
土地を自分で所有していなくても、借地上にアパートやマンションを建てて経営する方法があります。
「アパート・マンション経営に地主の承諾は必要なのか?」と不安を抱える人もいますが、借地上の建物を第三者に賃貸物件として貸し出すことに原則、地主の承諾は必要ありません。
ですが、借地でのアパート・マンション経営には「借地契約の期限」や「建物の建て替え時に必要な地主の承諾」など、注意しなければいけないことも多数あります。
借地でアパート・マンション経営をする場合は、不動産業者にいつでも相談ができる状態を作っておくとよいでしょう。
とくに、弁護士と連携している不動産業者であれば、借地契約でトラブルになったときも法律的な対応をサポートしてもらえるのでおすすめです。
目次
借地でアパート・マンション経営をするときの5つの注意点
建物所有を目的として土地を借りた借地人が、その建物をどのように使おうと基本的には問題ありません。
契約で交わした目的に反しない限りは、居住用でも店舗・事業用でも自由に建築、使用できます。
ただし、借地でアパート・マンションを経営するときには注意点もあります。
- 定期借地権でないか確認する
- 借地契約で交わした土地の使用条件を確認する
- 建て替えるときには地主の承諾が必要
- 敷地が借地の場合はローンが組みづらい
- 出口戦略を立てにくい
1.定期借地権でないか確認する
「借地権」といっても、現在2種類の借地権が存在します。
平成4年7月末日までに設定された「旧法借地権」と平成4年8月以降に設定された「新法借地権」です。
このうち、旧法借地権または新法借地権の普通借地権であれば、契約期間が満了となっても、借地上に建物が存在している限りは契約更新されます。
更新が拒絶されるのは、地主側にどうしてもその借地契約を更新拒絶しなければならない理由とも言える正当事由が必要になるからです。
一方、現在の借地権が定期借地権であれば存続期間は重要です。
定期借地権は更新のない借地権で、借地契約の期間満了となれば必然的に借地権も更新されず、地主に返還します。
そうなると、定期借地権の更新時期に合わせた定期借家契約といった更新なしの賃貸物件として入居者を募集する必要があります。
しかし、更新がないため家賃は同一条件の物件よりも下げるしかなく、空室率も上がることが予想されます。
もし現在の借地権が定期借地権だった場合には、アパート・マンション経営を始める前に、借地権の延長や契約の結び直しを地主と相談するようにしましょう。

2.借地契約で交わした土地の使用条件を確認する
一般的に交わす土地賃貸借契約書には「建物の所有を目的」としていることが多いです。
しかし、条件として「自己使用」や「共同住宅の建築は不可」がある場合、第三者に貸し出したり、複数の世帯が住んだりすることになるアパート・マンション経営はできません。
また、建物の構造についても堅固建物・非堅固建物の条件がついている場合には、その条件に沿ったアパート・マンションしか建築できないことになります。
もし、これらの条件を確認せずに賃貸経営を始めてしまうと、後々トラブルに発展するので事前に確認することが重要です。
そして、条件の変更が必要とわかった場合には、地主に条件変更を申し出て、承諾を得なければなりません。
このとき、借地条件変更承諾料として更地価格の10%程度を支払う必要もあります。
3.建て替えるときには地主の承諾が必要
親が住んでいた借地を相続すると、その借地の上に建てられている建物は一戸建てがほとんどなので、アパート・マンション経営を始めるには建て替える必要があります。
このとき、借地契約に増改築禁止特約が設定されている場合には、地主の承諾を得てから建て替えなければなりません。
許可なく建て替えた場合には、建て替えの中止、状況によっては借地契約の解除になる可能性もあるので注意してください。
なお、建替え承諾料の相場は更地価格の3%程度です。
借地条件変更承諾料とは別に支払いを求められることもあるので、現在の借地条件や承諾料の支払い方について確認しておきましょう。
地主から承諾を得られない際は裁判所に申立て可能
もし建て替えについて地主から承諾が得られない場合、裁判所に申立てできます。
裁判所が状況などを確認し、建て替えを認めた場合には、直接地主からの承諾を得られなかったとしても、地主の承諾を得たものとして建て替えを進められます。
ただし、借地非訟は法律で認められた行為ではありますが、今後も地主との長い付き合いがあることを考えるとあまりおすすめする方法ではありません。
裁判所に代諾許可を申し立てるのではなく、地主と話し合って、納得してもらって承諾をもらう方がよいです。

4.敷地が借地の場合はローンが組みづらい
敷地が借地権の場合、金融機関から融資は受けにくいです。
賃借権である借地権に抵当権を設定するには地主の承諾が必要になりますが、抵当権設定を承諾するメリットが地主にはなく、承諾するケースはまずありません。
その結果、抵当権は借地上の建物に設定しますが、建物しか担保に設定できないせいで資産価値は低くなります。
しかし、借地人の地代滞納や地主との信頼関係を破壊する行為によって借地契約を解除されると、借地上の建物も解体されます。
そうなれば、金融機関は建物を売却して融資した金額を回収することができません。
借地権にはこのような事情があるので、そもそも敷地が借地権だった場合には融資しないとしている銀行もあります。
そのため、銀行などからのローンを前提にアパート・マンション経営をしようと考えていると、必要資金を用意できない可能性もあるので注意してください。

5.出口戦略を立てにくい
アパート・マンションの建物が老朽化すれば、建て替えや売却を検討する必要が生じます。
また、賃貸経営がうまくいかなかったり、あなた自身の状況も変わったりする場合、賃貸経営を続けることは危険です。
「最終的にどうするか」の出口戦略として、以下の方法が考えられます。
- 売却する
- 建物を取り壊して一部の土地を売却する
- リフォームやリノベーションを繰り返しながら所有し続ける
- 自分の居住用とする
しかし、借地上の建物を第三者に譲渡するときには、地主の承諾が必要になります。
建物だけの売却とはならず、建物から切り離すことができない土地(借地権)も合わせての売却となるからです。
また、地主から売却の承諾を得られたとしても、借地権付き建物の売却価格は所有権の土地と建物の売却価格に比べて非常に安いです。
通常の物件に比べて30%~40%程度、低い場合には10%程度の価格でなければ買主が見つかりません。
さらに、増改築して所有し続ける場合でも、地主への承諾と承諾料の支払いが必要です。
借地権にはこのようなデメリットがあるので、アパート・マンション経営を始める前に出口戦略を立てることはむずかしいと認識してください。

借地でアパート・マンション経営をするメリット
借地権者はあくまで土地所有者から土地を借りているだけなので、様々な制限がありますが、デメリットばかりではありません。
借地でアパート・マンション経営をするメリットは以下のとおりです。
- 利回りとキャッシュフローが増加
- 底地を購入できると売却益も期待できる
借地でアパート・マンション経営をするメリットを1つずつ解説します。
利回りとキャッシュフローが増加
借地でのアパート・マンション経営は利回りアップに繋がり、キャッシュフローが増えるというメリットがあります。
その理由は借地権の価格の安さで、所有権の土地を取得するときと比べて60%~70%の価格で購入することができます。
所有権であれば5,000万円必要だった土地も、3,000万円~3,500万円で利用できるわけです。
年間表面利回りは、以下の式になります。
借地権の取得費用が低いということは、物件価格が安くなるということなので、利回りは大きくなります。
さらに融資を受ける金額が少なくて済む分、返済額も少なく、キャッシュフローが増える点もメリットです。
底地を購入できると売却益も期待できる
借地権は売却が難しいことがデメリットでしたが、地主側に相続や経済的な理由があると底地を手放すこともあります。
借地権者は底地を取得するメリットが大きく、地主にとっても高値で売却できる相手なので、底地は通常、最初に借地権者に買取の提案がきます。
そして、底地を購入して、借地権だった土地が完全所有権になれば、自由に売却や増改築が可能です。
売却時も市場価格で購入希望者を探せるようになるので出口戦略としても、売却を選択肢に入れられます。
もともと、借地権のタイミングで安く手に入れられているので、底地権を購入することで高い売却益を期待できます。

アパートやマンション経営をするときの収益物件を選ぶ4つのポイント
アパートやマンション経営をする際の、収益物件の選び方について解説します。
収益物件の選び方は、以下の4点が判断基準です。
- 立地
- 周辺環境などの条件
- 利回り
- 近隣の賃貸物件の状況
それぞれの判断基準について、順番に解説します。
1.立地
複数ある収益物件を選ぶときのポイントのなかでも、立地は一番重要になります。
なぜなら、部屋が狭かったり日当たりが悪いなど条件が悪くても立地が良いだけで、入居者が集まりやすいからです。
例えば、複数路線可能で駅から徒歩5分以内のような場所です。
このような立地であれば、通勤・通学に便利で、空室ができてもすぐに入居者が見つかるでしょう。
2.周辺環境などの条件
学校が近い、公園が近い、スーパーやコンビニ、ショッピングモールが近いといった周辺環境の条件もポイントです。
ただし、収益物件で単身者・学生をターゲットにするか、ファミリー層をターゲットにするかでも適切な周辺環境は変わります。
また昼と夜で雰囲気が大きく変わる地域もあるので、収益物件を選ぶときには、昼と夜、どちらも確認して騒音や治安状況などを確認することが大切です。
3.利回り
収益を得るためにアパート・マンション経営をおこなう以上、想定利回りもしっかりと計算しておきましょう。
収益物件として公開されている多くの利回りは表面利回りで、賃貸経営に必要な経費や管理費などは考慮されておらず、さらに入居率は100%で計算されています。
そのため、実際に得られる利回りとは大きく異なっており、賃貸経営を始めたあとで「こんなはずではなかったのに」と後悔することにもなります。
収益物件を選ぶときには、諸経費や空室率なども考えた想定利回りを算出して、選ぶようにしてください。
4.近隣の賃貸物件の状況
4つ目の判断基準は、近隣の賃貸物件の状況です。
物件の家賃、入居条件、募集状況を確認することは、収益物件を購入するかどうかの判断に役立ちます。
購入を検討している物件での想定賃料が、近隣の物件よりも高ければ入居者集めが大変になるかもしれません。
また、空室が目立つ場合には、その物件に問題があるかもしれませんが、そもそも賃貸物件の需要がないとも考えられます。
このように周辺の物件を確認することで、その地域で求められている物件の種類や条件が掴めます。
諸々の条件と照らし合わせて、収益物件を購入するか判断することをおすすめします。
まとめ
借地でアパート・マンション経営をするときには、事前に契約内容の確認や売却時に地主の承諾が必要になるなど、手続きが所有権の土地の場合と異なります。
ですので、アパート・マンション経営を始める前に借地権の種類・借地契約の条件を確認しましょう。
また、賃貸経営で成功するためのポイントは、敷地が借地権であっても所有権であっても変わりません。
アパート・マンション経営をするときの注意点を念頭に置きながら、利回りが高くなるといった借地権のメリットを活かせれば、より着実な賃貸経営を実現できるでしょう。
借地でマンション・アパート経営する際によくある質問
借地とは、地主から借りている土地のことです。そして、借地権は土地を借りた人が、土地を利用する権利のことです。
はい、可能です。ただし、定期借地権の場合は注意が必要です。更新のない借地権のため、借地契約の期間満了となれば、必然的に土地が地主に返還されてしまいます。
借地上の建物を第三者に譲渡するときには、地主の承諾が必要なことに注意が必要です。また、賃貸借契約書に「自己使用」や「共同住宅の建築は不可」といった項目がある際は、アパート・マンション経営はできません。
借地権の価格が安いため、利回りアップに繋がり、キャッシュフローが増えることがメリットです。所有権の土地を取得するときと比べて60%~70%の価格で購入することができます。
借地権は売却が難しいことがデメリットです。そこで、底地を購入できると借地権だった土地は完全所有になります。そうなれば、自分の意思だけで増改築も可能になり、売却益も期待できます。