
家の売却を検討している人のなかには、「売却のタイミングはいつがよいのだろう」と考える人もいるでしょう。
売却のタイミングを間違えてしまうと、比較的安価で売却になってしまったり、税金が高くなってしまったり、そもそも買い手がつかなかったりしてしまう可能性があります。
当記事では、家の売却を検討している人向けに、家を売る適切なタイミングをさまざまな視点から解説していきます。また、家を売るのに向かないタイミングや高く早く売るための対策も解説するため、家の売却を検討している人は参考にしてみてください。
目次
家を売るタイミングで何が変わる?
家を売るタイミングが変われば、下記に影響をおよぼす場合があります。
- 家の売却価格
- 家を所有することで発生する税金
- 家の売却のしやすさ
家のような不動産は、経年劣化などによって年々資産価値が下落するのが基本です。そのため、売却のタイミングが遅れれば遅れるほど、資産価値の下落によって売却価格が下がることが予測されます。
また、不動産の所有者には、固定資産税や都市計画税といった税金を納める義務があります。家を売るタイミングによっては、税率や控除の適用の可不可が変わります。
さらに、不動産売却においては、物件が売れやすい傾向にある時期があります。たとえば、REINSが公表する「月例速報Market Watch(2021年12月度)」をみると、2月〜3月が1年で最も成約件数が多いです。
家を売る際は、売却価格や税金の支払い、売却のしやすさを考慮したうえで、売却活動を始めるのが得策といえます。
家を売るタイミング
ここでは、家を売るタイミングをさまざまな視点から解説していきます。
タイミング | 具体例 |
---|---|
ライフステージ | 大きく変化した時に売る |
築年数 | 10年~15年以内に売る |
所有期間 | 税金が下がる5年超えか10年超えで売る |
相続後 | 3年10ヶ月以内に売る |
空き家 | 3年以内に売る |
季節 | 春に売れるように動く |
相場 | 右肩上がりの時に売る |
住宅ローン金利 | 低金利の時に売る |
タイミングによっては、家の売却で損をしてしまうことになりかねません。家の売却を検討している場合、これらのタイミングを考慮したうえで、いつ売るべきかを検討してみてください。
ライフステージ:大きく変化した時に売る
家を売るタイミングには、ライフステージが大きく変化した時が挙げられます。この例には下記が挙げられます。
- 就職や転職
- 出産
- 子どもの進学
- 退職
- 離婚
ライフステージが変化した際は、引っ越しやまとまった資金の調達といった理由から家の売却を検討することもあります。国土交通省の公式サイト「土地保有移動調査結果」にも、個人が家を売却する理由として、これらが挙げられています。
出産や就職など、ライフステージが変化した際は、将来を見据えて家を売却することも検討してみてもよいでしょう。
築年数:10年~15年以内に売る
不動産の資産価値は築年数によっても変動します。築年数が浅ければ浅いほど資産価値が認められる傾向にあるため、高い価格での売却を希望する場合はなるべく早く売却活動を始めるべきといえます。
ここでは戸建てを売るタイミングについて、国土交通省の公式サイト「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」を参考に、戸建てとマンションの築年数ごとの売るべきタイミングを解説していきます。
戸建ては10年以内に売る
引用元:国土交通省「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」
国土交通省のデータを参考にすると、戸建ては築10年ほどで資産価値が半減し、築20年程度でほぼ価値がなくなるとわかります。築10年までは50%以上の資産価値を見込めるため、購入の需要にも期待できます。
そのため、築10年までに売却することが家を売るタイミングの1つといえるでしょう。
なお、戸建ての場合、築20年以降は資産価値の落ち幅がほぼ横ばいになります。購入の需要もほぼ変わらないと考えられるため、築20年を超えている家を所有している場合は、売却のタイミングを図る要素として築年数を外してみてもよいでしょう。
マンションは15年以内に売る
引用元:国土交通省「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」
マンションの場合、築年数が上がるにつれて資産価値が下がり続けるのがわかります。築25年程度で資産価値は半減し、以降も資産価値は一定の落ち幅を保っています。
築15年程度であれば資産価値が約70%を保っているため、築15年になる前に売却することがマンションを売るタイミングといえるでしょう。
なお、一般社団法人の不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」には、中古マンションの購入者のうち31%の人が築26年以上の物件を購入したと記載されています。
そのため、築15年以降のマンションも修繕やリノベーションをしておくことで、物件の資産価値が上がり、購入の需要が増えることも期待できます。
マンションの修繕やリノベーションを行う場合、これらのコストと売却価格のバランスを考慮したうえで検討をするとよいでしょう。
所有期間:税金が下がる5年超えか10年超えで売る
家を売る際に利益が出ると、譲渡所得税を納めなければなりません。譲渡所得税は売却による利益(譲渡所得)や家の所有期間によって変動します。
5年以下(短期譲渡所得) | 39.63% |
---|---|
5年超(長期譲渡所得) | 20.32% |
10年超(10年超え所有軽減税率適用) | 14.21% |
参照元:国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」「長期譲渡所得の税額の計算」「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
税率が高ければ高いほど、納める譲渡所得税も高くなります。そのため、所有期間が5年以下よりも5年超または10年超で家を売却したほうが譲渡所得税を抑えて家を売却することが可能です。
譲渡所得税を抑えられるため、所有期間が5年超または10年超で売却することが家を売るタイミングといえます。
なお、マイホームを売却する場合、所有期間にかかわらず譲渡所得から最大3,000万円が控除される特例が適用される場合があります。
譲渡所得税をさらに抑えられるため、マイホームを売却する際は、3,000万円が控除される特例の適用も視野に入れておくとよいでしょう。
3,000万円控除の特例については、国税庁の公式サイト「マイホームを売ったときの特例」を参考にしてみてください。
相続後:3年10ヶ月以内に売る
家を相続する場合、相続税を納めなければなりません。相続税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に申告をして納税が必要です。
相続税を申告した期限の翌日から3年を経過する日までに相続した家を売却する場合、「取得費加算の特例」の適用対象となります。特例が適用されれば、納付した相続税の一部を物件の取得費として加算され、譲渡所得から控除されます。
譲渡所得が控除されれば、相続税と譲渡所得税を減税できます。つまり、相続後の最大3年10か月以内に家を売却すれば、納める税金を減らせるのです。
相続した家を売る場合は、相続してから3年10ヶ月以内が売却のタイミングといえます。
空き家:3年以内に売る
家を売る場合、譲渡所得から3,000万円までの控除を受けられる特例の対象となる場合があります。特例が適用されれば譲渡所得税を減税できるため、お得に家を売却できます。
現在居住している家であれば基本的に特例が適用されますが、空き家の場合は「空き家になってから3年が経過する年の12月31日まで」が特例の適用条件です。
また、特例の適用には下記のような条件もあります。
- 売り手と買い手が、親子や夫婦のような特別な関係ではないこと
- 売る家がほかの特例の適用を受けていないこと
- 譲渡契約を締結した日までに、敷地を貸駐車場などとして利用していないこと(家屋を取り壊した場合)
- 売却価格が1億円以下であること
参照元:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
居住していない空き家を売る場合、3,000万円控除の特例を受けられる3年以内が売却のタイミングといえるでしょう。
なお、相続してから3年10ヶ月以内に売却する場合、納めた相続税の一定額を物件の取得に加算できる特例の対象となります。さらに節税ができるため、居住していない空き家を売る場合は取得費加算の特例の活用も視野に入れておくとよいでしょう。
季節:春に売れるように動く
不動産の売買は季節によっても変動する傾向があります。
具体的には、REINSが公表する「月例速報Market Watch(2021年12月度)」を参考にすると、2月〜3月が1年で最も成約件数が多いです。これは、4月からの転勤や進学に合わせて引っ越しする人が多いためだと考えられます。
物件購入の需要が高い時期であれば、早期かつ希望価格での売却を期待できます。家を売る場合は2月〜3月までに売却ができるように売却活動を始めるとよいでしょう。
相場:右肩上がりの時に売る
不動産市場が活発な時期であれば、相場が上がり家を高く売れることが考えられます。そのため、家を売るタイミングは相場が上がっているときがよいといえます。
不動産市場を調べる場合は、国土交通省の公式サイトで公表されているデータを参考にするとよいでしょう。
引用元:国土交通省「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」
データを参考にすると、2023年時点では不動産価格指数が右肩上がりであるとわかります。そのため、相場が右肩上がりの2023年時点は家の売りどきともとらえられます。
ただし、相場の動向を完全に予測するのは、専門家であっても難しいです。相場はあくまで売りどきを考える目安としつつ、特例の適用や季節なども考慮したうえで家の売却を検討するとよいでしょう。
住宅ローン金利:低金利の時に売る
家を購入する場合、住宅ローンを利用する方も多いでしょう。
住宅ローンを利用すると利息がかかります。利息は金利によっても変動し、金利が低ければ低いほど利息も少なくなる仕組みです。
「低金利で住宅ローンを利用したい」と考えるのが一般的であり、住宅ローンの金利が低い時期であれば家を購入する人が増える傾向があります。そのため、低金利のタイミングで家を売れば、買い手がつきやすくなると考えられるのです。
フラット35が公表する「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」をみると、現状住宅ローンの金利は低く横移動しているのがわかります。そのため、住宅ローンの金利だけで考えれば、家を売るタイミングとしては悪くないともいえます。
とはいえ、家を売るタイミングには季節や特例適用などもあるため、これらの要因も意識したうえで売却活動を始めるとよいでしょう。
家を売るには向かないタイミング
家を売る場合、売却に向かないタイミングもあります。
- 数ヶ月待てば税制優遇が適用される時
- 築5年以内
これらのタイミングを避ければ、お得に家を売却できることが考えられます。家を売りたい場合、売るべきタイミングだけでなく、売るのに向かないタイミングも考慮しておくようにしましょう。
数ヶ月待てば税制優遇が適用される時
家の所有や売却には、さまざまな税金がかかります。
この税金は税制優遇措置によって節税が可能です。税制優遇措置は家の所有期間によって受けられるかどうかが変わります。
家の売却における税制優遇措置の例としては、下記が挙げられます。
税制優遇措置 | 所有期間または申請期限 |
---|---|
長期譲渡所得 | 5年超 |
10年超え所有軽減税率適用 | 10年超 |
譲渡所得から3,000万円までの控除を受けられる特例 | 空き家になってから3年が経過する年の12月31日まで(空き家の場合) |
取得費加算の特例 | 相続してから3年10ヶ月以内 |
税制優遇措置を受けずに家を売却すると、税金の支払いが多くなり、物件売却後の手取り額が減ってしまうおそれがあります。
あと数ヶ月程度で税制優遇措置を受けられるタイミングであれば、適用される期間まで待ってから家の売却活動を始めるのも検討してみるとよいでしょう。
築5年以内
築5年以内の物件は築浅であるため、高い売却価格を期待できます。とはいえ、築5年以内の家を売るのは、下記の理由から避けたほうがよいといえます。
- 住宅ローンの残債が売却価格を超えてしまう可能性がある
- 譲渡所得税が多くかかってしまう
住宅ローンの残債がある家を売却する場合、売却金額がその返済に充てられます。売却金額よりも残債のほうが多い場合、売り手がその差額の支払いを負担しなければなりません。
住宅ローンを利用して購入した家であれば、築年数が5年の場合はローンの残債が残っているのが一般的です。つまり、築5年の家を高い金額で売却できても、住宅ローンの残債支払いによる負担のほうが大きくなってしまうことが予測されるのです。
また、所有期間が5年以下の家を売る場合、39.63%の税率で譲渡所得税がかかります。所有期間が5年超であれば譲渡所得税の税率が20.315%となるため、税金を抑えつつ家を売却できます。
住宅ローンの支払い負担がかかる可能性があるうえに、譲渡所得税が多くかかってしまうことから、築5年以内の家であれば売却のタイミングを遅らせることも検討しておくとよいでしょう。
高く売る、早く売るためにすること
家を売りたいと考えても、買い手がつかなければ売却はできません。家を売る場合は、売却のタイミングを抑えることだけでなく、高く早く売るための対策を講じておくことも重要です。
家を高く早く売るための対策には、下記が挙げられます。
- 複数の不動産会社に査定依頼をする
- アピールポイントを洗い出す
家の売却を検討している人は、これらの対策を講じたうえで売却活動を始めてみてください。
複数の不動産会社に査定依頼する
家を売却する場合、不動産会社に査定をしてもらい、仲介を依頼するのが一般的です。その不動産会社を探す際は、複数の業者に相談しておくことが重要です。
複数の不動産会社に査定を依頼することで、売りたい家の相場を把握できるうえに、最も高い査定額を提示してもらえた業者を探せます。
高く売るための対策にもなるため、家を売る際には複数の不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
なお、複数の不動産会社に査定依頼をする際は、所要時間2分で無料査定ができる「不動産売却査定」を試してみてください。
アピールポイントを洗い出す
家を売る際には、買い手にその物件のよさを伝えるのも大切です。洗い出しておいたアピールポイントを宣伝することで、買い手がつきやすくなり、早期での売却を期待できます。
家のアピールポイントの例としては、下記が挙げられます。
- 最寄駅からの近さ
- コンビニやスーパーなどの施設の近さ
- 日当たりのよさ
- 地域の治安
- 学校などの子育てに適した施設の近さ
- 加入している保険
- 自動車の出し入れのしやすさ
購入希望者にはさまざまなニーズがあるため、メリットとしては小さすぎると考える部分も購入希望者が購入に至る理由の1つになり得ます。実際に住んでいてよいと感じた部分をアピールポイントとして挙げてみるとよいでしょう。
家を売る手順
家を売る場合、さまざまな手続きが必要です。大まかな手順をまとめたので、家を売る場合は下記を参考にしてみてください。
- 近隣の家の売却価格の相場を確認する
- 不動産会社に査定依頼し査定を受ける
- 不動産会社と媒介契約を締結する
- 家の売却活動を始める
- 内覧対応や購入希望者との交渉を行う
- 売買契約を締結する
- 決済を行い、物件を引き渡す
- 新居に引っ越す
- 確定申告をする
家を売却できるまでには、早くても3ヶ月が目安です。買い手が見つからなかったり、交渉がスムーズに進まなかったりすると、1年ほどかかることも考えられます。
「買い手が見つからない」「少しでも早く売りたい」といった場合は下記の対策を講じてみてください。
対策 | 概要 |
---|---|
相場よりも高すぎる売却価格になっていないかを確認する | 相場よりも高い売却価格だと買い手がつきづらいため、相場を考慮した価格に設定することが重要。 |
内覧時の印象を悪くする要素を可能な限り取り除く | 清掃が行き届いていないなどの要素は、買い手がつかない原因になり得る。可能な限り清掃をしておくことが重要。 |
媒介契約を一般媒介契約に切り替える(※) | 不動産会社との媒介契約には、依頼先が1社のみとなる契約もある。その場合、依頼先が売却活動に難航すると、物件が売れない原因になるため、複数に依頼できる一般媒介契約に切り替えも検討するとよい。 |
不動産会社に仲介を依頼するのではなく、買取業者に依頼する | 業者には不動産の買取を専門とする業者もある。そのような業者であれば、買い手を探す必要がないため、すぐに家を売りたい人に向いている。 ただし、買取価格は仲介よりも下がる傾向があるため注意が必要。 |
※媒介契約の種類については、「媒介契約は3種類どれがいい?メリット・デメリットや契約内容の違いを解説」の記事を参考にしてみてください。
家を売る際は、上記の手順と対策を把握したうえで、売却活動を始めてみてください。
まとめ
家を売るタイミングには、さまざまな場面が挙げられます。とくに築年数や所有期間、相続後の年数、空き家の期間については、税金対策や高額での売却となり得るため、家を売却する際にチェックしておくべきポイントといえます。
ただし、家を売るのに向かないタイミングもあるので、家を売りたい場合、売るべきタイミングだけでなく、売るのに向かないタイミングも考慮することが重要です。
なお、家を高値で売却したい場合、複数の不動産会社に査定依頼をして、最も高い価格を提示してもらえた業者を探すのが大切です。その際には、所要時間2分で無料査定ができる「不動産売却査定」を試すことも検討してください。
よくある質問
家を売るタイミングには、さまざまな場面が挙げられます。
・出産や転職などのライフステージが変化したとき
・築年数が10年~15年以内
・所有期間が5年超または10年超
・相続後から3年10ヶ月以内
・空き家となってから3年以内
・買い手が比較的多い2月〜3月
・不動産相場が右肩上がりのとき
・住宅ローンの金利が低いとき
家を売る場合、ライフステージの変化や築年数、所有期間など、さまざまな要因から売却のべきタイミングを検討するとよいでしょう。
タイミングを判断できない場合、不動産会社に相談するのも手です。「なるべく早く売りたい」「可能な限り高い価格で売りたい」「税金を可能な限り抑えたい」といった希望を伝えることで、希望どおりで売却するためのアドバイスをもらえます。
査定や相談のみであれば無料で行える不動産会社もあります。家を売る場合は、不動産一括査定で最も高い査定額を提示してもらえた業者に、売却のタイミングを相談してみるとよいでしょう。
不動産一括査定を行う際は、所要時間2分で無料査定ができる「不動産売却査定」を試してみてください。