住宅ローン控除の適用条件と計算例|申告方法も解説します!

住宅ローン 概要 適用条件

住宅ローンを組むと、所得税の税額を減らせる「住宅ローン控除」が受けられます。

住宅ローン控除を申請すれば、10年の間は所得税から「年末の住宅ローン残高の1%相当額(上限40万円)」を減らせます。

10年間で最大400万円の節税効果があるため、住宅ローンを組んだ後は忘れず確定申告をおこないましょう。

住宅ローン控除を申請するには、住宅ローンを組んだ翌年2月16日~3月15日に税務署で確定申告をしなければいけません。

また、税制は常に変更される可能性があります。住宅ローン控除を申請するときは、最新の情報を税理士に聞いてみましょう。

「新築住宅における住宅ローン」なら控除額は年間で40万円

新築住宅における住宅ローン控除制度の概要は、次のとおりです。

新築住宅における住宅ローン控除制度の概要
控除期間 10年
年間の控除額 年末の住宅ローン残高の1%相当額
最大控除額 400万円(10年×40万円)
※年間の所得税ですべての控除額を引ききれない場合、住民税へ適用される。
例えば、新築のマイホームを購入し、年末の住宅ローン残高が4,000万円だった場合、その1%である40万円が所得税から控除されます。
また、その年の所得税が30万円だった場合、余った控除額10万円は住民税の控除に適用されます。
※住民税に適用する場合、課税所得金額の7%(上限13万6,500円)までしか控除されません。

参照:国税庁「認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」

住宅ローン控除の適用条件

住宅ローン控除を適用するためには、以下の適用条件に該当する必要があります。

  • 新築または取得から6カ月以内に居住している
  • 適用を受ける年の12月31日まで住んでいる
  • 控除を受ける年の所得が3,000万円以下
  • 住宅の登記床面積が50㎡以上で、半分以上を自らの居住用としている
  • 返済期間10年以上の住宅ローンを組んでいる
  • 居住した年とその前2年、後3年において、長期譲渡所得の特例などを受けていない

自分の状況が適用条件を満たしているか不安なときは、税理士に相談しましょう。

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住宅ローン控除を年間で2回利用できるケース

住宅ローン控除は、適用要件を満たしていれば年間で2回目であっても適用することが可能です。

ただ、現実的にそのようなケースは少ないといえるでしょう。あるとすれば、住宅の買い替えなどで1回目に購入した自宅を売却し、2回目の自宅を購入するというケースが考えられます。

このケースを利用する場合、譲渡所得税に注意が必要です。通常、自宅の売却では「マイホームを売ったときの特例」という、3,000万円の特別控除を受けられます。

しかし、この特例は住宅ローン控除との併用ができないのです。

どちらを適用するほうが有利であるかはケースバイケースになりますので、住み替えで2回目の住宅ローン控除の適用を検討している場合は十分注意しましょう。

参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例」

転勤で一時的に住まなくなったらどうなる?

住宅ローン控除は、自ら居住することで適用を受けられます。ところが、仕事の都合で転勤を言い渡され、一時的に住めなくなることもあります。

では、そのような場合、住宅ローン控除は適用できるのでしょうか。結論からいうと、居住していない期間については、住宅ローン控除を適用できません。

転勤が終わってマイホームに戻ってきたとき、住宅ローン控除の残存期間があれば、その分だけ控除を受けられます。

住宅ローン控除の限度額が上がる長期優良住宅と低炭素住宅の概要

一定の条件を満たした住宅は、住宅ローン控除の限度額が上がる優遇措置を受けられます。

優遇措置の対象となる住宅には「長期優良住宅」と「低炭素住宅」の2種類があり、それぞれの具体的な概要は次のとおりです。

「長期優良住宅」と「低炭素住宅」の概要
住宅の種類 住宅の概要 認定要件
長期優良住宅 長期にわたって「安心かつ快適」に住める性能や維持計画を備えた住宅 劣化対策や耐震性、維持保全するための定期的な点検など
低炭素住宅 市街化区域等内に建築された住宅で、二酸化炭素の排出を抑えたもの ・「外皮の熱性能」と「一次エネルギー消費量の抑制」は必須
・そのほか、節水対策やエネルギーマネジメントなど複数の評価項目から2つ以上を選択し、基準をクリアする

長期優良住宅は、長期にわたって良好な状態で住み続けられると認定された住宅です。耐震性・耐久性・省エネなど各要件をクリアし、耐震基準適合証明書や、耐震等級2以上と認められた既存住宅性能評価書の取得が求められます。

低炭素住宅は、低炭素化(二酸化炭素排出の抑制)に対する取り組みがされている住宅です。太陽光発電パネルや天井断熱、外壁断熱、床断熱などが施された住宅が対象です。

参照:国土交通省「長期優良住宅のページ」

参照:国土交通省「認定低炭素住宅に関する特例措置」

長期優良住宅と低炭素住宅の具体的な優遇内容

通常、住宅ローンの最大控除額は400万円(年間40万円×10年間)です。

しかし、長期優良住宅や低炭素住宅は上限額が500万円(年間50万円×10年間)となり、最大で100万円も節税効果が上がります。

また、住宅ローン控除だけではなく、不動産取得税と登録免許税も優遇されます。

  • 不動産取得税:不動産を取得したときにかかる税金
  • 登録免許税:所有権移転などで登記申請するときにかかる税金

不動産取得税と登録免許税における具体的な優遇額は、次のとおりです。

不動産取得税 登録免許税
長期優良住宅 課税標準額から1,300万円を控除(一般住宅は1,200万円) 税率が不動産価格の0.1%(一般住宅は0.15~0.3%)
※マンションの所有権移転登記は0.2%
低炭素住宅 課税標準額から1,200万円を控除(一般住宅と同じ) 税率が不動産価格の0.1%(一般住宅は0.15~0.3%)

住宅ローン控除を申告する前に確認しておくこと

このように、住宅ローン控除を適用すれば、人によっては高額な還付を受けられたり、大幅な節税になります。

マイホームを購入する際には、制度の仕組みをよく理解した上で判断することが重要です。

そこで、住宅ローン控除を利用するにあたって、あらかじめ注意すべきポイントを解説します。

ポイント1.戻ってくる税金があるか

住宅ローン控除は、そもそも控除されるだけの所得税や住民税がなければ適用できません。

例えば、住宅ローンの年末残高が3,000万円だった場合、控除される金額は30万円です。

ところが、所得税と住民税で30万円を引き切れなければ、差額分の控除額が無駄になります。

自分自身の年収と照らし合わせて、住宅ローン控除を適用した場合にいくら控除されるのか計算してみることをおすすめします。

ポイント2.繰り上げ返済をすべきかどうか

住宅ローン控除は「住宅ローンの年末残高の1%」が控除額です。つまり、年末残高が多ければ控除額も増えることになります。

そのため「繰り上げ返済した場合」と「繰り上げ返済をせずに住宅ローン控除額を大きく確保した場合」のどちらが有利なのか、確認することが大切です。span>

一般住宅の場合、住宅ローン控除の年間控除額上限は40万円のため、残債が4,000万円残るまでは繰り上げ返済しても影響はありません。

ただし、4,000万円を切る場合は、住宅ローン金利との兼ね合いが重要になってきます。

例えば、3,000万円の住宅ローンを組んで、金利が年0.8%という例で計算すると、下記のようになります。

・毎年1,000万円ずつ返済して3年で完済した場合、金利の合計は48万円、住宅ローン控除額は60万円です。控除額から金利を差し引くと、12万円の得となります。
・一方、毎年300万円ずつ返済し10年で完済した場合、金利の合計は132万円、住宅ローン控除額は165万円です。控除額から金利を差し引くと、33万円の得となります。

実際はこれほど単純ではありませんが、10年かけて返済したほうが支払う金額を抑えられます。

中古住宅における住宅ローン控除は「控除額の上限」が変わる

ここまでは新築住宅の住宅ローンについて解説しましたが、中古住宅においても住宅ローンを利用する場合はあります。

そして、中古住宅であっても、住宅ローン控除は適用可能です。基本的な仕組みや計算は、新築住宅とほぼ同じとなります。

ただし、控除額の上限が年間20万円となる可能性があるので注意しましょう。

参照:国税庁「中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」

売主が個人の場合は控除上限が20万円になる

中古住宅の場合、売主が個人だと住宅ローンの控除額が20万円までとなります。

より正確には、消費税が発生する不動産売買は控除額が20万円と設定されています。個人が売主の場合は消費税がかからないため、控除額の上限も20万円となるのです。

中古物件であっても、消費税が発生する(売主が法人である)場合は、年間40万円まで控除されます。

購入以外で住宅ローン控除を使えるケース

住宅ローン控除は、マイホームを新しく購入するときだけでなく、増改築などの費用でも利用できます。

購入以外で適用可能なケースは、次のとおりです。

  • 増改築や大規模修繕、または模様替えなどの工事
  • マンションの専有部分に対しておこなう一定以上の工事
  • 現行の耐震基準に適合させるためにおこなう耐震改修工事
  • バリアフリーのためにおこなう一定の改修工事
  • 省エネのためにおこなう一定の改修工事

それぞれ細かい要件があるため、適用にあたっては税理士に相談することをおすすめします。

住宅ローン控除の申請方法

住宅ローン控除申請

住宅ローン控除は、条件にあてはまれば当然適用されるのではなく、自ら手続きをしなければなりません。

ここでは、住宅ローン控除の申請方法について解説します。

住宅ローン控除を受けるためには、入居した年の翌年に税務署で「確定申告」をする必要があります。

住宅ローン控除に必要となる書類

住宅ローン控除の申請に必要な書類は次のとおりです。

  • 住民票の写し:取得した物件の住所地における住民票が必要
  • 残高証明書:毎年、年末頃に金融機関から郵送される住宅ローンの残高証明書
  • 登記事項証明書:最寄りの法務局で取得
  • 売買契約書または請負契約書など:売主や建築業者と交わした契約書が必要
  • 源泉徴収票:勤務先から発行されるもの

また、中古物件の購入で住宅ローン控除を申請する場合、以下のいずれかも必要です。

  • 耐震基準適合証明書
  • 既存住宅性能評価書
  • 既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書

給与所得者の場合は、初年度に確定申告をすれば、残りの9年間については申告不要です。勤務先に住宅ローンの残高証明書を提出することで「年末調整」による控除を受けられます。

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まとめ

住宅ローン控除を使えば、当面の間はかなりの税金が節約できますので、家計も楽になります。

ただし、適用期間が過ぎたときに「控除がなくなって家計が苦しくなった!」と慌てないように気をつけましょう。

住宅ローンを組むときは、完済するまでの収入と支出を予想し、計画的な返済をすることが大切です。

住宅ローン控除の概要についてよくある質問

住宅ローン控除とはどんな制度ですか?

住宅ローンの残高に合わせて、所得税の控除を受けられる制度です。年末の住宅ローン残高の1%相当額が所得税から控除されます。

住宅ローン控除を利用するには、なにをすればよいですか?

住宅ローンを組んだ翌年に、法務局で確定申告をする必要があります。

住宅ローン控除を申告するにあたって気をつけることはありますか?

適用期間は「住宅に入居してから10年間」なので、マイホーム購入の翌年に忘れず申告しましょう。また、控除額や適用期間は変更される場合もあるので、最新の情報は税務署や税理士に確認することをおすすめします。

中古住宅の購入でも、住宅ローン控除は利用できますか?

はい、利用可能です。ただし、売主が個人の場合(正確には消費税が発生しない取引の場合)、控除額の上限が年間20万円になるので注意しましょう。

住宅ローン控除の適用条件や手続きに不安があるのですが、どこに相談すべきですか?

税金の専門家である、税理士に相談しましょう。税理士なら、個々の状況に合わせて最適な節税方法を提案できます。

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