
夫婦がお金を出し合ってマイホームを購入したり、共有名義で不動産を相続する際に「共有持分の割合」を決める必要があります。
このようなケースで「共有持分ってどのように決めればいいの?」「持分は自由に設定して大丈夫?」と悩んでいる人も少なくありません。
この記事では、共有持分の基本的な決め方や計算方法を具体例を用いながらわかりやすく解説していきます。
また、共有持分を相続によって取得するケースでの決め方やポイントなども説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
共有持分の決め方や計算方法
まず共有持分を決めるときは以下の計算式を用います。
※自己負担額=(頭金+住宅ローン) 購入代金=(不動産価格+諸費用)
次の項目から具体的な計算式を用いながらわかりやすく解説していきます。
自己負担額によって割合を決める
夫婦共有名義でマイホームを購入したら持分を設定しなければいけません。持分は基本的に自己負担額によって決められます。
例えば
「住宅の購入代金が3,000万円」
「夫の自己負担額が2,000万円」
「妻の自己負担額が1,000万円」
だとします。
このケースではそれぞれの持分は以下のように計算されます。
妻の共有持分=1,000万円÷3,000万円=1/3
持分が割り切れない場合の決め方
共有持分を決めるために計算した結果、持分が割り切れないというケースも珍しくありません。
例えば
「マイホームの購入代金が3,000万円」
「夫の自己負担額が2,300万円」
「妻の自己負担額が700万円」
だとします。このケースにおける夫婦の共有持分は以下の通りです。
妻の共有持分=700万円÷3,000万円=0.2333・・・(23.33・・・/100)
このように割り切れない場合、共有持分を調整してきれいな数字に直します。調整後の共有持分が以下の通りです。
妻の共有持分=0.23=23/100
調整前の共有持分と比較すると夫の持分は増えており、妻の持分は「0.33・・・/100」減っていることになります。
調整による持分の増加・減少は税務上において妻から夫へ「贈与された」という意味になります。贈与とみなされた妻の持分を金額に置き換えると
「0.33・・・/100×3,000万円=約10万円」となるため、妻から夫へ約10万円が贈与されたことになるわけです。
ちなみに、年間110万円までの贈与であれば非課税であるため、今回のケースでは贈与税は課せられません。もし共有持分が割り切れず調整するのであれば、調整額を110万円以下にするとよいでしょう。
親の資金援助がある場合の決め方
ケースによってはお互いの親から資金援助してもらうこともあるでしょう。親からお金を出してもらうとき、主に以下の方法が考えられます。
- 贈与してもらう
- 借用書を作成して借り入れる
- 共同出資してもらう
それぞれの方法における共有持分の決め方についてわかりやすく解説します。
贈与してもらう
贈与によって資金援助をしてもらうのであれば、そのお金は自己負担額として計上することが可能です。そのため、親が共有持分を取得することはありません。
例えば
「マイホームの購入代金が3,000万円」
「夫の自己負担額が1,500万円」
「妻の自己負担額が1,000万円」
「贈与による夫の親の資金援助が500万円」
だとすると、資金援助500万円は夫の自己負担額として認められます。
そのため、夫婦の共有持分は「夫が2/3」「妻が1/3」となり、夫の親は共有持分を取得しません。
ただし、贈与額が500万円だと非課税枠を超えてしまいます。そのため「500万円-110万円=390万円」に対して贈与税が課せられてしまうケースもあります。
もし非課税枠を超える金額の贈与であれば特例が適用されないか検討してみましょう。贈与における特例については以下の記事で解説しているので参考にしてみてください。

また、親からお金を借り入れる形にすることで贈与ではなくなるため贈与税の支払いも必要ありません。
借用書を作成して借り入れる
借金として資金援助してもらう場合は必ず「借用書」を作成しましょう。なぜなら、借入であることを証明できる文書などがなければ贈与とみなされてしまう可能性があるからです。
親子間の口約束だけでは第三者から見て借入と贈与どちらなのか判断できません。借用書をきちんと作成しておけばこのようなトラブルを防ぐことが可能です。
借用書には「借り入れる金額」「返済期限」「利息」などを記載します。ちなみに、無利子や明らかな低金利に設定してしまうと浮いた利息分が贈与とみなされてしまうケースもあります。
そのため、一般的な相場の利息に設定しておくことが大切です。
共同出資してもらう
贈与・借入であれば自己資金として計上できるため、親が共有持分を取得することはありません。しかし、親名義の預金を共同出資してもらうのであれば、親に共有持分を設定する必要があります。
夫・妻・親の三者がお金を出し合う形になるため三者の共有名義となります。
例えば、夫婦それぞれの父親から共同出資してもらった場合、4人が共有持分を取得することになります。共同出資であれば贈与税が課税されることも利息を設定する必要もありません。
ただし、共有不動産を売却・賃貸などするためには共有者全員の同意が必要なため、人数が増えることで取り扱いが困難になるというデメリットもあります。
共有持分のメリット・デメリットを詳しく知りたいという人は以下の記事でわかりやすく解説しているので、参考にするとよいでしょう。

共有持分を相続するときの決め方
共有持分は不動産の購入だけでなく相続によっても取得するケースもあります。
例えば、親が亡くなってしまい相続財産に不動産が含まれているとします。配偶者と子どもが相続人だった場合、その不動産を共有することもあるかもしれません。
次の項目では相続による共有持分の決め方をわかりやすく解説していきます。
法定相続分によって決める方法
もし相続で不動産を共有名義にするのであれば、被相続人との関係性や人数によって共有持分が決められることがあります。
法律によって相続人やケースごとに相続できる割合が決められています。これを法定相続分と呼びます。
法定相続分がどのように決められているのかについては、以下の記事で具体的なケースを用いながらわかりやすく解説しているので参考にしてみてください。

今回は以下のシミュレーションで共有持分の決め方を説明します。
「被相続人は夫」
「相続人は妻と子ども2人(計3人)」
「相続財産は夫の共有持分1/2」
「すでに妻は共有持分1/2を有している」
まず妻である配偶者とその子どもには法定相続分1/2が認められます。子どもの法定相続分はさらに人数で分けるため、上記のケースでは子ども1人あたり「1/4」の法定相続分が与えられます。
夫の共有持分1/2をそれぞれ法定相続分によって分け合います。それを式に表したものが以下の通りです。
子どもが相続する共有持分=1/2(夫の共有持分)×1/2(子どもの法定相続分)×1/2(子どもの人数)=1/8
このように妻は1/4・2人の子どもはそれぞれ1/8ずつの共有持分を相続します。
ただし、妻ははじめから1/2の共有持分を有しているため、結果として「1/2+1/4=3/4」の共有持分を取得したということになります。
遺産分割協議によって決める方法
もし夫の共有持分を妻のみが相続して単独名義とするのであれば、遺産分割協議をおこなうとよいでしょう。
遺言書で分割方法が指定されていないケースでは、相続人全員の同意があれば自由に相続割合を決められます。法定相続分に必ず従う必要はないというわけです。
例えば、子どもが自立しており持ち家を所有しているとしたら、不動産の共有持分を相続しなくてもよいと判断するかもしれません。
ただし、相続財産が共有持分のみだとすると、子どもが遺産を受け取れなくなってしまいます。このような場合、妻が相続分の相当額である代償金を子どもに支払うことで解決できることもあります。
可能となれば、妻が不動産の所有権を完全に取得することになるため、持分100%と同じ意味になります。
共有持分を決める際のポイント
夫婦それぞれの共有持分を決める際は以下のポイントを押さえて設定することが大切です。
- 住宅ローンの種類を確認する
- 持分を適当に決めない
次の項目からそれぞれのポイントについてわかりやすく解説します。
住宅ローンの種類を確認する
住宅購入のために住宅ローンを借りる際は種類ごとの特徴を理解しておきましょう。夫婦が協力して住宅ローンを借りるパターンは「連帯保証型」「連帯債務型」「ペアローン」の3つが基本です。
それぞれのパターンにおいて持分がどのように設定されるのかわかりやすく説明します。
連帯保証型の場合
夫が債務者・妻が連帯保証人とする連帯保証型の場合、住宅ローンは夫の単独名義です。そのため、夫の返済が滞ってしまわない限り、基本的に妻が住宅の購入代金を負担することはありません。
つまり、住宅購入時の名義は夫のみとなるため、一般的に妻には持分が認められません。連帯保証型でも妻に持分を与えることは可能ですが、次の項目で説明するように贈与とみなされてしまいます。
夫婦それぞれに持分を設定したいのであれば「連帯債務型」または「ペアローン」を選択するとよいでしょう。
連帯債務型の場合
連帯債務型であれば夫婦で債務者となるためそれぞれに返済義務が生じます。そのため、連帯保証型とは異なり、妻にも持分が認められます。
連帯債務型で持分を設定する際は一般的に収入の割合と同じ割合とします。
例えば「夫の年収が500万円」「妻の年収が200万円」だとすると、夫の持分は5/7・妻の持分は2/7と設定します。
妻の持分を多くしたり少なくすることも可能ですが、お互いの返済を補うことで贈与とみなされてしまうこともあるので注意しましょう。
ペアローンの場合
夫婦それぞれが個別に住宅ローンを組む方法をペアローンと呼びます。ペアローンにおける持分は「頭金と借入の総額」で設定されるのが基本です。
例えば
「住宅の購入代金が5,000万円」
「夫の頭金と借入の合計額が3,500万円」
「妻の頭金と借入の合計額が1,500万円」
だとします。
このケースにおける夫婦それぞれの持分は以下の通りです。
妻の持分=1,500万円÷5,000万円=3/10
持分は自由に設定しない方がよい
「夫婦だから持分は1/2ずつに設定する」などのように出資額や返済負担額などを無視して持分を設定するのは好ましくないでしょう。
その理由は「贈与とみなされてしまう」「住宅ローン控除で損をしてしまう」などのケースがあるからです。
次の項目からこの2つのケースを中心に解説していくので、持分を適当に決めるとどのような影響があるのか理解しましょう。
贈与とみなされてしまう
前の項目でも解説しているように、妻に設定した持分よりも購入代金に対する自己負担額の割合が小さい場合、贈与とみなされてしまう可能性があります。
例えば
「住宅の購入代金が3,000万円」
「夫の自己負担額が2,500万円」
「妻の自己負担が500万円」
「夫婦の持分は1/2ずつに設定」
だとします。
夫婦の持分が1/2ずつだということは夫婦ともに1,500万円ずつ負担していることになります。しかし、実際のところ妻は500万円しか負担していません。
この差額の1,000万円は夫から贈与されたものとみなされてしまい、贈与税が課せられてしまう可能性があります。
贈与とみなされないためには持分の割合を購入代金に対する自己負担額の割合と同等にすることが大切です。
住宅ローン控除で損をしてしまう
出資割合と異なる割合で持分を設定してしまうと、本来受けられるはずの住宅ローン控除額が減額されてしまうケースがあります。
例えば
「住宅の購入代金が3,000万円」
「夫の借入額が2,000万円」
「妻の借入額が1,000万円」
「夫婦の持分は1/2ずつに設定」
だとします。
夫の住宅ローンの年末残高が2,000万円だとすると本来であれば20万円が控除されます。
しかし、持分を1/2に設定していることで持分を金額にした1,500万円が控除対象となり、控除額は15万円になってしまいます。結果的に、このケースにおいて年間5万円の控除額を損してしまうことになります。
一方で、妻の場合、持分1/2であるため控除対象は1,000万円から1,500万円に増えると考えられるかもしれません。これは誤りで控除対象は1,000万円のままだとされています。
そのため、夫の控除額が減るだけで妻の控除額は増えないというわけです。
このように住宅ローンの割合と異なる持分に設定してしまうと控除額が少なくなってしまう恐れがあるので注意しましょう。
まとめ
共有持分は基本的に「自己負担額÷購入代金」によって求められた割合で設定されます。もし割り切れなかったとしたら贈与として持分を調整することも可能です。
また、共同出資として親から資金援助してもらう場合、親にも共有持分が認められます。親に持分を与えないようにするには贈与してもらうか借り入れましょう。
実際に共有持分を決めるときは住宅ローンの借り方や自己負担額の割合などに注意しなければいけません。
勘違いや割合を無視して持分を設定してしまうと贈与とみなされ税金が課せられたり、受け取れるはずの控除額が受け取れないなどの恐れがあります。
もし持分の決め方に疑問や不安があるという人は不動産に詳しい弁護士や税理士などの専門家に相談することが大切です。