
過去に事故や事件があって、住む人に心理的な抵抗を与える物件のことを「心理的瑕疵物件」といいます。
心理的瑕疵物件(事故物件)の貸主は借主に対し、どのような事件や事故があったかを正確に伝える義務(告知義務)があります。
事故や事件などが発生した心理的瑕疵物件は多くの人から避けられるため、家賃を値下げして借主を募集するケースが多く見られます。
事故物件に抵抗を持つ人がいる一方で、最近では「安く住めるお得な物件」として事故物件を中心に部屋探しをする人も増えています。
この記事では、「事故物件はどれくらい家賃が安くなるのか?」や、事故物件の探し方や家賃交渉の方法について解説します。
目次
事故物件の家賃はどのくらい安い?家賃相場について
事故物件の多くは、一般的にどの程度家賃が安くなるのでしょうか。
家賃の値下げ幅に明確な基準はない
一般的に事故物件の家賃は通常の物件より安いですが、これは法律で定められているわけではなく、貸主が自主的に安くしているだけです。
「賃貸物件を貸す場合、借主に対して必ず物件の詳細を告知しなければいけない」ことが宅地建物取引法第35条で定められています。
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。引用:e-Govポータル「宅地建物取引法第35条」
つまり事故物件を貸す場合、貸主は借主に事故物件であることを告知しなければなりません。
部屋を借りた後で事故物件であることが発覚した場合、貸主と借主でトラブルになる可能性が高いです。
しかし、この法律で定められているのは告知義務のみで価格については一切言及されていません。
つまり、事故物件であったとしても、必ず家賃を下げなければいけない義務はありません。
極端にいえば、事故物件である事実さえ伝えれば、貸主は家賃をいくらに設定しても問題ないのです。

通常の賃貸物件より家賃が20~30%安くなる
貸主が家賃を値下げしなくてもよいというのは極端な話にすぎません。
実際の賃貸経営では、事故物件をそのまま貸し出しても借主が集まらないケースが多いです。
事故物件である賃貸物件に借主が集まらない理由として、以下の2つが挙げられます。
- 事故物件という事実に借主が心理的抵抗を感じるから
- 遺体の腐敗臭や体液により物件自体が損傷しているから
まず殺人などの重大な事件が起きた場合、防犯性が低い物件だと思われますし、人が死亡したことで霊が出ると恐れる人も出てきます。
そのため、事故物件に住みたいと希望する借主が見つかりにくいのです。
また、遺体の発見が遅れたり出血が多い場合、遺体の体液や血液で部屋自体の損傷が進みます。
部屋の壁紙や床を取り替えても、ウイルスから感染する恐れがあると思われて、住むことを避ける人も多いです。
そうした事故物件に借主を集める方法として、もっとも簡単な手段が家賃を下げることです。
恐怖心や不便さがあったとしても、家賃が安ければ妥協できる人もいます。
そういった人に入居してもらうために、貸主は家賃を値下げするのです。
事故物件の家賃については、通常の物件よりも20%~30%安くなるケースが多いようです。
もう1つの理由は、事故物件は安くなることが世の中に広く知れ渡ったからです。
最近ではテレビなどの影響で、日本全国の事故物件をまとめたサイト「大島てる」の知名度も上がっています。
さらに事故物件に住むユーチューバーや芸人も現れるなど「事故物件=安く住める物件」という認識が広がっています。
そのため、事故物件であると知った借主側も「事故物件なら家賃を安くしてもらえるかも?」と期待するケースも多いです。
借主側に「事故物件=安い」というイメージが定着しているため、家賃を安くしないと借主が決まらないのです。

事故物件の家賃が値上げされる可能性は?
安い家賃で事故物件を借りていた場合、更新のタイミングで家賃が値上げされることはあるのでしょうか。
事故物件の告知期間のガイドラインは決められていない
事故物件であることを告知する義務はありますが、国土交通省では、具体的に何年間が事故物件に該当するかについて定めていません。
そのため、不動産業界では事故物件化した後に最初の借主には事故物件の告知を行うが、二度目の借主以降は告知を行わなくてもいいと考えているケースが多いようです。
例えば6万円で貸出した部屋で自然死が発生したとき、次の借主があらわれるまでは4万円で募集を行います。
しかし、最初の借主が退去した後で2回目に募集をかける時には事故物件であることを告知せず、従来の家賃で募集することが多いのです。
そのため、不動産会社の中には、1カ月だけ家賃を値下げして住む人を募集し、退去後は告知義務はなくなったものとして通常の家賃で貸し出す会社もあるのです。
同じ借主が住み続ける場合は更新時に家賃を見直す可能性がある
事故物件に住むときも当然、貸主と借主の間で賃貸借契約を結びます。
契約の内容次第ですが、契約更新時には家賃が値上げされる可能性があると思っておきましょう。
賃貸の契約期間は2年間ですが「契約更新時も同じ家賃で貸す」などの内容がなければ、あらためて契約更新時に貸主が家賃を決めます。
安い家賃のまま賃貸経営を続けると、貸主も経営が苦しくなってしまいますよね。
ですので、2年間住んで問題がなかった場合、事故物件の家賃が値上げされる可能性は高いです。
とはいえ、値上げされる金額については、大家との交渉次第なのでケースバイケースです。
需要と供給のバランスで家賃が決まるので、借主が決まりにくい場合なら家賃はそれほど値上げされず、そのままの条件で住める可能性もあります。
ただし、都心の駅近物件などの空室がすぐに埋まりやすい物件であれば、現在の借主が退去したとしても、貸主にとって空室リスクは大きくありません。
むしろ借主が退去した後「事故物件ではない物件として通常の家賃で募集したい」と考えているケースもあります。
家賃を値上げするかどうかは契約内容によりますが、どのように家賃を設定するかは貸主である大家次第です。
別室で自殺・他殺などが発生した場合、家賃の値下げ交渉はできるのか?
もし自分が住んでいる賃貸マンションや賃貸アパートの別室が事故物件になった場合、家賃の値下げ交渉はできるのでしょうか。
交渉次第で家賃の値下げは可能である
賃貸借契約では、心理的瑕疵物件の告知義務が設けられていますが、心理的瑕疵の定義については定められていません。
心理的瑕疵については、人によって解釈の幅が異なるからです。
男性ではそれほど気にしない人はいますが、女性ではかなり気にする人もいます。
例えば、近所の小学校から出る騒音も、人によっては心理的瑕疵になります。
他の部屋で起きた殺人事件を気にしない人もいますし、逆に物件から退去したくなる人もいるでしょう。
貸主は借主に対して物件内で事故が起きた事実を告知する義務はありますが、必ずしも家賃を値下げしなければいけない義務はありません。
事故や事件が発生した部屋が自分の部屋からどれだけ離れているかによっても、交渉のしやすさは変わってきます。
もし2階の部屋で自然死が発生したとしても、5~6階など上の階に住んでいる人には臭いなどは漂ってきませんし、不気味と思うことはあっても実害はそれほど大きくないでしょう。
しかし、隣の部屋で殺人事件が起きた場合は防犯性の低さも気になりますし、不気味さや不安を感じたり、霊が漂っているのではないかと恐れる人も多いでしょう。
需要と供給の関係で交渉の成否が決まる
事故物件のガイドラインが明確ではないだけに、家賃の値下げに応じてもらえるかどうかは、需要と供給の関係つまり貸主と借主のパワーバランスによって変わります。
需要の少ない物件であれば「家賃を値下げしても住んで欲しい」と貸主が考えるため、家賃の値下げ交渉は可能です。
特に高級マンションの場合、空室があるとブランド価値が下がるので、家賃を下げてもらえる可能性が高いです。
逆に、立地の良いエリアや新築物件などは需要が高いため、貸主が強気の家賃を提示することもあります。
数千円程度の値下げに応じることはあるかもしれませんが、1万円以上の大幅な値下げはできない可能性が高いです。
そうした場合、家賃の値下げを要求するのではなく、防犯設備や管理体制の見直し、部屋の壁紙や床の張替えなどを要求するのもよいでしょう。
自宅が事故物件かどうかを確認する3つの方法
「自分が住む物件は事故物件ではないか?」と気になる方もいるでしょう。
自分の住む物件が事故物件を確認するには、どういった手段があるのでしょうか。
1.事故物件サイトで調査する
手軽に調べやすい方法の1つは「大島てる」などの事故物件サイトをチェックすることです。
「大島てる」は知名度の上昇により、管理人による手動更新だけではなく、事故物件情報を知る人からの投稿も相次いでいます。
時には間取りや室内の写真まで掲載されているため、事故物件情報を網羅したサイトといってよいでしょう。
サイトに備えつけた地図上には、事故物件の内容、どのようなトラブルがあったかなどの詳しい情報が掲載されています。
もし賃貸物件を借りた後に「この物件も事故物件?」と心配に思ったら、大島てるで確認してみるとよいでしょう。

2.不動産会社などに聞いてみる
もっとも確実な手段は、部屋を借りるときに依頼した不動産会社に聞いてみることです。
そもそも心理的瑕疵は告知義務があるため、賃貸借契約時に不動産会社は正確な内容を伝える必要があります。
不動産会社から告知はなかったが、疑問を感じたときは不動産会社もしくは貸主に確認しましょう。
それでも情報が明らかにならない場合、他の不動産会社に聞いてみたり、他の部屋の住人に聞いてみたりするのも一つの手段です。
さらに、インターネットや新聞などで自分の住む物件の情報を調べるという方法もあります。
特に殺人事件などで刑事事件になった場合は、インターネットや新聞に掲載されている可能性が高いため、事件の内容まで確認可能です。
ただし、事故物件化した後にオーナーが名義を変えている可能性もあり、物件名だけで調べても正確な情報がつかめないことがあります。
可能であれば、他の部屋の住人や近隣住民などに聞いてみるのもよいでしょう。
3.不動産情報サイトで調べてみる
事故物件の需要が増えている昨今、大手の不動産情報サイトで条件設定すれば、心理的瑕疵物件のみを検索可能です。
「自宅も事故物件では?」との疑問を抱いたときは、不動産情報サイトで自分のアパートやマンション名で検索してみたり、物件の住所や立地、家賃などの条件で検索しましょう。
そこで自分の物件が不動産情報サイトに掲載されていないかをチェックするのです。
もし自分の住む物件の情報が出てきて、特記事項に「心理的瑕疵あり」と表記されている場合、自分の住む物件が事故物件である可能性は高いです。
仲介に入った不動産仲介業者へ事実確認をおこない、可能であれば貸主に直接問い合わせてみましょう。
そして、事実確認の結果、事故物件であることを隠していた場合は家賃の値下げや退去費用などを請求できます。
まとめ
最近では事故物件の存在そのものが話題となり、一般の人でも事故物件目当てに部屋を探す人が増えています。
人気に伴って、不動産会社による告知義務は徹底されましたが、家賃の値下げには応じてもらえないケースもあります。
なぜなら、家賃や賃貸条件は貸主と借主間の需要と供給、パワーバランスによって変化するからです。
もし郊外や地方など、あまり賃貸需要が高くない物件に住んでいる場合、強気に家賃交渉してもよいかもしれません。
逆に都心で立地の良い物件に住んでいるときは、あまり家賃の値下げ交渉に応じない可能性が高いです。
問い合わせて事故物件であることがわかった場合は、家賃の値下げ交渉を申し込んでみるのがよいでしょう。
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