
相続で共有持分を取得しそうになったとき、相続放棄をする人は少なくありません。
理由としては「遺産である共有持分の資産価値が低い場合」や「共有不動産の管理に巻き込まれるのが面倒」といったものがあります。
相続放棄をすれば共有持分を取得せずに済みますが、共有持分以外の遺産もすべて相続できなくなってしまうので注意しましょう。
相続にあたって「相続放棄をすべきか悩んでいる」「相続放棄の手続きに自信がない」と悩んでいるのであれば、弁護士に相談して適切なアドバイスをもらいましょう。
また、共有持分を処分するのであれば、相続してから専門の買取業者に買い取ってもらう方法も検討してみましょう。専門買取業者なら、手間をかけずに高額買取が可能です。
目次
相続放棄で「共有持分の相続」は回避できる
「相続放棄」とは、法定相続人が自らの意思で相続を辞退することです。
相続放棄がなされると、その相続人は「最初から相続人ではなかった」とみなされます。共有持分を取得することもないため、共有関係に巻き込まれることを回避できます。
遺産分割が決定するまで相続財産は「相続人たちの共有財産」とみなされる
相続開始時に相続人が複数いる場合は、各相続人がその法定相続分に応じて相続財産を共有する形となります。
通常はその後の遺産分割協議によって「誰がどの財産を取得するか?」を決定して、共有関係を解消するのが一般的です。
相続放棄は、遺産分割が決定する前に共有関係から抜け出す制度です。
共有持分を相続するパターンは2つ
相続によって共有持分を取得するケースは、下記2つのパターンにわけられます。
- 1.不動産を複数人で相続する
- 2.相続財産がもともと共有持分である
わかりやすいように、具体例を見ていきましょう。
【パターン1】不動産を複数人で相続する
A・B・Cの3人がそれぞれ1/3の共有持分で共有していたときに、Aが死亡して、Aの子供D・Eが2人で相続するケースです。
Aの持分1/3をD・Eが相続するため、Aの持分1/3をさらに1/2ずつ相続します。そのため、D・Eはそれぞれ1/6の共有持分を相続することになります。
結果として、この物件の共有持分は次のようになります。
- B:1/3
- C:1/3
- D:1/6
- E:1/6
【パターン2】相続財産がもともと共有持分である
夫婦A・Bが1/2ずつ持分を有していたときに、Aが亡くなって、妻Bと子供C・Dが3人で相続したケースです。
BとC・Dの法定相続分は、Bが1/2、C・Dがそれぞれ1/4です。
Aの共有持分を法定相続分にしたがって相続すると、C・Dはそれぞれ「Aの持分1/2×法定相続分1/4=1/8」を相続します。
一方、Bが相続で取得する持分は「Aの持分1/2×法定相続分1/2=1/4」です。また、Bは自分の持分1/2と、今回Aから相続した1/4を合わせるので、保有する持分は合計で3/4となります。
その結果、この物件の共有持分は次のようになります。
- B:3/4
- C:1/8
- D:1/8
共有持分はトラブルになりやすい
所有権の割合である共有持分ですが、共有持分をもつだけでは、不動産を自由に管理・利用できません。
共有者との協議が必要であり、意見が対立すれば関係性が悪化します。
また、共有者の1人が不動産を占有するケースや、税金や維持費の負担で揉めるケースなど、不動産の共有はトラブルが起こりやすいのです。
そのため、相続で共有持分を取得しそうになったとき、相続放棄によって共有状態を回避する人が多くいるのです。
共有持分の相続放棄をするときの注意点
相続放棄は、不要な相続財産の取得を回避し、自分以外の相続人と面倒なやり取りをせずに済むのがメリットです。
しかし、下記の3つには注意が必要です。
- 相続放棄はすべての相続財産を放棄しなければならない
- 相続放棄には期限がある
- 相続放棄によって他相続人の相続が変化する
【注意点1】相続放棄はすべての相続財産を放棄しなければならない
相続放棄をした場合、その人物は「はじめから相続人ではなかった」として扱われます。
つまり、相続放棄は共有持分だけでなく、すべての相続財産を放棄しなければいけないのです。
「共有持分はいらないが、それ以外の財産は相続したい」という場合、遺産分割協議で「共有持分を相続したくない」と主張するしかありません。
もしくは、いったん相続してから共有持分を売却する、もしくは持分放棄をおこなうという方法を取りましょう。

【注意点2】相続放棄には期限がある
相続放棄には期限があり、期限を過ぎると手続きができなくなるので注意しましょう。
相続開始を知ってから3ヶ月を過ぎると、相続を承認したものと扱われてしまうため、以後は相続放棄が認められません。
ですので、相続放棄をしたい場合は、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に手続きしましょう
【注意点3】相続放棄によって他相続人の相続が変化する
相続放棄をする場合、他の法定相続人にも影響を与える可能性があるため注意しましょう。
具体的には、相続放棄によって他相続人の相続分や相続順位が変動するのです。
そのため、相続放棄をおこなうときは、なるべく他相続人と相談してからのほうがよいでしょう。
【パターン1】相続分が変わる
相続人が「被相続人の配偶者」と「被相続人の子供2人」の場合、配偶者が財産の1/2を相続し、残りの半分を子供たちで分割相続するのが原則です。
しかし、子供の1人が相続を放棄した場合、残ったほうが相続分1/2を独り占めできます。
結果として、相続分は配偶者が1/2、放棄しなかった子供も1/2となります。
【パターン2】相続順位が変わる
相続には順位があり、被相続人の配偶者と子供がいる場合、被相続人の親は本来相続できません。
ところが、被相続人の子供が相続放棄をした場合、第2順位の相続人である親が相続人となります。
相続人が「被相続人の配偶者」と「被相続人の親」という組み合わせだと、相続分も変わります。配偶者は2/3、親は1/3が相続分です。
このように、相続放棄によって他相続人の取り分だけでなく、相続する人も変わる可能性があります。
共有持分を相続放棄する流れ
共有持分の相続放棄は、他の共有者や相続人に対して相続放棄することを伝えるだけでは完了しません。
相続発生から3ヶ月以内に以下の手続きをおこなう必要があります。
- 家庭裁判所に申述書を提出
- 回答書を返送
それぞれの手続きについて詳しく解説していきます。
①家庭裁判所に申述書を提出
共有持分を相続放棄する際は、家庭裁判所に以下の書類を提出します。
- 相続放棄の申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 相続放棄する人の戸籍謄本
被相続人の住民票除票や相続放棄する人の戸籍謄本は、市区町村役場で発行できます。
相続放棄の申述書は裁判所のホームページまたは家庭裁判所で取得できます。
取得した相続放棄の申述書に記載する主な内容は以下の通りです。
- 申述書の作成者の名前と住所
- 被相続人の名前と住所
- 相続開始日
- 相続を放棄する理由
- 相続財産の概略
裁判所のホームページの記入例を参考にしながら記入を進めるまたは家庭裁判所の窓口で質問しながら作成し、最後は家庭裁判所に提出します。
②回答書を返送
必要書類を家庭裁判所に提出した後は、1週間程度で照会書と回答書が送られてきます。
回答書に以下の内容を記述し、再度家庭裁判所に返送します。
- 被相続人の死亡を知った日
- 相続財産の詳細
- 被相続人との関係
- 相続放棄が自分の意思に基づくものか
家庭裁判所に回答書を返送してから1週間程度で審査が完了し、最後に申述受理通知書が送られてきます。
申述受理通知書が届けば、相続放棄の手続きが完了です。
相続放棄をした後の税金はどうなる?
当たり前のことではありますが、相続放棄をした人に相続税は課されません。
しかし、放棄した相続分は他の相続人のものになります。通常、財産を無償で譲渡すると受け取った人に「贈与税」が発生しますが、相続放棄の場合はどうなるのでしょうか?
結論をいうと、相続放棄による贈与税は発生しません。相続放棄は「最初から相続人ではなかった」とみなされるので、相続分を贈与したことにはならないのです。
相続放棄をしなかった人が、最終的に取得した相続財産の資産価値にしたがって、相続税を収めます。
共有持分の相続放棄を検討すべきケース
共有持分の相続放棄は共有持分だけでなくプラスの遺産もすべて放棄することになるため、必ずしも相続放棄を選択した方がよいとはいえません。
そのため、選択を誤らないためにも共有持分の相続放棄を本当に選択すべきか事前によく考えることが大切です。
共有持分の相続放棄を検討するケースとして以下の4つがあります。
- 相続人同士の仲がよくない
- 共有者がねずみ算式で増えて収拾がつかない
- 固定資産税や修繕費などの支出を負担したくない
- マイナスの遺産の割合が多い
それぞれのケースを詳しく解説していきます。
相続人同士の仲がよくない
遺産相続では、どのように遺産を相続するのか必ず相続人同士で話し合うことになります。
そのため、相続人同士の仲がよくないケースでは、相続放棄も選択肢の1つといえます。
相続放棄をすれば、相続人と遺産相続について話し合わずに済むため、顔を合わせることはありません。
しかし、他の相続人と関わらずに済む一方、プラスの遺産を受け継げなくなることを十分に理解する必要があります。
相続放棄してから後悔しないためにも、遺産分割のときだけ他の相続人と顔を合わせ、相続完了後に共有持分だけ売却するというのも選択肢の1つといえるでしょう。
共有者がねずみ算式で増えて収拾がつかない
共有者の中には、将来的に共有状態の不動産を売却したい、賃貸して家賃収入を得ることを検討している人もいると思います。
しかし、これらを実行するためには他の共有者の同意が必要なので、共有者がねずみ算式で増えているケースでは実行に移すことが困難です。
そのため、共有者が増えて収拾がつかなくなっているケースでは、将来的に不動産の扱いに困る可能性が高く、相続放棄して早めに関係性を断ち切るのも選択肢の1つです。
将来的に何かしらのトラブルに巻き込まれるのが嫌で関係性を断ち切りたいのであれば、相続後に共有持分を売却して関係性を断ち切ることも可能です。
固定資産税や修繕費などの支出を負担したくない
共有持分を相続すると、共有者は持分割合に応じて固定資産税や都市計画税、修繕費などの支出を負担します。
仮に被相続人の遺産をすべてピックアップして多少プラスという状況では、固定資産税や都市計画税、修繕費などの支出によって相続したプラスの遺産がすぐになくなる可能性も。
そのようなケースでは、最初から相続放棄を選択するのも選択肢の1つです。
しかし、相続してからすぐに共有持分だけ売却しても、売却後の固定資産税や都市計画税、修繕費などを負担する必要はありません。
共有持分の売却により得られる現金が多い場合には、相続後に共有持分を売却することを検討してみましょう。
マイナスの遺産の割合が多い
現金や不動産などのプラスの遺産と住宅ローンやマイカーローンなどのマイナスの遺産を合算してマイナスが上回っているケースでは、相続放棄を選択した方がよいです。
その理由は、共有持分を相続した場合はマイナスの遺産も相続することになり、被相続人の借金の返済義務も引き継ぐためです。
相続放棄を選択した場合にはすべての遺産を放棄できるため、借金の返済義務を負わずに済むので相続放棄を選択しましょう。
共有関係を避けたいなら「自分の持分だけ売却する」方法も検討しよう
共有持分の本質は所有権なので、各共有者はそれぞれが有している共有持分だけを売買できます。
しかも、他の共有者の同意などを得る必要はなく、各共有者が単独で自由に売買できるのです。
共有関係から離脱する方法として、相続放棄をするのではなく、いったん共有持分を相続してから持分売却することも検討してみましょう。
いったん相続した共有持分を売却するには、次の方法があります。
- 他の共有者に売却する
- 第三者に売却する
- 共有持分の買取業者に売却する
それぞれの方法のメリットやデメリットを解説していきます。
他の共有者に売却する
基本的に、共有者は「共有名義ではなく不動産を単独名義で独り占めしたい」という希望を持っている場合が大半です。
なぜなら、共有持分をまとめて単独名義にできれば、一般的な不動産価格で売却できるからです。
また、共有持分を多くもっていたほうが、共有者同士の話し合いでも有利になりやすいといえます。
そのため、他共有者に売却をもちかければ、正当な価格で買い取ってもらいやすいでしょう。
第三者に売却する
不動産投資家など、第三者に共有持分を売却する方法もあります。
ただし、共有持分だけでは自由に不動産を利用できないのは、すでに解説したとおりです。
そのため、共有持分だけを第三者に売却する場合、価格は半額程度まで落ちてしまう可能性があります。
ちなみに、共有持分を購入する第三者は大抵、他の共有者とも交渉して不動産全体の取得を目指します。悪質な場合、他共有者に対して強引な交渉をおこなうケースもあるので注意しましょう。
他共有者に迷惑をかけてしまう結果となり、そのせいで自分と他共有者との関係性まで悪化する恐れがあります。
共有持分の買取業者に売却する
ここまで解説したとおり、共有持分は扱いにくい資産といえます。売却は可能とはいえ、需要は少なく売りにくいのが実情です。
しかし、共有持分を専門に取り扱う買取業者であれば、共有持分を活用・収益化する知識が豊富にあるため、高額での買取が可能です。
加えて、弁護士と連携している買取業者なら、持分売却の手続きや共有者との交渉も適切におこなえるので、スムーズかつトラブルのない持分買取ができます。
当サイトを運営するクランピーリアルエステートも、弁護士と連携した買取業者です。無料相談も承っているので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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まとめ
相続によって共有持分をもってしまうと、共有不動産の使用や処分などについて、いろいろな制限やトラブルに巻き込まれる可能性が高いです。
面倒な共有関係を避ける方法として、共有持分の相続放棄は有効な手段といえるでしょう。
ただし、相続放棄をすると、共有持分以外の財産もすべて放棄しなければいけません。必ずしも、相続放棄をすることがベストとは限らないでしょう。
そのため、いったん共有持分を相続して、その後に持分売却をおこなうことも検討しみましょう。専門の買取業者なら、高額かつ最短数日での現金化も可能です。
共有持分と相続放棄についてよくある質問
共有持分とは、共有不動産における「共有者ごとの所有権割合」を表したものです。持分の権利割合は1/3などの数字で表記します。ちなみに、共有不動産は「他人と共有している不動産そのもの」を指します。
はい、相続放棄はできます。ただし、共有持分だけでなく、相続財産をすべて手放すことになります。
相続開始を知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申請します。期限を過ぎると相続放棄はできなくなるため、必ず期限内に申請しましょう。
はい、売却可能です。自分の共有持分であれば、共有者の同意がなくても売却できます。
はい、あります。一般的な物件を扱う大手不動産会社よりも「共有持分を専門としている買取業者」へ売却したほうが、高額となる可能性があります。また、相続問題などでトラブルになっている共有持分は、弁護士と連携している専門買取業者への売却がおすすめです。→ 【弁護士と連携!】共有持分の買取窓口はこちら!