
マンションを売却する際に気をつけたいのが税金のことです。マンションを売却すると、様々な税金が発生します。
マイホームなどの居住用マンションを売却するのか、投資用(事業用)マンションを売却するのかで、取扱いが異なる税金もあります。
また、税金はさまざまな特例措置があるため、上手く活用して節税をおこなうことも重要です。
税金のことで悩みや疑問があれば、税金の専門家である税理士に相談しましょう。
税理士なら、個々の状況にあわせて最適な節税方法を提案できます。
目次
マンション売却にかかる5つの税金
マンションの売却時に支払いが発生する税金には、下記の5つがあります。
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
- 住民税
- 消費税
それぞれの税金を詳しく解説していきますが、税制度は毎年、細かく変更されます。
最新の制度を把握するには、税理士に相談することをおすすめします。
1.印紙税
印紙税は、契約書や金銭の領収書など特定の文書に課される税金です。
マンションなどの不動産を売却する場合、売主は買主との間で不動産売買契約書を交わします。この契約書に、印紙を貼り付けることで納税します。
税率は、契約書上の売却金額によって異なります。例えば契約金額が1,000万円~5,000万円であれば2万円、5,000万円~1億円以下では6万円です。
また、2021年現在は不動産の譲渡に軽減税率が適用されています。詳しくは、国税庁のWebサイトで確認しましょう。
参照:国税庁「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
2.登録免許税
マンションを売却する場合、登記簿の名義を変更する必要があります。名義変更のために必要な手数料が登録免許税です。
マンションの建物部分と土地部分のそれぞれに対して、所有権の移転登記が必要です。そのため、登録免許税も土地と建物の登記それぞれにかかります。
実際の税率ですが、建物・土地ともに「固定資産税評価額×2%」が基本です。
ただし、印紙税と同じく、2021年現在は軽減税率が適用されています。
3.譲渡所得税
マンション売却で利益が発生すると、その譲渡益に対して譲渡所得税が課されます。不動産の譲渡益は、他の所得(給与など)とは分離して課税される特徴があります。
譲渡所得税は、不動産売却の翌年に自分で確定申告をおこない納付しなければいけません。
また、譲渡所得とあわせて、復興特別所得税も追加されます。復興特別所得税とは、東日本大震災の復興財源を確保するために課税されているもので、2037年まで徴収される時限的な税金です。
譲渡所得税の計算方法 | 譲渡所得×所得税率 ※所得税率は、マンションの保有期間によって異なります。5年以下の短期は30.63%、5年超の長期は15.315%です。 |
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復興特別所得税の計算方法 | (譲渡所得×所得税率)×2.1% |
譲渡所得とは、マンションの売却価額から、取得費用と売却に必要な諸経費、各種控除を差し引いた金額です。
取得費は、売却する不動産を取得した時にかかった費用で、購入費用などがあてはまります。
譲渡費用は、不動産を売却するのに要した仲介手数料や登記費用などの経費を指します。

4.住民税
住民税とは、都道府県と区市町村が徴収する地方税のことです。譲渡所得と同様、他の所得(給与など)とは分離して課税されます。
所得税率も、マンションの保有期間によって変動します。5年以下の短期は9%、5年超の長期は5%です。
確定申告で譲渡所得税の申告をすれば住民税の申告も済ませたことになるため、マンション売却にあたって別途申告する必要はありません。
5.消費税
消費税は「課税事業者がおこなう建物の売買」において課税されます。
課税事業者とは、消費税の納付義務がある法人や個人事業主のことです。基準期間における課税売上高(消費税が課税される売上高)が、1,000万円を超える事業者を指します。
基準期間は、個人事業主の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度です。
つまり、個人で投資用マンションを売却する場合、前々年に事業で1,000万円を超える売上があれば、消費税を納める必要があります。
一方、マイホーム売却など事業目的でない場合、消費税は発生しません。

マンション売却で使える5つの税制特例
マンション売却では、さまざまな税制の特例があります。
- マイホームを売ったときの特例
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 特定のマイホームを買い換えたときの特例
- 事業用の資産を買い換えたときの特例」
- 土地建物の交換をしたときの特例
個々の状況次第で、利用すべき特例は異なります。税理士に相談して、適切な特例を活用しましょう。
1.マイホームを売ったときの特例
個人で居住用に所有していたマンションを売却した場合、譲渡益から3,000万円までの控除が認められる特例です。「居住用財産の3,000万円特別控除」とも呼ばれます。
マンションが共有名義の場合、共有者それぞれに3,000万円の特別控除を適用できます。
例えば、夫婦2人でマンションを共有しているのであれば、最高で6,000万円の特別控除が適用されることになります。
2.マイホームを売ったときの軽減税率の特例
通常の税率より、低い税率の適用が受けられる制度です。「居住用財産の長期譲渡所得の特例」とも呼ばれます。
適用するには、居住用のマンションを譲渡した年の1月1日における所有期間が、10年を超えている必要があります。
3,000万円の特別控除後の譲渡所得金額に対して、以下の税率が適用されます。
譲渡益 | 所得税率 | 住民税率 |
---|---|---|
6,000万円までの部分 | 10.21% | 4% |
6,000万円を超える部分 | 15.315% | 5% |
3.特定のマイホームを買い換えたときの特例
マイホームの買い換えで使える特例です。既存のマイホームを売却して得た譲渡所得のうち、新しく買ったマイホーム購入費用に相当する分の課税を先延ばしにできます。
先延ばしにした分の課税は、新しく買ったほうのマイホームを売却するときにおこなわれます。
細かい要件があるので、国税庁のWebサイトで確認しましょう。
4.事業用の資産を買い換えたときの特例
マイホームではなく賃貸物件を買い換える場合は「事業用資産の買い換の特例」が使えます。個人が事業用不動産を売却し、別の不動産に買い換えた場合に適用できる制度です。
既存の不動産を売却して得た譲渡所得のうち、買い換え資産の80%相当分の課税を先延ばしできます。
先延ばしにされた分の課税は、買い換え資産を売却する際に課税されます。
他の詳しい条件は、国税庁のWebサイトを参照しましょう。
5.土地建物の交換をしたときの特例
等価交換をする際に適用できる特例です。等価交換とは「土地と土地の交換」のように、同種・同価値の資産を交換することを指します。
通常、等価交換は譲渡(売却)として扱われ、譲渡所得税が課税されます。
しかし、この特例を適用することで、譲渡がなかったものとして課税を繰り延べられるのです。
特例の適用には複数の要件を満たす必要があるため、国税庁のWebサイトで確認しましょう。
まとめ
マンションを売却する際は、仲介手数料などの実費だけでなく、税金もあわせて考えることが大切です。
また、税金の特例を活用しようと思ったら、売却のタイミングにも影響してきます。
税理士や不動産会社ともよく相談しながら、最適なタイミングで売却できるようにしましょう。
マンション売却の税金でよくある質問
印紙税とは、契約書類や領収書に課される税金です。マンション売却では、売買契約書に対して課税され、書面に印紙を貼り付けることで納税します。
登記申請をおこなう際にかかる手数料です。マンション売却に伴う名義変更の登記では「固定資産税評価額×2%」で計算します。
マンションの売却益に対して課される税金です。不動産売却価格から、取得費と譲渡費用を差し引いた利益に課税されます。税率は所有期間によって異なり、5年以下は30.63%、5年超は15.315%となります。
はい、住民税も課税されます。税率はマンションの所有期間で異なり、5年以下の短期は9%、5年超の長期は5%です。
「課税事業者がおこなう建物の売買」において課税されます。マイホーム売却など事業目的でない場合は、消費税は発生しません。