減価償却費を活用した節税方法!不動産投資における必須知識を解説

減価償却 節税

収益に天井がある不動産投資は、いかに適切な経費を計上して課税価格を抑え、手元に残る収益を最大化させるかがポイントになります。ですから不動産投資家が賢く節税するためには、減価償却費について理解しておくことが必須です。

この記事では、減価償却費の概要と減価償却のメリットについて解説していきます。

現金を支出しない経費「減価償却費」

減価償却費
そもそも減価償却費とは、一体何のことなのでしょうか。減価償却とは本来、企業の会計上の計上手続きのことです。企業が業務のために購入する建物や機械、車両や設備などは、どんなに高額で質の良い物であっても年数が経てば価値が下がり、やがて壊れて使えなくなります。

このように、時間の経過によって価値が下がる性質のある資産のことを「減価償却資産」と呼びます。そして、減価償却資産を購入するために支出した費用を、すべて支出のあった年度の経費として計上してしまうのではなく、資産ごとに定められた耐用年数(どのくらいの間使用できるかの指針)の間に毎年分割して経費を計上することが、減価償却という仕組みです。

減価償却費とは、この毎年配分して計上する経費の部分のことを言います。実際にお金が出ていくわけではないものの、経費として認めてもらえるのが減価償却費なのです。もしも減価償却が行われず、支出した経費がその年度内に一括計上されるとなれば、収支はプラスマイナスゼロか、あるいは大きくマイナスになってしまうことも考えられます。そして翌年度は大きな経費が計上されず、ほとんど収益のみになってしまうでしょう。年ごとに収入が大きく波打つこととなるため、ほとんど税金のかからない年もあれば次の年に多額の税金が課されたりと、課税面でも不安定になります。

資産を保有する本人にとってだけでなく、税務署としても経費の一括計上は不都合なことになっています。もし一括計上を認めてしまえば、収益の大きかった年に課税逃れをするため、収益と同等の資産を購入して経費計上する人も出てくるでしょう。そうなれば、本来税金を納めるべき人から徴収できなくなってしまいます。減価償却とは、上記のような理由によって生まれた仕組みでもあります。

ちなみに、土地や骨とう品、有価証券など、時間の経過によって必ずしも価値が下がるとは限らない資産は減価償却資産には含まれません。鉱山や油田、山林など、時間の経過とともに採取されていくことで枯渇していく天然資源についても、減価償却資産には該当しません。

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減価償却できる資産の種類

減価償却費を計上できる減価償却資産には、大きく分けて2種類があります。有形固定資産無形固定資産です。有形固定資産に含まれるのは、建物や付属設備、車両や機械、土地などです。無形固定資産に含まれるのは、借地権や商標権、電話加入権などの権利や、ソフトウェアなどです。その名の通り、物としての形を持たない資産ということになります。不動産投資においては、おもに有形固定資産についての減価償却費を計上することになります。

2種類の減価償却方法「定額法」と「定率法」について

一般的に資産の減価償却を行う際には、「定額法」「定率法」の、どちらかの計算方法を選択することになります。「生産高比例法」などの計算方法もありますが、あまり使用されることはありません。減価償却費の計算方法は、減価償却資産を取得したのがいつなのか、資産の種類は何なのかによって変わってきます。例えば、定額法および定率法は平成19年4月1日以降に取得した減価償却資産に対して用います平成10年4月1日から平成19年3月31日までの間に取得した資産については、旧定額法でのみ計算が可能です。なお、平成28年4月1日以降に取得した建物付属設備および構築物については、定額法での計算となります。

減価償却で言う「資産の取得」には自分で購入すること以外にも、相続や遺贈、贈与などによって資産を取得した場合も含まれます。減価償却資産の種類によっても、計算方法は変わります。計算方法を選択できる場合には、資産の所有者が計算方法を決定することができます。決定した計算方法は、所轄の税務署へ届け出が必要です。新たに開業した場合には、開業の翌年の3月15日までに所轄の税務署へ届け出なければなりません。一度届け出た計算方法を変更したい場合は、変更したい年の3月15日までに所轄の税務署へ届け出ます。

定額法での減価償却費計算

定額法とは、減価償却資産の取得に要した費用を、資産の耐用年数で割る方法です。例えば、耐用年数10年の資産を100万円で取得した場合は、毎年10万円ずつ計上することになります。定額法は、減価償却費の計算方法として最も一般的であり、計算が簡単な方法です。有形固定資産の場合は定率法も選択できますが、無形固定資産の減価償却費の計算方法は原則として定額法のみになります。

定率法での減価償却費計算

定率法は、資産の耐用年数の間、期首未償却残高に償却率をかけて算出します。償却率は、資産を取得したタイミングや取得に要した金額、耐用年数によって変わってきます。定率法では、資産を取得した当初は経費として計上する金額が大きくなります。しかし年を追うごとに償却率は小さくなっていき、経費も少額になります。

不動産投資において減価償却を活用するメリット

不動産投資メリット
不動産投資家が減価償却を活用する最大のメリットは、収益を圧縮することによって節税が可能なだけでなく、手元にお金を多く残せることでしょう。減価償却によって、お金が出ていかなくても経費を支払ったものとして認められるということは、経費扱いになったそのお金は手元に置いておけるということになります。これは大きなメリットです。

不動産投資においては、設備投資資金や運転資金として何かとお金が必要です。不動産投資が軌道に乗るまでの間は他の案件に投資する、という人もいます。そのために新たな借り入れを作ることもできるかもしれませんが、減価償却によって残ったお金が手元にあるなら、利息など余分なお金を払わずして当面の資金を確保できます

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減価償却では「デッドクロス」に要注意

減価償却には、注意しておきたい点もあります。減価償却費とローン元金返済のデッドクロスです。定額法で減価償却費を計算しても、耐用年数を過ぎれば減価償却費は0円となります。定率法の場合も、年を追うごとに経費の額は下降していきます。一方で、物件購入のために借り入れたローンの返済は一定額のままです。

多くの投資家が利用する元利均等返済ローンでは、返済が進めば進むほど経費扱いにならない元金部分の返済割合が大きくなっていき、税務上は不動産投資における収益が大きくなっていきます。つまり、実際に出ていくお金なのに経費にできない元金返済部分が増額すれば、実際は出ていかないが経費にできる減価償却費にいずれ追いついてしまい、お互いがクロスします。そうなると、実際には手元に少しのお金しかないのに税務上は大きな黒字になっており、課税所得額が高額になるという事態が生じます。

簡単に言うと、これがデッドクロスです。この時には経費扱いにできる費用もごくわずかになっているはずですので、課税所得を抑える術がほとんどなくなってしまいます。デッドクロスは、どんな不動産投資でも必ず訪れるものです。減価償却を活用すれば当初はお金をたくさん残せますが、それで安心せずに収益を積み重ねていき、余裕がある時には繰り上げ返済を進めるなどして、デッドクロス後の資金繰りで慌てないように準備しておくことが大切です。

デッドクロスのよくある事例

デッドクロスに注意が必要なのは、減価償却期間の短い木造アパートや中古物件です。木造アパートの耐用年数は新築でも22年ですので、22年後には減価償却が終わってしまいます。アパート1棟を所有している場合、減価償却費が経費の中の半分以上の割合を占めることになります。そのため、減価償却費が終わった翌年の経費が一気に減る事になるため、いきなり多額の利益が発生して納税資金の確保に困ることになります。

デッドクロス自体は通常通り減価償却を行っていけば当然起こり得る状況なので、そのことを見越して不動産投資計画やキャッシュフローを計画していれば何の問題もありません。ところが、初心者投資家の多くはこの減価償却の仕組みを理解していないため、いきなり利益が発生して驚くケースが多いのです。

デッドクロスを回避する方法として、物件自体を売却するという選択肢もあります。投資目的で物件を所有している人の多くは、減価償却費目当てであるケースが多いため、デッドクロスをする地点を予め確認した上で、それまでの間に売却して利益を確定させる方向で投資計画を立てるのです。

不動産投資は税務申告上の利益と、実際のキャッシュフローが一致しません。そのため不動産投資をする場合は、いつどの程度の税金が発生するのかについて、事前によく確認をしておくことが重要です。減価償却費は投資家の間ではキャッシュアウトしない経費ということで「魔法の経費」などと言われることもありますが、その仕組みをよく理解した上で、将来発生するデッドクロスに備えるようにしましょう。

ワンルームマンション投資で減価償却費を活用して節税する際の注意点

ワンルーム
最近ではサラリーマンなどの間でも不動産投資が流行り始めているようですが、中でも人気なのが「ワンルームマンション投資」です。都心部の分譲タイプのマンションの一室を購入して、それを賃貸物件として運用することで資産をつくるというものです。ワンルームマンション投資を斡旋している不動産会社の多くは、節税を前面に出してアピールしていますが、この節税の仕組みも先ほどの減価償却費によるものと同じです。ただし、ワンルームマンション投資の場合は、土地と建物の価格割合の按分が明確ではないケースがあるため、注意が必要です。減価償却の対象となるのは、建物部分の価格割合のみで、土地の価格に対しては減価償却資産ではないため減価償却できません

1棟アパートを購入する際については、消費税について明確に表示されているため、そこから逆算して土地と建物の価格割合を算出することができます。ところが、ワンルームマンションの場合は、土地と建物を合算した金額で売買代金が表示されることが多く、個人から購入した場合は消費税についても非課税であることがほとんどなので、建物部分の価格割合が明確ではありません。

固定資産税評価額の価格割合で按分するというやり方もありますが、明確な規定があるわけではないため、初心者投資家の場合、適当に価格割合を決めて確定申告をしてしまうケースがあり、これがあとでトラブルになるケースがあります。この際に、建物部分の価格割合を多く見積もって減価償却をしている場合、将来物件を売却した際の譲渡所得が多く発生することになります。

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売却時の譲渡所得の課税対象について

「売った金額が買った金額を超えなければ、譲渡所得は課税されない」という認識の方がよくいますが、この認識はちょっと違います。ここでいう「買った金額」とは、当時購入した時の金額のことではなく、そこから減価償却費用を差し引いた残額ということになります。

建物部分の価格割合を多く設定した場合、開始当初は減価償却費が多くなるため、所得が多い人にとってはかなりの節税効果がありますが、将来的に売却した際に、購入時よりも低い金額で売ったとしても、減価償却後の金額で譲渡所得が計算されるため、多くの所得税が課税される可能性があります。

明らかに不審な価格割合で確定申告をしていると、税務署側から指摘が入ることがありますが、個人の不動産投資家で規模もそこまで大きくないような場合については、税務署から指摘すら入らないこともあります。ただ、いざ物件を売却したあとになって、多くの譲渡所得が発生する可能性がありますので、その点については注意が必要です。

なお、譲渡所得税の税率については、長期譲渡所得と短期譲渡所得があり、売却した年の1月1日時点で5年を超えていれば、税率が半分である所得税15.315%、住民税 5%に抑えることができますので、念のため覚えておきましょう。

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まとめ

ここでは、減価償却費の概要と減価償却のメリットについて解説してきました。税金対策は、いかに適切な経費を計上して課税価格を抑え、手元に残る収益を最大化させるかがポイントです。

また、税金に関しての詳細については税理士と連携している不動産会社に相談して解決しましょう。

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