
東京に住んでいる相続人が父母や兄弟が住んでいた地方にある実家を相続するように、住んでいる場所から遠方にある不動産を相続することもあります。
このようなケースでは、相続手続きや売却などのために現地にいかなければならない手間や費用を気にする人も少なくありません。
しかし、管理せずに放置しておくと大きなリスクを抱えてしまうことも考えられます。
この記事では、遠方の不動産を相続・売却する際の注意点について詳しく解説していきます。
また、不動産相続の基本的な流れや相続人が海外に住んでいる場合の注意点も説明するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
不動産の相続手続きの流れ
まずは、不動産を相続する方法や手続きの流れについて確認しておきましょう。相続の基本的な流れは以下の通りです。
- 遺産分割をおこなう
- 不動産を相続する方法を決定する
- 相続登記の手続きをおこなう
- 不動産にかかる相続税を計算する
相続の方法・手続きは、近くにある物件でも遠方にある物件でも違いはありません。
また、以下の記事でも不動産相続の基本的な流れを解説しているので、合わせて読んでおくことでより理解が深まるでしょう。

①遺産分割をおこなう
遺産分割の方法は相続人の数や遺言書の有無によって異なります。相続人が1人だけで遺言書もなければ、その相続人がすべての相続財産を相続します。
しかし、相続人が複数いる場合、相続財産を分配するために遺産分割の手続きをおこなう必要があります。
遺言書があれば原則その内容に従います。一方で、遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割の内容・方法について話し合う必要があります。これを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割の方法・内容について相続人全員が同意したら「言った・言わない」のトラブルを避けるために「遺産分割協議書」を作成することが大切です。
もし遺産分割協議がまとまらなかったりトラブルに発展してしまった場合は、相続問題に精通した弁護士に相談するとよいでしょう。
第三者として弁護士に介入してもらうことで、スムーズに遺産分割を終えることができるかもしれません。
②不動産を相続する方法を決定する
不動産を相続する方法には、次の4つの方法があります。
代償分割・・・不動産を相続する人が他の相続人に代償金を支払う
換価分割・・・不動産を売却した代金を相続人で分配する
共有分割・・・不動産を複数の相続人(相続人全員)で共有して相続する
不動産の遺産分割は現金・預貯金の分割と比べると難しいでしょう。また、いずれの分割方法にも長所・短所があるため、なかなか結論が出せないかもしれません。
それぞれの分割方法についてもっと詳しく知りたいという人は以下の記事でもわかりやすく説明しているので、参考にしてみてください。

③相続登記の手続きをおこなう
不動産を相続したら「相続登記」の手続きをおこないましょう。
不動産の相続登記は法務局でおこないます。また、相続登記の申請には申請書などの他に下記の書類を揃えなくてはいけません。
- 被相続人の生まれてから死亡するまでの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
- 相続人の住民票
- 相続人全員の印鑑証明書
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
- 固定資産評価証明書
- 遺言書もしくは遺産分割協議書
相続登記の必要書類は申請方法についての詳しい解説は以下の記事を参考にするとよいでしょう。

④不動産にかかる相続税を計算する
不動産を相続したら相続税を計算して、税務署に申告・納税する必要があります。不動産にかかる相続税を計算する際は、評価額を算出したり適用できる特例を把握しましょう。
ちなみに、相続税の申告・納税は相続開始から10カ月以内におこなわなければいけません。もし期限を過ぎてしまうと加算税や延滞税がかかってしまうケースもあります。
遠方の不動産にかかる相続税を計算するのは億劫かもしれませんが、早めに申告・納税を済ましておくことが大切です。
不動産相続における相続税の計算は複雑になってしまうこともあります。以下の記事では計算方法をわかりやすく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。

遠方の不動産を相続するときの注意点
遠方の不動産を相続するとき注意しなければならないことがいくつかあります。それが以下の通りです。
- 相続登記をせずに放置しない
- 相続登記申請の管轄に注意する
- 遠方の不動産管理は手間がかかる
次の項目からそれぞれの注意点について解説していきます。
相続登記をせずに放置しない
相続登記は「いつまでに手続きをしなければならない」という期限は設けられていません。また、相続登記をしないままでも法律上の罰則を受けることもないでしょう。
そのため「不動産がある地方に足を運ぶのが面倒」などの理由によって、相続登記をおこなわず放置してしまう人も見受けられます。
しかし、相続登記をせずに放置しておけば次のようなリスクを抱えることになります。
・さらに相続が発生すると手続きが複雑になってしまう可能性がある
相続登記が完了していない不動産は売却できません。なぜなら、登記上で所有者になっていないと不動産の権利を主張できないからです。
また、相続登記しないままさらに相続が発生すれば、手続きが複雑になってしまうことがあります。
例えば、兄弟2人で不動産を相続し登記を放置していた状態で、兄が亡くなり相続が発生するとします。
このようなケースでは、兄の相続人(配偶者・子)の協力が必要です。登記がおこなわれないまま相続が繰り返された結果、相続人が増えすぎてしまい相続不動産における登記も売却もできなくなったという事例もあります。
登記申請できるのは管轄する法務局のみ
不動産の所在地を管轄している法務局(登記所)でなければ登記申請できません。そのため、窓口申請するのであれば不動産のある法務局まで足を運ぶ必要があります。
ちなみに、管轄地域については法務局のホームページで確認できます。
遠くて現地まで出向くのが難しいという場合、郵送申請やオンラインシステムによる申請も可能です。
参照:法務局「管轄のご案内」
相続登記は司法書士に依頼するのが便利
平成17年より登記の郵送申請・オンライン申請が可能となったことで、遠方の不動産における相続手続きは比較的容易になったといえます。
しかし、申請や提出書類などに不備があれば、もう一度同じ手続きをやり直さなければならない可能性があります。
「申請方法がわからない」「書類に不備がないか不安」という人などは司法書士のような専門家に依頼することが大切です。
司法書士などに相続登記を依頼すれば、必要書類の収集も含めてすべて任せることが可能です。そのため、手間をかけることなく登記を終わらせることができるでしょう。
空き家のまま管理を怠るとトラブルに発展する
遠方の不動産を空き家のまま管理を怠ると「老朽化により屋根や壁が崩落して近隣住民などにケガをさせてしまった」「放火や空き巣などの被害に遭った」などのトラブルに発展しまうことも少なくありません。
このように空き家が近隣住民の生活を脅かす恐れがあると判断された場合、自治体から「特定空き家」に指定されてしまうかもしれません。
特定空き家に指定されると「固定資産税の優遇措置が受けられない」「管理・修繕などの代執行がおこなわれ、多額の費用を請求される」ことがあります。
利用する予定のない遠方の不動産を相続したらトラブルに発展する前に売却するとよいでしょう。
遠方の不動産における売却方法
遠方の不動産を売却するときの負担は「現地に行かなければならない」ことです。一般的に売買契約の締結や決済・引き渡しなど売主と買主が立ち会いのもとおこなわれます。
しかし、ケースによっては立ち会える日程が合わないということもあるでしょう。
そのため、遠方の不動産売却を成功させるために何かしらの対策を考える必要があります。遠方の不動産を売却する主な方法は以下の通りです。
- 代理人を立てる
- 仲介業者と持ち回り契約を結ぶ
- 信頼できる買取業者に売却する
それぞれの方法については次の項目からわかりやすく解説します。
代理人を立てる
売却に関する契約や手続きなどに立ち会えない場合、時間が取れそうな代理人に依頼するとよいでしょう。
例えば、相続した不動産の近くに住んでいる親戚や知人であれば買主との日程を合わせやすいかもしれません。
もし代理人を立てるのであれば「委任状」が必要です。委任状の作成方法については以下の記事を参考にしてみてください。

仲介業者と持ち回り契約を結ぶ
この契約を利用することで現地に行かなくても売買契約の締結や物件の引き渡しをおこなうことが可能です。持ち回り契約における流れは以下の通りです。
②売主に契約内容を説明し、署名・押印をもらう
③買主に契約内容を説明し、署名・押印をもらう
※②と③は順不同
ちなみに、手付金の授受については仲介業者が「預り証」を発行した上で受け取り、売主へ渡されます。
このように持ち回り契約は非常に便利な契約のように思えます。しかし、全くリスクがないわけではありません。
持ち回り契約のリスクについては次の項目で解説します。
持ち回り契約のリスク
持ち回り契約ではお互いの顔を一度も見合わせることなく手続きが進んでしまうこともあります。そのため、売主も買主も不安を抱くことも少なくないでしょう。
信頼関係が築けないまま売買を進めたとしても、成約に至らない可能性も考えられます。
また、売主と買主が直接話し合う機会が少ないため、契約内容における認識のズレが生じてしまう恐れもあります。
電話やメールで売買契約に関する意向をうまく伝えられなかったり、細やかな売買条件を口頭のみでおこなってしまうと「言った・言わない」のトラブルに発展しかねません。
持ち回り契約を利用する際は些細なことでも書面に書き起こし、仲介業者と綿密にコミュニケーションを取ることが大切です。
買取業者に売却する
「遠方の不動産売却を任せられる親戚や知人がいない」「トラブルなく早めに売りたい」という場合は買取業者に売却することも検討しましょう。
当社クランピーリアル・エステートは訳あり物件や相続物件などを扱う「なんでも買取業者」です。
専門知識と経験を持ち合わせた専門スタッフが多数在籍しているため、遠方にあって買主がなかなか見つからないという不動産でも「高額査定・スピード買取」が可能です。
売却・買取に関して無料相談もおこなっていますので、疑問や不安がある人などはぜひ、以下のリンクからお気軽にご相談ください。
売却したいなら
共有持分買取専門の
当社にお任せください!
海外在住中に不動産を相続したときの手続き
海外在住中に日本にある不動産を相続した場合、相続や売却の手続きが困難でしょう。
時差などの関係で手続きの時間調整が難しいだけでなく、手続きをおこなうための必要書類等を揃えるのも大変です。
海外在住中に不動産を相続したときは以下の手続きをおこなうとよいでしょう。
- 住民票の代わりに在留証明書を発行する
- 印鑑証明書の代わりにサインする
- 納税管理人を選任する
それぞれの手続きについては次の項目でわかりやすく説明します。
住民票の代わりに在留証明書を発行する
不動産の相続・売却には被相続人と売主の住民票が必要です。海外に住みながら手続きをおこなう場合、住所を証明するための書類として「在留証明書」を発行しましょう。
在留証明書の発行手続きは現地の日本領事館で取り扱っています。発行の際は以下の書類および手数料(日本円で1200円相当額)が必要です。
・住所を確認できる文書(現地の官公署が発行する滞在許可証,運転免許証など)
・滞在開始時期(期間)を確認できるもの(滞在期間が3カ月未満の場合は,今後3カ月以上の滞在を確認できるもの(賃貸契約書、公共料金の請求書等))
ただし、発行にかかる日数や開館日、申請受付時間は現地事情や業務量などによって異なります。詳しくは発行の申請先である在外公館に問い合わせるとよいでしょう。
参照:外務省「在留証明」
印鑑証明書の代わりにサインする
不動産の相続・売却において印鑑証明書も必要です。
しかし、日本以外のほとんどの国では印鑑証明書という制度がありません。海外在住中に印鑑証明書が必要になったときは「署名証明(サイン証明)」を用いて手続きを進めます。
この署名証明の手続きをおこなうためには、サインが必要となる書類・日本国民であることを証明できる書類(有効なパスポートなど)を持参した上で、領事館に直接出向く(領事の面前でサインする)必要があります。
参照:外務省「署名証明」
納税管理人を選任する
相続によって財産を得た場合や不動産を売却して利益を得た場合、海外在住中だとしても相続税・不動産の譲与所得税を申告しなければいけません。
海外に住みながらだとこれらの申告は困難であるため「納税管理人」を選任して、その管理人に確定申告してもらうことになるでしょう。
選任方法は納税地を管轄する税務署に届出書を提出します。届出書を作成する際は国税庁が雛形を公表しているので、参考にするとよいでしょう。
相続税の申告は被相続人の住所地を管轄とする税務署、不動産の譲渡所得税の申告は納税管理人の住所地を管轄する税務署で手続きをおこなうのが基本です。
ただし、ケースによっては異なる税務署で確定申告をおこなうこともあります。
参照:国税庁「No.1923 海外転勤と納税管理人の選任」
参照:国税庁「所得税・消費税の納税管理人の届出書」
まとめ
利用価値のない遠方の不動産を相続した場合、なかなか現地に出向くことができないなどの理由で管理を怠ってしまうこともあるでしょう。
管理せずに放置していると老朽化により建物の屋根や壁などが崩れ近隣住民にケガをさせたり、放火や空き巣などの被害に遭う恐れもあります。これにより自治体が、危険性のある放置物件だと判断した場合「特定空き家」に指定されてしまいます。
このようなトラブルが起きる前に売却を検討するとよいかもしれません。売買契約の締結時や物件の引き渡しに立ち会えないのであれば、代理人を立てたり持ち回り契約などを利用しましょう。
また、なんでも買取を謳う買取業者に売却することも一つの選択肢です。
「代理を任せられる知り合いがいない」「トラブルなく処分したい」という場合は不動産業者に早めに相談することが大切です。