己破産によって競売にかけられるとしたら、1/2の持分だけが競売にかけられるということです。

「持分の一部だけ競売にかけてどうするんだ」と思うでしょうが、不動産は分割することができませんし、自己破産していない人の持分まで競売にかけることはできないので、裁判所は破産者の持分しか競売にかけることはできないのです。

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共有者の持分が競売にかけられたら自身の持分も売却するのが吉

共有者の自己破産によって競売にかけられるのは共有者の持分のみですが、そうなると見ず知らずの第三者と共有者となってしまいます。

その際、以下のようなリスクが生じます。

  • 共有持分の売却を要求される
  • 家賃を請求される
  • 共有不動産を第三者が利用できるようになる

そのため、共有不動産を利用していない場合はとくに、共有者の持分が競売にかけられたらあなたの共有持分も売却することをおすすめします。

当社では、買取価格が低くなりがちな共有持分も、積極的に高額買取しています。まずは一度お気軽にお問い合わせください。

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兄弟で相続した共有名義の住宅で、兄(弟)が自己破産した場合

自己破産

共有者が自己破産した場合は、何もしなければ破産者の持分だけが競売にかけられるという話でしたね。ここからはより具体的なケースを想定し、破産者ではない名義人が取れる行動を1つずつ説明します。

まずは兄弟が親から相続した不動産を共有し、弟だけが自己破産したケースを想定してみましょう。親からの相続なので、住宅ローンはありません。

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このとき兄が取れる選択肢は、次の3つです。

1、弟の持分を破産管財人から買い取る

兄が「自宅を手放したくない」というときに取るべきなのが、弟の持分を買い取ることです。この場合の注意点は、買い取る時期。

弟が自己破産するとわかった時点で兄が持分を買い取ってしまうと、弟の財産隠しとみなされ罰せられてしまいます。

そもそも借金が免除され、その代わりに財産の全てを換価し、債権者に配当するのが自己破産の真意です。

もし自己破産手続きの直前に兄が弟の持分を買い取ったとなれば、弟が換価すべき財産を隠したといわれても仕方がありません。

弟にお金を貸している債権者からすれば、本来回収できるはずだった金額が少なくなってしまうからです。売買でも罪に問われるのですから、弟から兄への贈与ももちろん認められません。

兄が自己破産する弟の持分を買い取る場合は「自己破産後」が鉄則となります。自己破産後の弟の持分は、裁判所から指定された破産管財人が管理します。

兄は、必ず破産管財人から買い取らなければならないということです。破産管財人は、基本的に破産者の不動産などの財産を換価し、債権者に配当する役割を持っています。

しかし、不動産が共有名義の場合は、競売の前に共有者に買い取りの意思確認をしてくれるものです。持分の一部を競売にかけるより、共有者が買い取ってくれた方が、確実に換価でき、金額も上がると考えられるからです。

兄が買い取る場合の価格は、マンションや戸建の建物部分なら固定資産税評価額、土地なら公示地価や路線価が目安となります。

2、破産管財人から不動産を任意売却する許可を取って売却する

兄が「不動産を手放しても構わない」というのなら、任意売却するのがいいでしょう。任意売却とは、住宅ローンの返済が厳しくなった債務者が選択する不動産売却の方法の一つです。

一般的な売却との違いは、債権者である銀行などに売却の許可を取らなければならない点です。自己破産の場合は、債権者に許可を取るのではなく、破産管財人に許可を取る必要があります。

任意売却の最大のメリットは、売却金額が競売ほど安くはならないことです。債権者や破産管財人に売却の許可が取れさえすれば、相場価格に近い金額での売却も可能です。

任意売却する手順についてですが、まず不動産会社か任意売却専門の業者に売却を依頼します。その後、破産管財人に売却の許可をもらいます。

競売にかけるより高値で売却できる可能性が高いので、必要な手順さえ踏めば売却の許可はおりるはずです。

例えば、任意売却によって共有する不動産が3,000万円で売却できた場合、兄と弟の持分が1/2ずつであれば、1,500万円を兄が受領し、残りの1,500万円が弟の債権者に配当されます。

3、共有持分が競売になっても放置する

自己破産後に不動産をそのまま放置すれば、弟の持分は競売にかけられます。兄は、自分の持分をそのまま所有することができます。

でも実はこの場合、最終的には兄の持分も競売にかけられてしまう可能性が高いのです。どういうことか説明しますね。

弟の持分が競売にかけられたら、落札する可能性があるのは転売を目的とした不動産会社や投資家です。

「転売目的?持分の一部だけ転売してどうするの?」と思われるでしょうが、確かに落札した第三者が、そのまま持分の一部を転売しても利益になりません。

第三者が転売後に利益を出すために、落札した後に考えるのは「共有分割訴訟」を起こすことです。共有分割訴訟とは、裁判所に不動産を強制的に分割してもらうために共有者が起こす訴訟です。

建物は分割することができないので、この場合、裁判所は「売却して現金化したものを共有者で分け合いなさい」という判決を出すのが一般的です。このときの不動産所有者は、兄と弟の持分を落札した第三者です。

この流れで売却しなければならなくなったら、裁判事案のため一般的な売却をすることはできず、競売しか選択できません。

つまり、ここに来てまた競売によって家を売却することになるわけです。弟が自己破産したときの競売との違いは、今度は兄の持分もともに競売にかけられるという点です。

競売においても、利用価値の少ない「持分の一部」の取引は価格が下がります。共有分割訴訟後の競売は「所有権全部」となりますから、第三者はこの転売によって利益を出すことができるわけです。

兄は当初、売却するつもりがなかったとしても、弟の持分だったものを第三者が所有するということは、結果として自身の持分も競売にかけられてしまう可能性を秘めているのです。

夫婦の連帯債務の住宅ローンで、夫が自己破産した場合

自己破産

続いては、住宅ローンの残債がまだある状態で、連帯債務を負っている夫婦のうち夫だけが自己破産したケースを想定してみましょう。

一緒に住む夫婦のうち夫だけが自己破産するケースはあまりありませんが、離婚していたり、別居していたりする夫婦の場合は考えられるケースです。

連帯債務の住宅ローンを組んでいるということは、夫も妻も連帯債務者として返済の義務を負っており、その負担に応じた持分を有しているということです。

この夫婦は、住宅ローンを組む際にそれぞれの収入を合算して、1つの住宅ローンを組んでいます。

例えば夫の年収が600万円、妻の年収が300万円で、夫が3,000万円、妻が1,500万円の債務を負っていれば、夫の持分:妻の持分=2:1です。

持分が分かれているので、本来であれば夫の持分のみが競売にかけられるはずです。しかし連帯債務者となっている妻は、いわば夫の運命共同体のような身です。

このままでは、結果として妻の持分もともに競売にかけられることになってしまいます。どういうことか説明します。

自己破産すると、破産者は借金が免除される代わりに、財産が差し押さえられます。住宅ローンも借金の一つなので、基本的には自己破産後の支払いは免除されます。

しかし、連帯債務型の住宅ローンを組んでいる場合、住宅ローンの債権者である金融機関は、もう一方の連帯債務者にローンの一括返済をもとめてくるのです。

こうなってしまうと、多くの場合「そんな大金はない!」という妻も、自己破産に追い込まれてしまいます。もし妻が一括返済できたとしても、破産管財人は夫の持分を競売にかけます。

ここからは兄弟のケースでも説明したように「第三者による落札」⇒「共有分割訴訟」⇒「家の所有権全てを競売」という流れになる可能性が高いです。

「妻が一括返済できずに、夫とともに自己破産してしまう」
「一括返済できたとしても、結果として家が競売にかけられてしまう」

上記のことを避けるために考えられる妻の選択肢は、次の2つです。

1、任意売却して一括返済する

多くの場合、妻は住宅ローンを一括返済できる財力はないでしょう。その資金源を作るためには「家を売る」というのが自然な考え方です。

兄弟のケースでも説明した通り、破産管財人の許可を取って任意売却することができれば、相場価格に近い金額で売却することが可能です。

夫の持分:妻の持分=2:1の場合、3,000万円で売れれば妻が得られる金額は1,000万円しかありません。

しかし、夫の取り分である2,000万円は債権者に配当されますから、結果として家の売却金額はローン返済に充てられます。

厳密にいうと夫の取り分からは、破産手続きの手数料等が引かれて債権者に配当されることになります。ただその場合も、家を売らないより一括返済できる可能性が高いです。

この選択肢のメリットは、妻が自己破産するのを避けられることです。ただ家がなくなってしまうという点は、デメリットといえます。

2、妻が夫の持分を買い取った上で一括返済する

夫婦だけならまだしも、子供がいる場合は、なんとかしてマイホームを残したいというのが親の心情でしょう。この選択肢は、家を残すための方法です。

ただしこの方法は、前提として妻に潤沢な資金があることが必要です。

妻が自己資金で一括返済できたとしても、夫の持分が競売にかけられれば第三者が持分を有することになります。

その後、共有分割訴訟を経て、結果として妻の持分とともに家の所有権全てが競売にかけられる可能性が高いです。そのため家を残したい場合は、妻が夫の持分を買い取るしかありません。

流れとしては、夫の持分を買い取るのが先になります。兄弟のケースでも説明した通り、共有持分は破産管財人から買い取らなければなりません。

このときの買い取り費用は、夫の債権者である金融機関に配当されるので、結果としてローン返済に充てられると考えていいでしょう。ただこの場合も、破産手続きの手数料等が引かれた金額になります。

夫の持分を買い取り、妻の単有名義になったところで、債権者である金融機関にローンの一括返済をします。夫の持分はなくなっているので、その後競売にかけられることはありません。

できるだけ債務を残さないようにするなら「強制競売」より「任意売却」を利用しよう

共有名義人が自己破産した場合を「住宅ローンがない兄弟のケース」「連帯債務型の住宅ローンが残る夫婦のケース」で見てきました。

両方のケースに共通することは、当人だけでなく、共有者にも自己破産の影響があるということです。

自己破産で競売にかけられるのは、自己破産した方の持分だけです。しかし、いずれのケースもそのままにしておけば、結果としてもう一方の持分も競売にかけられる可能性が高いです。

その救済策として「任意売却」は有効的な選択となります。競売と任意売却の違いを、ここでさらに明確化していきます。両者の大きな違いは、売却価格でしたね。

競売が相場価格の6~7割になるのに対し、任意売却なら相場価格に近い値段での売却が可能です。その他の違いは、以下の表の通りです。

任意売却 競売
売却後の残債 少ない 多い
残債務の交渉 あり なし
プライバシー 保たれる 情報が公開
引越し費用 売買代金から捻出することも可能 自己負担
退去の時期 考慮される 強制

一つずつみていきましょう。

売却後の残債

任意売却と競売では、売却金額におよそ3割の差が生じます。そのため売却後に残る債務の額も、任意売却の方が圧倒的に少ないです。

残債務の交渉

売却後もローン債務が残る場合、任意売却は、債権者との話し合いの結果、債務者の無理のない範囲で返済を続けていくことができます。また債務者の返済能力によっては、債務を減らす措置が取られることもあります。

一方、競売の場合は、そのような温情措置が取られることはありません。競売は、苦しい生活を余儀なくされる可能性が高いです。

プライバシー

任意売却のプライバシーに関しては、通常の売却と同じと思っていいでしょう。

一方、競売はまず「競売物件」として家の住所がインターネットや新聞に掲載されます。競売では落札希望者が内覧することができませんが、家の外観や周辺環境を確認しに来る人はいるでしょう。

ご近所で「競売だって!」「ご主人、自己破産したらしいよ!」などと噂がたつ可能性もあります。

引越し費用

任意売却でも競売でも、売却代金は基本的に債務の返済に充てられます。

ただ任意売却は、債務の返済方法や負担減の交渉ができるとともに、売却代金から引越し代金などの費用を出すことも許可されます。

一方、競売はそのような考慮はされず、ほぼ全額が返済に充てられます。

退去の時期

任意売却は、金融機関や破産管財人の許可が必要とはいえ、基本的に所有者が主動して売却することができます。

何カ月もかけて高額売却を狙ったり、引渡し時期を引き伸ばしたりすることはさすがにできませんが、退去については、比較的、自由に決めることができます。

競売の場合、全ての主導権を握るのは裁判所です。競売にかけられる時期も、進捗状況も、いつ退去させられるかも、把握することはできません。

まとめ

共有名義人が自己破産した場合、もう一方の名義人に財力がなければ家を所有し続けるのは難しいでしょう。

しかしだからといって、そのままにしていれば、自己破産していない方の持分も競売にかけられてしまう可能性があります。それを避けるには、任意売却を選択するのが賢明だといえます。

様々な点で競売より所有者の負担が少ない任意売却ですが、時期を逃せば競売の手続きが始まってしまい、任意売却することは不可能になってしまいます。

そうなれば「時すでに遅し」です。任意売却を選択できる期間は限られているので、共有名義人が自己破産になることがわかった時点で、不動産業者へ相談するなど素早く行動すべきです。

共有名義人の自己破産時によくある質問

そもそも、自己破産とはどんな手続き?

自己破産とは借金を免除してもらう代わりに、財産をすべてお金に換え債権者に配当する手続きです。不動産や車などの財産も強制的に売却されます。

共有名義人が自己破産した場合の不動産はどうなる?

共有名義人が自己破産してしまうと「自己破産者の持分のみ」が競売にかけられます。

不動産の競売とは?

競売とは、自己破産者の所有する不動産を強制的に売却する手続きのことです。競売にかけられると、相場価格の6~7割でしか取引されません。

共有者の持分が競売にかけられたらどうすべき?

共有者の持分が競売にかけられとき、不動産を所有し続けたいなら、放置はやめるべきです。共有物分割請求をされ、最終的にはあなたの共有持分も競売にかけられる恐れがあります。

任意売却とはどんな手続き?

借り入れ先の許可をとることで、債務の残っている不動産を売却する方法です。任意売却なら相場価格に近い値段での売却が可能になります。

最終更新日:
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