
不動産投資は、物件さえあれば何もしなくても家賃収入を得られるというものではありません。投資を始めるためには、資金投入以外にも「知識」や「計画」が必要です。やみくもに資金を投入しても、リターンを得るまえに損失を出してしまうことになりかねません。
そこで本記事では、不動産投資に必要なものについて解説いたします。初心者オーナーが知っておくべき基礎知識について紹介しますので、これから不動産投資をはじめる人は、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産投資で失敗しないためには計画的に動くこと
不動産投資で失敗する人の特徴に「知識不足」「準備不足」があります。不動産投資では「ヒト」「モノ」「カネ」の動きを把握し、損失を出さないために何をすべきかを、考えていかなければいけません。
投資にはリスクがつきものとは言いますが、リスクを回避するためには、事前にどんなリスク発生が予測されるのか、そしてそのリスクが発生したときにどんな行動をとればいいのか状況を「先読み」しておくことが大切です。
いざという時に、英断できるよう、ここから紹介する知識を頭に叩き込んでおきましょう。

投資の基礎知識その1.稼ぎ方を知る
不動産投資というと、ほとんどの人が「家賃収入」を思い浮かべると思います。しかし、不動産投資で収益を得る方法は、家賃収入だけではありません。成功している投資家は以下の2つの方法を上手に使い分けています。
・売却益で利益を得る「キャピタルゲイン」
いずれの方法も、一長一短です。投資ですので、いい部分もあれば当然リスクもあります。大切なのは、自分たちの生活や思考にあった稼ぎ方を選択すること。そこで、ここからは上記の方法を解説するとともに、上手な稼ぎ方について紹介していきます。

インカムゲインで毎月安定した収益を得る
インカムゲインは、ご存知の通り不動産を保有している間、家賃収入という利益を得る方法です。入居者がいる限り、毎月決まった金額を得ることができます。
安定した収益を得られるインカムゲインは、継続的に収益を得られるものの、ほとんど受け取り額に変動はありません。また、空室が出た場合は収益が下がってしまうリスクもあります。そのため、大きく稼がずとも「毎月副収入を得たい」「老後の生活費のため」という場合におすすめの方法です。
キャピタルゲインで売却益を得る
一方で、キャピタルゲインとは保有している資産を売って売却益を得ること。つまり、投資物件を売り、売却金を手にすることを指します。
売却益を得られるキャピタルゲインは、まとまった収益を得られるもの、売却時期を見誤ると相場よりも低い価格でして売ることができなくなります。できるだけ高い売却益を得るためには、資産価値が下がりにくい物件を選ぶことや、空室率をダウンさせない運用方法が必要になります。ただし、場合によっては大きく稼ぐこともできるため、「次の投資に回したい」「運用物件を増やしたい」という場合におすすめです。
インカムゲインとキャピタルゲインを組合せる方法も
インカムゲインとキャピタルゲインを組合せる方法もあります。
そのためには、いずれ売却することを考えた戦略が重要。その戦略とは、入り口と出口を考えるということです。不動産投資には、物件を購入する「投資の入り口」と、その物件の投資をやめる「出口」があります。インカムゲインとキャピタルゲインを組合せるためには、この入り口から出口までのルートを考えることが大切です。
まずは出口戦略を考える
出口戦略とは、損失を抑えるために不動産投資から手をひくこと、物件を売却したり運用をやめたりすることを指します。
「どのくらい稼いだら物件を売却するか」「どの程度損失を出したら運用をやめるか」など、運用をやめるボーダーラインを決めておきましょう。「なぜ、投資を始める前からやめることを考えるのか」と疑問に思う人もいるでしょう。不動産投資初心者は、物件購入に強い関心を持っていても、出口まで向かう戦略を考える人は多くありません。しかし、投資は、永久的に稼ぎ続ける金の成る木ではありません。出口戦略は損失を最小限に抑えるための、いわば「逃げ道」のこと。状況が変わった時に速やかに撤退することも、投資を成功するカギなのです。
出口戦略の考えかたについては、下記ページで詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

次に入り口を考える
出口戦略である程度、方向性が確定したら、入り口である物件選びを考えます。出口戦略を成功させるためには、物件選びの時点から計画的に動かなければいけません。
・資産価値をキープしたいのなら立地条件のいい物件を選ぶ
収益が安定しそうな物件を選ぶのはもちろんですが、想定した所有期間内に下落する可能性が少ない物件を選ぶのも大きなポイントです。駅チカ物件や都市部の物件は、不動産の下落リスクが少なく、築年数が経過していても高値で売れる可能性が高くなります。このように、出口戦略をどうするかによって、どんな物件を購入すればいいのかシミュレートしていきましょう。
投資の基礎知識その2.費用について
土地や建物を購入するためには、多額の費用が必要です。また、購入後も維持管理や修繕に費用がかかりますので、投資を開始する前からある程度の資金を確保しておかなければいけません。
不動産投資に必要な費用一覧
具体的な費用は、以下の通り。
・仲介手数料
・投資ローン保証料
・火災保険料
・不動産取得税
・登録免許税
物件購入費はもちろんのこと、仲介してくれた不動産に支払う仲介手数料や保険料、さらに税金が必要です。初期投資にかかる費用は、一般的に新築物件であれば購入費用の4~5%程度、中古物件であれば購入費用の7~8%程度と言われています。物件購入費用だけでは、運用できませんので注意してください。
もし自己資金がないときは、融資を受けることを検討しましょう。自己資金の目安額と融資計画の手順についても、紹介していきます。

自己資金はどのくらい必要なのか
自己資金は、ローンの頭金や諸経費に使用するお金です。不動産投資をはじめるために、この自己資金はどのくらい用意しておくべきなのでしょうか。
一般的に、持っておくべき自己資金の目安は、物件価格の20~30%が必要と言われています。これは、融資審査を通りやすくしたりトラブルが発生したときに対処しやすくしたりするためです。
また、自己資金がなくても投資ローンを組むこともできます。さらに、アパートを現金で一括購入してしまうとレバレッジ効果が薄くなってしまう可能性もあります。

自己資金が多いことのメリット
融資を受けるときに、自己資金から頭金を捻出すれば、融資が通りやすくなります。また頭金を多く投入することで、毎月の返済額を少なくしたり、金利の優遇を受けられたりする可能性があります。
自己資金が多いことのデメリット
投資には、レバレッジ効果という「小さい力で多くの利益を得る」メリットが存在します。これは、少ない資金で大きな収益をあげるということ。融資をせずに自己資金で一括購入すると、このレバレッジ効果が薄くなってしまうのです。
レバレッジ効果とは
投資においてレバレッジ効果とは、少ない資金で投資規模を広げること。すべてを自己資金で賄うのではなく、金融機関から融資を受けて、通常であれば手が届かない物件を購入することを指します。できるだけ、借金は少ない方が得策に感じますが、投資の場合は必ずしもそうではありません。できるだけ少ない出費で大きな利益を得るためにはどうしたらいいのか。こんな戦略を考えることも、投資の醍醐味なのです。
レバレッジ効果の算出例
では、レバレッジを効かせた投資運用方法についてみていきましょう。例えば、1,000万円の自己資金があったとします。自己資金をすべて使い1,000万円の物件を購入するケースと、さらに金利3%で1,000万円を借り入れて2,000万円の物件を購入したと仮定します。
いずれの物件の利回りも10%だとした場合、どのように年間利益が異なるのか比較してみましょう。
年間利益=1,000万円×10%=100万円
年間利益=2,000万円×10%-(1,000万円×3%)=170万円
上記の計算式をみてわかるように、同じ資金でも融資を受けることで年間の利益が増えました。これが10年続いた場合は、単純計算で700万円もの差がでることになります。借り入れが返済できれば金利もなくなるため、さらに年間利益も増えるでしょう。これがレバレッジ効果です。
不動産融資を上手に受けるための方法を知る
不動産投資ローンと住宅ローンは、融資条件が違います。住宅ローンは「個人の返済能力」によって融資可能か否かが決まります。一方で、投資宅ローンは「返済能力」のほか「物件の収益性」も厳しくチェックされるのです。

融資に通りやすい条件とは
融資条件が通りやすい人を「属性が良い」と呼びます。この属性とは、返済能力が高く滞納しないなど、返済に有利な要素を持っている人のことです。では、属性を良くするためは何が必要なのでしょうか。
これから投資する物件が、安定的に大きく収益を出すことができれば、金融機関はこれをひとつの「資産」とみなします。資産があれば、返済が滞る心配が少なくなると判断するわけです。一方で、収益性のない物件は資産を生みにくいと判断され、融資の雲行きが怪しくなります。
ここで必要となるのが、不動産会社の手腕です。融資がつきやすい物件を熟知しているのが、他でもない不動産会社です。融資が付きやすい物件とは「法定耐用年数が長い」「立地がいい」「築年数が浅い」など、いわゆる収益性が高い物件。このように、どんな条件であれば融資計画がうまくいくかをアドバイスしてくれる不動産会社を選んでいきましょう。
投資ローンは、物件の収益性と契約者の返済状況により、金額や審査基準が異なります。あらかじめ審査が通りやすい条件を整えておくことが大切です。
不動産投資で受けられる2つのローンの違いを知っておこう
また、投資ローンには、アパートローンとプロパーローンという金融商品があります。この2つのローンは「審査基準」「金利」などが大きく異なります。どちらが今後の投資計画にとって有利なのか、事前に調べておきましょう。
アパートローン | プロパーローン | |
メリット | 保証人が不要
頭金が要らないことも
|
融資金額の上限がない
金利を安くすることが可能 条件によっては審査が緩い 資金の用途に制限はない |
デメリット | 審査基準が厳しい
居住用の投資物件のみ |
事業者のみ
頭金が必要 |
上記のローンの違いをひとことで説明すると、アパートローンは融資条件に制限があるのに対し、プロパーローンは金融機関の独自の審査をクリアすれば用途や返済期間に明確な制限がありません。つまり、プロパーローンは「多額のお金を借りたい」「投資を事業として拡大していきたい」と計画している人に向いているということです。
投資の基礎知識その3.揃えるべき契約書類を知る
投資用物件を購入したり、融資を受けたりする際には、いくつかの書類を準備しなければいけません。書類に不備があると、契約や決済が遅れ、運用に支障がでてきます。スムーズに投資を始められるよう、事前にどんな書類が必要かを調べておきましょう。不動産投資で、書類を準備しなければいけないシーンは、以下の3つの場面です。
・融資審査申込み時
・金銭消費賃貸契約時
それでは、各シーンでどんな書類が必要になるのかを紹介していきます。
物件購入時
物件購入時に必要になるのは、購入予定の不動産の情報を証明する書類と、新しく所有権者となる人の身分を証明する書類です。
書類名 | 概 要 | 配布場所 |
買付証明書 | 物件購入の意思があることを証明する書類 | 不動産会社 |
身分証明書 | 契約者であることを証明する書類 | 自分で用意する |
印鑑証明書 | 契約申込時に必要 | 市町村 |
住民票 | 契約者の現住所を証明する書類 | 市町村 |
登記事項証明書 | 不動産の情報を証明する書類 | 法務局 |
委任状 | 代理人がいる場合に用意 | 自分で用意する |
融資審査申込み時
融資を受ける前に、ローンを組めるかどうかの審査が行われます。その審査に必要な書類は、以下の通りです。まずは、どんな状況においても必要になる書類から紹介します。
書類名 | 概 要 | 配布場所 |
借入申込書 | 融資を受ける際の申込書 | 金融機関 |
納税証明書 | 過去3年分の納税証明書 | 税務署 |
身分証明書 | 契約者であることを証明する書類 | 自分で用意する |
印鑑証明書 | 契約申込時に必要 | 市町村 |
住民票 | 契約者の現住所を証明する書類 | 市町村 |
委任状 | 代理人がいる場合に用意 | 自分で用意する |
物件概要書 | 不動産の状況を記載している書類 | 不動産会社 |
重要事項説明書 | 不動産の現状を記載している書類 | 不動産会社 |
契約書 | 売買契約を証明する書類 | 不動産会社 |
登記事項証明書 | 不動産の情報を証明する書類 | 法務局 |
続いて、以下は、状況に応じて必要になる書類です。なくても融資は通りますが、ケースによってはあった方が審査に有利に働きます。
書類名 | 概 要 | 配布場所 |
不動産資格証明 | 不動産関連の資格に関する書類 | 自分で用意する |
借用証書 | 現在の借金の支払い状況 | 金融機関 |
連帯保証人の身分証明書 | 保証人の本人確認書類 | 保証人が用意 |
連帯保証人の所得証明書 | 源泉徴収票や確定申告類など | 保証人が用意 |
会社員の場合は、以下の書類も必要です。勤務先に発行してもらいましょう。
書類名 | 概 要 | 配布場所 |
源泉徴収票 | 前年度の所得税を証明する書類 | 勤務先 |
給与証明書 | 給与所得を証明する書類 | 勤務先 |
一方で、個人事業主の場合は、以下の書類を用意してください。
書類名 | 概 要 | 配布場所 |
確定申告書 | 収入を証明するための書類 | 税務署 |
決済時に必要になる書類
融資が受けられるようになれば、いよいよ物件の引き渡しが始まります。決められた期日に物件購入代金を支払い、物件の所有権者となれるのです。そのときに必要な書類を紹介します。
書類名 | 概 要 | 配布場所 |
身分証明書 | 契約者であることを証明する書類 | 自分で用意する |
印鑑証明書 | 契約申込時に必要 | 市町村 |
住民票 | 契約者の現住所を証明する書類 | 市町村 |
登記事項証明書 | 不動産の情報を証明する書類 | 法務局 |
投資の基礎知識その4.不動産投資の具体的な流れを知る
では、実際に不動産投資を決意してから運営を始めるまでの流れについてみていきましょう。
不動産会社探し
まずは、パートナーとなるべき不動産会社を探しましょう。前述したように、投資をする目的や融資を受けるか否かによって、選ぶべき物件の条件が異なります。また、金融機関は不動産会社がバックについているか、その不動産会社が信頼できるかどうかによって、融資をするかしないかを決めることがあります。できるだけ投資物件の売買実績がある不動産会社を選ぶようにしましょう。
物件選び
続いて、どんな物件があるのか情報収集から行います。情報収集は、不動産会社を経由してもいいですし、周辺の物件を見て回ったり、インターネットのポータルサイトを閲覧したりするという方法もおすすめです。立地や周辺環境、建物の外観や間取りをチェックし、自分の投資計画にあった物件を選びましょう。
投資ローンの申込み
金融機関の融資審査が受けられるのは、本契約の後です。融資審査には、売買契約書や投資物件の重要事項説明書が必要になります。ただし、金融機関によっては売買契約前に審査を行えることもありますので、不動産会社の担当者と話し合いながら、契約を進めていきましょう。スムーズにいけば、2~3カ月ほどで融資審査が終わりローンを組むことができます。
まとめ
不動産投資は、先を見据えた計画と判断が必要です。収益性の高い物件を選ぶことも大切ですが、今後どのように投資を展開していくか、損失を抑えるためにどの辺で撤退すべきかなど、長期的に考えることも大切です。
もし、ひとりで計画することが難しいと感じた場合は、不動産会社をパートナーにして投資を進めていくことも可能です。できるだけスムーズに投資を始められるようにしっかりとした投資計画を立ててみましょう。