マンション・アパートを売却しても、利益が丸ごと売主の手元に残る訳ではなく、譲渡所得税・印紙税・登録免許税・消費税といった税金を納めなければなりません。
マンション・アパートの売却時にかかる税金は法律で決められており、売却価格が高く・所有年数の短い物件ほど税率が高く、最大で約40%もの税金が差し引かれてしまいます。
一定条件を満たせば、課税対象を3,000万円まで控除できる特例もあるので、マンション・アパート売却時で損をしたくない人は税金の仕組みを理解しておきましょう。
この記事では、マンション・アパート売却時にかかる税金の種類・計算方法を解説します。
マンション・アパート売却時の税金を安く抑えられる特例もわかるので、自分が支払う税額を知りたい人や税金を安く抑えたい人はぜひ参考にしてみてください。
マンション・アパート売却でかかる税金
マンション・アパートを売却したら、売却で得た利益が丸ごと売主の手元に残るわけではなく、売却時や売却後にさまざまな税金を支払わなければなりません。
マンション・アパートの売却時にかかる税金は以下のとおりです。
種類 | 税額 |
---|---|
譲渡所得税 | (不動産の売却益−譲渡費用−取得費)×39.63% (※1) |
(不動産の売却益−譲渡費用−取得費)×20.315% (※2) | |
印紙税 | 非課税〜60万円 (※3) |
登録免許税 | 1,000円 (不動産1件につき) |
消費税 (※4) | 不動産の売却価格×10% |
※1=短期譲渡所得の場合(所有期間が5年以内)
※2=長期譲渡所得の場合(所有期間が5年超)
※3=売却価格に応じて変動
※4=課税事業者による不動産売却の場合
上記の税金はすべてのケースで発生する訳ではなく、不動産売却が赤字であれば譲渡所得税は課税されず、売主が個人の不動産売却であれば消費税もかかりません。
4種類の税金を順番に解説していきます。
①譲渡所得税(売却益が出た時のみ)
マンション・アパートを売却して利益が出た場合、所得税と住民税をまとめた「譲渡所得税」を支払う必要があります。
不動産売却で得た利益である譲渡所得に課税される、所得税・住民税をまとめた総称です。
譲渡所得税は、マンション・アパートの売却価格に直接課税される訳ではなく、購入時の取得費や仲介手数料などの譲渡費用を差し引いた「譲渡所得」に課税されます。
不動産売却時における、売却価格と取得価額との差額で、売却価格から取得費・譲渡費用・減価償却費を差し引きます。
ちなみにマンション・アパートの売却価格が取得費や譲渡費用を上回ってしまい、不動産売却が赤字の場合は譲渡所得ではなく譲渡損失と呼びます。
種類 | 解説 |
---|---|
譲渡所得 | 売却価格>(取得費+譲渡費用) |
譲渡損失 | 売却価格<(取得費+譲渡費用) |
マンション・アパート売却が黒字の場合、譲渡所得税の納税義務があるため支払いを怠ると、10年以上の懲役または1,000万円以下の罰金を科せられる恐れがあります。
マンション・アパート売却が赤字の場合、譲渡所得が発生していないので譲渡所得税は課税されませんが、特例を用いて税金の控除が受けられるケースもあります。
そのため、マンション・アパート売却時は黒字・赤字に関係なく確定申告を必ずおこないましょう。
②印紙税
マンション・アパート売却で売買契約書を作成する際、内容を法的に証明するために「印紙税」を税務署に支払う必要があります。
日本国内で公文書・私文書など一定の文書を作成する際に納める税金で、不動産売却では不動産売買契約書の作成時などに発生します。
以下のように、印紙税の税額は売買契約書におけるマンション・アパートの売却価格に応じて変動する仕組みです。
売却価格 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円〜50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円〜100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円〜500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円〜1,000万円以下 | 1,000円 | 5,000円 |
1,000万円〜5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円〜1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円〜5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円〜10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円〜50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円を超える | 60万円 | 48万円 |
※1=2024年12月までは軽減税率が適用
印紙税は収入印紙を売買契約書の原本に貼る形式で納税しますが、コピーは必要ないので1枚分の収入印紙を売主と買主が平等に支払う形式が一般的です。
原則として、印紙税は郵便局や法務局で購入した収入印紙で納付しますが、金額の低い収入印紙であればコンビニでも購入できます。
参照:国税庁「No.7101 不動産の譲渡・消費貸借等に関する契約書」
参照:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
③登録免許税
マンション・アパート売却で所有権移転登記・抵当権抹消登記などの登記をおこなう際は「登録免許税」を税務署に支払う必要があります。
不動産の所有権移転や抵当権設定などの登録手続きにかかる税金で、土地売買では所有権移転登記や抵当権設定登記などの手続き時に課税されます。
マンション・アパート売却時に、登録免許税の課税対象となる登記は以下のとおりです。
種類 | 解説 |
---|---|
所有権移転登記(土地) | 土地の所有権を売主から買主に移す登記 |
所有権移転登記(建物) | 建物の所有権を売主から買主に移す登記 |
抵当権抹消登記 | 住宅ローン完済時に抵当権を抹消する登記 |
マンション・アパート売却時の登録免許税は、以下の式で計算できます。
種類 | 計算方法(軽減税率) |
---|---|
所有権移転登記(土地) | 固定資産税評価額×1.5% |
所有権移転登記(建物) | 固定資産税評価額×0.3% |
抵当権抹消登記 | 1,000円 (不動産1個につき) |
※=軽減税率の適用期間
登録免許税を納付する場合、金融機関に出向いて所定の必要事項を記入した納付書を窓口に提出して、現金で支払う形式が一般的です。
④消費税(課税事業者の売却時のみ)
売主が年間売上が1,000万円以上の課税事業者の場合のみ、マンション・アパート売却時に消費税を支払う必要があります。
消費税は消費される商品・サービスに課される税金で、あくまで資本の移転と見なされる通常の不動産売買は課税対象ではありませんが、事業レベルでの不動産売買は課税対象となります。
とはいえ、以下のように課税売上高の少ない個人や非課税事業者によるマンション・アパート売却時は課税対象ではないので、消費税のかからないケースが多いです。
【消費税のかからないケース】
- 個人同士で売買する場合
- 定着物付で売買する場合
- 非課税事業者が売買する場合
不動産会社は課税事業者であるため、個人間のマンション・アパート売却時でも不動産会社に支払う仲介手数料には消費税が課税される点に注意しましょう。
マンション・アパート売却時にかかる税金の計算方法
マンション・アパート売却時の譲渡所得税は法律で計算方法が定められていますが、手順が複雑なので具体的な計算方法がわからない人も少なくありません。
マンション・アパート住宅の売却時に発生する譲渡所得税は、次の手順で算出できます。
- 取得費を求める
- 譲渡費用を求める
- 譲渡所得を求める
- 譲渡所得に一定税率をかける
マンション・アパートの売却価格に譲渡所得税が直接かかる訳ではないので、まずは物件の取得費・不動産売却にかかった譲渡費用を算出します。
その後、マンション・アパートの売却価格から取得費・譲渡所得を差し引いた譲渡所得を計算して、所有年数に応じた税率を掛け合わせて譲渡所得税の税額を求めます。
4ステップの計算方法を順番にみていきましょう。
①取得費を計算する
まずは、売却するマンション・アパートの購入・取得に費やした取得費を求めます。
取得費として計上できる費用は、以下の通りです。
- 購入代金・建築代金
- 仲介手数料
- 登録免許税・不動産取得税・印紙税
- 登記費用・登記手数料
- 土地の造成費用
- 土地の測量費
- 設備費・改良費
- 借入した資金の利子
(使用開始する日までの期間に対応する部分)
マンション・アパート売却時の取得費として計上できるのは、物件の購入代金・取得のために直接必要とされる費用になります。
ただし、マンション・アパートの購入代金・建築代金などが丸ごと取得費になる訳ではなく、所有期間中に減少した価値が減価償却費として差し引かれます。
基本的には、以下のようなマンション・アパートの取得以降に発生した費用は取得費に含まれません。
- 町会費
- 引越しにかかった費用
- つなぎローンの金利
- つなぎローンの事務手数料
- 家電・家具・カーテン代など
- 管理準備金・管理費・修繕積立金など
- 火災保険料
- インターネット加入料・CATV利用料
例えば、ローンや保険に関する費用・マンション管理費や町内会費などは、マンション・アパートの取得に直接関わった費用ではないので取得費に含められません。
マンション・アパートの取得費の計算方法には以下の2種類がありますが、金額の大きいほうを選択可能です。
計算方法 | 解説 |
---|---|
実額法 | 取得当時の資料がある場合の計算方法 |
概算法 | 当時の資料がない場合の計算方法 |
基本的に概算法を用いると取得費が安くなる場合が多く、税金が高くなり損してしまうので、実額法で取得費を算出する方法がおすすめです。
実額法・概算法それぞれの計算方法を解説します。
実額法による取得費の計算
実額法は不動産の現在価値を導く方法で、マンション・アパートの購入代金・購入当時の仲介手数料などの取得費用から、減価償却費を差し引く形で計算します。
アパート・マンションなどの建物が経年劣化で価値が減少していく分を耐用年数にあわせて分割して、必要経費として差し引くことのできる金額です。
マンション・アパートの減価償却費は下記の計算式で算出します。
マンション・アパートの償却率は法定耐用年数ごとに定められており、一般的に堅固で寿命が長いものほど耐用年数が長く・償却率が低いです。
種類 | 法定耐用年数 | 償却率 |
---|---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 | 0.015 |
金属造(肉厚4mm超) | 34年 | 0.02 |
金属造(肉厚3〜4mm) | 27年 | 0.025 |
金属造(肉厚3mm以下) | 19年 | 0.036 |
木造・合成樹脂 | 22年 | 0.031 |
木造モルタル造 | 20年 | 0.034 |
例えば、3,000万円で購入した鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションを20年後に売る場合、以下の計算式で減価償却費は900万円と求められます。
減価償却費を差し引くのは建物部分の取得費の計算時のみで、土地は経年劣化しないので、土地部分の取得費の計算時は減価償却費を差し引きません。
マンション・アパートの償却率や法定耐用年数がわからない場合、国税庁のホームページにある償却率等表を確認しましょう。
概算法による取得費の計算
概算法はマンション・アパートの売却価格から取得費を求める方法で、購入当時の金額がわからない際に用います。
概算法ではマンション・アパートの取得費を下記の計算式で算出します。
例えば、売却価格が1,000万円の不動産であれば、概算法で算出する場合の取得費は50万円となります。
②譲渡費用を計算する
つづいて、マンション・アパートの売却時に費やした譲渡費用を計算します。
マンション・アパート売却時には、次のような費用を譲渡費用として計上できます。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 借家人に支払った立退料
- 建物の取り壊し費用・損失額
注意点として、不動産売却の譲渡費用として計上できるのは、マンション・アパートを売却するために直接かかった費用に限定されます。
そのため、以下のような費用は譲渡費用として計上できません。
- 抵当権抹消登記費用
- 相続登記費用
- 住所・氏名変更登記費用
- 建物の修繕費用
- 固定資産税
- 残置物撤去費用
- 遺産分割に伴う弁護士費用
例えば、マンション・アパートの修繕費・固定資産税などの維持管理にかかった費用・売却価格の取立てに要した費用などは譲渡費用に含められません。
マンション・アパート売却時は、譲渡費用になる費用・ならない費用の判断がむずかしいので、国税庁のホームページを確認したり不動産会社に確認しましょう。
③譲渡所得を求める
マンション・アパートの取得費と譲渡費用を求めたら、譲渡所得を求めましょう。
具体的には、マンション・アパートの売却価格から取得費と譲渡費用を差し引くことで譲渡所得を求めます。
計算式は以下の通りです。
例えば、以下のケースであれば「3,000万円−2,000万円−300万円=700万円」という計算式になるので、譲渡所得は700万円となります。
・取得費=2,000万円
・譲渡費用=300万円
参照:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」
④譲渡所得に一定税率をかける
譲渡所得がわかったら、法律で定められた税率を掛け合わせて実際の税額を計算します。
マンション・アパート売却時に発生する譲渡所得税の税率は「売却した年の1月1日時点での中古住宅の所有期間が5年以内か?」によって異なります。
種類 | 短期譲渡所得 (所有期間が5年以内) |
長期譲渡所得 (所有期間が5年超) |
---|---|---|
税率 | 39.63% (所得税30.63%+住民税9%) |
20.315% (所得税15.315%+住民税5%) |
※=2013年1月1日〜2037年12月31日まで2.1%の復興特別所得税も課税
具体的には、以下の例のように譲渡所得税を計算します。
譲渡所得:3,000万円−300万円−2,000万円=700万円
譲渡所得税:700万円×20.315%=142万2,050円
マンション・アパート売却時の税金が控除される特例
マンション・アパート売却時には最大で約40%もの税金がかかる上、課税対象の金額が数百万円〜数千万円レベルなので、なるべく税金を減らしたいと考える人も多いでしょう。
以下の特例を用いれば、マンション・アパート売却時に税金が控除される可能性があります。
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
- 特定の居住用財産の買換えの特例
- マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
上記の特例は、すべてのマンション・アパート売却時に利用できる訳ではなく、マイホームの買換え時・所有期間が5年超などの条件を満たす場合しか利用できません。
マンション・アパート売却時の税金が控除される特例の適用条件は複雑なので、わからない場合は不動産会社・税務署に確認することをおすすめします。
マンション・アパート売却時の税金を控除できる4種類の特例について、1つずつみていきましょう。
①居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
売却するマンション・アパートが自宅の場合は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を用いて、最大3,000万円までの譲渡所得税が控除される可能性があります。
すると、譲渡所得を3,000万円控除できるので、課税対象を900万円に抑えられます。
譲渡所得:6,000万円-(2,000万円+100万円)-3,000万円=900万円
よって、課税対象の譲渡所得を900万円として、以下のように譲渡所得税は182万8,300円と求められます。
譲渡所得税:900万円×20.315%=182万8,300円
(計算結果の100円未満は切り捨て)
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を利用できる条件は以下のとおりです。
種類 | 解説 |
---|---|
売却する自宅の条件 | 現在主として住む自宅を売却した |
居住用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売却した | |
家屋を取り壊した日から1年以内にその敷地の売却に関する契約が締結されている(家屋を取り壊したとき) | |
配偶者等が居住している家屋を売却した(転勤などで単身赴任の場合) | |
譲渡者の配偶者や親・子など直系の血族や生計を共にする親族に売却していない |
※=住宅ローン控除との併用は不可
※=3年に一度しか適用できない
※=前年と前々年に於いて、居住用3000万円特別控除などを利用していないこと
参照:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
②特定の居住用財産の買換えの特例
「特定の居住用財産の買換えの特例」では、売却するマンション・アパートの売却価格よりも買い換えた新居の購入価格が高額な場合、譲渡所得税の支払いを先送りにできます。
このとき、新居の購入価格が3,000万円であれば、新居の購入価格のほうが高額なので、譲渡所得1,300万円に対して課税される譲渡所得税の支払いを先送りにできます。
将来的に新しい家を売却して譲渡所得2,000万円を得た場合、古い家の譲渡所得1,300万円もあわせた合計3,300万円が譲渡所得税の課税対象になります。
「特定の居住用財産の買換えの特例」は、現在のマンション・アパート売却時の譲渡所得税を先延ばしにしているだけで、免除されているわけではない点に注意しましょう。
状況によっては、先述した「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用するほうが税金を抑えられるケースもあります。
基本的には、譲渡所得が3,000万円以上であれば、税負担を抑えるために「特定の居住用財産の買換えの特例」を適用するケースが一般的です。
しかし、将来的には新居と旧居の譲渡所得税を両方支払う必要があるため、買い換え時に税金を支払う余裕があるなら、3,000万円特別控除を利用して先に払ったほうがお得です。
種類 | 解説 |
---|---|
売却する自宅の条件 | 所有期間と居住期間が10年以上であること |
空き家になった日から3年後の12月31日までに売ること | |
売却価格が1億円以下であること | |
家屋と敷地両方を売却すること | |
日本国内にある自宅の売却であること | |
自宅の売却先が特別な関係の者ではないこと | |
他の特例を使っていないこと | |
自宅の売却した翌年に確定申告をしていること | |
新たに購入する自宅の条件 | 建物の床面積が50㎡以上であること |
敷地面積が500㎡以下であること | |
取得した年の翌年12月31日まで住み続けること | |
一定の耐震基準をクリアしていること(中古住宅の場合) |
参照:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
③居住用財産の買い替え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除
「居住用財産の買い替え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除」では、マンション・アパート売却で抱えた譲渡損失を抱えた際に、他の所得と損益通算できます。
不動産売却での所得が赤字になった際、税計算における所得から譲渡損失を差し引いて算出することです。
例えば、本業で3,000万円の所得がある人が、不動産売却で1,000万円の譲渡損失が出た場合、損益通算を用いることで課税対象を2,000万円に抑えられるので節税になります。
マンション・アパート売却時の譲渡損失を他の所得と損益通算できる上、1年で譲渡損失を相殺しきれない場合は譲渡した年の翌年以後3年まで繰越控除ができます。
年数 | 譲渡損失 | 黒字所得 | 適用後の課税対象 |
---|---|---|---|
初年度 | 2,000万円 | 600万円 | 0円 |
2年目 | 1,400万円 | 600万円 | 0円 |
3年目 | 800万円 | 600万円 | 0円 |
4年目 | 200万円 | 600万円 | 400万円 |
上記の例では、売却した年〜2年後まで3年分は所得税が全額控除される上、3年目の所得税は控除後の400万円を所得として計算できます。
種類 | 解説 |
---|---|
売却する自宅の条件 | 譲渡する人の居住用に供している |
所有期間が譲渡年の1月1日で5年を超えている | |
住まなくなった日から3年後の12月31日までに譲渡する | |
敷地面積が500㎡までである (500㎡を超える部分は控除対象外) |
|
新たに購入する自宅の条件 | 物件を売却した年の前年の1月1日から翌年の12月31日までに取得する |
物件を取得した年の翌年の12月31日までに入居する・入居する見込み | |
床面積が50㎡以上である | |
繰越控除を受ける年末に所定の住宅ローンの残高がある | |
借入先が親族以外の金融機関などである |
参照:国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
マンション売却にかかる税金の計算例
マンション売却に掛かる税金の計算例を2種類紹介します。
実際に売却すると掛かる税金について、イメージしていきましょう。
計算例①
1つ目のシミュレーションは、次のような条件でおこないます。
【条件】
- 所有期間は3年
- 購入当時の金額3000万円、その他の経費(手数料など)が130万円
- 売却金額3500万円、固定資産税の精算金5万円
- 売却時の経費は162万4000円
- 仲介手数料が=(7000万円×3%+6万円)×1.1=237万6000円
- その他の経費=40万円
- 「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用
上記の条件でシミュレーションすると、以下のようになります。
減価償却費:(3000万円+130万円)×0.9×0.015×3=126万7650円
取得費:3000万円-126万7650円=2873万2350円
2.譲渡費用を求める
7000万円+5万円-237万6000円=6767万4000円
3.譲渡所得を求める
6767万4000円-2873万2350円=3894万1650円
4.譲渡所得から3000万円を控除する
3894万1650円-3000万円=894万1650円
5.譲渡所得に一定税率をかける
894万1650円×39.63%=354万3575円
計算例②
2つ目のシミュレーションは、次のような条件でおこないます。
【条件】
- 所有期間は25年
- 購入当時の金額等は不明
- 売却金額2000万円、固定資産税の精算金5万円
- 売却時の経費は102万6000円
- 仲介手数料=(2000万円×3%+6万円)×1.1=72万6000円
- その他の経費が30万円
- 「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用
上記の条件でシミュレーションすると、以下のようになります。
概算法を適用して、取得費は「2000万円×5%=100万円」とする
2.譲渡費用を求める
100万円+102万6000円=102万6000円
3.譲渡所得を求める
2000万円+5万円-102万6000円=1902万4000円
4.譲渡所得から3000万円を控除する
1902万4000円-3000万円=0円
5.譲渡所得に一定税率をかける
譲渡所得が0円なのでなし(非課税)
マンション・アパート売却時にかかる税金以外の費用
マンション・アパートの売却時に売主側が負担するのは税金だけでなく、不動産会社に支払う仲介手数料といった税金以外の費用が発生するケースもあります。
マンション・アパート売却時にかかる税金以外の費用は以下のとおりです。
種類 | 費用相場 |
---|---|
仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
住宅診断 | 4万〜6万円程度 |
住宅ローンの返済費用 | ローン残債+手数料 |
上記はあくまで目安で、マンション・アパートの売却価格などによって金額が変動するので、実際にかかる費用は不動産会社・金融機関などに確認しましょう。
それぞれの費用を順番に解説していきます。
仲介手数料
マンション・アパートの売却が成功した場合、取引を仲介した不動産会社に成功報酬として仲介手数料を支払うのが一般的です。
不動産会社が売主に請求できる仲介手数料には法律で上限額が定められており、以下の上限額を超える仲介手数料は支払う義務がありません。
金額 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下の部分 | 売却価格×5%+消費税 |
200万円〜400万円の部分 | 売却価格×4%+消費税 |
400万円を超える部分 | 売却価格×3%+消費税 |
マンション・アパートの売却価格は400万円を超えるケースが大半なので、売却価格の金額ごとに分けずに、以下の速算式で計算する方法が一般的です。
仲介手数料=売却価格×3%+6万円+消費税
例えば、中古マンションを3,000万円で売却した場合、不動産会社に支払う仲介手数料の上限は105万6,000円となります。
不動産会社と媒介契約を締結したからといって、必ずしも仲介手数料の支払いが発生する訳ではなく、不動産売却が成立しなければ仲介手数料は請求されません。
また、仲介手数料を無料としている不動産会社と媒介契約を結んだ場合、マンション・アパートの売却が成立しても仲介手数料を支払わずに済みます。
仲介手数料については、以下の記事も参考にしてください。
住宅診断費
中古マンション・アパートの売却時は、住宅診断をおこない物件の安全性を証明することで購入希望者が多くなり、物件が売れやすくなります。
一級建築士など建物の構造などに詳しい専門家が専有部分の床下・天井裏・壁の中などを確認して、不具合や欠陥がないかなどを調査することです。
例えば、水回り付近の床下を剥がして配管の亀裂が見つかった場合、放置すると階下への水漏れや床材の腐食などに繋がり、契約不適合責任を追及されることがあります。
よって、マンション・アパートの安全性を確認した上で、売主が安心して引き渡しできるように昨今では住宅診断を受けるケースが増えています。
住宅診断にかかる費用は依頼先によって異なりますが、マンジョン・アパートの場合は4〜6万円程度が相場とされています。
住宅ローンの返済費用
住宅ローンでマンション・アパートを購入した場合、売却前に完済する必要があります。
なぜなら、住宅ローンで購入したマンション・アパートには抵当権が設定されており、抵当権を抹消しないと買主側のリスクが高いので購入希望者が見つからないからです。
マンション・アパート売却後も売主がローン返済を続ける場合、返済が滞ると抵当権が実行されてしまい、マンション・アパートを差し押さえられるリスクがあります。
よって、売却前にマンション・アパートの住宅ローンを完済しますが、繰り上げ返済時はローン残債だけでなく返済手数料もかかる点に注意が必要です。
借入先の金融機関によって異なりますが、住宅ローンの返済手数料は一般的に5,000円〜3万円程度です。
例えば、住宅ローン残債が500万円・返済手数料が1万円の場合、住宅ローンの繰り上げ返済時は合計501万円を用意する必要があります。
マンション売却時の仲介手数料を安くする方法
マンション売却時に掛かる手数料と言えば、仲介手数料です。ここでは、仲介手数料について紹介していきます。
仲介手数料の値引き交渉をおこなう
まずは、仲介手数料の値引き交渉をしてみることです。
仲介手数料の値引き交渉は、不動産会社により受けてくれる余地は十分あります。不動産会社としても売り物件を取り、売買契約ができれば確実に仲介手数料が入ります。よって、売り物件を取ることは不動産会社としては、最も重要視しているところです。
つまり、他の不動産会社に案件を取られるようであれば、仲介手数料の値引き要求に応じ案件を取れるほうがよいと判断するケースが多くあります。よって、仲介手数料の値引きには、応じてくれるケースが多いと言えます。ただし、値引き額については販売価格や不動産会社次第ですが、20万円程度が交渉ラインと言えるでしょう。
仲介手数料の安い不動産会社を選ぶ
次に、当初より仲介手数料を下げている不動産会社を選ぶことです。
不動産会社は殆どのケースで仲介手数料を上限値に設定していますが、なかには当初より3%の部分を1.5%の半額にしているところや、仲介手数料定額制のところもあります。これらの不動産会社は、売り物件を多数取っていくことで当初の3%からショートする部分について補填していく、若しくは売買の実績を作るために敢えてキャンペーン的に仲介手数料を下げているケースがあります。
なお、仲介手数料0円をアピールする不動産会社には要注意です。なぜならこのような不動産会社は、必然的に買主から仲介手数料を取る必要があるからです。不動産仲介の場合、レインズ(=主に不動産会社が閲覧できる不動産情報のサイト、一般の人は閲覧できない)に物件情報を掲載することで、他の不動産会社からの買主紹介を受けることができます。
このとき仲介手数料は、売主買主を担当した各々の不動産会社に支払うことになります。よって、仲介手数料0円の不動産会社が、買主の紹介を受けると物件を掲載したのみで、仲介手数料を受けることができません。
したがって、売主を担当する不動産会社は、必然的に自らで買主を探すしか方法がないため、買主の紹介が他の不動産会社からあったとしても紹介を断ること、俗に「囲い込み」が行われてしまいます。
囲い込みは買主の紹介を不動産会社の都合で断ってしまうため、売却の進捗に影響が出たり、売却期間が長引けば値引きをするなど、総じて売主にとってデメリットとなります。よって、手数料の安い不動産会社を選ぶときには注意が必要です。
まとめ
マンション売却で掛かる税金は、所得税と住民税、印紙税、消費税です。このなかで最も重要なのは、所得税と住民税になります。
これらは、不動産を売却し課税譲渡所得があったときに掛かり、その税率は所有期間により変わります。また、譲渡所得から特別控除を差し引くことで節税になることから、これら利用に関する知識は必須です。事前に知識を持ち合わせることで、売却するタイミングも変わってくるでしょう。
よって、マンションを売却するのであれば、まずは税金に関する知識をしっかりと身につけることがおすすめです。