アパート経営の修繕費の目安は?費用を抑えるポイントを紹介

アパート 修繕費

「アパートの修繕費ってどれくらいかかるの?」

「修繕費と資本的支出(減価償却費)の違いって何?」

「アパートの修繕費を抑えるにはどうしたらいい?」

これからアパートの経営を考えている方や、アパートのオーナー様の中には以上のような悩みを持っている方も多いのではないでしょうか?

アパートを経営する上で、修繕費などの支出は決して無視できません。

しかし、工夫次第で修繕費は大きく抑えられます。

この記事では、以下の3点を中心にアパートの修繕費について解説していきます。

  • アパートの修繕にかかる費用の相場
  • アパートの修繕費を抑える方法
  • 修繕費と資本的支出の違いについて

アパートの修繕の種類と費用

アパートを経営する上では、オーナー様が費用を負担して建物・設備の修繕を行わなくてはいけない場合があります。

アパートの修繕にかかる費用としては、主に以下の4つがあげられます。

種類 費用相場 実施の頻度 具体的な内容
①原状回復 数万~20万円 住居人の退去毎 ・壁紙、フローリングの張り替え
・ハウスクリーニング
②破損箇所の修理や交換 数万~数十万円 破損時 ・エアコン、キッチン、トイレなどの修理交換
③予防修繕 数万~数十万円 数年に一度 ・古い設備の入れ替え

・シロアリ点検・駆除

・外壁劣化調査、耐震調査など

④大規模修繕 数百~数千万円 数年~数十年に一度 ・外壁・屋根・ベランダなどの共用部の修繕

・外壁の塗装、柱補強工事

・給排水管の清掃や交換など

①原状回復にかかる費用

・頻度:住居人の退去毎
・費用相場:数万~20万円

アパートの入居者が退去したあとに、部屋を元通りの状態に戻すことを『原状回復』と呼びます。

原状回復にかかる費用は、入居者様が入居時に支払った敷金から差し引かれるのが一般的。

また、室内の改造・故意による破損など、入居者様の責任により修繕が必要な場合は、入居者様が費用を負担しなくてはいけないと民法にも定められています。

(賃借人の原状回復義務)
第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
引用:民法第621条

ただし、一部例外としてオーナー様が原状回復の費用を負担しなくてはいけないケースもあるため注意しましょう。

貸主(オーナー)負担の例

貸主(オーナー)負担で原状回復しなくてはいけないのは以下のようなケースです。

・テレビや冷蔵庫などの家電製品を置いたことによる壁面の黒ずみ、フローリングや畳のくぼみや変色
・カレンダーなどを壁に固定するための画鋲の使用跡
・エアコン設置のために開けられた壁の穴
・畳の張り替えや裏返しの必要性
・フローリングのワックス掛け
・フローリングの色落ちや傷
・破れていない網戸の張り替え
・地震による窓ガラスの割れ
・構造的な理由で自然にひびが入ったガラス
・故意でない鍵の紛失による交換
・耐用年数が経過した設備の故障

家具を設置したことによる床や壁の劣化や画鋲の使用跡など、一見借主の責任のように感じられる損耗も、貸主負担での修繕が必要になるケースが多い点に注意しましょう。

基本的に、通常の生活の範囲で生じる損耗の修繕は貸主負担となります。

借主(入居者)負担の例

一方、原状回復にかかる費用が貸主(入居者)負担となるのは以下のようなケースです。

・台所の油汚れ、カビ、シミ
・清掃を怠ったことによるカビやシミ
・食べ物や飲み物をこぼしたシミ、カビ
・タバコによるヤニや臭い
・落書き
・ペットが付けたキズや臭い
・下地ボードの補修が必要な釘穴やネジ穴
・クロスの破損(破れや傷)
・故意や過失で割った窓ガラス
・使用方法を誤ったことによる設備の故障
・冷蔵庫や洗濯機周りのサビやカビ
・ガス台や換気扇にこびりついた油汚れや煤
・風呂、トイレ、洗面台などの水回りに付着した水垢やカビ
・過失による鍵の紛失

借主が故意でつけた傷や、日常の手入れを怠ったために生じた損耗については借主が費用を負担して原状回復をしなくてはいけません。

参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料(国土交通省住宅局参事官)

②破損箇所の修理や交換にかかる費用

・頻度:数万~数十万円
・費用相場:破損時

入居者が通常の生活を送っているなかで物件そのものや付属の設備に不具合が発生した場合には、貸主(オーナー)負担で修繕が必要になります。

具体的には以下のような箇所の修理・交換が貸主負担となります。

・エアコン
・キッチン(ガスコンロ、シンク)
・浴槽
・給湯器
・トイレ

入居者から故障の申し出があった際など、都度修繕を行わなくてはいけません。

修繕時期の予想は難しいため、せめて設備の耐用年数や交換時期の目安を把握しておきましょう。

設備の修繕には数万~数十万円かかるケースもあるため、余裕資金を用意しておくと安心です。

③予防修繕にかかる費用

・頻度:数年に一度
・費用相場:数万~数十万円

予防修繕とは、建物の劣化や損傷を未然に防ぐために、予防として行う修繕を指します。

予防修繕として必要になるのは以下のようなものです。

・シロアリ点検・駆除
・外壁や屋根の状態調査
・耐震調査
・古くなった設備・機器の入れ替え

以上のように、定期的に行われる設備のメンテナンスや点検活動なども含まれます。

建物の劣化や損傷が進行する前に発見・修繕することで、建物の価値を維持できます。

また、予防修繕を怠ったせいで将来的に大きなトラブルが起こると費用負担も大きくなります。

オーナー様は、しっかりと計画を立てて予防修繕を適切に実施しましょう。

④大規模修繕にかかる費用

・頻度:数年~数十万円
・費用相場:数百~数千万円

大規模修繕とは、建物自体の大規模な工事や修繕を指します。

建物全体または一部の構造や設備を改修・強化するために、以下のような大規模修繕が必要になります。

・屋根の塗装・葺き替え(ふきかえ)
・耐震補強工事
・ベランダなど共用部の補修
・外壁の塗装・タイル張り替え
・柱補強工事
・給排水管の清掃や交換
・駐車場やフェンスなどの補修 など

大規模修繕は、建物の安全性や快適性を維持するためにとても重要です。

大規模修繕は、外壁に足場を組むなどの大掛かりな作業となるケースが多く、修繕にかかる費用は数百~数千万円と大きくなり、期間も数ヶ月以上かかる場合が多いです。

大規模修繕にかかる費用は負担が大きいため、計画的に積み立てをして、余裕を持ってアパート運営をすることが大切です。

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アパートの修繕費用を抑えるための準備

アパートを経営する上で、修繕費用は決して無視できません。

しかし、いくつかのコツを覚えておけば、未然に修繕費用を抑えられる可能性があります。

ここでは、アパートの修繕費用を抑えるためにとるべき準備について解説していきます。

入居者審査を慎重に行う

アパートを経営する上では、明らかに入居者に責任がある場合をのぞき、多くのケースで貸主(オーナー)負担で修繕を行わなくてはいけません。

そのため、少しでも修繕費用を抑えるために、入居者審査の際に入居者のマナーや素行に問題がないか確認しておきましょう。

マナーの悪い入居者に部屋を貸すと、以下のようなリスクがあります。

・部屋や共用部を乱暴に扱い、建物や設備を破損させる
・ゴミを放置し、壁や床を腐食させる原因を作る
・ペットを黙って飼う
・タバコで床に焼け焦げを作る など

反対に、マナーの良い入居者であれば、部屋や建物を丁寧に扱ってくれるため、原状回復にかかる費用などをはじめとした修繕費を抑えられるでしょう。

アパート経営を管理会社に任せている場合には、マナーなどの面でしっかりと審査を行うようにお願いしておくと安心です。

前もって修繕時期を把握しておく

修繕費を抑えるためには、建物や設備の修繕時期を把握しておくことが重要です。

修繕時期を前もって把握しておけば、大きな修繕が必要となる前に対処でき、修繕費が抑えられます。

また、修繕時期がわかれば「この時期に建物の補修が必要になるから資金に余裕を持たせよう」などと経営計画を立てやすくなるでしょう。

アパートの経営計画の中には修繕にかかる費用を必ず組み込んでおき、突発的な補修にも対応できるように修繕費を積み立てしておきましょう。

中古アパートを買う際は前オーナーの修繕記録を見る

これからアパート経営を考えている人の多くは、中古アパートを購入して管理していくことになります。

中古アパートを購入する際には、必ず前オーナーの修繕記録を確認しておきましょう。

前オーナーが修繕を疎かにしている物件だと、購入後にリフォームや修繕の費用が大きくなってしまいます。

また、オーナーや管理会社がきちんと物件を管理していない場合だと、細かい修繕履歴を残していない恐れもあります。

しっかり管理されていない物件を購入することはリスクが大きいため、修繕記録が細かく残っている物件を選んで購入しましょう。

物件や部屋毎の修繕履歴は、不動産仲介会社を通して管理会社などから取得が可能です。

修繕費と資本的支出の違い

アパートの修繕にかかる費用は、「修繕費」と「資本的支出」の2つに分けられます。

修繕費 資本的支出
概要 通常の維持管理や、設備の修理にかかった費用 建物の資産価値を増やすために支払った費用
具体例 ・原状回復費用
・機械装置の保守点検費用
・間取りを変更するなどのリフォーム
・機器や設備の耐用年数を増すための補修
・機器や設備の取り替え(グレードアップ)
経費としての処理 全額経費に算入できる 減価償却の対象となるため、年数をかけて費用として算入される
節税効果 高い 低い

修繕費は即時経費として算入でき、所得から控除できるため、節税効果が高くなります。

アパートの修繕にかかる費用は、修繕費として計上した方が税務上有利と覚えておきましょう。

修繕費と資本的支出の区別は、専門家である税理士に頼むのが確実ですが、おおまかには以下にあてはまるものは修繕費として計上できます。

・20万円未満の資本的支出
・3年以内の周期で行われる修繕
・原状回復工事に該当するもの

参考:国税庁「修繕費とならないものの判定」

アパートの修繕積立金について

修繕積立金とは、大規模修繕などの大きな出費に備えて、事前に積み立てておくお金のこと。

アパート経営の上では、様々なケースにおいて修繕費用が必要になってきます。

あらかじめ修繕時期を見越して、計画的に費用の積み立てを行っておくと安心です。

国土交通省の調査によると、10戸の木造アパートの場合、建築から30年目までにおよそ1740万円の修繕費用がかかります。

これを単純に年数・月数で割ると、以下のように修繕積立金の目安が算出できます。

・毎年の修繕費用:1740万円÷30年=58万円
・毎月の修繕積立金の目安:58万円÷12ヶ月= 約4.3万円

ただし、修繕積立金は過去の修繕履歴や築年数によっても適切な金額が異なります。

なんとなく積み立てを行うのではなく、不動産の専門家である管理会社などに相談をして金額を決めるがおすすめです。

参考:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」

まとめ

アパートを経営する上では、原状回復のための費用はもちろんのこと、定期的な補修工事や大規模補修などさまざまな修繕費が発生します。

少しでもアパートの修繕費を抑えるために、「入居者審査を入念に行う」「前もって修繕時期を把握しておく」などのポイントを覚えておきましょう。

突発的に修繕が必要となった際に落ち着いて対処できるように、毎月の家賃収入から修繕積立金を捻出しておくことも忘れないでください。

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