不動産詐欺は早急に専門家に相談を!相談先と注意事項を紹介

不動産詐欺 専門家 相談

不動産取引では、手付金の支払い後に仲介業者と連絡が取れなくなる「手付金詐欺」や、サクラを使って賃貸物件の入居者を水増しする「入居状況詐欺」など、さまざまな詐欺が起こり得ます。

不動産詐欺にあったときは、国民生活センターや警察などへ速やかに相談しましょう。時間が経つほど、詐欺被害の解決が難しくなります。

また、詐欺に遭った人をターゲットに「取られたお金を取り戻す手伝いをする」といって、再びだまそうとする事例もあるため注意しましょう。

不動産詐欺の相談先として、最もおすすめできるのは不動産問題に詳しい弁護士です。

弁護士なら相談内容から被害状況を適切に汲み取り、被害額を取り戻すための具体的なアクションが可能です。状況を時系列に沿って整理し、関連書類もまとめた上で相談しましょう。

不動産詐欺、誰にも相談しないで自分で解決できる?

不動産詐欺
不動産詐欺に遭ったと気が付いても、あまり他人に相談したくないと思う人がいます。詐欺に遭ってお金を取られたばかりなので相談料を支払えないと思う場合もあれば、信頼できる相談先が分からなかったり、詐欺に遭ったことを他人に知られるのが恥ずかしいという人もいるでしょう。詐欺にあった直後は、怒りや情けなさで正常な思考力が失われているはずです。その状態でやみくもに動き回っても何も生まないどころか、さらなる詐欺被害に遭う可能性さえあります。

実際、詐欺に遭った直後の人をターゲットにし、「取られたお金を取り戻す手伝いをする」などと言い、再びだまそうとする事例も増えています。詐欺に遭って動揺している人は詐欺師から見て非常にだましやすい存在のため、この手口に引っかかってしまう人は少なくないようです。詐欺師と直談判して何とかしようと試みるのは、非常に甘い考えです。詐欺を働く者は、だました相手が詐欺に気が付いてからの対応策もきちんと練った上で詐欺を行います。お金の受け渡し後にすぐ行方をくらます場合もあれば、連絡ができてもまったく応答しない場合もあります。このような無駄な動きをしているうちに、相手には逃亡されてしまうかもしれません。相手の事業所や居場所が分かっているとしても、ひとりで乗り込んでいくような真似は絶対にやめましょう。相手が暴力団や犯罪組織とつながっている可能性もゼロではないためです。

不動産詐欺に遭ったなら、自分で何とかしようとしてはいけません。自分ひとりで解決できるような問題ではないからです。できる限り迅速に、信頼の置ける専門家や行政機関に相談するべきです。

不動産詐欺について相談する前の注意事項

書類整理
不動産詐欺に遭った場合に相談できるのは、おもに4つの行政機関です。どの機関に相談するとしても、共通する点として次の3つの注意事項を覚えておきましょう

1.状況を時系列に整理してから相談を

感情的になってまくし立てても、相談先の担当者には何も伝わりません。言いたいことが正しく伝わらなければ、有益なアドバイスももらえません。ですから、相手方との最初の接触から詐欺に至るまでの経緯を、時系列にまとめておくことが必要です。いつどのような方法で初回の接触があり、どのようなやり取りを重ねたのか、そして今どのような理由で詐欺だと考えているのかについて、要点を簡潔にまとめておくのです。経緯をメモの形で記しておき、相談の際はそれを見ながら話すことで、混乱せずに伝えるべきことを伝えられます。

2.自分が置かれている状況を短い言葉でまとめておく

自分の状況を一言で表現するなら何かということを考えておくことも良いことです。機関によっては、相談の前に何で困っているのかを端的に伝えるよう求められるためです。例えば、「売却した不動産の売買代金が未入金」とか「購入不動産の手付金を振り込んで以降音信不通になった」などです。一言ではありますが、どういう理由でどんな名目のお金を取られてしまったのかが分かります。

3.関連する書類や証拠を整理する

詐欺に関係する書類や証拠は、すべてまとめておきましょう。相手の名刺や、やり取りしたメール、見積書や契約書などの書類、あれば録音した音声なども重要資料となります。

不動産詐欺について相談できるところ

警察

国民生活センター

一般消費者にとって最も身近な相談しやすい相談先は、国民生活センターでしょう。全国各地に約1200箇所ある消費生活センターと連携し、詐欺を含むあらゆる消費生活相談を受け付けています。

国民生活センターは基本的には電話による相談のみ受け付けている機関ですが、より具体的な援助制度であるADR(裁判外紛争解決手続)も申請することができますADRとは、紛争解決のために裁判所で争うのではなく、専門知識を持つ第三者が仲裁に入ることで解決を図る制度のことです。詐欺などのトラブルが生じて、消費生活センターや国民生活センターへ相談しても解決できなかった場合には、国民生活センター紛争解決委員会へADRによる「和解の仲介」または「仲裁」を申請することができます。「和解の仲介」と「仲裁」は、似ているようで実は異なるものです。

仲介では、国民生活センターの仲介委員が当事者間の交渉を仲介することで和解へと導きます。当事者同士の歩み寄りが重視される方法とも言えます。ただし国民生活センターでの和解は、裁判所での和解とは異なる点があります。和解により何らかの義務を負った当事者が和解案を履行しない場合でも、強制執行などの処置はできません

仲裁とは、国民生活センターの仲裁委員が問題に関する判断(仲裁判断)をし、当事者がその判断に従うことで問題解決ができるようにする取り決めです。仲裁委員の判断で結果が左右されることになります。和解の仲介と異なり、仲裁判断には裁判所で下される判決と同様の法的効力が付与されます。ただし強制執行を行うためには、別途手続きが必要です。

ADRは裁判手続きよりも簡易な制度のため、費用も安く抑えることができます。ただしその分、相手方へ与える圧力もそれなりのものに抑えられたり、余分の労力が求められる場合があります。不動産詐欺に遭ったが金銭的被害は少ない、または詐欺が疑われる状況だが確証がないといった場合は、まず国民生活センターへ相談してみるとよいでしょう。

法テラス(日本司法支援センター)

 
日本司法支援センター(通称・法テラス)は、総合法律支援法によって平成18年に設立された法務省管轄の公的法人です。法テラスは、民事事件も刑事事件も区別なく気軽に相談できる窓口です。ただし「相談窓口案内所」といった立ち位置のため、法テラスの担当者から直接、法的な判断や解決方法のアドバイスが受けられるわけではありません。

法テラスでは相談の内容に合わせて、解決に役立つと思われる法制度を紹介したり、契約している弁護士や司法書士、消費者団体などの相談窓口を紹介しています。法律相談は、法テラスに紹介された各相談先で行うことになります。法テラスへの相談は電話の他、全国各地の事務所での面談、24時間365日受付のメール相談も利用可能です。法テラスへの相談は無料です。さらに、解決のために弁護士や司法書士などへ依頼する必要がある場合には、一定条件付きで費用の立て替えも行っています。立て替えの対象となる費用は、弁護士や司法書士へ支払う着手金や実費、報酬金などです。日本国内に住所がある個人で、次の3つの条件を満たしており、所定の審査を通過した人が立て替え制度を利用できます

1.収入等が一定額以下であること

世帯員の人数に応じ、手取り月収額や資産額の基準などが定められています

2.民事法律扶助の趣旨に適すること

民事法律扶助の趣旨とは、経済的に困窮している人が法的トラブルに遭った際に無料で法律相談を行ったり、弁護士や司法書士の報酬や裁判費用を立て替えることにより、経済状況に関係なくすべての人の法的権利を擁護することです。法テラスの立て替え制度を利用したい理由が、ただ単に相手に報復したいためであったり、宣伝のためである場合は、民事法律扶助の趣旨に反しているため利用できません。

3.勝訴の見込みがないとは言えないこと

和解や調停、示談などによりトラブルを解決できると見込まれる事件だけが対象となります。法テラスの審査では、上記の条件をすべて満たしているかどうかを調べます。審査と言っても、信用情報機関の個人情報を照会するような審査ではありません。色々な事情で弁護士費用が払えない場合でも、法テラスなら安心して相談できます。ただし、法テラスには常時たくさんの相談が寄せられており、法律相談を希望してもある程度待たされることが予想されます。不動産詐欺ですでにお金を持ち去られてしまったのなら、事は急を要します。資金の都合が付くのであれば、弁護士と警察に相談してすぐに対応してもらう方が良いでしょう。

弁護士事務所・法律相談センター(日本弁護士連合会)

詐欺に遭ったことが明白で、まとまったお金を取られてしまったのであれば、弁護士に相談するのが最も手っ取り早い解決方法です。家や勤務先の近所に詐欺事件に強い弁護士事務所があれば、できるだけ早いうちに相談してみることをお勧めします。弁護士にはそれぞれ得意分野と不得意分野がありますので、弁護士事務所を選ぶ際には不動産問題や詐欺問題に強いかどうかを確認しましょう

普段から弁護士や弁護士事務所と関わりがあるという人は少ないでしょう。不動産詐欺のことを相談できそうな弁護士に心当たりがない場合は、日本弁護士連合会が運営する法律相談センターへ相談することができます。


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警察(#9110)

不動産詐欺と思われるがまだ被害がはっきりしていないような場合、相談先にできる警察の窓口があります詐欺被害専門の電話相談窓口の番号は「#9110」です。特に被害が発生していなくても、詐欺が疑われる場合には早めに相談してみましょう。しかし、すでに脅迫や暴力によってお金をだまし取られたのであれば、速やかに警察に「告訴状」を提出しましょう。不動産詐欺に際し、身の危険を感じている場合も同様です。事情を話し、保護を求めて下さい。

注意したい点として、警察が扱う事件は刑事事件のみです。刑事事件とは、法律による処罰を要する事件のことを指します。不動産詐欺を刑事事件として警察に届け出るには、相談に加えて告訴状を提出する必要があります。告訴状が受理されると、警察は捜査を開始します。捜査によって詐欺罪が確認されれば、相手には刑事罰が科されることになります。

警察に被害を訴える手段としては他に「被害届」の提出もありますが、被害届では警察に捜査義務は生じないため、確実さを求めるなら告訴状を提出しなければなりません。警察は、民事事件には関わりません「民事不介入」と言われる通りです。民事事件とは、簡単に言えば個人間の争いのことで、一方が他方を法的に罰することを目的としない事件のことです。

不動産詐欺に遭った場合も、それが個人間での出来事であるなら民事事件とみなされてしまい、警察への相談があまり効果的でない場合があります。しかし先に述べた通り、個人間であっても脅迫や暴力が関係した不動産詐欺の場合は刑事事件となる可能性がありますので、真っ先に警察に相談することができます。不動産詐欺について警察に相談する際には、できるだけ弁護士を伴うようにしましょう。警察に積極的に動いてもらうには、詐欺の証拠や現状の被害を正確に伝え、れっきとした刑事事件なのだということを分かってもらわなければなりません。

自分ひとりで飛び込んでも、警察署という非日常の空間や担当者の態度に気圧されてしまうかもしれません。結果、十分に話ができないまま帰されてしまったという経験のある人は多くいます。弁護士を伴うことは、だまし取られたお金を取り戻すという目的を達成するためにも重要です。警察が刑事事件として捜査してくれて、相手を罰してくれたとしても、お金を取り戻す手伝いまではしてくれません。自分で訴訟などを起こして争う他ないのです。裁判において有利に争うためには、弁護士の助力がどうしても必要になります。お金を取り戻したいのであれば、警察に告訴状を提出する際に弁護士を連れていきましょう

まとめ

ここまで、4つの相談先機関についてご紹介してきました。この中で、詐欺被害者のパートナーとして親身になって寄り添い、交渉や裁判手続き、権利保全などを行ってくれるのは弁護士だけです。国民生活センターや法テラスは気軽に相談できる相談先ですが、担当者や職員が裁判に付いてきてくれたり、手続きや交渉事を代わりにしてくれることは原則としてありません。被害規模が広く、被害金額も高額な詐欺事件であれば警察が動いてくれることもありますが、四六時中の手厚いサポートが期待できるわけではありません。

弁護士は、トラブルにおける代理や仲裁、和解を行う権限を有する唯一の業種です。弁護士資格を持たない人がトラブルの仲裁をすることは、弁護士法第72条に違反するため、弁護士以外の人にトラブル解決のための手助けを求めることはできません。弁護士に相談したいけど弁護士費用が心配、という意見もよく聞きます。しかし近年は弁護士事務所の敷居も低くなっており、初回の相談は無料としているところもあれば、1時間で5000円~1万円など明確な金額を提示しているところも多くあります。躊躇して時間を浪費すればするほど、詐欺によって失ったお金を取り戻せる可能性も低くなります。不動産詐欺に遭ったなら、トラブル解決の専門家である弁護士へ早急に相談しましょう

最終更新日:
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