マンションの相続税はいくら?計算方法や節税のコツ、相続の流れ

マンション 相続税

マンションを相続する人のなかには、相続税がどれくらいかかるのかを気にする人もいるでしょう。

相続税の計算にはさまざまな手順が必要であるため、専門的な知識がなければ独自で算出するのが難しい場合もあります。

当記事では、マンションの相続税の計算方法を詳しく解説していくため、相続税を算出したい場合には参考にしてみてください。

また、これからマンションを相続する人に向けて、相続税を抑えられる特例や控除の紹介、マンションを相続するまでの流れの解説もしていきます。

そもそも相続税とは?

相続税とは、親や配偶者などから受け継いだ財産に課せられる税金のことです。具体的には、現金や土地、建物といった財産が課税の対象となります。

相続税は、財産総額から借金や葬式費用などを差し引いた金額が一定の金額(基礎控除額)を上回ったときに課せられます。そのため、財産を相続しても相続税がかからないケースもあるのです。

なお、相続税を計算する際には、相続する財産を一つ一つ評価をして、その評価に基づいて「相続税評価額」を算出しなければなりません。

令和6年(2024年)1月からマンションの相続における相続税評価方法が変わります。詳しくは次章以降で解説しますが、従来の評価方法ではマンションの3割程度であったのが、2024年1月の改正では従来の2倍程度に相続税評価額が上がることもあります。

従来の計算方法と異なる部分も含めて、ここからはマンションの相続税計算方法について解説していきます。

マンションの相続税計算方法

マンションは現金のように明確に価値がわかるものではありません。マンションの相続税を算出するには、物件の価値を申告する基準となる「相続税評価額」を算出する必要があります。

マンションの相続税評価額は、土地部分と建物部分の評価額を足した金額です。まとめて計算すると実際の金額と誤差が生じることがあるため、マンションの相続税は土地部分と建物部分で分けて計算するとよいでしょう。

ここからは、マンションの土地部分と建物部分の相続税計算方法を解説していきます。

土地部分

マンションの土地部分は、路線価の有無によって相続税の計算方法が変わります。

路線価とは、道路に面している土地の1m2あたりの価格のことです。国税庁が毎年公表しており、公式サイト「令和5年分の路線価等について」から確認が可能です。

マンションの土地部分の相続税を算出する際は、まず相続する物件のエリアで路線価が定められているかを確認しておきましょう。

ここからは路線価がある場合とない場合の相続税計算方法を解説していきます。

路線価がある場合

相続するマンションのエリアで路線価が定められている場合、下記の計算式で土地部分の相続税評価額を算出できます。

1m2当たりの路線価×マンションの面積×自分の持ち分割合
参照:国税庁「路線価方式による宅地の評価

路線価方式で算出する際は、路線価だけでなくマンション全体の面積と自分が専有している面積を把握しておく必要があります。

たとえば、マンションの1室を相続する場合、部屋部分が専有面積で廊下やエントランスといったその他の箇所がマンションの全体面積となります。

なお、路線価の具体的な数値については、国税庁の公式サイト「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」のページから確認が可能です。路線価がある場合、算出に必要な数値を把握したうえで、上記の式をもとに相続税評価額を計算してみてください。

路線価がない場合

相続するマンションのエリアで路線価が定められていない場合、下記の計算式で土地部分の相続税評価額を算出できます。

固定資産税評価額×財産評価基準書での税率×自分の持ち分割合
参照:国税庁「倍率方式

固定資産税評価額とは、不動産を所有している場合に課せられる「固定資産税」を決定する基準となる評価額のことです。固定資産税評価額は各市区町村が定められており、納税通知書や固定資産税評価証明書から確認できます。

財産評価基準書とは、国税庁が毎年作成している書類のことです。相続税を計算する基準となる路線価や倍率などが記載されており、国税庁の公式サイト「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」のページから確認が可能です。

なお、倍率方式で算出する際は、マンション全体のなかで自分が専有している部分の面積を把握しておく必要があります。たとえば、マンションの1室を相続する場合、部屋部分が専有面積となります。

相続するマンションのエリアで路線価が定められていない場合、評価額や税率、物件の持ち分割合を把握したうえで、上記の式をもとに相続税評価額を計算してみてください。

建物部分

マンションの建物部分の相続税評価額は、固定資産税評価額と同じ金額です。固定資産税評価額は各市区町村が定められており、納税通知書や固定資産税評価証明書から確認できます。

マンションの建物部分の相続税評価額を調べたい場合、納税通知書や固定資産税評価証明書を確認してみるとよいでしょう。

なお、納税通知書や固定資産税評価証明書が手元にない場合、下記の方法でも固定資産税評価額の確認が可能です。

固定資産税評価証明書を入手する 相続するマンションが所在する地域の役所窓口、または郵送
固定資産課税台帳を閲覧する 相続するマンションが所在する市区町村の税務課窓口など

「納税通知書を紛失してしまった」といった事情がある場合、上記の方法で固定資産税評価額を確認してみてください。

2024年1月からは計算方法が変わる

財産評価基本通達の改正により、2024年1月から相続評価額の計算方法が変わります。この改正の背景には、国税庁が公表する「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」に書かれています。

要約すると、従来の評価方法ではマンションの相続税評価額と市場の売買価格に乖離が生まれるケースがあったために、それを適正化できるよう改正がされたとのことです。

具体的には、従来の方法で算出した相続税評価額に「当該マンション1室の評価乖離率」と「0.6」をかけた値が相続税評価額となります。

【相続税評価額の計算方法】

現行の相続税評価額×当該マンション一室の評価乖離率×0.6(最低評価水準)
参照:国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について

たとえば、現行の相続税評価額が3,000万円のマンションを相続する場合、約3倍の評価乖離率であれば、「3,000万円×3×0.6=5,400万円」となります。

評価乖離率は「市場価格÷現行の相続税評価額」で大まかな値を算出できます。

マンションの市場価格については、不動産流通機構が運営しているREINSの公式サイトから相場を調べられるため、2024年1月の改正に合わせて相続評価額を算出する際は参考にしてみてください。

マンションの相続税を節税できる控除・特例

マンションの相続において、控除や特例が適用されれば相続税の節税が可能です。控除や特例には、下記が挙げられます。

  • 基礎控除
  • 配偶者控除
  • 小規模宅地等の特例

ここからはマンションの相続税を節税できる控除と特例を紹介していきます。

基礎控除

相続税における基礎控除とは、相続する財産のうち相続税の課税対象から差し引かれる金額のことです。原則、すべての相続人に適用され、ほかの控除や特例と併用もできます。

相続税の基礎控除の金額は下記の計算式で算出できます。

3000万円+600万円×法定相続人の数
参照:国税庁「No.4152 相続税の計算

法定相続人の数が多ければ多いほど、相続税の基礎控除額も大きくなる仕組みです。法定相続人の数に応じた相続税の基礎控除額をまとめましたので参考にしてみてください。

法定相続人 相続税の基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
5人 6,000万円

たとえば、法定相続人が3人の場合、相続税の基礎控除額は4,200万円です。相続する財産の総額が5,000万円の場合を想定すると、相続税は「5,000万円-4,200万円=800万円」となります。

なお、基礎控除額が相続する財産総額を超える場合、相続税は課税されません。そのため、相続税に関する申告や納税をする必要はありません。

配偶者控除

相続税における配偶者控除とは、配偶者が遺産を相続する場合、相続する財産のうち相続税の課税対象から一定の金額が差し引かれる金額のことです。正式には「配偶者の税額の軽減」といいます。

配偶者控除が適用されれば、1億6,000万円または法定相続分相当額(※)のどちらか金額が大きい方が相続税の課税対象から控除されます。

たとえば、法定相続分相当額が1億6,000万円未満であれば、配偶者控除により1億6,000万円が控除されます。相続する財産の総額が1億6,000万円未満の場合を想定すると、相続税は課税されません。

配偶者控除が適用されるのは、下記の要件を満たしている人に限られます。

要件 概要
法律上の配偶者である 役所に婚姻届を出しており、法律上の婚姻関係にある人
すでに遺産分割が確定している 遺言状や遺産分割協議により遺産の分割方法が決まっている
相続税申告書を提出する 相続税が0円であっても相続税申告書の提出が必須

相続税の配偶者控除を受けたい場合は、要件をすべて満たしているかを確認しておきましょう。

※法定相続分とは、各相続人による遺産の取り分の割合のことです。遺産を相続する人に応じて下記のように法定相続分が定められています。

相続人 配偶者の法定相続分
配偶者のみ 遺産のすべて
配偶者と子ども 遺産の1/2
配偶者と親 遺産の2/3
配偶者と兄弟姉妹 遺産の3/4

参考:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、自宅や事業用として使用していた宅地を相続した場合、相続税評価額を最大80%まで減らせる制度のことです。

相続人にとって自宅や事業用の宅地は、相続後の生活基盤を維持するために必要になるケースがあります。にもかかわらず、相続税が高額になり、納税のためにマンションの売却が必要になることもあるため、小規模宅地等の特例は創設されました。

小規模宅地等の特例が適用されるのは、「被相続人もしくは被相続人と生計を一にする親族が使用していた」「居住または事業として使用されていた」の条件を満たしている場合です。条件を満たしていれば、特例の適用によって下記のケースごとに評価額が減額されます。

小規模宅地等の特例が適用される場合 減額される割合
被相続人または被相続人と生計を一にする親族が居住していた 80%
賃貸物件などの収益物件として使用していた 50%
被相続人が事業用に使用していた 80%

参照元:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

なお、小規模宅地等の特例による減額対象になるのはマンションの土地部分のみです。特例が適用されたうえでマンションの評価額を計算する際は、土地の評価額から所定の割合分を減額するようにしましょう。

【例】マンション相続税を計算してみよう

相続税の計算にはさまざまな手順が必要になるため、難解に感じる人もいるでしょう。ここからは下記の2パターンを想定して、マンションの相続税をシミュレーションしていきますので、マンションの相続税を算出したい場合は参考にしてみてください。

  • 2人の子どもに相続する場合
  • 配偶者と1人の子どもに相続する場合

なお、今回のシミュレーションでは下記の条件を想定しており、マンション以外の財産は考慮せずにマンションのみの相続税を計算していきます。

  • 被相続人:父親
  • 相続人:妻、子ども2人
  • マンションの相続税評価額:1億円

2人の子どもに相続する場合

子どもがマンションを相続する場合、特例を除けば基礎控除が適用されます。基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で算出できるため、2人の子どもにマンションを相続する場合は下記のように計算可能です。

3000万円+600万円×2人=4,200万円

次は相続税の課税対象額の算出です。マンションの相続税評価額は1億円であるため、この金額から基礎控除を差し引くと下記のように算出できます。

1億円-4,200万円=5,800万円

基礎控除額が相続税評価額を上回れば相続税は0円ですが、今回は相続税評価額が1億円であり、課税対象額が5,800万円であるため相続税が発生します。

課税対象額を算出したあとは、法定相続分を算出します。法定相続分は、配偶者や子などと被配偶者との関係性によって変動する仕組みで、子どもが相続人の場合は法定相続分が1/2と定められています。

今回は5,800万円が相続税の課税対象額であるため、法定相続分に応じた子ども1人ひとりの取得金額は2,900万円です。

子ども1人一人の取得金額がわかれば、次に相続税の税率と控除額を計算します。税率は法定相続分ごとの取得金額によって、下記のように異なります。

取得金額 相続人 配偶者の法定相続分
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

参考元:国税庁「No.4155 相続税の税率

子ども1人の取得金額は2,900万円であるため、「税率15%」「50万円」とわかります。そのため、子ども1人のマンション相続税は「2,900万円×15%ー50万円=385万円」と算出可能です。

つまり、今回の条件で2人の子どもに相続する場合、マンション相続税の総額は770万円で、子ども1人に385万円ずつの相続税が課せられることになります。

配偶者と1人の子どもに相続する場合

マンションを相続する場合、特例を除けば基礎控除が適用されます。基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」で算出できるため、配偶者と1人の子どもにマンションを相続する場合は下記のように計算可能です。

3000万円+600万円×2人=4,200万円

次は相続税の課税対象額の算出です。マンションの相続税評価額は1億円であるため、この金額から基礎控除を差し引くと下記のように算出できます。

1億円-4,200万円=5,800万円

基礎控除額が相続税評価額を上回れば相続税は0円ですが、今回は相続税評価額が1億円であり、課税対象額が5,800万円であるため相続税が発生します。

課税対象額を算出したあとは、法定相続分を算出します。法定相続分は、配偶者や子などと被配偶者との関係性によって変動する仕組みで、配偶者と子ども1人が相続人の場合は法定相続分がそれぞれ1/2と定められています。

今回は5,800万円が相続税の課税対象額であるため、配偶者と子どもの法定相続分に応じた取得金額はそれぞれ2,900万円です。

それぞれの取得金額がわかれば、次に相続税の税率と控除額を計算します。税率は法定相続分ごとの取得金額によって、下記のように異なります。

取得金額 相続人 配偶者の法定相続分
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

参考元:国税庁「No.4155 相続税の税率

それぞれの取得金額は2,900万円であるため、「税率15%」「50万円」とわかります。そのため、配偶者と子ども1人のマンション相続税は「2,900万円×15%ー50万円=385万円」と算出可能です。

なお、配偶者がマンションを相続する場合は、基礎控除にくわえて配偶者控除も適用されます。配偶者控除では最低でも1億6,000万円までの控除を受けられるため、今回のケースでは相続税がマイナスとなるため、配偶者は相続税の納付が不要です。

つまり、今回の条件で配偶者と子ども1人に相続する場合、マンション相続税は配偶者が0円、子どもは385万円が課せられることになります。

マンションの相続税が払えないとどうなる?

マンションの相続税を支払わない場合、ペナルティとして下記のような税金の支払いがさらに必要となります。

延滞税 支払期限の翌日から発生する税金。相続税を納付するまで課税される。
無申告加算税 正当な理由なしで相続税の申告や納付をしなかった場合に課せられる税金。

※参照:国税庁「No.9205 延滞税について」「相続税、贈与税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」

延滞税は相続税の納付期限までに支払いをしなかった場合に、期限の翌日から発生します。また、正当な理由なしで相続税の納付をしない場合には、無申告加算税の支払いも追加で必要です。

なお、相続税納付の催促にも無視を続けると、最終的には国税庁により財産を差し押さえられます。相続したマンション自体を没収されかねないため、事前に相続税がどの程度かかるのかを把握したうえで、納付期限までに支払いを済ませられるようにしましょう。

マンションの相続税が払えない場合の対処法

マンションの相続税は、原則現金で一括納付となります。相続税は高額になるケースも多いため、現金で一括納付するのが難しい場合もあるでしょう。

マンションの相続税の納付が難しい場合、下記のような対処法を試してみてください。

  • 延納:分割払いを行う
  • 物納:現物で払う
  • 売却:相続したマンションの売却金で払う
  • 相続放棄 │ マンションを相続しない

相続税が納付できない際の対処法には4つありますが、なかには今後マンションを所有できなくなる方法もあります。マンションの相続税の納付が難しい場合、自分の希望にあった対処法を探してみてください。

延納 │ 分割払いを行う

相続税の納付が困難で、納付額が10万円を超える場合、所定の申請手続きを行うことで相続税を年払いで納めることも可能です。

相続税を延納するには、下記の要件を満たしている必要があります。

  • 相続税額が10万円を超えている
  • 現金納付が困難な理由がある
  • 延納税額と利子税の金額に相当する担保を用意する
  • 延納の申請期限までに、延納申請書に担保に関する書類を添えて税務署長に提出する

参照:国税庁「No.4211 相続税の延納

相続税を延納するには、延納税と利子税の納付も必要となります。また、これらの金額に相当する担保の用意も必要で、相続するマンションも担保と認められます。

延納の申請手続きは住んでいる地域の税務署で可能です。まずは税務署の担当者に相続税の延納を希望していることを伝えてみるとよいでしょう。

物納 │ 現物で払う

一括納付も延納による納付も困難な場合、マンションなどの相続財産そのものを相続税として納めることも可能です。

マンションを物納として納める場合、下記の要件を満たしている必要があります。

  • 延納でも納付が困難な理由がある
  • 物納として申請するマンションが日本国内に所在している
  • 物納に不適格な財産ではないこと
  • 延納の申請期限までに、延納申請書に担保に関する書類を添えて税務署長に提出する

参照:国税庁「No.4214 相続税の物納

なお、物納で相続税を納める場合、利子税の納付も必要となります。また、物納の場合は市場価格ではなく相続税で算出した評価額をもとにマンションの価値が決定され、不動産売却よりも低い価格で物件を手放すことになるのが一般的です。

そのため、場合によっては相続したマンションを売却して、売却金額で相続税を納付するのも一つの手です。

売却 │ 相続したマンションの売却金で払う

相続したマンションを売却し、その資金で相続税を支払うことも可能です。物納よりも高い金額でマンションを手放したい場合、不動産売却も視野に入れておくとよいでしょう。

不動産売却の場合、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的であり、依頼をすると仲介手数料がかかります。仲介手数料は依頼する不動産会社が決定するため一概にいえませんが、不動産会社が受領できる仲介手数料の上限額は下記のように定められています。

取引価格 仲介手数料の上限
200万円以下 取引物件価格(税抜)×5%+消費税
200万円超~400万円以下 取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税
400万円超 取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税

参考:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」

たとえば、売買価格が税抜500万円の場合は、「500万円×3%+6万円+(500万円×10%)=71万円」が仲介手数料の上限となります。

なお、売却の場合は買い手がすぐにつくとは限らないため、相続税の納付期日までに必要な金額を用意できる保証がない点にも注意が必要です。

また、マンションの売却で利益が出た場合は、譲渡所得税や登録免許税といったさまざまな税金がかかります。

マンションの売却金額で相続税を納付することを検討している場合、仲介手数料や税金がかかる点や、必要な金額で納付期日までに売れる保証がない点も考慮したうえで、この方法を取るべきかを考えてみてください。

マンション売却における税金については「マンション・アパート売却時の税金はいくら?計算方法や節税に使える特例も解説」の記事で詳しく解説しているため参考にしてみてください。

相続放棄 │ マンションを相続しない

相続権を放棄すれば、マンションを相続できなくなりますが、相続税は一切かかりません。いずれの方法でも相続税を支払えない場合、最終的な選択肢として相続放棄することも検討してみてください。

また、相続される遺産には、借金や滞納している税金といったマイナスなものも含まれ、相続権を放棄すれば負債なども引き継ぐ必要もなくなります。

とはいえ、相続放棄をすればマンションを含めたすべての財産を相続できなくなります。相続できるプラスの財産とマイナスの財産、納付する相続税などを洗い出したうえで、相続放棄するべきかを慎重に考えてみるとよいでしょう。

マンションを相続する流れ

マンションを相続するには、さまざまな手続きが必要です。マンションを相続する大まかな流れは、下記のとおりです。

  1. 遺言書を確認する
  2. 相続人と相続財産を調査する
  3. 遺産分割協議をする
  4. 相続するマンションの登記をする
  5. 相続税の申告をする

ここからは各工程を解説していくため、マンションを相続する人は参考にしてみてください。

遺言書を確認する

マンションを相続する場合、遺言書が残っているかの確認から必要です。遺言書の有無によって、マンションの相続の手続きが変わります。

遺言書が残っている場合、原則その内容に沿って相続が行われます。遺言書が作成されていない、または見つからない場合、相続人同士で話し合って遺産分割を進めます。

なお、遺言書には「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「公正証書遺言」の3種類があり、自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は遺言内容の改ざんを防ぐ目的で家庭裁判所で手続きをしたうえで開封しなければなりません。

遺言書の種類によっては、見つけた場所ですぐに開封できないので注意しておきましょう。

相続人と相続財産を調査する

遺言書の有無を確認した後は、相続人の決定と遺産の調査を行います。まずは、遺産の調査から解説します。

遺産には、マンションや現金だけでなく、借金や未納の税金なども含まれます。被相続人の遺産を正確に把握したうえで相続は行われます。

次に、相続人の決定についてです。

相続人決定の際には、被相続人の戸籍謄本を取り寄せたうえで、誰が相続人に該当するのかを調査する必要があります。

この際には相続を放棄する人や、相続欠格者(何かしらの事由により遺産相続の権利を失った人)、相続廃除者(被相続人の意思に基づいて遺産相続の権利を失った人)の確認もしておきましょう。

さらに法定相続人の範囲から、どの人が法定相続人に該当するのかを調査する必要もあります。

法定相続人の範囲については、「法定相続人の範囲はどこまで?相続人から除外されるケースも解説!」の記事で詳しく解説しているため、こちらも参考にしてみてください。

遺産分割協議をする

遺言書に指定がない場合、原則法定相続分に応じて相続分が決定されます。相続人全員で遺産分割協議を行い、全員の同意があれば法定相続分にかかわらず自由に財産の分割が可能です。

なお、マンションは現金のように価値がわかるものではありません。相続人同士で共有する、または単独で所有するかなど、マンションの遺産分割協議では話し合いが難航することも予測されます。

話し合って決めた遺産分割に相続人全員が同意しなければ、遺産分割協議は終わりません。遺産分割協議をスムーズに進めるためにも、「相続割合を決める3つの方法!基礎知識や注意点などもわかりやすく解説」の記事を参考に、遺産分割について調べておくとよいでしょう。

相続するマンションの登記をする

マンションを相続する場合、相続登記という手続きが必要です。相続登記とは、マンションのような不動産の所有者が亡くなり相続が行われる場合に、物件の名義を相続人に変更するための手続きのことです。

相続登記は不動産の所在地がある法務局で行います。相続登記の手続き時には、下記のような書類が必要です。

  • 被相続人とマンションの相続人の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • マンションの相続人の住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 相続登記申請書
  • 遺産分割協議書
  • マンションの相続人の印鑑証明書
  • 相続関係説明図(相続人自身で作成が必要)
  • 遺言書(残っている場合)

参照:法務局「登記申請手続のご案内

相続登記の手続きは個人でも行うことは可能です。とはいえ、必要書類の準備に時間や手間がかかるため、司法書士や行政書士に依頼することをおすすめします。

なお、相続登記は、2024年4月1日より不動産登記制度によって義務化されます。正当な理由なしでこの義務に違反した場合、10万円以下の過料の適用対象となるため、マンションを相続する場合は必ず相続登記を行いましょう。

相続税の申告をする

マンションの相続税が発生する場合、相続登記の後に被相続人の住所地を所轄する税務署で申告をしなければなりません。

税務署で手続きする際には、下記のような書類が必要です。

  • 被相続人と相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の住民票
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続人全員のマイナンバーカード
  • 相続人全員の身元確認書類
  • 相続するマンションに関する書類(登記簿謄本や固定資産税評価証明書など)
  • マンション以外に相続される遺産に関する書類(銀行口座の残高証明書、生命保険金の支払証明書など)

参照:国税庁「相続税の申告の際に提出していただく主な書類

相続税の申告は、相続人が亡くなった日(被相続人が亡くなったことを知った日)の翌日から10か月以内に行うように義務づけられています。たとえば、1月10日に亡くなったことを知った場合、その年の11月10日までに申告が必要です。

相続税の納付書は役所から自動で送られてくるわけではなく、相続人が自分で用意する必要があります。納付書は全国の税務署でもらえるため、マンションを相続する場合は最寄りの税務署に納付書をもらいに行きましょう。

相続したマンションの活用法

相続したマンションには、下記のような活用法があります。

  • 賃貸経営を行って収益を得る
  • 売却して現金を得る
  • 相続したマンションに住む

相続したマンションには住む以外にも、賃貸経営や売却によって利益を得ることも可能です。ここからはこれら3つの方法を解説するため、相続するマンションの活用法を考える際は参考にしてみてください。

賃貸経営を行って収益を得る

相続したマンションを貸して収益を得るのも活用法の1つです。人気のエリアにある物件や築浅の物件など、需要があるマンションであれば比較的借り手が見つかりやすく、安定した収入を見込めます。

相続したマンションを貸すのに向いているケースとしては、下記が挙げられます。

  • 相続したマンションに今後も住む予定がない
  • 現時点では住む予定はないが、いずれ住む可能性がある
  • 住む予定はないが、マンションを手放したくない

マンションを貸す場合、売却のように物件を手放すことなく収益を得られます。そのため、将来的に住む可能性がある場合や、思い出のある家を手放したくない場合にはマンションを貸すことを検討してもよいでしょう。

ただし、マンションを貸す場合、物件の固定費として維持管理費がかかります。また、マンションの所有には固定資産税や都市計画税といった税金の支払いも必要です。

そのため、収入と支出のバランスを考慮したうえで、相続したマンションを賃すかどうかを検討するとよいでしょう。

売却して現金を得る

相続したマンションの活用法には、売却することも挙げられます。相続したマンションの売却が向いているケースとしては、下記が挙げられます。

  • 相続税の支払いが困難である
  • 相続後のマンションの修繕や管理が難しい
  • マンションの活用が難しく、空き家として放置してしまう可能性がある

相続したマンションを売却すると、売却金額から相続税を支払えます。そのため、多額の相続税を支払うのが難しい場合、マンションの売却を検討するのも手です。

また、売却後はマンションの所有権は買い手に移り、今後の管理は不要です。マンション所有にかかる税金や管理費などの支払いが不要になる点も売却のメリットといえます。

ただし、相続したマンションの売却で利益が出た場合、その金額に応じて譲渡所得税という税金が発生します。そのため、相続するマンションを売却する際には、どの程度の利益が見込めるのかを把握しておくことが大切です。

なお、不動産会社に査定を依頼すれば、マンションの売却金額の目安を把握できます。売却金額の目安を知りたい場合、所要時間2分で無料査定ができる「不動産売却査定」を試すことも検討してみてください。

相続したマンションに住む

マンションを相続した場合、その物件に住むことも活用法の1つです。相続したマンションに住むのが向いているケースとしては、下記が挙げられます。

  • マンションを手放したくない
  • 立地などの条件がよいマンションを相続する

相続するマンションに住む場合、自分で所有を続けられます。そのため、大事な思い出がある物件を手放さずに済むのがメリットの1つです。また、物件によっては、現在よりもよい条件のマンションに住めることも挙げられます。

ただし、マンションを所有する場合は、固定資産税や都市計画税といった税金の支払いが必要です。また、引越しのためにさまざまな手続きが必要になることも、相続したマンションに住むデメリットの1つです。

相続したマンションに住む場合、税金や引越しにかかる費用などを事前に把握しておくようにしましょう。

マンションの相続に関する相談先

マンションの相続には、さまざまな手続きが必要です。専門的な知識が必要な場面もあるため、不明点があれば専門家を頼ることも大切です。

マンションの相続に関する相談先をまとめましたので、不明点がある場合は相談内容にあった専門家に相談してみてください。

相談内容 相談先
相続税 税理士
マンションの売却 不動産会社
マンションの名義変更 法務局または司法書士
遺産分割協議 弁護士または司法書士

相続税は税理士

マンションの相続税に関する相談先は税理士がよいでしょう。

税理士に相談することで、発生する相続税の算出や節税対策などを教えてもらえます。また、相続税の申告で必要な手続きや書類作成に関するアドバイスももらえます。

なお、すべての税理士が相続税に精通しているとは限りません。そのため、相続税に関する相談がある場合、相続を専門としている税理士を探すのがよいでしょう。

売却は不動産会社

相続したマンションを売却する場合、不動産会社に相談するとよいでしょう。

不動産会社に依頼することで、買い手との仲介をしてもらえます。また、マンションの査定や売却のためのアドバイスをしてもらえるため、「マンションがいくらで売れるのかを知りたい」「なるべく高値で早くマンションを売りたい」といった場合に向いています。

ただし、不動産会社によって、得意としている物件やエリアが違います。過去の実績も異なるため、相続したマンションを売る際には複数の業者に相談したうえで、依頼先を決めることが大切です。

また、売却金額の目安となる査定額も業者によって変わるため、相談する不動産会社を探す際には、複数の業者に一括で査定を依頼できる「不動産売却査定」を試してみるとよいでしょう。

名義変更は法務局か司法書士

マンションを相続する場合、名義変更の手続きが必要です。名義変更は個人で行うことも可能で、不動産の所在地がある法務局に行けば担当者に相談しながら手続きを行えます。

ただし、マンションの名義変更の手続き時には、専門的な知識が必要であったり、書類作成に手間がかかったりすることも考えられます。名義変更にかかる時間と手間を省きたい場合、司法書士に依頼をするのも手です。

司法書士に依頼する場合は別途報酬の支払いが必要になるため、まずは費用がどれだけかかるのかを無料相談で尋ねてみるとよいでしょう。

遺産分割協議は弁護士か司法書士

遺産分割協議では、話し合いで定まった内容を遺産分割協議書という書類にまとめます。遺産分割協議書を法的に有効な書類にするために、弁護士や司法書士に作成を依頼するのが一般的です。

また、法的に正しく遺産を相続したり、相続人同士でのトラブルを未然に防ぐために、法に精通している弁護士や司法書士に相談しておくこともよいでしょう。

なお、弁護士や司法書士の事務所には、無料相談を行っている事務所も多くあります。まずはさまざまな事務所に無料相談をして、依頼する弁護士や司法書士を探すことを検討してみてください。

まとめ

遺産相続の際には、遺産の総額が基礎控除額を上回る場合に相続税が課せられます。マンションの場合は、土地と建物の評価額を足した金額が相続税評価額となるため、相続税を算出するにはそれぞれの評価額を把握しておくことが大切です。

また、マンションを相続する場合、適用される特例や控除もあり、節税のためにはこれらを把握しておくことも重要です。

なお、相続したマンションの活用法には、売却や賃貸、住居の3つが挙げられます。売却の場合は不動産会社に査定をしてもらう必要があり、査定額を高値で提示してもらえた業者に依頼するのが得策です。

相続したマンションの売却を視野に入れている場合、所要時間2分で無料査定ができる「不動産売却査定」で売却金額の目安を診断してみてください。

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