相続対策に効果的な資産組み換えの概要と特例制度について解説

資産組み換え

資産組み換えは、所有者にとってだけではなく、相続人にとってもメリットをもたらします。不動産を多く所有している場合だけでなく金融資産が多い場合にも、資産組み換えは有用なシステムとなります。

この記事では、相続対策に効果的な資産組み換えの概要と特例制度について解説をしていきます。

「資産組み換え」とは一体何?

資産組み換え
すでに持っている資産を別の種類の資産に換えたり、もっと活用しやすい状態にすることを「資産組み換え」と呼びます。

資産組み換えには多くの場合、不動産が関係してきます。老朽化した田舎の不動産を売却して都心の不動産を購入したり、現金を不動産に換えたり、といったケースが資産組み換えの代表的な例です。

不動産は所有者の維持管理責任が重く、ただ所有しているだけでも高額な税金が課されるという特徴を持った資産なので、相続対策としてタイミングを見極めた資産組み換えが必要です。

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資産組み換えが相続対策に必要な理由

所有資産の有効活用という面はもちろんのこと、相続への備えという意味でも資産組み換えは重要な役割を持ちます。

資産を相続する相続人にとって価値ある資産となるかどうか、および相続人が支払うことになる相続税額がどれほどになるかという点に密接に関係しているからです。

一昔前であれば、土地や建物などの不動産は無条件に優良財産とみなされていました。特に土地については「値下がりの心配がない」「持っているだけで安泰」とまで考えられていたほどです。

しかし一部の地域を除き、不動産の価値はじわじわと低落を続けています。地域によっては、売却したくても買い手が見つからなかったり、非常な安値で買い叩かれてしまうこともあります。

そのため、不動産を相続させるのだから相続人にとって当然メリットがあるはずだと安易に考えることはできないのです。

さらに現代では、子どもが成人した後は親と別々に暮らすことが一般的です。進学や就職のために移り住んだ先で結婚し、自分の家を建てた場合、親の死後になってもそう簡単に実家のある故郷に戻ることはできません。そうなると、使用する人がいなくなった実家や、親が所有していた土地が放置されることになります。

相続した時にそれなりの相続税を支払った上、ただ存在するだけでも固定資産税や都市計画税などが課される不動産は、相続したものの不動産を活用する予定も方法もない子どもにとっては負担でしかないでしょう。俗に言う「負動産」となってしまいます。

管理する人がいなくなれば建物は傷んでいきます。災害時に破損・倒壊する恐れも高まりますし、風にあおられて建材が飛ばされ、近隣の建物や人に害を与えてしまうことも考えられます。ホームレスや空き巣の侵入、放火などの発生確率も高まります。

平成27年には、全国規模で増え続ける危険な空き家に対する対策として「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家対策特措法)が施行されています。

美観上、衛生上問題がある空き家や、老朽化による自然倒壊が懸念されるような「特定空き家」の所有者に対し、行政機関が対応を要請したり命令したりすることができるようになりました。

相続した不動産が特定空き家と判断されれば、期限までに必要な対処をするよう勧告または命令されることになります。

特定空き家に関する調査は任意ではないため、調査を拒絶したり妨害したりすれば20万円以下の罰金、命令に従わなければ50万円以下の罰金および強制執行の可能性があります。

建物がないとしても安心はできません。放置される空き地も、不法投棄などの犯罪を誘発する存在となっています。

実際には使用していないとしても、相続した人に不動産の管理責任は移行しています。つまり不動産が原因で起きた損害に対する賠償や、法的義務の履行について、相続人は責任を負わなければならないということです。こうした意味でも、相続人にとって重荷となる場合があります。

市場価値は低いのに相続税評価額ばかり高い不動産を相続した場合も同様です。売却や賃貸などによって得られる収益は小さいのに相続税は高額という最悪のキャッシュフローになるかもしれません。

不動産を持つ人の場合、上記のような問題は決して他人事ではありません。相続が始まる前に、相続人にとって価値のある状態で資産を遺してあげるにはどうすれば良いか、真剣に考えなければなりません。そのために、不動産の資産組み換えを積極的に検討したいものです。

不動産から「収益不動産」への資産組み換え

資産組み換え
老朽化した不動産や、遊ばせている土地などがあれば、それらを売却して得られる利益で収益不動産を購入できないか検討しましょう。

例えば、利便性が悪く人口も減り続けている地方の土地に300坪の土地を持っているとしましょう。今後誰かが建物を建てる予定もなく、ただ固定資産税を支払っているだけで何も利用価値のない状態です。

不動産業者に査定させたところ、300坪の土地が3,000万円で売却可能なことが分かるとします。この3,000万円を元手に、もっと資産価値の高い収益不動産を手にすることが可能になるかもしれません。

3,000万円があれば、都心に近く利便性の高い地域や開発の進む地方都市など、住所地として人気の高い地域にマンションの部屋をひとつ、あるいは建売住宅を1棟買い、賃貸物件として貸し出せる可能性があります。

元々所有していた300坪の土地に比べれば、新たに所有する不動産の面積はとても小さくなってしまうでしょうが、利用価値が高く収益を生む不動産に変わることになります。

賃貸物件の経営は責任が大きいので気が向かないという場合には、貸駐車場にすることもできます。賃貸物件ほどの収益にはならないと思われますが、安定した収益を生む不動産になることに変わりはありません。

資産組み換えではこのように、維持費がかかるのみで収益を生まない不動産から、定期的な収益を生む資産価値の高い不動産へと変身させられる場合があるのです。

金銭などの財産を不動産に換える資産組み換え

預貯金や現金などの金融資産は、ほぼそのままの金銭的価値で評価されてしまいます。評価減をする方法はほとんどありません。不動産などと比べ、高額な評価額となってしまいます。

金融資産がたくさんある場合は、そのお金で有効活用できそうな不動産を購入するという方法もあります。

前述のように収益不動産を購入するのもひとつの手ですが、相続開始まで自分と配偶者が暮らすための家を新築したり購入したりすることもできます。この場合は、後に取り上げる「小規模宅地等の特例」を適用し、評価額を大幅に減少させることが可能な場合があります。

相続人が複数人いるのであれば、相続人の人数分の収益不動産を用意して生前に贈与することも検討できます。

相続人同士の争いを避けるためには、不動産の価額や規模が同一なものを人数分用意する必要もありますが、金融資産のままで相続させるよりも評価額を抑えることができ、子どもに安定した収入を得させることもできます。子どもにとっては、相続税の納税資金を準備するという面でも有益でしょう。

できるだけ、将来的に値下がりしにくいと思われる地域の不動産を用意するのが理想です。利便性は良いか、人口増加が見込めるか、今後開発がなされる地域かなど、様々な要素を広く考慮して厳選しましょう。

金融資産を不動産へ換える時に注意したいのは、相続開始まで思いのほか時間がかかった場合、被相続人自身の生活を危うくさせる可能性があるということです。生活のための十分な資産を手元に残し、資産組み換えは余裕資金の範囲内でのみ行うようにしましょう。

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不動産の資産組み換え時に利用できる特例

資産組み換え特例
資産組み換えをする不動産の用途によっては、評価額をさらに減額させることのできる特例制度が適用になる場合もあります。

ここからは、よく用いられる2つの特例について詳しくご紹介します。

小規模宅地等の特例

資産組み換えで新しく取得する不動産を被相続人自らが自宅にしたり、事業を営むための店舗などの用途に使用するのであれば、相続開始後の評価額計算において「小規模宅地等の特例」を適用できる場合があります

自宅や事業に要する不動産は、被相続人の配偶者や同居していた相続人にとっての生活基盤、いわば生活必需品です。それに対し、生活必需品ではない資産と同等の評価額を適用してしまうのは、不適切なことと言えます。

そこで、一定の面積の範囲内の宅地で、相続人についての要件を満たす場合にのみ、小規模宅地等の特例によって評価額を減額することが可能とされています。

小規模宅地等の特例が適用できる宅地は4種類あり、それぞれ以下のような限度面積および減額割合となります。

宅地の種類 限度面積 減額割合
特定居住用宅地 330㎡ 80%
特定事業用宅地 400㎡ 80%
貸付事業用宅地 200㎡ 50%
特定同族会社事業用宅地 400㎡ 80%

宅地の種類と、種類ごとの適用要件について、順番に解説します。

1.特定居住用宅地

「特定居住用宅地」は、以下の2パターンがあります。

パターン1:被相続人自らが居住していた宅地

(1) 被相続人の配偶者が相続によって取得した場合は、無条件で特例を適用可能

(2) 配偶者以外の親族で、相続開始時点で被相続人と同一の建物に居住していた者が相続などによって取得した場合は、相続税申告期限まで当該宅地に引き続き居住および保有している場合に適用可能となる

(3) 被相続人の配偶者や同居の相続人がいない場合で、相続開始前3年以内に自分もしくは自分の配偶者が所有する建物に居住したことのない、俗称「家なき子」が宅地を相続などによって取得した場合、相続税申告期限まで当該宅地を引き続き保有している場合に適用可能となる

パターン2:被相続人と生計を共にしていた親族の居住宅地

(1) 被相続人の配偶者が相続によって取得した場合は、無条件で特例を適用可能

(2) 被相続人と生計を共にしていた親族が、自分の居住用宅地を相続などによって取得した場合、相続税申告期限まで当該宅地に引き続き居住および保有している場合に適用可能となる

2.特定事業用宅地

「特定事業用宅地」に該当するのは、以下の2パターンのいずれかの要件を満たす場合です。なお、事業が不動産貸付業の場合は、次の「貸付事業用宅地」を参照下さい。

パターン1:被相続人自らが事業主であった場合

被相続人の親族(生計を共にしていたか否かは不問)が、宅地を相続などによって取得し、下記の3つの要件すべてを満たしている場合に適用可能

(1) 相続した親族が、相続開始時から相続税申告期限までの間に当該宅地において営まれていた被相続人の事業を引き継ぎ、

(2) 相続税申告期限まで引き続き当該宅地を所有しており、

(3) 相続税申告期限まで当該事業を営んでいる場合

パターン2:生計を共にしていた親族が営む事業用地の場合

被相続人と生計を共にしており、被相続人の宅地で事業を営んでいた親族が宅地を相続などによって取得し、下記の2つの要件すべてを満たしている場合に適用可能

(1) 相続した親族が、相続開始直前から相続税申告期限まで当該宅地において営まれていた自分の事業を継続しており、

(2) 相続税申告期限まで引き続き当該宅地を所有している場合

3.貸付事業用宅地

「貸付事業用宅地」に該当するのは、以下の2パターンのいずれかの要件を満たす場合です。

パターン1:被相続人自らが貸付事業を行っていた場合

被相続人の親族(生計を共にしていたか否かは不問)が、宅地を相続などによって取得し、下記の3つの要件すべてを満たしている場合に適用可能

(1) 宅地を相続した親族が、相続開始時から相続税申告期限までの間に当該宅地における被相続人の貸付事業を引き継ぎ、

(2) 相続税申告期限まで引き続き当該宅地を保有しており、

(3) 当該貸付事業の用途に使用している場合(一般事業などへの変更不可)

パターン2:被相続人と生計を共にしていた親族が貸付事業を行っていた場合

被相続人と生計を共にしていた親族が、宅地を相続などによって取得し、下記の2つの要件すべてを満たしている場合に適用可能

(1) 相続税申告期限まで当該宅地を引き続き保有しており、

(2) 相続開始前から相続税申告期限まで引き続き当該宅地を自分の営む貸付事業の用途に使用している場合

4.特定同族会社事業用宅地

以下の要件すべてを満たす場合には、特定同族会社事業用宅地に該当します。

(1) 相続開始直前の株式などの所有割合
相続開始直前から相続税申告期限までにおいて、特定同族会社(相続開始直前に、被相続人および親族または被相続人と特別の関係にある者が有する、議決権に制限がない株式の総数もしくは出資の総額が、当該株式または出資に係る法人の発行済み株式の総数もしくは出資の総額の50%を超えている法人)の一般事業の用途に使用されていた宅地

(2) 宅地を取得した親族の、相続税申告期限における役員要件
相続税申告期限において、宅地を取得した親族自身が特定同族会社の役員であること

(3) 継続要件
被相続人の親族が、相続などにより取得した宅地を相続税申告期限まで継続して保有していること、かつ当該法人の事業が一般事業を継続している場合(相続開始前の事業から、種類の異なる一般事業に変更している場合も適用可能)

事業用資産の買換の特例

賃貸物件の資産組み換えであれば「事業用資産の買換の特例」も適用できる場合があります

個人が事業に使用している特定地域内の不動産を譲渡した後、一定期間内に特定地域内の不動産を取得して、取得日から1年以内にその不動産を事業のために使用する場合には、譲渡益のうち買換資産の80%に相当する額については課税を繰り延べるという制度です。

事業用資産の買換特例が適用になれば、不動産取得時の相続税は譲渡益の20%に対してのみ課税されるため、より多くのお金を手元に残すことができます。注意したい点として、残りの80%は非課税になるわけではなく、買換資産を売却する際に課税されます。つまり、納税時期を延期できるに留まるということです。

事業用資産の買換特例を適用するには、以下の要件すべてを満たす必要があります。

(1) 譲渡する不動産と買換資産は、共に事業用のものであること

(2) 譲渡した年か、その前年中あるいは翌年中に買換資産を取得すること
譲渡の前年中に買換資産を取得した場合は、買換資産を取得した年の翌年3月15日までに税務署へ「先行取得資産に係る買換え特例の適用に関する届出書」を提出する必要があります。譲渡した翌年中に買換資産を取得する予定であれば、確定申告書を提出する際に、取得する予定の買換資産についての取得予定年月日、取得価額の見積額および買換資産が買換えの組合せのいずれに該当するかについて、その他明細を記載した「買換(代替)資産の明細書」を添付する必要があります。

(3) 買換資産の取得日から1年以内に、買換資産を事業の用途で使用すること
取得してから1年以内に事業に使用しなくなった場合、原則として特例は受けられません。

(4) 譲渡資産の譲渡が、収用、贈与、交換、出資によるものおよび代物弁済としての譲渡ではないこと、また買換資産の取得は、贈与、交換または一定の現物分配、所有権移転外リース取引によるものおよび代物弁済によるものではないこと

(5) 譲渡する不動産と買換資産が、一定の組み合わせに当てはまるものであること

※組み合わせは、次の2つ
1.「既成市街地等(東京23区、大阪市など)内にある事業所用建物(附属設備含む)またはその敷地で、所有期間が譲渡した年の1月1日時点で10年を超えるもの」と、「既成市街地等外にある土地、建物、構築物または機械装置」の組み合わせ
2.「譲渡した年の1月1日の時点で所有期間が10年を超える国内にある事業用の土地等や建物または構築物」と、「国内にある事業用の土地建物または構築物」の組み合わせ

参照:国税庁

資産組み換えで取引する不動産が土地の場合は、以下のいずれかの要件に該当していることに加え、面積が300㎡以上のものでなければ特例を適用できないこととなっています。

(1) 事務所、工場、作業場、研究所、営業所、店舗、倉庫、住宅その他これらに類する施設(福利厚生施設に該当するものを除く)の敷地の用途に使用するもの

(2) 駐車場として使用する予定の土地で、建物または構築物の敷地の用に供されていないことについて、開発行為の許可の手続きや建築確認の手続きなどが進行中であるというやむを得ない事情があり、その事情があることが申請書の写しなどの一定の書類により明らかにされたもの

(3) 取得する土地の面積が、原則として譲渡した土地等の面積の5倍以内であること (2019年12月31日までの譲渡資産の譲渡に限って、一定の農地への買換えの場合は10倍以内とされることがあります)

(4) 原則として、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超えていること
(2020年3月31日までに行われた土地の譲渡については、原則としてこの要件は除外されます)

事業用資産買換の特例の適用期限は、2020年3月31日までに延長されています。満たすべき要件は多く細かいですが、資産組み換えにおいて80%もの大幅な評価額減が適用されるというメリットの大きい特例のため、積極的に利用を検討しましょう。

まとめ

相続税が節税できても、その後の不動産の維持に費用や労力が掛かりすぎたり、相続人にとって管理責任が重すぎると感じてしまうとしたら、その資産組み換えは本当の意味で成功したとは言えません。

特に、賃貸物件を購入または建築する場合、そこには家主としての重い責任と義務が発生します。仕事を持つ相続人にとっては、かなり大きな負担になる可能性があります。

相続人になる人の事情をよく考えるなら、相続人がもらって嬉しいと思う資産は何か、どのような資産を用意しておくべきかが分かるかもしれません。可能であれば、相続人自身の希望や意見を聞きながら、慎重に資産組み換えを検討しましょう。

自分の場合はどれくらいの相続税がかかるのか、どの程度の節税対策が適切なのかが分からなければ、不動産相続や資産組み換え問題に詳しい税理士や不動産会社に相談してみると良いでしょう。

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