
高い入居率を維持するために欠かせないリフォーム。定期的に適切な修繕を加えることは、入居率を高めるだけでなく収益物件の価値を保つことも可能です。しかし、やみくもにリフォームをすればいいという訳ではありません。費用対効果を考え、回収期間はどの程度になるか、計画を立てながら賃貸運用していく必要があります。
今記事では、不動産投資でリフォームをするタイミングや設備を解説し、利回りがわかるシミュレーション方法もお伝えします。投資物件のリフォームを検討している経営オーナーは、ぜひ参考にしてください。
不動産投資でリフォームを検討するタイミングや箇所
投資物件のリフォームで重要なことは「リターンを考えた修繕計画を立てること」です。修繕計画というと、金額ばかりに目が行ってしまいがちですが、タイミングもとても重要です。また、どこを直せば入居者の空室リスクを下げられるかという点も考慮していかなければいけません。それでは、リフォームを行うべき時期と修繕個所を確認していきましょう。
リフォームを検討するタイミング
リフォームを行うベストなタイミングは、以下の2つの時期となります。
・入居者が退去したとき
まずひとつ目のタイミングである「築年数10年目前後」にリフォームを行うべき理由は、「設備保証が切れる」「建物に不具合が発生してくる」時期になるからです。キッチンや給湯器、バスやトイレなどの設備機器の保証期間は10年に設定されていることが多いため、この保証期間にリフォームを検討するといいでしょう。
ふたつ目のタイミングは、入居者が退去した時期です。当然のことながら、入居中は修繕を行うことができません。次に入居が決まってしまえば、リフォームするタイミングは数年後になってしまいます。そのため退去後は傷んでいる部分や劣化している部分をチェックし、適切な個所のリフォームを行います。
リフォームを検討する場所
すべての個所をリフォームできればいいのですが、費用対効果を考えるとそんな訳にもいきません。リフォームを検討する場所は、単身用とファミリー向けの賃貸物件によっても異なります。しかし、共通して言えることは、入居者に「快適な暮らし」と「高い利便性」を与えられるリフォームを行うべきということです。ここからは、優先してリフォームを行った方がいい場所をピックアップして紹介します。
床・クロス
床やクロスは、資産価値を高めるために外せない個所です。部屋の雰囲気を変え、入居者の印象を上げることができます。全室を貼り替える必要はありません。特に損傷が激しい部分を中心に張り替えたり、クリーニングをかけたりすると、コストを抑えられるでしょう。
反対に、損傷がなくてもクロスを貼り替えた方がいい場合もあります。空室期間が続いたり、周辺の物件との差別化を図りたいときに、貼り替えを検討してみてください。
バス・トイレ
バス・トイレは湿気が多く腐食しやすい場所です。設置後15~20年で交換時期がやってきますが、「コーキングの劣化」「排水溝からの腐敗臭」「浴槽や便器のひび割れ」などが発生した場合は、早めに交換を検討してください。
バス・トイレはどのようにリフォームを行うかによって、経費や工事期間が異なります。劣化部分と修繕履歴を照らし合わせながら「ユニットバスを入れ替える」「浴槽を交換する」「壁や床を張り替える」など、リフォームする目的を明確にしていきましょう。
キッチン
油汚れや湿気で傷みやすいキッチンは、水回りの中でも特に劣化が激しい個所です。キッチンも設置から15~20年経過したころが交換時期となります。また、給排水管の工事と一緒にキッチンのリフォームをまとめて行うケースが多い傾向にあります。
キッチンをリフォームするときは、使い勝手が良くなるよう設備交換することがポイントになります。「掃除はしやすいか」「収納はあるか」「湯温調整しやすいか」を重視しリフォームしていきましょう。
インターホン
アパートやマンションに設置されている集合住宅用のインターホンの寿命は、約15年です。インターホンは防犯対策として重要な設備であるため、入居者の安全を守るためにも適切な時期に交換してください。商品によっては配線工事が必要だったり有資格者の施工が必要だったりするため、自己判断で対応せず専門業者に交換を依頼しましょう。
リフォームの費用対効果をシミュレーションする
リフォームを行う前に「リフォームに掛けた費用を回収できるか」を考えなければ、利益を損ねてしまう結果となります。リフォームをして入居者が決まっても、掛けた費用が家賃収入で回収できないのであれば計画を変更し、場合によってはリフォームを取りやめることも考えなければいけません。
費用対効果を計算し、必要な修繕かどうか見極めていくためには以下の5つのポイントを押えておきましょう。
・シミュレーションの計算方法
・リフォームを見極めるポイント
・なるべく安くリフォームする方法を把握する
・そのリフォームはローンを組めるかどうか
ここからは、それぞれの方法について解説していきます。
そのリフォームは費用対効果を上回るか把握する
リフォームで費用対効果を出すためには「空室率を下げられるか」「家賃の下落を防げるか」という点が重要です。「リフォームを検討する場所」の項目では費用対効果が高いリフォーム個所について解説してきました。
所有物件の劣化状況とターゲット性を見極め、できるだけ少ない費用で効果が出せる修繕を実施することが大切です。
例えば、ファミリー向けの物件では、水回りやセキュリティ対策が重要視されます。この場合はキッチンやインターホンのリフォームが効果的と言えます。
一方で、単身者向けの物件では、デザインや機能性に重点を起きましょう。高級感のあるクロスに貼り替えたり、食洗器や浴室乾燥機を付けるなど、利便性を高めることができるリフォームかどうかをチェックしてみてください。
シミュレーションの計算方法
賃貸業では、どのくらいの期間で投資額を回収できるか把握しておかなければいけません。「大体5~6年程度で投資したお金を回収できるだろう」と根拠のない大雑把な計算ではなく、利回りを算出してシミュレーションしていくことが大切です。
利回りの計算方法はとてもシンプルで「年間収入÷購入額」で算出できます。しかし、リフォーム費用を加えた場合は、以下の式になります。
理想的な実質利回りは、約10%前後です。これから行うリフォームがどの程度の利益を生むのか実際に計算してみてください。リフォームをした後は、物件価値が上がるため家賃アップする大家さんも多いと思いますが、以前の家賃よりも収益が見込めるかどうかシミュレーションしていきましょう。
リフォームに投資しすぎて、利回りが悪くなってしまうならば、有効的な修繕とは言えません。本当にリフォームが必要かどうかを見極めながら、修繕を検討していきましょう。

リフォームを見極めるポイント
では、費用対効果を出すための「修繕のタイミングの見極め」は、どこで判断すべきなのでしょうか。修繕するタイミングは、「一棟マンション」「区分マンション」「戸建て」のように物件のタイプごとに異なります。それぞれ、どんなタイミングでリフォームを実施すればいいのか、リフォームを見極めるポイントについてみていきましょう。
一棟マンションの場合
一棟マンションのリフォーム時期の目安は、小さな破損や汚れが目立ち始めたころです。内装か外観かによってリフォーム時期は異なりますが、以下の表に記載しているような損傷が見つかった場合、修繕を検討してみるといいでしょう。
内装 | 外観 | |
築10~15年 | 水回りの腐食や漏れ | モルタル部分の劣化や剥がれ |
築16~20年 | キッチンやトイレの故障 | 給排水管や土台の腐食 |
ただし、一棟マンションでは、下層階へ影響を与えないため、水回りの配置を変更できない物件もあります。リフォームする場合は、構造上の問題を考えてからリフォームを行いましょう。
区分マンションの場合
区分マンションでは、専有部分の修繕がメインとなります。入居者が故意に破損させた部分に関しては修繕費を請求できますが、経年劣化による損傷の場合はオーナー負担です。修繕のタイミングは以下を目安にしてください。
内装 | |
築10~15年 | 壁やクロスの変色、エアコンの不具合 |
築16~20年 | 給湯器の不具合 |
区分マンションの場合は、他の住民とのトラブルを起こさないよう十分に注意が必要です。特に大規模修繕のタイミングと被ってしまうと、機材の搬入が難しくなったり他の入居者に迷惑をかけてしまったりする可能性があります。
戸建ての場合
戸建てをリフォームするタイミングは、一棟マンションと同様に「内装」「外壁」の双方を確認していきます。木造の場合はRC構造よりも劣化が早い場合があるので、定期的に損傷部分はないかチェックしていきましょう。
内装 | 外観 | |
築10~15年 | クロスの汚れ、水漏れ | モルタル部分の劣化や剥がれ |
築16~20年 | タイルの剥がれ、設備故障 | 給排水管や土台の腐食 |
ただし、戸建てのリフォームは、建築基準法や防火法を意識していく必要があります。外壁や屋根の材質を変更したりガラスや窓を取り換えたりする場合は、防火・準防火地域に該当しているかどうかを確認するようにしましょう。

なるべく安くリフォームする方法
費用対効果を高めるために、できるだけリフォーム費用を抑えることが大切です。費用を抑えるためには、以下の2つの方法が有効と言えます。
複数社から見積もりを取る
数あるリフォーム業者の中から、できるだけお得に修繕してくれる業者を見つけるためには「相見積もり」を取りましょう。相見積もりは複数の業者に見積もりを依頼することで、価格や内容を比較するために役立ちます。
複数の業者に相見積りを取るときは、「できるだけ同じ条件を提示」して「2~3社に依頼」するようにしましょう。業者によっては、「セット注文で10万円」とまとめて価格を提示してくることもあります。この場合は、施工内容をよく確認し、どんな工事を行う予定なのか問い合わせてみましょう。
また、相見積もりであることを業者に伝えることも大事なポイントです。「他の業者と比較されている」という競争意識を持たせてみてください。
必要な箇所だけリフォームする
リフォームは、業者の判断次第で費用が大きく変動します。見積もってもらった工事が、適切かどうか素人が判断するのは非常に困難でしょう。なかには、すぐに必要ではない工事をすすめてくる業者もいるかもしれません。見積もりを比較して依頼業者を決めたあとは、「この部分のリフォームをお願いしたい」と具体的な修繕個所を提示し、オーナーの意思をハッキリ伝えてください。
きちんとメモを取りながら話を聞いてくれたり、無意味に予算を引き出したりしないか担当者の対応をチェックしてみることも大切です。不要なリフォームを避け、オーナーが求めているリフォーム工事をしてくれる業者なのかを見極めていきましょう。
リフォームはローンを組むこともできる
損傷部分が大きく、思った以上に費用が膨らんでしまうこともあります。このような場合は、「リフォームローン」を検討してみましょう。
リフォームローンは、賃貸住宅のリフォーム資金に回すことができます。外壁や屋根の補修や塗装、給排水管や水回りの設備交換などに利用可能です。また、賃貸兼住宅であれば物件購入代金にも充てられます。ただし、リフォームローンの中には、居住用にしか使えないローン商品もあるため、賃貸経営にも適用させることができるかを確認しましょう。

投資用物件のリフォームを成功させる3つのポイント
リフォームのコストを抑えるためにDIYでセルフリフォームを実施するオーナーもいますが、一見簡単そうに思えても想像以上に作業量が多く、修繕箇所によっては資格が必要なためあまりおすすめできません。投資物件のリフォームを成功させるために、正しいリフォームの手順を理解することから始めましょう。正しいリフォームができれば空室率を下げたり、利回りを上げることが可能です。
1.リフォームの完成までのステップを理解する
まずは、リフォームがどのように進んでいくのかを理解しましょう。リフォームは以下の流れで進みます。
・完成イメージを伝えるための打ち合わせを行う
・工務店や設備業者を含めての下見を行う
・最終見積もりの確認
・支払い金額と時期を確認後に契約
・工事着工
・施工完了
このように、施工完了までは時間を要します。完成したい時期に合わせてスケジュール調整をしていきましょう。
2.借り手のニーズが高い設備をリフォームする
すべての箇所をリフォームすることは難しいので、ターゲットとなる入居者の属性を見極めてニーズに応えられるリフォームを行っていきましょう。ほとんどの入居者は以下のように区分することができます。
・学生か社会人か
・新婚層か子育て世帯か
入居者によって物件選びで重視するポイントは異なるので入念なリサーチが必要になります。「全国賃貸住宅新聞」で公表された「入居者に人気の設備ランキング2018年度版」によると、入居者に人気の設備は以下のようになりました。
単身者向け設備 | ファミリー向け設備 |
1位 インターネット環境
2位 宅配ボックス 3位 オートロック 4位 備え付け家具 5位 浴室乾燥機 |
1位 インターネット環境
2位 追い炊き機能 3位 オートロック 4位 宅配ボックス 5位 システムキッチン |
上記の表を比較すると、単身向けとファミリー向けに共通する人気の設備は「インターネット環境」「宅配ボックス」「オートロック」であることがわかります。このようにまずはどの層からもニーズが高い機能からアップグレードするのもよいですし、所有している物件が完全に単身者向けのマンションなのであれば、一人暮らしの助けとなる「備え付け家具」や「浴室乾燥機」を設置するのもよいでしょう。
3.設備の新しさを強調する
多少費用がかかっても新品に交換した方がいい場合もあります。例えば、エアコンやクロス、給湯器などは、比較的安く交換することもできます。「買い替えるか」「修理すべきか」迷ったときは、修理費用が新品価格の50%以上だったときは新品購入を検討しましょう。
誰でも、新品を使うのは気持ちがいいものです。入居者に「設備を新しくしました」と強調すれば、入居率を向上させる有効的な方法と言えます。
水回りは重点的に修繕する
「バス」「トイレ」「キッチン」などの水回りは生活に欠かせない場所です。毎日使用する場所であるため、劣化や損傷も激しくなります。入居者から修繕を依頼されたり、メンテナンスで不具合を感じることが多くなったら、早めにリフォームを依頼しましょう。
利便性を考え、最新機器にすることも大切ですが、高価な設備でなくても新しいというだけで、見栄えを良くするというメリットも生まれます。新しくキレイな水回りは、単身者やファミリー層にも喜ばれる設備です。見栄えや使い勝手も向上しますので、ぜひ重点的にリフォームすることを検討しましょう。
リフォームよりリノベーションの方がいいことも
リフォームよりもリノベーションを行った方が、費用対効果が上がることもあります。やり方によっては、新築物件以上に不動産の価値を高められるチャンスです。では、どんな場合にリノベーションを検討した方がいいのでしょうか。ここからは、収益物件向けのリノベーション情報を紹介していきます。
リノベーションとは
リノベーションとは、「修復」「再生」「改新」という意味です。物件リノベーションに当てはめると、新しく造りかえることを指します。具体的には「中古住宅の壁を取り払い、リビングを大きくする」「2階の一部を取り壊し、吹き抜けをつくる」など、間取りや見栄えを大きく変更することで、物件を新しく生まれ変わらせることができるのです。
また、リノベーション物件は新築同様の見栄えであるにもかかわらず、新築よりも格安物件として売りに出されています。これらのメリットを踏まえると、リノベーション投資方法は以下の2つになります。
・リノベーション物件を購入し新築よりも購入費用を抑える
しかし、すべての収益物件でリノベーションを行えるとは限りません。間取りの変更には限りがあるのです。
リノベーションを検討するべき箇所
まずは、「リノベーションを検討するべき箇所はどこなのか」を確認していきましょう。リノベーション費用は決して安くありません。「この場所もやりたい、ここも新しくしたい」と次々に修繕個所を挙げていったら、予算がオーバーしてしまいます。また、場合によってはリノベーションを行わない方がいい所もあります。
リノベーションは「物件の価値を高める」ことが可能です。劣化や損傷が激しくなった場所を新しくすることはもちろん必要ですが、流行のクロスの色や競合物件の間取りのアイディアを取り入れるなど、時代に沿った賃貸ニーズに応えることも考えていきましょう。
長期的に物件を保有するならリノベーションの方がいい
リノベーション投資のメリットは、「初期投資費用が安い」「新築同等の価値が出せる」ことです。「新築よりもコストを抑えつつ物件の価値を高められる」という点を踏まえると、長期的に投資を続けるのであれば、リフォームよりもリノベーションの方がお得と言えます。
安く購入し高い賃料を得ることができれば、高利回りを狙えます。リノベーション会社に保有している中古物件の工事を依頼したり、すでにリノベーションをしてある物件を購入したりするなど、自分の資産状況や環境を再確認し、投資しやすいスタイルを選んでいきましょう。
まとめ
投資物件のリフォームを行うときは、リターンを考えた修繕計画を立てることが大切です。「費用は回収できるのか」を踏まえ、費用対効果を考えながら修繕計画を立てていきましょう。
また、入居者に「快適な暮らし」と「高い利便性」を与えられるかどうかを意識しながらリフォーム投資を行うと空室リスクを減らすことができます。自身の物件にはどんな入居者が多いのか、ターゲット層を確認しながら、リフォーム内容を決めていくことをおすすめします。
弊社では、不動産投資にお悩みのオーナー様のために不動産の相談を受け付けています。資金繰りや運営に関してお困りのことがあれば、ぜひ弊社にご相談ください。