借地権にある建物は建て替えられる?建て替えの条件や承諾料について解説します

借地権 建て替え 条件

借地上にある建物でも、建物自体の所有権が自分にあれば、条件を満たすことで建替えが可能です。

借地上の建物を建替える条件としては「地主からの承諾」と「承諾料の支払い」があげられます。

また、借地契約書に「増改築禁止特約」の記載がなければ、地主の承諾なく建替えることも可能です。

ただし、例え特約がなくても勝手に建替え工事をおこなえばトラブルに発展する恐れもあるので、基本的には事前に連絡して承諾を得ておくべきです。

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地主の承諾があれば借地権の建物でも建替えできる

建替えをするためには、建物を取り壊すことになるので「借地契約が解除されてしまうのではないか?」と不安に感じるかもしれません。

地主の承諾があれば、借地上の建物でも建替え可能かつ契約も継続されます。

承諾を得て建替えた場合、借地権の残存期間も承諾が得られた日または、建物の建替えが完了した日のいずれか早い方から20年延長されます。

これは、借地権の契約期間満了直前に地主から承諾を得たにもかかわらず、地主に正当事由があれば契約終了となってしまい、建替えの承諾を得た意味がないからです。

また、地主の承諾なしで建替えできる場合もあります。

地主の承諾なしで建替えできるのは特約がないとき

通常、地主から土地を借りるときに交わす賃貸借契約書には、増改築禁止特約が書かれています。

これは、借地上の建物を増改築するときには、事前に地主に連絡し承諾を得なければならないというものです。

もしも、土地の賃貸借契約書にこのような増改築を制限するような特約が記載されていなければ、当然ながら承諾も必要ないため、後ほど解説する承諾料も不要です。

ただし、地主の承諾がなければ借地権の存続期間の延長もないので、契約期間満了時に更新の有無で問題になる恐れがあります。

借地契約更新後に建替え工事をする場合は地主の許可が必須

増改築を制限する記載がなければ、地主の承諾なく建替えができるのは借地契約の最初の存続期間のときのみです。

借地契約を更新した後の期間では、たとえ特約の記載がなかったとしても、建物を建替えるときには、地主の承諾が必要なので注意しましょう。

承諾なく建替えをおこなった場合、借地権の契約を解除される恐れもあります。

定期借地権の場合は存続期間の延長がない

地主からの承諾を得て建替えをおこなう際、借地権の存続期間が延長されるのは普通借地権の場合です。

定期借地権の場合、地主の承諾を得て建替えしたとしても、存続期間は延長されないため注意してください。

契約期間満了時に、地主との合意による再契約がない場合には、建物の耐用年数がまだ十分に残っていたとしても、取り壊して借地を返還する必要があります。

定期借地権ですので、建物買取請求権も行使できません。

既存不適格建築物や接道義務違反物件は建替えができない

地主から建替えの承諾を得られたとしても、建替えができない場合があります。

それが、対象の物件・土地が「既存不適格建築物」「接道義務を満たしていない物件」だったときです。

これらの建物は、そのままの条件で建替えしようとすると、建替え時に必要な建築確認申請で許可を得られないためです。

次の項目から、それぞれ解説します。

既存不適格建築物とは現在の法律を遵守できていない不動産

既存不適格建築物は、建築当時は法令の基準を満たしていたとしても、法改正などによって、新しい基準を満たさなくなったものをいいます。

例えば、建ぺい率・容積率をオーバーしている物件や高さ制限を満たしていない物件です。

もしも、既存不適格建築物であれば、現在の法令の基準に適用された形で建替える必要があります。

既存不適格物件に関しては、以下の記事を参考にしてみてください。

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接道義務とは建築基準法で定められた規定

接道義務とは、建築基準法で定められた「原則、幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない」という規定です。

そして、接道義務を満たしていない土地は再建築不可となっており、建替えも認められません。

そのため、接道義務を満たしていない物件を建替えるときには、接道義務を満たす必要があります。

接道義務を満たすようにする一般的な対策は、以下の3つです。

  • セットバックする
  • 隣地を買い取る
  • 隣地を一時的に使用する承諾を得る

ただし、借地なので、直接土地に変更を加えるセットバックや隣地の買取は地主と相談して進める必要があります。

地主に確認せず、借地権者のみで勝手に交渉など進めるとトラブルになるので気をつけてください。

「隣地を一時的に使用する承諾を得る」という方法であれば、土地に変更を加えるわけではないので、その交渉に対して地主への相談は不要です。

建替え工事の間、隣地の必要な部分を使用させてもらう賃貸借契約書を作成することで、接道条件を満たすようにします。

このとき、当事者間での交渉では話がまとまりにくいので、不動産会社に間に入ってもらうことをおすすめします。


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地主から承諾が得られたら建替え承諾料を支払う

地主から建替えの承諾を得られたときには、承諾料を支払います。

承諾料の金額は、法律で定められているわけではありません。地主との話し合いで決まります。

ですが、一般的には、更地価格の3~5%が相場です。

借地条件の変更を伴う建替えの場合、借地条件変更承諾料は更地価格の10%前後になることが多いです。

もしも、相場を大幅に超える承諾料を要求されたり、請求された金額に納得できない場合には地主との交渉になります。

このとき、当事者間での話し合いはまとまらないことが多いので、不動産会社に妥当な承諾料を計算してもらい、交渉も含めて依頼するとスムーズです。

借地権は住宅ローン審査が厳しい

借地権の建替えでは、地主の承諾を得たあとにも課題はあります。

通常、建替え時には住宅ローンを組みますが、借地権の場合には住宅ローン審査が厳しいです。

その理由は大きく3つあります。

  • 地主による抵当権設定の承諾が必要だから
  • 借地上の建物の担保価値が低いから
  • 借地契約を解除されるリスクがあるから

次の項目から、それぞれの理由を順番に確認していきましょう。

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1.地主による抵当権設定の承諾が必要だから

住宅ローンを借りるためには、地主からの、その建物への抵当権設定の承諾が必要になります。

法律的には、地主からの承諾なく、借地上の建物に抵当権を設定することは問題ありません。

建物は借地人の所有物なので、地主の承諾がなくても、借地上の建物に抵当権を設定すると、借地権にまで効力は及びます。

しかし、ほとんどの金融機関で住宅ローン審査をするときには、抵当権設定を承諾したことを示す書類の提出が求められます。

このとき、地主が抵当権設定に承諾する義務はなく、地主に代わる許可を裁判所へ求めても、認められる可能性は非常に低いです。

このように建替えの承諾を得られても、資金を準備するために、抵当権設定の承諾を得なければならないので、審査は厳しいです。

2.借地上の建物の担保価値が低いから

通常、住宅ローンを融資するときには、土地と建物の両方を担保にいれます。

一方で、借地権の場合、建物にのみ抵当権を設定します。

ただし、借地上の建物に設定した抵当権は、担保価値は建物価格と借地権価格の合計となり、借地権価格は更地価格に比べて大きく下がります。

相続税評価額では更地価格の60%~70%として評価されますが、実際に担保価値を算出するときは市場価格のほうが優先されます。

そして、借地権付き建物の価格は、相続税評価額より低いことがほとんどなので、審査が通らないことも多いです。

3.借地契約を解除されるリスクがあるから

借地権者が地代の支払いを遅延したときには、借地契約を解除される恐れがあります。

もしも借地契約が解除されると、建物は「権利がない土地に建っている」状態になります。

銀行が抵当権を実行して、このような建物を競売にかけたとしても、誰も競り落とそうとはしません。

借地権がないので、地主に土地の明け渡しを求められたら従う以外にないからです。

それでは、銀行も融資した住宅ローンを回収できないリスクがあります。

そして、借地契約解除を避けるために地主から抵当権設定の承諾を提出してもらいますが、それでも絶対に借地契約解除されない保証はありません。

通常の不動産よりリスクがある状態なので、住宅ローン審査は厳しくなります。

借地権の建物を建替えても地代は変動しない

建替えを理由に、借地権の地代が変動することはありません。地代を変更するときの条件は原則、以下の3つです。

  1. 土地の固定資産税・都市計画税の増減があったとき
  2. 地価の上昇もしくは低下など経済事情に変動があったとき
  3. 近隣の似た土地の地代と比較して、地代が不相当となったとき

そのため、地代の変動に建替えが影響することはないので安心してください。

ただし、建替えのタイミングで上記の条件に当てはまる場合、地代が変更されることがあります。

その場合には、地代額変更の根拠を確認するようにしましょう。

もしも、地代の改定について地主とトラブルになったときには、不動産会社や弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

地主から建替えを拒否された場合の対応法

最後に、地主から建替えを拒否された場合の対応法を解説します。

借地権者は裁判所に対し、借地上の建物の建替えについて、地主の承諾に代わる許可「代諾許可」を求めることができます。

裁判所は代諾許可を認めるか、以下のような事情を考慮して判断します。

  • 借地契約の趣旨に違反していないか
  • 土地の通常の利用上問題ないか
  • 借地権の残存期間がどれくらい残っているか

代諾許可を与えるときには、借地権者に対して地主へ「財産上の給付」と呼ばれる、承諾料に相当する金額の支払いを命じます。

一般的な金額は更地価格の3~5%です。

裁判所に代諾許可を求めるには、さまざまな法知識が必要になるため、まずは不動産問題に詳しい弁護士へ相談してみましょう。

まとめ

借地上の建物を建替えるには、原則的に地主の地主の承諾が必要です。承諾料も払わなければいけません。

建替え承諾料の相場は、更地価格の3~5%が一般的です。

つまり、建物を地主に無断で建替えると、借地契約を解除される恐れがあります。

そのため、必ず地主の承諾を得るようにし、拒否されたときには裁判所に申し立てて、地主の承諾に代わる許可を得るように手続きを進めましょう。

わからないところがあれば、専門の不動産会社に相談するようにしてください。

借地権の建て替えでよくある質問

借地権に建っている建物でも、建て替えできる?

借地上の建物であっても、原則、地主の承諾があれば建て替えでき、契約も継続されます。

地主の承諾がないと建て替えはできないの?

「増改築禁止特約」がなければ、地主に無断で建て替えられます。ただし、後のトラブルを防ぐためにも、地主へ一度相談しておくとよいでしょう。

借地権にある建物を建て替えできないときはどんなとき?

地主から建て替えの承諾を得られたとしても「既存不適格建築物」「接道義務を満たしていない物件」は建て替えが不可能です。

建て替えの際に必要なものはある?

地主から承諾が得られたら、建て替え承諾料を支払うことが一般的です。承諾料の金額は、法律的に定められた基準などはありませんが、更地価格の3~5%が相場とされています。

地主の建て替え許可が得られなければ、建て替えはできない?

裁判所に対し、借地上の建物の建て替えについて、地主の承諾に代わる許可(代諾許可)を求めることができます。ただし、裁判所に代諾許可を求めるには、さまざまな法知識が必要になるため、まずは不動産問題に詳しい弁護士へ相談してみましょう。

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